舞踏病とは?症状が現れる病気を知ろう!それぞれの原因や治療法は?

舞踏病という疾患をご存知ですか?ほとんどの方は、耳にしたことが無いのではないでしょうか。

舞踏病とは、患者が歩行しようとすると、あたかも踊っているように自分の意思に反して不規則な運動を繰り返してしまうという疾患です。ほかにも、手や顔の表情筋なども、自分の意思に反して動いてしまいます。

自分の意思で自分の身体をコントロールできなくなるということは、想像するだけでも恐ろしい病気ですよね。しかも、舞踏病という疾患を理解している人が少ないことから、舞踏病の患者さんは、周囲からの視線とも戦わなければなりません。

そこで、今回は舞踏病がどのような疾患なのか、その概要をまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。

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舞踏病とは?

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舞踏病とは、どのような疾患なのでしょうか?

舞踏病とは?

舞踏病は、錐体外路性運動系(すいたいがいろせいうんどうけい)に障害が起こることによって現れる疾患の総称です。舞踏病では、身体の一部または全体の筋肉で、自分の意思でコントロールができない不随意運動が生じます。

ちなみに、舞踏病という疾患名は、この不随意運動によって患者が踊るような歩き方をすることに由来しています。

舞踏病の症状

舞踏病の症状の特徴は、身体の筋肉群が自分の意思でコントロールできない不随意運動をすることです。

そして、舞踏病で現れる不随意運動は、唐突に動きだしたり、不規則に動いたり、しかも無目的な運動なのです。つまり、舞踏病では、手足や顔の表情筋などが自分の意思とは異なる動きを勝手にしてしまうのです。

その動きは、あたかも踊るように見えたり、落ち着きが無いように見えたり、態度が悪く見えたりなど、周囲の人の目には奇異な行動に見えます。というのも、一般の人にとって、自分の身体が自分の意思に反して動くということに考えが及ばないからです。

このような舞踏病で特徴的な異常行動を、舞踏運動と呼びます。

不随意運動とは?

不随意運動は、随意筋が自分の意思に基づかず、しかも合理性のない運動をすることを言います。

ちなみに、不随意運動の反対語は随意運動です。随意運動は、自分の意思に基づく合理的な運動をすることです。詳しくは、不随意運動とは?種類や原因となる病気を紹介!治療法やリハビリの方法を知ろう!を読んでおきましょう。

随意筋と不随意筋

随意筋は、自分の意識下で、自分の意思通りに動かすことのできる筋肉のことです。手や足などの身体を動かすための骨格筋が随意筋にあたります。

一方で、不随意筋は自分の意識下で動かすことのできない筋肉のことです。心臓を動かしている心筋や胃腸を動かしている平滑筋が不随意筋にあたります。

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運動のメカニズム

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このような舞踏病を理解するために、運動が可能となるメカニズムをおさらいしたいと思います。手や足を動かす際は、脳で指令が出されて、神経を通じて手や足の筋肉に指令が届きます。

このような運動に関わる神経を運動系と呼びますが、運動系には次のような二つの命令系統があるとされています。

  • 錐体路(すいたいろ)
  • 錐体外路性運動系

錐体路とは?

錐体路は、運動系の一つです。脳の大脳皮質運動野から脊髄を通じて末梢神経に向かう神経路のうち、延髄にある錐体を経由する命令系統のことを、錐体路と言います。

延髄は脳幹の一部で、脳と脊髄の中継点にあたります。延髄には、呼吸中枢や循環器中枢が存在しているため、延髄にダメージを受けると生命維持が困難になります。

延髄にある錐体とは、延髄の前面に存在する神経線維の束のことです。

錐体路の役割

錐体路は、大脳皮質で出された随意運動の指令を伝達する役割を担っています。つまり、大脳皮質から出された指令が、錐体から脊髄を通じて末梢神経に伝わり、末梢神経が手や足の筋肉を支配して自分の意思通りに動かすのです。

錐体外路性運動系とは?

錐体外路性運動系は、錐体路に属しない運動系の神経路の総称です。

ただし、錐体路は解剖学上の実体があるのに対して、「錐体外路」という神経路の実体があるわけではないことに注意が必要です。つまり、運動系の神経路のうち錐体路を除いた全ての部分を錐体外路性運動系と呼びます。

錐体外路性運動系の役割

身体で随意運動が起こるときに、その随意運動を補助するように全身の筋肉は反射的・無意識的に協調して動きます。

錐体外路性運動系は、錐体路を通じた随意運動の指令に対応する形で、脳の様々な部位と連絡・協調などの調整を行い、全身の筋肉が反射的・無意識的な協調運動を展開できるように調節する役割を担っています。

錐体外路性運動系の役割の具体例

たとえば、歩行するには、大脳皮質から「歩く」という指令が出て、錐体路を通じて歩行という随意運動が足に現れます。この際に、反射的・無意識的に腕を振り、体幹で前後左右のバランスをとっているのが錐体外路性運動系の働きによるものです。

また、コップに蛇口から水を汲むには、大脳皮質からコップを持って蛇口をひねるという指令が出ます。水が溜まるにつれ重力でコップが重くなるため腕が下がるところを反射的・無意識的に腕を同じ位置に維持しているのは錐体外路性運動系の働きです。

さらには、豆腐などの非常にやわらかい物を持つ場合には、大脳皮質から豆腐を持つという指令が出ます。しかし、なんの制御もなく豆腐を持つと潰れてしまいます。そこで、錐体外路性運動系が反射的・無意識的に力を制御することで豆腐を持つことができるのです。

舞踏運動が生じるメカニズム

随意運動の指令を行う大脳において、なんらかの要因によって神経核に障害が発生することが舞踏運動の原因とされています。

この神経核の障害によって、錐体外路性運動系の働きが正常に行われなくなります。つまり、随意運動に対応した形で、脳の様々な部位と連絡・協調などの調整が行われなくなり、全身の筋肉も反射的・無意識的な協調運動を展開できなくなります。

その結果として、随意運動の指令が末梢神経と骨格筋で強く現われ、運動の制御が効かない状態になると考えられています。

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舞踏病の種類

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舞踏病は、錐体外路性運動系(すいたいがいろせいうんどうけい)に障害が起こることによって現れる疾患の総称でした。

では、舞踏病の症状が現れる疾患には、どのようなものがあるのでしょうか?

舞踏病の症状が現れる疾患

舞踏病の症状の特徴は、身体の筋肉群が自分の意思でコントロールできない不随意運動をすることでした。このような不随意運動が現れる疾患には、次のような疾患が挙げられます。

  • ハンチントン病
  • 小舞踏病(シデナム舞踏病)
  • 老人性舞踏病
  • 有棘赤血球舞踏病(ゆうきょくせっけっきゅうぶとうびょう)
  • 糖尿病性舞踏病
  • 妊娠性舞踏病
  • 甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

ハンチントン病

ハンチントン病は、ある遺伝子に異常が生じることで、大脳基底核に存在する神経核が変性してしまうことによって、様々な症状が現れる疾患です。このようなハンチントン病は、40才前後で発症する人が多いのですが、全年代で発症する可能性があります。

そして、ハンチントン病は遺伝性の疾患であるため、遺伝子の異常は高い確率で親から子へ遺伝します。

ハンチントン病の症状

ハンチントン病では、次のような症状が徐々に現われ進行していきます。

  • 舞踏運動(不随意運動)
  • 痴呆や人格変化
  • パーキンソニズム
舞踏運動(不随意運動)

症状の現われ方には個人差があるため、ハンチントン病が発症しても全ての人が同じような症状になるわけではありません。

しかし、一般的に発症初期では、細かい動作がしにくく不器用になったり、顔の表情筋や手先が勝手に動いてしまったりします。そして、症状が進行していくと、舞踏運動・不随意運動が現れます。具体的に、自分に意思と関係なく歩行時に踊るような動きをしたり、首や手先が不規則に動いたり、姿勢を保てなくなったり、自分の意思通りに食物を飲み込めない嚥下障害が起きたりします。

痴呆や人格変化

一般的に発症初期では、神経質になったり、怒りやすくなったり、飽きっぽくなったり、うつ状態になったりといった性格の変化が現れます。

そして、症状が進行していくと、重いうつ状態や被害妄想などの精神症状、認知症のような痴呆症状などが現われて、発症前と比べると人格が変化したようになります。

パーキンソニズム

大人でハンチントン病が発症すると、上記のような人格変化や舞踏運動に代表される不随意運動が典型的な症状として現れます。

一方で、20才以下の子供にハンチントン病が現われると、舞踏運動よりもパーキンソニズムが主な症状として現れます。

パーキンソニズムとは、手足の震え、身体を動かしにくく動作が遅い、筋肉がこわばる、バランスが悪くなり転倒しやすくなるといった症状のことを言います。

詳しくは、ハンチントン病の症状って?原因や治療法、病気の予後を知ろう!関係のある病気はなに?を読んでおきましょう。

ハンチントン病の原因

ハンチントン病の原因は、「ハンチントン遺伝子」と呼ばれる遺伝子に異常が現れることです。

この遺伝子に異常が起こることで、大脳に存在する神経核が変性してしまいます。そして、大脳の神経核が変性した結果、錐体外路性運動系の働きに障害が発生し、舞踏運動のような不随意運動が生じるのです。

ちなみに、ハンチントン病は遺伝性の疾患ですので、ハンチントン遺伝子の異常は遺伝します。ですから、両親のどちらかが同じ病気であることが多いとされています。

ハンチントン病の治療方法

ハンチントン病は、遺伝性の神経変性疾患のため、現在のところ根本的な治療法は無いのが実情です。

ハンチントン病自体は、遺伝子の異常によって神経に変性が生じる疾患ですので、直接生命に危険が及ぶわけではありません。

しかしながら、症状が長く続くと、不随意運動によって体力を消耗して免疫力が低下したり、嚥下障害で誤嚥による肺炎を起こします。その結果、発症から約20年で亡くなるケースが多いとされています。

不随意運動やうつ症状などを緩和するために抗精神病薬を投与する薬物療法がありますが、あくまでも症状を緩和させることができるだけで、ハンチントン病の根治はできません。

小舞踏病(シデナム舞踏病)

小舞踏病は、溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染によるリウマチ熱に起因する脳障害と、それに伴い不随意運動を起こす疾患です。小舞踏病は、発見者名に由来するシデナム舞踏病やリウマチ性舞踏病とも呼ばれます。

小舞踏病の症状

小舞踏病では、最初にリウマチ熱の症状が現れます。具体的には、発熱、関節炎、皮膚炎、心筋炎、心内膜炎などです。その後に舞踏運動(不随意運動)が生じます。

また、精神的にも不安定で、行動に落ち着きがなくなるといった症状が現れることもあります。

小舞踏病は、5~15才の女児に多く発症するとされています。

小舞踏病の原因

小舞踏病の原因は、リウマチ熱を引き起こす溶連菌に感染することに起因して、自己免疫反応が起こることにあります。

つまり、溶連菌の持つたんぱく質と人体の組織細胞にあるたんぱく質が非常によく似ている分子構造をしていて、溶連菌に対する抗体は溶連菌に対しても反応しますが、人体の組織細胞にあるたんぱく質にも反応してしまいます。

通常の免疫反応では、抗体が結合した溶連菌に対して免疫細胞が攻撃をします。しかし、自己免疫反応では、抗体が誤って結合した人体の組織細胞のたんぱく質に対しても免疫細胞が攻撃してしまうのです。

その結果としてリウマチ熱の各炎症が起こり、加えて大脳の神経核も自己免疫反応による攻撃で変性してしまいます。大脳の神経核が変性すると、錐体外路性運動系の働きに障害が発生し、舞踏運動のような不随意運動が生じるのです。

小舞踏病の治療方法

小舞踏病の治療は、不随意運動を抑制するために抗精神病薬を投与します。しばらく不随意運動が続く場合もありますが、大半の場合は投与後数日程度で不随意運動の症状が消えます。

また、リウマチ熱の治療として溶連菌の退治のために、抗生剤のペニシリンなどが投与されます。

小舞踏病は、ハンチントン病と異なり、基本的に予後良好の疾患とされています。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、甲状腺内組織の活動が通常より活発になることで、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる疾患です。

この甲状腺機能亢進症の症状の一つとして、舞踏運動・不随意運動が現れることがあります。詳しくは、甲状腺機能亢進症の症状をチェック!原因や治療方法も紹介!を参考にしてください!

その他の舞踏病

代表的な舞踏病は、ハンチントン病と小舞踏病です。

この二つの舞踏病以外にも、舞踏運動・不随意運動が症状として現れる疾患はあります。いずれも稀な疾患なため症例数が少なく、今後の研究の進展が期待されます。

老人性舞踏病

明らかな原因が無いのにも関わらず、高齢者に舞踏運動・不随意運動が現れる場合があります。これを老人性舞踏病と言います。

妊娠性舞踏病

妊娠性舞踏病は、妊娠初期の妊婦に舞踏運動・不随意運動が現れる疾患です。リウマチ熱の既往歴がある妊婦に見られることがわかっています。

妊娠性舞踏病は予後良好とされており、基本的に治療を行わなくても舞踏運動・不随意運動は分娩までに消失したり、あるいは分娩後に自然消失します。

糖尿病性舞踏病

糖尿病の患者に、糖代謝異常に伴う舞踏運動・不随意運動が現れることもあります。これは、糖尿病性舞踏病と呼ばれます。

糖尿病性舞踏病の発生メカニズムは解明されていませんが、糖尿病性舞踏病の予後は比較的良好とされていて、血糖の低下で舞踏運動・不随意運動も改善消失することが多いようです。

有棘赤血球舞踏病

有棘赤血球舞踏病は、血液中の赤血球の一部がトゲを出したような形態異常を生じる有棘赤血球症と舞踏運動・不随意運動が現れる遺伝性の神経変性疾患です。

有棘赤血球舞踏病の症状は、舞踏運動・不随意運動の他に、てんかん発作、痴呆や人格変化などの精神症状が現れます。そして、少ない症例の中でも、20代男性の発症が多いとされています。

有棘赤血球舞踏病の原因は、ハンチントン病と似ており、遺伝子の異常によって大脳の神経核が変性してしまうことです。

治療方法は、遺伝性の神経変性疾患のため、現在のところ根本的な治療法は無いのが実情です。不随意運動や精神症状を緩和するために抗精神病薬を投与する薬物療法がありますが、あくまでも症状を緩和させることができるだけで、根治はできません。予後もハンチントン病と同様です。

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まとめ

いかがでしたか?舞踏病の概要について、ご理解いただけたでしょうか?舞踏病は、自分の意思に反して身体が動いてしまう疾患です。自分の意思で自分の身体をコントロールできなくなるということは、想像するだけでも恐ろしい病気です。

とはいえ、舞踏病にも予後良好で完治するものもあれば、予後不良のものもあります。予後不良のハンチントン病や有棘赤血球舞踏病の場合、患者さんは、舞踏病の無理解による周囲からの視線とも戦わなければなりません。

ですから、舞踏病について理解した上で、舞踏病の患者さんが少しでも安心できるような環境をづくりに協力しましょう。

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これらを読んでおきましょう。

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