「フェカリス菌って、最近よく聞くけど、一体何なんだろう?」とか「乳酸菌と同じでしょ」とか思っている方、少なくないかと思います。
中には、「フェカリス菌って、聞いたことない!?」という方もいらっしゃる方もしれません。
実は、このフェカリス菌、健康や美肌とは切っても切れないご縁のある大切な菌なんです。今日は、健康や美肌を目指す方のために、フェカリス菌についてお話ししたいと思います。
フェカリス菌とは
フェカリス菌は、もともと人間の身体内に生息している乳酸菌の一種です。
最近、いろいろな効能が指摘されていますが、詳細を説明する前に、まずは乳酸菌について辞書で定義を確認しておきましょう。
乳酸菌
乳酸発酵に関与する細菌の総称。代表的なものは連鎖球菌科のグラム陽性球菌および乳酸桿菌科のグラム陽性桿菌であり、チーズ・乳酸菌飲料のほか日本酒・醤油・味噌などの製造に不可欠。
広辞苑 第五版 岩波書店
ちょっと難しい名前が出ていますが、発酵するために必要な菌であることは容易に推測できますね。
チーズ、乳酸菌飲料、日本酒、醤油、味噌と発酵製品が盛りだくさんです。聞いただけで、身体に良さそうな気がしますね。
念のため、百科事典でも定義を確認しておきましょう。
乳酸菌
糖を分解して乳酸を作る反応によってエネルギーを獲得する細菌の総称。多数の属にわたる多様な種を含む。球菌もしくは桿菌(かんきん)で、グラム陽性。代表的なものとして、ビフィズス菌がある。ヒトや動物の口腔・腸管・膣のほか、自然界の糖類のある所に存在する。数種の連鎖球菌を除いて体には無害で、かえって感染防御の役割を果たすので、整腸剤や家畜の飼料に混ぜられる。乳酸菌による乳酸発酵は食品工業、発酵工業の分野で広く利用されている。
マイペディア
人が摂取する糖類から乳酸を作る反応を手助けしているんですね。先述したとおり、人体内には多くの菌が生息していますが、そのうち人体に無害で感染防御するなど人体に良い作用を及ぼしていることがわかります。
最後に、英語での定義を確認しておきましょう。
Lactic-acid bacterium, plural lactic-acid bacteria,
any member of several genera of gram-positive, rod- or sphere-shaped bacteria that produce lactic acid as the principal or sole end product of carbohydrate fermentation. Lactic-acid bacteria are aerotolerant anaerobes that are chiefly responsible for the pickling conditions necessary for the manufacture of pickles, sauerkraut, green olives, some varieties of sausage, and certain milk products, such as buttermilk, yogurt, and some cheeses. Under certain conditions, lactic-acid bacteria may contribute to dental caries and infective endocarditis. Important members include Streptococcus, Lactobacillus, and Pediococcus.
ENCYCLOPÆDIA BRITANNICA
(数種のグラム陽性菌属の総称で、棒状、あるいは球状の形をしたバクテリア。炭水化物を発酵する主要な、あるいは唯一の最終生物として乳酸を生成する。乳酸菌は、空気に耐性のある嫌気生物(無酸素条件下で生育する生物)で、ピクルスやサワークラウト、グリーンオリーブ、ソーセージの数種、バターミルクやヨーグルト、チーズ数種といった乳製品の製造に必要なピクルス漬けにする条件に重要な役割を果たしている。ある状況下では、乳酸菌は歯のカリエス(骨質の腐食)や田先生の心内膜炎にも効き目があることがあります。主な種類としては、ストレプトコッカス(連鎖球菌)や乳酸菌の乳酸桿菌属(にゅうさんかんきんぞくービフィズス菌・ブルガリア菌など)、それから、四連球菌などがある。 (筆者訳)
ブリタニカ百科事典
少し長くなりましたが、乳酸菌は、炭水化物から乳酸を生成するエンドポイントの役割を果たしているんですね。つまり、乳酸菌のおかげで、私たちはピクルスやソーセージ、味噌汁や醤油を食することができているんです。
「乳酸菌、侮るなかれ!」ですね。
フェカリス菌は、そんな乳酸菌の仲間であり、その仲間たちを助ける役割も果たしています。
フェカリス菌が、もともと人間の身体内に生息している微生物であることはすでに説明しましたが、正式には「エンテロコッカス属フェカリス菌」と言います。丸い(つまり、球状の形)形をした乳酸球菌なのですが、他の乳酸菌に比べて非常に小さく、500nm(ナノメートル)と他の乳酸菌の1/5程度の大きさしかありません。
したがって、わずかな量を摂取するだけでも他の乳酸菌より多く摂取することができるのです。
腸のしくみ
腸には、皆さんご存知のとおり、大腸と小腸があります。
腸は、人間のお腹の中で6.5m〜7.5mもあります。人間が食事を摂ってから排泄されるまでに約24時間かかると言われているのも、うなずけますね。
小腸のしくみ
小腸には、さらに十二指腸や回腸があります。
十二指腸は、胃の出口から手の指12本分ほどの長さにあたります。その途中、胆汁、膵液(すいえき)が分泌され、消化・吸収を助ける役割を担っています。
胃で消化された食物は、腸液や胆汁、膵液に含まれる消化酵素によって、消化分解されていきます。
小腸は、その蠕動(ぜんどう)運動によって、食物を十二指腸から大腸に送りますが、その間に、食物は消化吸収されていくんですね。
つまり、消化や吸収といった栄養分の摂取のほとんどは、小腸で行われているのです。
大腸のしくみ
大腸は、上行結腸や横行結腸、下行結腸、S字結腸、直腸などでできています。
回腸と上行結腸の間には盲腸があり、その先端に虫垂(ちゅうすい)があります。俗に言う、「盲腸(虫垂炎)」は、この部分が炎症を起こしてしまうんですね。
横道にそれてしまったので話を戻しますが、小腸と大腸の結合部には、弁が付いており、大腸から細菌が逆流してくるのを防いでくれています。
大腸は、水分の吸収と排泄物の貯蔵をその主な役割としています。
小腸で栄養素を吸収された食物は、大腸を通過する間に水分を吸収され、少しずつ固くなっていきます。
そして、ここで小腸で吸収しきれなかった残りの栄養素も吸収されていくんですね。
腸内環境とは
腸のしくみについて軽くおさらいしたところで、人間の腸の中に存在している細菌のお話を始めましょう。
人間の腸内には、約100種類にも及ぶ100兆個もの細菌が生存していると言われています。このような無数の細菌が、人体に良い影響を及ぼすか否かで、「善玉菌」と「悪玉菌」、それから「日和見菌」に分類されます。
善玉菌とは、人体に有用な菌のことを指します。その代表的な例が、有名な「ビフィズス菌」や「乳酸菌」です。フェカリス菌は、この「乳酸菌」に属しています。
これらの善玉菌は、ビタミンを合成し、消化や吸収を助け、感染を防御、免疫を刺激して人体に良い作用を及ぼします。
その結果、人間は健康を維持し、老化を防止することができるのです。
一方、「悪玉菌」は、人体に有害の菌のことを指します。典型的な代表例として、「ウェルシュ菌」、「ブドウ球菌」、「大腸菌(有毒株)」などが挙げられます。このような悪玉菌は、町内を腐敗せしめ、細菌毒素を発生させ、発ガン物質を生成し、ガスをも発生させます。
すると、人の健康が阻害され、病気のトリガー(引き金)となり、老化がどんどん進んでいってしまうのです。
最後に、「日和見菌」ですが、こちらは健康なときには人体に対して悪いことはしません。ただ、人体が弱っているときには腸内で悪い働きをします。その代表例が、バクテロイデスや大腸菌(無毒株)、連鎖球菌などです。
つまり、人間の腸内では、これら「善玉菌」や「悪玉菌」、「日和見菌」といった菌が、勢力争いをしているのです。
健康な方の腸内環境は、善玉菌が優勢です。これに対して、病気の方の腸内環境は、悪玉菌が優勢なのです。日和見菌は、善玉菌が優勢で健康なときはおとなしくしていますが、悪玉菌が優勢となって腸内環境が悪化すると、悪玉菌と一緒になって人体に悪い影響を及ぼすのです。
では、善玉菌である「フェカリス菌」は、一体どんな特徴を持っているのでしょうか?
フェカリス菌とその効能
フェカリス菌が、善玉菌の乳酸菌の一種で、人体に良い影響を及ぼす菌であることは、すでにお話ししました。また、腸内環境が、善玉菌と悪玉菌、日和見菌の勢力争いによって健康であるか否かを決めていることも触れましたね。
では、同じ善玉菌の中でも、最近、なぜフェカリス菌が注目されているのでしょうか?
それは、フェカリス菌が、プロバイオティクスとして生きたまま摂取しても効果があるだけではなく、プレバイオティクスとして、死菌の状態で摂取した方がさらに効能があることが最近の研究で明らかになってきているからです。
乳酸菌は、生きたまま摂取するのですが、腸に届くまでに胃で胃酸によって死滅させられてしまうことが多いのです。ところが、このフェカリス菌は、たとえ死んでから腸に届いても、プレバイオティクスとして他の善玉菌のエサになり、他の善玉菌が腸内で活躍するのを助ける働きもあることがわかってきたのです。
そのために、死菌として体内に摂取できる善玉菌であるフェカリス菌に注目が集まっています。
それでは、フェリカス菌には、具体的にどのような効能があるのでしょうか?
- 整腸作用
- 免疫力向上
- 悪玉コレステロール減少
- アレルゲン減少
- その他の効能
整腸作用
人は、生まれたばかりのときは善玉菌ばかりです。悪玉菌はほとんど存在しないんですね。
それが、年齢を重ねるとともに、人体に悪い影響を及ぼすさまざまな食物などを摂取していくことによって、悪玉菌がどんどん増加していきます。
悪玉菌が増えてくると、前述したとおり、腸内環境が悪化して、日和見菌も悪玉菌に味方するようになり、肌などの目に見えるところから、胃腸や心疾患などの目に見えないところに至るまで、どこからともなく体調が悪くなっていきます。
例えば、便秘がちになったり、肌に吹き出物ができるようになったりするんです。
便秘がちになると、本来弁の中に存在しているばい菌や細菌などが、大腸で再び体内に取り込まれ、それが血脈を通して体内をかけめぐります。すると、肌などの別の排泄器に悪い影響を与えるのです。
このような状態を未然に防ぐには、腸内環境を整えてあげる必要があります。つまり、腸内で善玉菌が優勢になるように、乳酸菌やビフィズス菌を摂取してあげると良いんです。このとき、フェカリス菌を死菌の状態で摂取してあげると、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなり、善玉菌が増加していきます。
すると、悪玉菌が活躍できなくなっていき、その数が減少していくのです。
そうすることで、フェカリス菌には、腸内環境を整える整腸作用があるのです。
免疫力向上
腸は、食物を消化吸収する消化器器官というだけではなく、人体の中でも最大の免疫器官でもあります。つまり、食物や外気に混入して侵入してくる病原菌や有害化学物質などの異物から人体を守る役割も果たしています。
これを、免疫力と言います。
ウェルシュ菌や大腸菌などの悪玉菌が優勢な腸だと、人体の老化が促進され、病気にかかりやすくなります。これは、人体のこの免疫力が低下していることが一因なのです。
フェカリス菌を摂取することで、善玉菌が優勢になると、悪玉菌はおとなしくなり、活躍する場を失います。すると、人体の腸内環境が良くなり、免疫力も向上していきます。
そのようにして、フェカリス菌は人体の免疫力向上にも一役買っているのです。
悪玉菌の減少
すでに、お話ししていますが、フェカリス菌を摂取すると、腸内に存在する善玉菌のエサとなり、その結果善玉菌が増加します。すると、腸内で善玉菌が悪玉菌よりも優勢となり、腸内環境が改善されていくのです。
つまり、フェカリス菌を摂取することで悪玉菌を減少せしめることができるんですね。
アレルゲン減少
人間が食物を口から摂取すると、さまざまな細菌や微生物も食物と一緒にとり込んでしまいます。そのような異物は、口や胃、腸といった消化器官で殺菌作用のある酵素を分泌して、異物の体内混入を防いでくれているんですね。
それでも、そのような消化器官の包囲網をかいくぐって、異物は体内に混入しようとしてきます。そんなときは、マクロファージやNK細胞などが免疫活動を活発にして、異物を排除します。
このような免疫細胞は、ヘルパーT細胞という細胞の指示を受けて免疫活動をするのですが、ヘルパーT細胞には、2種類あります。一つは、マクロファージなどの免疫細胞を担当するTh1、もう一つは、抗体を担当するTh2です。このTh2の活動が活発になりすぎて、抗体が過剰になると、免疫が過剰に反応するアレルギー反応を引き起こしてしまうんです。
悪玉菌が優勢な悪化した腸内環境では、このようなアレルギー体質になりやすく、かゆみや皮膚炎、発熱、倦怠感などのアトピー性皮膚炎の症状が出現しやすくなってしまいます。
フェカリス菌を積極的に摂取することで、腸内で善玉菌を優勢にして腸内環境を改善してあげると、このようなアレルゲンを減少させることができるのです。
その他の効能
フェカリス菌には、その他にも効能があります。
例えば、便秘の解消や花粉症予防、血糖値の上昇を抑制したり、高血圧を予防し、コレステロール値を低下させます。また、後で触れますが、肌荒れの改善にも役立つんですね。
・フェカリス菌の美容効果
胃腸が悪いと肌荒れを引き起こしやすいと言われています。
腸内環境が悪化すると、大腸で摂取された細菌などが血管を通して肌にまで悪い影響を与えることはすでにお伝えしましたね。
フェカリス菌を摂取すると、便秘が解消されるデトックス効果もあるので、大腸で細菌や病原菌などを摂取することを避けることができます。その結果、肌トラブルを避けることができ、これがフェカリス菌には美肌効果があると言われる所以なのです。
また、フェカリス菌にはアンチエイジング効果もあり、健康な肌を維持することもできるようになるのです。
おわりに
ここまで、フェカリス菌の効能についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
腸のしくみや腸内環境など、フェカリス菌がなぜ身体に良いのか、ご理解いただけたら幸いです。
中医(中国医学)では、
「医食同源」と言います。
つまり、病気を治すのも食事をするのも、生命を養い、健康を保つためであり、その本質は同じなのです。
「美と健康は1日してならず」
そろそろ、暴飲暴食や好き嫌いを避けて、あなたも健康な生活を始めてみてはいかがでしょうか?