人は生きるために食事をして栄養を摂取しますが、それに対応する形で栄養素を消化・吸収した後のカス・食物残渣(しょくもつざんさ)を便として排泄する必要があります。
しかしながら、中には通常通り1日3回の食事をするのにもかかわらず、一週間も便が出ないという人がいらっしゃるのです。
このような便秘の症状を放置していると、様々な恐ろしい病気や症状を引き起こすことになりかねません。
そこで今回は、便秘が一週間も続く場合のリスクとその便秘の解消法などについて、ご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
便秘とは?
そもそも便秘には、便秘の原因や発生メカニズムによって、いくつかの種類・タイプが存在します。ですから、一口に便秘と言っても、その便秘のタイプによって対処方法も微妙に異なってきます。
そこで、まずは便秘の種類について、簡単に知識をおさらいしておきたいと思います。
便秘とは?
便秘は、食事の後に体内で生じる排泄物、いわゆる便が肛門直前の直腸に溜まり、何らかの原因で正常に排便されない状態のことです。
排便の仕組み
通常、食事によって食べ物が体内に入ると胃腸で消化・吸収され、その残りカスである食物残渣が大腸に送られます。食物残渣は便の元として大腸に送り込まれると、大腸の蠕動運動により大腸末端の直腸まで運ばれます。
便が直腸まで運ばれると、便の体積や重みで直腸の腸壁が伸ばされます。腸壁が伸ばされることで、神経が刺激され大脳に伝わり排便をしたくなる感覚が引き起こされます。この直腸が刺激されて排便をしたくなる一連の生理現象を排便反射と言います。
排便反射が生じると、人は便意を催しトイレに向かいます。そして、肛門括約筋を弛緩するとともに、下腹部の腹圧を上昇させ、いきむことで直腸に溜まった便を肛門から排泄するのです。
便秘の種類
便秘は、排便に関わる器官に原因がある器質性便秘と、生活習慣に原因がある機能性便秘の2種類に大きく分類されます。
器質性便秘
器質性便秘は、胃・小腸・大腸・肛門など排便に関与する器官に疾患があることが原因で生じる便秘のことです。
例えば、女性にしばしば見られるのが、子宮筋腫が大きくなり直腸を圧迫することで便が正常に排便されずに便秘となる場合です。
このような器質性便秘を生じる疾患として子宮筋腫の他に、大腸がん・腹膜炎・腸閉塞・腸捻転・潰瘍性大腸炎などが挙げられます。
このような器質性便秘は、原因となる疾患を治療をしなければ、便秘の根本的な改善は見込めません。
機能性便秘
機能性便秘は、乱れた生活習慣や食生活、あるいはストレスなどが原因となり、排便に関与する器官の働きが一時的に低下することで生じる便秘のことです。
そして機能性便秘は、その発生メカニズムによって弛緩性便秘・痙攣性便秘・直腸性便秘の3種類に分類されます。
- 弛緩性便秘:大腸の蠕動運動に関わる筋力の低下・弛緩で便を押し出せない
- 痙攣性便秘:ストレスなどで自律神経が乱れて蠕動運動に関わる筋肉が正常に動かない
- 直腸性便秘:便は直腸まで来ているが様々な要因によって排便できない
ちなみに、日常会話で使われる「便秘」は、その多くの場合で機能性便秘のことを指しています。
一週間続く便秘で現れる症状
それでは、便秘が長引いて排便が一週間も滞ると、どのような症状が現れるのでしょうか?便秘が一週間以上続いた場合に現れる可能性のある症状を、ご紹介したいと思います。
下腹部の不快感
少なくとも一週間分の食物残渣が便として直腸・大腸に溜まっているわけですから、次のような下腹部の不快感が生じます。
- お腹にハリを感じる、腹部膨満感
- お腹がポッコリと膨らんでくる
- 便に由来するガスが発生して腸自体が膨らみ、周囲の組織を刺激して腹痛が生じる
肌トラブル
腸内に便が長く溜まっていると、悪玉菌によって腐敗が始まります。腐敗が進むことによって、さらに悪玉菌が増殖して腸内環境が悪化するとともに、悪玉菌が有害ガスや有害物質を発生させます。
このような有害ガスや有害物質は、便とともに排泄されるのが通常です。しかしながら、便通がありませんから、有害ガスや有害物質は腸内に充満して腸壁によって吸収されてしまいます。すると、血流によって身体を巡りニキビ・吹き出物・肌荒れなどの肌トラブルを引き起こします。
体臭・口臭が酷くなる
腸内に充満した有害ガスや有害物質が腸壁から吸収され、血流によって汗腺などに到達すると汗などともに腐敗臭の成分も排出され、体臭の原因となります。
同じく、血流によって肺に到達すると呼気とともに腐敗臭の成分も排出され、口臭の原因になります。
その他の症状
ストレスが原因の便秘であったり、便秘がストレスになるなど、便秘とストレスの間には深い関係性が見られます。そして、ストレスが高まっている場合には、自律神経の乱れも良く見られます。
便秘と関連して自律神経が乱れると、血行が悪くなって肩こり・むくみ・頭痛・吐き気などの症状が現れたり、精神的にもイライラ感が生じたり、気分が落ち込んだりします。
一週間続く便秘の様々なリスク
それでは、便秘が一週間以上続いて排便がされないと、どのようなリスクが生じるのでしょうか?
便秘が一週間以上続いた場合に引き起こされる可能性がある病気などを、ご紹介したいと思います。
糞塊埋伏(ふんかいまいふく)
便秘が長期間続くと、便が直腸に次から次へと溜まっていくことになります。直腸に到達した便が排泄されることなく溜まり続けると、便が非常に硬くなってしまうことが分かっています。
なぜならば、大腸末端の直腸や大腸の大部分を構成する結腸は、便を排泄しやすい適度な硬さにするための水分吸収機能を有しているからです。このような直腸・結腸の水分を吸収する働きによって、溜まった便はよりいっそう硬さを増してしまうのです。
このように硬い塊と化した便のことを糞塊埋伏(ふんかいまいふく)と言い、一般的には滞留便や宿便とも言います。糞塊埋伏になると、前述したように通常ならば排便とともに体外に排泄される有害ガスや有害物質が、腸内に発生・充満し、一部は腸壁から吸収され血流により全身に様々な悪影響を及ぼすことになります。
また、糞塊埋伏により大腸が膨らんだ状態が長く続くと、大腸自体の伸縮性が失われて、排便しても大腸が元に戻らず便を溜めやすい状態になるリスクもあります。
大腸がん
糞塊埋伏になると、腸内環境も悪化の一途をたどります。つまり、善玉菌の腸内活動が低下して、悪玉菌が活性化します。悪玉菌の活動によって便の腐敗は進み、有害ガスや有害物質が発生します。
この有害物質の中には、発がん促進物質も含まれます。そのため、便秘が長期化すると大腸がんの発生リスクが高まると考えられています。
腸閉塞(イレウス)
糞塊埋伏が原因となって、腸閉塞(イレウス)が起こる可能性もあります。
腸閉塞は様々な原因によって腸が塞がってしまう病気で、糞塊埋伏もその原因の一つなのです。腸が詰まって塞がることで、腹部膨満感・お腹のハリ・腹部の激痛・吐き気などが現れます。重症化すると、腸の内容物が逆流して嘔吐する場合もあります。
腸閉塞では、それまでに腹部の違和感があったとしても、腹部の激痛は突発的に現れますので救急車で病院に搬送される方がほとんどだとされています。
脂質異常症・動脈硬化
食生活の乱れや運動不足などにより、血液中のコレステロール値が高くなる脂質異常症(高脂血症)の人やメタボ気味の人が、長期間の便秘になると脂質異常症を悪化させる危険性があるとされています。
通常、余分なコレステロールは便に含まれて排便されます。しかしながら、便秘で余分なコレステロールが排便されない場合、コレステロールが腸壁から再吸収されて血液中に戻ってしまうのです。その結果、血中コレステロール値が上昇してしまいます。
そして、血中コレステロール値が高い状態が続くと、血管が詰まる動脈硬化のリスクが高まってしまうのです。動脈硬化は血管が硬くなる病気ですので、排便時にいきむことで血圧に急激な変化が生じて、その衝撃で血管が破れ脳梗塞・心筋梗塞に進行するリスクも高まります。
一週間続く便秘の原因
このように便秘が長く続くと、様々な不快症状や様々なリスクが生じることになります。それでは、なぜ便秘が一週間以上も続いてしまうのでしょうか?
長く続く便秘の原因を、ご紹介したいと思います。
器質性便秘の場合
前述した器質性便秘の場合、長く続く便秘の背景には重い病気が隠れていることがあります。
便秘によって大腸がんや腸閉塞になるリスクもありますが、別の原因で大腸がんや腸閉塞が発生していて、その結果として便秘が現れることもあります。
機能性便秘の場合
長く続く機能性便秘の場合、その原因は多岐にわたります。
弛緩性便秘であれば、加齢や老化、運動不足、過度なダイエットなどによって、大腸の蠕動運動に関わる筋力の低下・弛緩で便を押し出せないことが原因です。
痙攣性便秘であれば、ストレスなどで自律神経が乱れて蠕動運動に関わる筋肉が正常に動かずに痙攣したような動きをすることで便を上手く押し出せないことが原因です。
直腸性便秘であれば、日常的に便意を我慢したり、加齢・老化などによって、排便反射が鈍くなって便意が生じないことなどが原因です。
まれに過敏性腸症候群によって、長く続く便秘になる場合もあるとされています。過敏性腸症候群は、検査しても特に異常が無いのにもかかわらず、下痢や便秘などの症状が慢性的に生じる症候群のことです。
女性ホルモンの影響
女性ホルモンの一つに、黄体ホルモンと呼ばれるホルモンが存在します。この黄体ホルモンは、体内に水分量を多く保持させようとする働きを持っていますので、直腸や結腸による便からの水分吸収が促進されます。そのため、便が硬くなりやすく、排便しにくくなってしまいます。
また、黄体ホルモンは妊娠すると流産とならないように、子宮筋を弛緩させ胎児が育ちやすいように子宮を緩ませます。しかし、黄体ホルモンの筋肉を弛緩させる働きで、大腸の蠕動運動に関わる筋肉も弛緩してしまい、便秘につながってしまうのです。このことが理由で、女性ホルモンが多くなる妊娠初期や生理前の時期に、女性は便秘となりやすいのです。
このような女性独自の生理的要因に、腹筋などの筋力の弱さという身体的要因と運動不足や過度のダイエットといった生活習慣的要因が加わり、女性は長く続く便秘が生じやすいと考えられています。
下剤依存症
下剤は、便秘の解消方法としては即効性があり、重度の便秘治療には必要性が認められます。
しかしながら、下剤は便秘を根治させる薬ではなく、一時的に腸を刺激して強制的に排便させるだけにとどまります。そして、便秘だからと言って安易に日常使用すると、排便反射が鈍るなど排便機能が低下して、余計に下剤への依存性が高まります。ですから、このような下剤依存症になると、より便秘が長期化しやすくなります。
ちなみに、刺激性下剤を長期服用すると、大腸の粘膜に色素沈着が生じて黒ずんでしまう大腸メラノーシスが発生します。大腸メラノーシスは、下剤の服用を停止すれば1年程度で色素が消失して回復するとされていますが、一方で大腸メラノーシスが大腸がんのリスクを高めるという研究報告も為されています。
一週間続く便秘の対処方法
それでは、便秘が長く続いた場合に、どのような対処・対策をすれば良いのでしょうか?一週間以上続く便秘の対処法を、ご紹介したいと思います。
病院へ行く
そもそも身体的特徴や病気の現れ方に個人差があるように、当然ながら排泄・排便の周期や状況にも個人差が生じます。
しかしながら、一週間も便が排泄されないというのは、やはり異常な状況だと認識する必要があります。
そこには、前述の器質性便秘のように何か重大な病気が隠れていることも否定できません。ですから、一週間以上も便が排泄されない場合は、まず病院を受診する必要があるでしょう。
器質性便秘であることが判明すれば、便秘を引き起こす元となる疾患を治療しなければなりませんので、医師の指示に従って治療を受けましょう。
下剤の使用・浣腸
器質性便秘でなく機能性便秘であるとしても、すでに便秘の症状が重い場合は、最初に下剤や浣腸によって滞留便を体外に排出しなければならない場合もあります。
下剤を用いる際に注意が必要なのが、下剤の種類です。下剤の市販薬の大半は、大腸を無理やり刺激して蠕動運動を引き起こす刺激性下剤です。この刺激性下剤は、弛緩性便秘や痙攣性便秘の一時的な症状の改善には効果を発揮しますが、直腸性便秘には効果が期待できません。というのも、直腸性便秘では蠕動運動は正常に機能しているからです。そして、前述のように下剤依存症にならないように、気を付ける必要があります。
一方で、直腸性便秘には、酸化マグネシウム系の下剤が効果的です。酸化マグネシウム系下剤は、腸内の水分保持を促進して、便を柔らかくして排泄を促すものです。
腸内洗浄
腸内洗浄という治療方法を導入する医療機関も増えています。腸内洗浄とは、専用の機械で濾過された温水を腹部をマッサージしながら注入し、滞留便などを洗い流す治療方法です。腸内洗浄の結果、腸内細菌のバランスが崩れた状況をリセットすることができるとされています。
食事療法
便秘の改善には、食生活を見直す必要もあります。
食物繊維を摂取する
食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維が存在します。
不溶性食物繊維は、ご飯などの穀物・根菜・野菜・豆類などに多く含まれています。不溶性食物繊維は食物残渣となって便の元となり、腸内で水分を吸収して膨らみ腸管を刺激して蠕動運動を促します。
これに対して、水溶性食物繊維は、果物や海藻類に多く含まれ、腸内で水分に溶けることによりゲル状となることで保水力を高めます。その結果、直腸や結腸による水分吸収を邪魔して、便が柔らかくなります。
本来ならば、両方をバランス良く摂取して食物繊維不足にならないことが大切ですが、長く便秘が続いている場合に不溶性食物繊維を摂取することは余計に症状を悪化させる可能性がありますので、水溶性食物繊維を意識的に摂取すると良いでしょう。
乳酸菌を摂取する
善玉菌と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌を含む漬物やヨーグルトといった食品を摂取すると整腸作用が期待できます。
また、腸内で善玉菌の増殖を助けるオリゴ糖や納豆菌を摂取すると、さらに整腸効果が高まり、善玉菌が優勢な理想的腸内細菌バランスとされる腸内フローラに近づきます。
腸内フローラを保つと便秘対策はもとより、免疫力アップ・美肌・老化防止などの効果も期待されます。しかも、代謝アップによりダイエット効果もあることから、腸内フローラダイエットという言葉も生まれています。
運動療法
便秘の改善には、適度な運動をすることも必要です。適度な運動をすると腸管に刺激が伝わり、その刺激が大腸の蠕動運動を促します。
生活習慣の見直し
生活習慣や生活リズムの乱れは、自律神経の乱れを誘い、結果として便秘につながる可能性があります。ですから、自分自身を律して規則正しい生活を送ることが、長く続く便秘を改善することにつながります。
とはいえ、仕事などで不規則な生活にならざるを得ない場合もあります。そのような場合には、次のような事をルーティーンとして毎日継続してみると良いでしょう。
- 起きたら必ず白湯を飲んで胃腸を活性化させる
- パンよりもご飯・シリアルを食べる
- サラダよりも温野菜を選ぶ
- 仕事中は早歩きをして意識的に運動量を増やす
- 寝る前に白湯やホットミルクなどの温かい飲み物を少し飲む
まとめ
いかがでしたか?便秘が一週間も続く場合のリスクやその便秘の解消法などについて、ご理解いただけたでしょうか?
人は生きるために食事をしなければならず、また同様に排泄をしなければなりません。たかが便秘と安易に考えていると、様々な病気のリスクが高まります。
そして、最も重要なことは、一週間も便が排泄されないということは、とても異常な状況だということです。
もし自分なりに便秘を解消する努力をしたのに、一週間も便が排泄されていないのならば、病院を受診して医師の診断を仰ぎましょう。
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