普段あまり意識しない海苔の栄養。実はたんぱく質を始め、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが40種類以上も含まれているのをご存知ですか?
海藻の栄養を凝縮した海苔は、自然の恵みの宝庫といっても過言ではありません。ほのかな磯の香りとパリパリした食感で、子どもからお年寄りまで、海苔が嫌いという日本人はほとんどいません。
ご飯に限らず、おそばやうどん、ラーメンなどの麺類にもぴったりの海苔の栄養をご紹介します。
海苔1枚に栄養が詰まっています!
一般的な海苔は、1枚(全型)で約20cm角、重さ約3g程度。だいたいひとつのおにぎりに使う海苔の3倍でのり1枚となります。
海苔は海藻を摘みとって海苔板に抄かれ乾燥させて作ります。その後専用の乾燥機などで
乾燥させて水分を除いたものが板のり、焼いたものが焼き海苔として市販されます。板海苔は縦21センチ、横19センチが基本の大きさとされ、これを全型と呼びます。全型の板海苔10枚で1帖と呼ばれます。
この薄い海苔には、たんぱく質を始め、多くのビタミン、ミネラルが含まれています。ひとつの食品で、さまざまな栄養成分を摂取できること、1枚約6kcalなので、カロリーを気にせずに栄養素の補給ができることが海苔の大きな魅力です。
具体的な海苔の栄養素をご紹介します。
大豆に匹敵する良質なたんぱく質
たんぱく質は、体内でアミノ酸に分解されますが、体に必要なたんぱくを作るためには8種類のアミノ酸(必須アミノ酸)が必要といわれています。
この必須アミノ酸をバランスがよい含む食品が良質なたんぱく質といわれますが、海苔は「畑の肉」とも呼ばれる大豆以上の良質なたんぱく源といわれます。海苔1枚で、卵や牛乳の1/5程度のたんぱく質を摂取ができます。
また、アミノ酸の中に含まれている成分でもグルタミン酸という旨味成分やアスパラギン酸がたくさん含まれております。
グルタミン酸は食欲を増進させ消化を促進する以外にも体内のアンモニアの無毒化をしたり、アスパラギン酸は疲労物質である乳酸をエネルギーに変える手助けなどをします。
ビタミンAで風邪予防と目の健康維持
脂溶性のビタミンで、眼や皮膚、粘膜の健康維持に欠かせないものです。ビタミンAが不足すると、目が見えにくくなったり、皮膚が乾燥してカサカサになるなどの他、粘膜も乾燥して免疫力が低くなり、風邪をひきやすくなったりします。
また、丈夫な骨を作るためにも大切なビタミンで、特に育ちざかりの子どもに不足すると発達に影響を及ぼす場合もあります。
海苔以外の食品では、にんじんやかぼちゃなどの緑黄色野菜、豚や鶏のレバー、たらなどの魚に多く含まれています。
海苔1枚に含まれるビタミンAは、420ugで、にんじんなら10g程度、卵なら1個分以上が含まれています。育ち盛りの子供が1日に必要とするビタミンAは、海苔2枚で摂ることができます。
ビタミンB1でエネルギーを作り疲労を回復
炭水化物(糖質)の代謝を促し、エネルギーに変えるビタミンB1は、米を主食とする日本人にとって大切なビタミンです。水溶性のビタミンで尿から排泄されるので、毎日の食事で常に補給する必要があります。
疲労を回復する効果もあり、うなぎや豚肉に多く含まれています。不足するとイライラして集中力がなくなり、慢性的に不足することで脚気という病気になります。
海苔1枚に含まれるビタミンB1は0.03mg。成人男性の1日に必要なビタミンB1量は1.2mgなので、特別に多いとは言いえませんが、おにぎりのようにご飯と組み合わせて食べることで、エネルギーを効率よく摂取することができます。
また、梅に含まれるクエン酸は、代謝をスムーズにするため、疲労回復の効果が高まるとされています。梅干しを入れた海苔おにぎりは、まさに元気の出る知恵が詰まった食べ物といえます。
ビタミンCで美容と健康を
強い抗酸化作用を持ち、美白効果が期待できる美容のためのビタミンです。
ビタミンCは熱に弱く、加熱するとこわれやすいため、野菜のビタミンCを摂取する場合、調理法などに注意を払う必要があります。しかし海苔に含まれているビタミンCは加熱に強く壊れにくいため、摂取しやすいという特徴があります。
鉄で貧血を改善
女性に多い貧血は、月経によって体内の鉄分が失われるのが原因の鉄欠乏性貧血です。
海苔1枚には、約0.3mgの鉄分が含まれており、ゆでたほうれん草1/5わ分、レバー10g分に相当します。レバーが苦手なという人は、海苔を食べるようにしましょう。
葉酸は妊婦に必要なビタミン
水溶性ビタミンのひとつで、造血のビタミンといわれています。また、赤ちゃんの正常な発育に必要ともいわれ、妊娠初期の女性は通常の2倍の葉酸を摂取することが推奨されています。
幼児にとっても丈夫な骨を作り、細胞分裂と造血を助ける葉酸は不可欠なビタミンです。精神的な安定にも効果があるといわれ、葉酸の不足している子どもはイライラしやすいともいわれます。
海苔1枚あたりに含まれる葉酸は約57ugで、妊娠してない女性は240ug、妊婦さんは480ugが摂取推奨量です。その他、葉酸は貧血や動脈硬化を予防する働きもあります。
カルシウム・マグネシウム
カルシウムは骨を丈夫にして骨粗しょう症を予防するのはもちろん、神経の伝達にも関わっているので、不足するとイライラしたり怒りっぽくなるといわれています。
カルシウムは日本人に不足しがちなミネラルですが、これはカルシウムが吸収されにくい栄養素であることが理由のひとつです。カルシウム源として、もっとも効率よく吸収されるのは牛乳をはじめとする乳製品ですが、海苔はカルシウムの吸収を助けるマグネシウムも同時に含まれており、吸収のされやすいカルシウムといわれています。
食物繊維
海藻には、水溶性食物繊維が豊富に含まれています。水溶性食物繊維とは文字通り、水に溶けるタイプの食物繊維のことで、海藻や野菜などに多く含まれます。
水溶性食物繊維は水分を吸収してゲル状になり、コレステロールや塩分、糖分などの吸収を抑える働きがあります。
大腸を刺激して腸の蠕動運動を促して便秘の解消や予防に効果があります。また、糖などの吸収を抑えることからダイエットや糖尿病、高血圧などの生活習慣病の予防に欠かせないものです。
EPA(イコサペンタエン酸)
EPA(イコサペンタエン酸)は、人間の体内で作ることが出来ず、食べ物から摂取する必要のある必須脂肪酸のひとつです。
さんまやいわしなどの青魚に豊富に含まれることで知られています。血栓ができるのを防いで心筋梗塞や脳卒中などの発作を予防したり、アレルギー症状の緩和、精神を安定させる効果など、さまざまな働きがあります。
意外に知らない! 海苔には多くの種類があります
一口にのりといっても、実は原料となる海藻には多くの種類があります。
もっとも一般的なのはアマノリ属のもので、アマノリ属の中にもさまざま種類があります。焼き海苔として利用される海苔のうち、もっとも養殖されているのは、スサビノリ、アサクサノリなどで、ウップルイノリという品種が好まれている地域もあります。
スサビノリは色や光沢、甘味があり、やや厚手でしっかりとしているのが特徴です。アサクサノリは薄くてやわらかく、味も香りもよいが特徴です。
日本でもすっかりおなじみになった韓国のりは、オニアマノリという岩海苔などを原料としています。この海苔の種類の違いにより、日本の海苔と異なる、粗くところどころに穴が空くような独特の形状になります。
海苔が岩に生えたものが岩海苔、網につけば養殖海苔と呼ばれます。養殖海苔は、板海苔や焼き海苔として、おにぎりや寿司、麺類使われます。板海苔に味をつけたものが味付け海苔、細長く切ったものがおにぎり海苔、細く切った刻み海苔など、使いやすい工夫がされた商品もおなじみです。
たこ焼きや焼きそばに使われる青海苔は、フノリやアオノリを粉末状にしたものです。韓国海苔はごま油と塩で味をつけたものです。
海苔の上手な保存
海苔に少量含まれる塩分が湿気を吸収しやすいため、海苔を保存するときは密閉できる保存袋などに入れ、冷蔵庫で保存するのがおすすめです。
保存状態が悪いと、風味が損なわれ栄養成分が変化する場合もあります。日光などにさらされた海苔は赤っぽい色に、湿気を含んだ海苔は紫色に変色します。ベタッとなった海苔は、ガスコンロの火であぶるよりも、トースターなどで軽く温めて湿気をとばします。
ほうれん草や小松菜などの野菜とあえたり、和風サラダやパスタなどのトッピングなど利用すると風味が味わえます。大量に残って湿気ってしまった場合は、佃煮などにするものひとつの方法です。醤油、砂糖、みりん、酒といっしょに細かくちぎった海苔を煮ます。
しかし、ベタッとして張りや光沢がなくなり、色が変わってしまったような海苔は、多くの場合栄養成分も変化している可能性が大きいので、あまりにも古くなったものなどには、栄養効果が期待できません。
まとめ
海苔にはたんぱく質を始め、ビタミンやミネラルなどの栄養がたっぷりと含まれています。低カロリーで好き嫌いもないことから、誰でも簡単に海苔の栄養を摂取することが出来ます。特に、たんぱく質は含まれる必須アミノ酸のバランスがよく、大豆に匹敵するような良質のたんぱく質といわれます。
ビタミンやミネラルも豊富で、ビタミンAやビタミンB、葉酸、カルシウムなど心がけて摂りたいものが含まれています。通常、青魚などから摂取するEPA(イコサペンタエン酸)も含まれます。
保存は密閉できる保存袋に入れて冷蔵庫で。湿気ってしまった場合は海苔の風味を活かせるあえものやトッピングに利用しましょう。変色したり古くなったものは栄養成分が変化していることが多く、栄養素の効果は期待できません。