ケルニッヒ徴候は髄膜刺激症状の1つ!症状や対処方法、診察についてを紹介!

ケルニッヒ徴候という言葉を知っていますか?なかなか耳にしない言葉ですよね。ちょっと調べると、髄膜刺激症状の一つがケルニッヒ徴候であるとわかりますが、またまた髄膜刺激症状という普通の人では耳にしない言葉が出てきてしまいます。さらに調べると、髄膜は脳と神経に関わるようですから、不安になってしまいますね。

そこで、難しい言葉を解説しながら、ケルニッヒ徴候と髄膜刺激症状について、まとめてみましたので参考にしていただければ幸いです。

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髄膜とは?

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ケルニッヒ徴候は、髄膜刺激症状の一つです。髄膜悲刺激症状、ケルニッヒ徴候を見ていく前に、髄膜について明らかにしたいと思います。

髄膜とは?

髄膜は、中枢神経系の脳および脊髄を保護している膜の総称です。脳を覆って保護する膜を脳髄膜といい、脊髄を覆って保護する膜を脊髄膜とに分類されます。

脳は頭蓋骨の中に格納されていますが、頭蓋骨の内側に脳髄膜が存在し、二重に保護されています。同様に、脊髄は脊柱管の中に格納されていますが、脊柱管の中に脊髄膜が存在し、二重に保護されています。

そして、髄膜は3層の膜で構成されており、外側から硬膜、くも膜、軟膜という順に並んでいます。

硬膜

硬膜は、髄膜の最も外側の層です。

硬膜は、とても厚い膜で、なおかつ強くてしなやかな膜でもあります。硬膜の役割は、脳と脊髄を周囲の組織から分け隔てることで、外傷や感染から保護するという点にあります。

くも膜

くも膜は、髄膜のうち外側から2番目の層です。

くも膜は硬膜と付着していますが、その間にわずかな間隙があり、この狭い隙間を硬膜下腔(こうまくかくう)と呼びます。硬膜下腔にはリンパ液が流れています。

また、くも膜と一番内側の軟膜との間は広い空間となっていて、この空間をくも膜下腔(くもまくかくう)と呼びます。くも膜下腔では、無数の小柱という繊維の束がくも膜と軟膜を緩くつないでいます。くも膜下腔は脳脊髄液で満たされていて、この脳脊髄液は脳や脊髄を衝撃から保護する役割と栄養補給や不要物質除去といった役割を担います。

軟膜

軟膜は、髄膜の最も内側の層です。

軟膜は、脳や脊髄の全表面を凹凸に沿って全て覆っています。軟膜は2層になっていて、外側を上軟膜層といい、内側を内軟膜といいます。上軟膜層はくも膜と小柱で緩くつながっていて、内軟膜は脳や脊髄と隙間なく密着しています。

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髄膜刺激症状とその原因の概要

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髄膜がどういうものかわかりましたので、次は髄膜刺激症状についての概要を見ていきましょう。

髄膜刺激症状とは?

髄膜刺激症状は、髄膜が何らかの要因によって刺激されている時に出る症状のことです。髄膜刺激症状は、具体的に次の通りです。

  • 頭痛
  • 羞明(しゅうめい)
  • 吐き気、嘔吐
  • 項部硬直(こうぶこうちょく)
  • ケルニッヒ徴候
  • ブルジンスキー徴候

髄膜刺激症状の原因は?

髄膜を刺激する原因は、次のような病気が挙げられます。

  • 髄膜炎
  • くも膜下出血
  • 単純ヘルペス脳炎
  • 日本脳炎

これらの病気に罹患すると、髄膜が刺激されて髄膜刺激症状が現われます。

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髄膜刺激症状の原因

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髄膜刺激症状の原因を、それぞれ具体的に見ていきます。

髄膜炎

髄膜炎は、髄膜に炎症が生じる病気です。髄膜炎は、炎症を生じさせる要因により、感染性の髄膜炎(ウイルス性髄膜炎、細菌性髄膜炎、真菌性髄膜炎、寄生虫性髄膜炎)や非感染性の髄膜炎など、多様な態様があります。

髄膜炎は、炎症が発生する部位によっては生命の危険があり、また治療が遅れると深刻な後遺症を生じさせることがあるため、早急な救急処置が必要になります。

詳しくは、髄膜炎に大人がかかるとどんな症状?治療方法は?を読んでおきましょう。

くも膜下出血

くも膜下出血は、くも膜下腔に出血が起きて、脳脊髄液の中に出血が混じり合った状態です。くも膜下出血の主な原因は脳動脈瘤の破裂をが多く、その他に脳動脈奇形の破裂や頭部外傷なども原因となります。

くも膜下出血は、出血量が多いと意識障害をきたし、心停止や呼吸停止に至ることがあるため、早急な救急処置が必要になります。

詳しくは、くも膜下出血の後遺症について!原因や症状も紹介!を参考にしてください!

単純ヘルペス脳炎

単純ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスが引き起こす脳炎(脳の炎症)のことで、急性脳炎の一つです。

症状が重い急性脳炎として知られていて、以前の日本では致死率が30%近くに達しましたが、抗ウイルス薬の導入により現在は10%以下にまで減りました。とはいえ、重い後遺症が残り、発症者が社会復帰できる割合は50%程度といわれています。

日本脳炎

日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスが引き起こす脳炎のことで、急性脳炎の一つです。日本脳炎ウイルスを保有した蚊に刺されることにより、感染します。

日本では、予防接種としてワクチン接種を行っているため近年の発症者は非常に少ない状況です。しかし、発症すると、致死率は30%程度と高く、また重い後遺症も残ります。

詳しくは、日本脳炎の予防接種について!副作用や注意点はなに?症状や治療方法も知っておこう!を参考にしてください!

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髄膜刺激症状の具体的症状

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髄膜刺激症状を個別具体的に見ていきます。

自覚症状

頭痛

髄膜が刺激されることで、頭痛が生じます。特に、髄膜炎やクモ膜下出血が原因の場合は、突然頭部を堅いもので殴られたような突発的な痛みの頭痛で、なおかつ今まで経験したことのない最悪の激しい痛みの頭痛です。

羞明

羞明は、まぶしさを過剰に感じる状態のことをいいます。通常量の光にもかかわらず、眼を開けていられないような不快感や眼の痛みがあるのが羞明です。

羞明の原因の多くは、眼球の疾患(結膜炎、角膜炎、ドライアイなど)によるものですが、髄膜が刺激されることでも生じます。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は、様々な病変で表われる症状です。吐き気や嘔吐は、中枢神経系の脳幹内にある嘔吐中枢が刺激されることによって引き起こされます。嘔吐中枢は過度な飲酒や過度の運動などによっても刺激されますが、髄膜が刺激されることによっても嘔吐中枢が刺激されることがあります。

項部硬直とは?

項部硬直とは、仰向けに寝た状態の患者の頭部を持ち上げると抵抗があることをいいます。

仰向けに寝ている状態から患者の頭部が医師などの検者によって他動的に持ち上げられると、髄膜が伸ばされて刺激されます。このとき正常な状態であれば、患者の下あごは抵抗なく前胸部につくことがほとんどです。

しかし、髄膜炎やくも膜下出血などにより既に髄膜が刺激されている状態にあるときに、患者の頭部を持ち上げることで追加の刺激が加わると、追加刺激を緩和しようとする方向に反射的に筋肉が動きます。この患者の反射的な筋肉の動きが、医師などの検者には抵抗として感じられます。

細菌性髄膜炎やくも膜下出血では、この抵抗が際立って表われます。これに対して脳炎や細菌性髄膜炎以外の髄膜炎では抵抗が軽度の場合が多いといわれています。

ケルニッヒ徴候とは?

ケルニッヒ徴候とは、患者を仰向けに寝かせて膝を曲げた状態で股関節を直角に曲げて、その状態から検者が患者の膝を押さえつつ患者の膝を伸ばそうとすると、抵抗が見られて膝が完全に伸びないことをいいます。

正常な状態であれば、患者の膝は抵抗なく完全に伸びることがほとんどですが、髄膜炎やくも膜下出血などにより髄膜が刺激されている状態にあるとき、患者の膝を伸ばすことで追加の刺激が加わると、追加刺激を緩和しようとする方向に反射的に筋肉が動きます。ケルニッヒ徴候では、大腿屈筋(だいたいくっきん)、すなわちハムストリングと呼ばれる太腿の裏にある筋肉が反射的に収縮するために抵抗が見られることになります。通常は両足同時にみられます。

膝を伸ばそうとする際に患者が痛みを訴える場合もありますが、ケルニッヒ徴候の判定に際して痛みは必須ではなく、痛みの有無で判定するものではありません。

ちなみに名前の由来は、ドイツの神経生理学者、ヴォルデマール・ケルニッヒです。

ブルジンスキー徴候とは?

ブルジンスキー徴候とは、患者を両足を伸ばした状態で仰向けに寝かせて、検者が一方の手を患者の頭部の下に置き、他方の手を患者の胸に置いて、患者の体幹が浮き上がらないように患者の頭部をゆっくりと前屈させると、股関節と膝関節が自動的に屈曲して膝が持ち上がることをいいます。メカニズムは、項部硬直やケルニッヒ徴候と同じで、すでに髄膜が刺激されている状態にあるときに、追加の刺激が加わることに対する反射的な動きと捉えられます。

ちなみに名前の由来は、この徴候を報告したポーランドの小児科医、ユゼフ・ブルジンスキーです。

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髄膜刺激症状の診察

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ここまでは、髄膜炎やくも膜下出血が原因となり、髄膜刺激症状が結果として表われると説明してきました。しかし、臨床的には髄膜刺激症状が発症しているので、髄膜炎やくも膜下出血などの病気が疑われるという関係にあります。

したがって、髄膜刺激症状の診察が重要となります。

患者の自覚的症状からの検査・診察

頭痛、羞明、吐き気・嘔吐などといった自覚症状が表われていれば、髄膜炎やくも膜下出血などを疑う根拠になりえます。特に頭痛については、突然頭部を堅いもので殴られたような突発的な痛みの頭痛で、なおかつ今まで経験したことのない最悪の激しい痛みの頭痛は、髄膜炎やくも膜下出血を疑う根拠になります。

ただし、くも膜下出血で出血が高度な場合、意識障害が生じて頭痛を訴えることができないこともあります。

Neck flexion test(ネック フレクション テスト)

flexionとは、屈曲を意味します。患者自身が直立した状態で、首(頸部)を前屈させる検査方法です。下あごが胸にまで十分に近づく程度に、首が前屈すれば正常です。逆に、前屈するときに首に抵抗を感じたり、痛みがあったり、下あごが胸まで十分に近づかない場合は、髄膜炎やくも膜下出血の可能性があるかもしれません。

ジョルト・サイン(ゆすぶり増強試験)

英語でJolt accentuation of headacheといいます。子供が「イヤイヤ」をするように、頭部を素早く左右に振ることが問題なくできれば正常、ジョルト・サイン陰性です。逆に、頭痛のために頭部を左右に振ることができなかったり、左右に振ったことで頭痛が悪化すれば異常、ジョルト・サイン陽性と判断します。

医療者が行う他動的な検査・診察

項部硬直を用いた検査・診察

検者が仰向けに寝た状態の患者の頭部を持ち上げて、抵抗を感じられる場合が異常な状態で陽性と判断します。この抵抗は、反射的な筋肉の動きなので、本人の意識レベルとは無関係に観察、測定できます。陽性であれば、髄膜炎やくも膜下出血の可能性があるかもしれません。

しかし、子供が患者の場合などでは、髄膜刺激があっても抵抗が観察、測定できないことがあります。また、高齢者の場合は、偽陽性となることもあるので、万能な判断方法ではありません。

ケルニッヒ徴候を用いた検査・診察

患者を仰向けに寝かせて、一方または両方の膝を曲げた状態で太腿から下の下肢を股関節で腹側に90度曲げて、その状態から医師が患者の膝を押さえながら、患者の膝関節を伸ばそうとするときに、患者の膝関節が抵抗によって十分伸びない場合、ケルニッヒ徴候陽性と判断します。

膝を伸ばそうとする際に患者が痛みを訴える場合もありますが、ケルニッヒ徴候の判定に際して痛みは必須ではなく、痛みの有無で判定してはいけません。

ブルジンスキー徴候を用いた検査・診察

患者を両足を伸ばした状態で仰向けに寝かせて、医師が一方の手を患者の頭部の下に置き、他方の手を患者の胸に置いて、患者の体幹が浮き上がらないように患者の頭部をゆっくりと前屈させると、股関節と膝関節が自動的に屈曲して膝が持ち上がる場合、ブルジンスキー徴候陽性と判断します。

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髄膜刺激症状の診察と信頼性

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上記のような髄膜刺激症状の発症から、髄膜炎やくも膜下出血などの病変を推測する診察や判断に、どの程度の信頼性があるのでしょうか?

近年の研究

現在の臨床現場での髄膜炎やくも膜下出血などの診断は、血液検査、画像診断(CTやMRI)と腰椎穿刺(ようついせんし)が主流となっています。腰椎穿刺は、局所麻酔をして患者に針を挿入し、脳脊髄液を採取するものです。採取した脳脊髄液を分析することで、髄膜炎やくも膜下出血などの発症が示唆されます。

近年の研究で、腰椎穿刺によって髄膜刺激症状とされた髄膜炎患者を対象に、項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候、ジョルト・サインについて、検査をして陽性と判断になる割合と陰性になる割合を調査したものがあります。

検査をして陽性になる割合のことを「感度」、検査をして陰性になる割合のことを「特異度」と定義した上で、上記検査の感度と特異度は次のように報告されました。

感度(検査をして陽性になる割合)

  • 項部硬直:30%
  • ケルニッヒ徴候:5%
  • ブルジンスキー徴候:5%
  • ジョルト・サイン:97.1%

特異度(検査をして陰性になる割合)

  • 項部硬直:68%
  • ケルニッヒ徴候:95%
  • ブルジンスキー徴候:95%
  • ジョルト・サイン:60%

研究報告からわかること

ジョルト・サインの感度が高いことから、ジョルト・サインが陽性の場合は髄膜炎やくも膜下出血などの可能性を検討する必要があり、ジョルト・サインが陰性の場合は高い確率で髄膜炎やくも膜下出血などの可能性を否定する一因になります。

これに対して、ジョルト・サインに比べて、項部硬直、ケルニッヒ徴候、ブルジンスキー徴候の感度が低いことから、陽性ではない、たとえばケルニッヒ徴候の検査で抵抗が感じられないからといって、髄膜炎やくも膜下出血などの可能性は否定できないといえます。

つまり、感度が低いということは、これらの検査の信頼性が低いというわけです。

以上から、臨床的に髄膜炎やくも膜下出血などが疑われる場合、髄膜刺激症状の有無によって判断せずに、腰椎穿刺を行うことが必要とであると研究報告は結論づけています。

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まとめ

いかがでしたか?

ケルニッヒ徴候と髄膜刺激症状について、多少なりともご理解いただく助けになったでしょうか?

ケルニッヒ徴候は髄膜刺激症状の一つで、髄膜炎やくも膜下出血などを原因として表われる症状です。しかし、臨床的には、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状が発症したことにより、髄膜炎やくも膜下出血などの病変である可能性を検討するという関係にあります。

とはいえ、近年の研究によって、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状が出ていなくても、髄膜炎やくも膜下出血などを発症していることも明らかにされています。したがって、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状を用いた検査や診察の信頼性は高いとはいえず、これらに依存するわけにはいかないのです。

以上から、ケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状の有無は、髄膜炎やくも膜下出血などを診断する際のスクリーニングの一要素に留まるといえるでしょう。

ですから、診察や検査によってケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状が認められる場合は,髄膜炎やくも膜下出血などをを疑う根拠となりますが,診察や検査によってケルニッヒ徴候などの髄膜刺激症状が認められないからといって、髄膜炎やくも膜下出血などの病変を否定することはできませんので注意が必要です。

長々とした説明になりましたが、私たちができることは、頭痛などの自覚可能な髄膜刺激症状が表われたら、安易に自己判断せずに、可能な限り早く医師に相談することです。

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