歳を重ねるにつれて、体のふじぶしに痛みを感じるようになります。これは、避けられないことではありますが、日が経つにつれて、足の痛みがどんどんと増し、次第に特定の場所が痺れを感じているということを経験したことはありますか?この症状はもしかしたら、足根管症候群かもしれません。
ここでは、足根管症候群の症状や原因、治療方法について詳しくご紹介します。
足根管症候群について
ここでは、足根管症候群の概要と症状、原因についてご紹介します。
足根管症候群とは
足根管症候群(そくこんかんしょうこうぐん)とは、末梢神経障害の1種で、足首の内側にある頚骨神経(けいこつしんけい)の圧迫によって、足の裏にしびれや痛みといった、感覚障害が起こる病気です。
足部にある脛骨神経は、足関節のくるぶしの後方を通り、足根管と呼ばれる、骨性の壁と屈筋支帯(くっきんしたい)に囲まれた管の中に存在しています。この頚骨神経の周辺で損傷や炎症が見られると、神経が圧迫されて、足や足首、つま先などに痛みを起こすようになります。
足根管症候群の症状とは
足根管症候群という病気の症状は、しびれと痛みです。
特徴的な症状
- 足周辺が焼けるような痛み、ピリピリした痛み、じんじんした痛みを感じる。
- 足の裏に異物感、違和感を感じる。
- 何も無いところを歩いても、砂利の上を歩いているように感じる。
- 冷え
- 痛みは足首周辺部に感じる事が多い。
- 足の指先まで痛みを感じる。
- 足裏や足先に痛みやしびれが強い傾向にある。
- 足の甲や踵(かかと)、足首より上の部分に痛みやしびれはない。
- 特定の型の靴を履き続けると、痛みが起こる。
- 立ったり、歩いたりする際に痛みが起こる。
- 両足が同時にしびれることがない。
- くるぶしを叩くと、足の裏に電気が走る。
特に、朝起きて始めに歩き出す1歩がとても痛いといわれています。歳を取ったから、当たり前だと思わずに、悪化させないように改善、治療することが大事です。
安静にしている時には、痛みが軽減しますが、人によっては休んでいても痛みを感じる方もいます。
足根管症候群の原因は?
足根管症候群は、くるぶしの後ろ側にある足根管と呼ばれる神経を保護している部分に圧力がかかり、脛骨神経を圧迫することで痛みを引き起こします。
神経を圧迫する原因として、足首の捻挫、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)などの外傷した場合や、腱鞘炎、血管の癒着、動脈硬化、足首の変形、良性腫瘍(ガングリオンなど)、静脈瘤などが圧迫の原因として挙げられます。また、中には全く原因が特定できない場合があります。
足根管症候群の検査方法
ここでは、自己チェック方法と整形外科でのチェック内容についてご紹介します。
自己チェック方法
上記でご紹介した症状が見られる方は、痛みのある方の足首の骨のすぐ下の部分を軽く叩いてみて下さい。
踵から足の裏、つま先まで電気が走るようなチクチクする痛みが広がります。また、足の痛みやしびれの症状が日が経つに連れて辛いと感じる方は、整形外科を受診しましょう。
病院での検査方法
まずは、自己チェック方法と同様の方法で医師が診断を行います。MRIやレントゲンなどの画像検査や電気生理検査では確認することが難しい為、神経伝道検査や局所麻酔を用います。
■神経伝道検査
神経伝道検査とは、末梢神経の病気が疑われる患者さんに対して行われる検査内容です。対象となる神経線維に沿って、2箇所以上に電気刺激を送り、画面上で活動電位の間隔や時差を調べて伝わる速度を確認します。
■局所麻酔で確認
圧痛部分に局所麻酔を行い、痛みなどの自覚症状がなくなった場合は、ほぼ確定診断されます。
足根管症候群の治療方法
足根管症候群は治療を始めても、効果が劇的に改善出来る物ではありません。その為、手術しない保存治療を用いるのが一般的です。日常生活の動作の注意を行った上、針灸院での針治療や内服薬投与で様子をみます。
しかし、痛みが激しい場合や、原因が足首の変形や腫瘍(ガングリオンなど)などから起きている場合は、手術を検討します。
しかし、手術をしても、痛みやしびれが完全に取り除けない場合もある為、症状が激しくないようであれば、ほとんどの方が温存治療を選択しています。
鍼灸治療
手術をしない保存治療では、鍼灸院や針灸院で行われる、鍼灸治療が一般的です。鍼灸治療とは、きわめて細いステンレス製の鍼と艾(もぐさ)を使って、経穴(ツボ)に刺激を与えることで、炎症や老廃物の吸収を改善したり、損傷した筋肉組織を修復させて、症状を緩和させる方法です。
■鍼の施術について
長さ約40mm~80mm、太さ直径0.17mm~0.33mmの非常に細いステンレス製の鍼を使って、施術を行います。この鍼を円形の金属もしくは、合成樹脂製の筒を使って、経穴(ツボ)に刺し入れます。中国鍼灸の場合は、筒を使わない場合もあります。
ツボに刺入した鍼を上下したり、まわしたり、振動や低周波パルス通電を与えるなどして、一定の刺激を与えてから、すぐに抜く場合と15分程度置いてから抜く場合があります。
鍼は、オートクレーブと云う高温高圧式滅菌装置や化学的な方法を用いて滅菌していたり、使い捨てのディスポ鍼が用いられているので、感染症の心配はないと言われています。
■灸の施術について
艾(もぐさ)を使って経穴(ツボ)に刺激を与えます。艾を皮膚の上に直接置いて火をつけて行います。直接灸と間接灸と呼ばれる2種類の方法がありますが、直接灸は熱すぎる事や、皮膚に水泡が出来たり、痕が残るので、好んで選ぶ人は少ないです。間接灸は、皮膚の間に空間を作ったり、生姜やにんにくを用いて熱の温度を適温にしている為、気持ちがいいと感じる温度で施術を受けることが出来ます。
電気針治療法
鍼灸院や針灸院では、電気と針治療法を組み合わせた電気針治療法を行うところもあります。
特殊なツボに針を刺し込み、ハリに微弱電流を流します。
上記で紹介した鍼灸治療や電気針治療を用いることにより、足根管への血液やリンパの流れや、炎症や老廃物の吸収、損傷した筋肉組織を改善する効果が期待出来ます。
投薬治療
整形外科で診察を受けて、足根管症候群と診断された場合は、鎮痛剤の投薬治療を行います。非ステロイド系抗炎症剤やビタミンB製剤の投与が一般的です。非ステロイド系抗炎症剤は、鎮痛作用や炎症の緩和が期待できます。
ビタミンB製剤には血行促進や疲労回復などの効果が期待できます。鎮痛剤の投与を行った後でも、痛みがひどく生活に支障をきたす場合は、手術を検討します。
手術
上記の治療方法で痛みが全く緩和されずに、日常生活に支障が現れるほど痛みや痺れが強い場合や、原因が腫瘍(ガングリオンなど)や足首の変形の場合は、医師と相談の上手術を検討します。
■足根管開放術について
手術方法は、局所麻酔を行い、内くるぶしの後ろに約5cmほど皮膚切開を行います。顕微鏡を見ながら屈筋支帯を切断し、動脈と脛骨神経を切り離して、原因となる組織を取り除き、脛骨神経への圧迫を改善します。患者の状態に応じて必要であれば、動脈と神経の間に、人工膜を入れ、動脈と脛骨神経を切り離します。手術は約40分~60分の手術です。
年齢や原因により、手術内容や日数も異なりますが、一般的には経過が問題なければ1泊入院で、すぐに退院できます。
手術後に痛みがない場合は、すぐに立ったり、歩くことが可能です。癒着予防のために、立ったり、歩いたりする動作は翌日には開始することが重要です。また、手術による血腫形成を避けるために、1日目は圧迫包帯をして過ごし、圧迫包帯解除した後も出来るだけ安静にするように勧められます。手術4日目以降、お風呂やシャワーに入れるようになります。
手術を行った場合でも、シビレを完全に取り除くことは難しいと言われています。しかし、満足がいく程度には改善されます。
足根管症候群の原因別の治療方法
ここでは、原因別の治療方法についてご紹介します。足根管症候群の原因が特定できている場合は、原因となるものを取り除く治療を行います。
原因によって温存治療を取り入れたり、西洋医学療法の手術を取り入れます。
ガングリオンの治療方法
足根管症候群の原因の1つとして、ガングリオンが挙げられます。このガングリオンとは間接付近にできる、中身がゼリー状の腫瘤です。このガングリオンができると、神経や血管を圧迫して痛みが出ます。このガングリオンを治療することで、痛みや痺れ取り除くことが出来ます。
■皮膚の上からつぶす
ガングリオンの中身はゼリー状のため、小さかったりまだ柔らかい場合は、押しつぶすことが出来ます。自分で行うことも出来ますが、出来れば整形外科を受診して、先生に行ってもらいましょう。
■注射器による吸引
つぶすことが困難なほど大きく、硬くなっている場合は、注射器で吸引します。注射器でゼリー状のものを吸引することで、塊を小さくして圧迫を改善します。
■手術による摘出
局所麻酔を用いて、ガングリオンを摘出します。足根管症候群を引き起こすガングリオンに関しては、手術を用いることが一般的です。
詳しくは、ガングリオンの手術の費用や時間について!内容は?を読んでおきましょう。
扁平足の場合の治療方法
扁平足の方は、足根管症候群を起こしやすいと言われています。その為扁平足の方は、補正用のインソールを足の裏につけて歩行すると、症状が改善されます。扁平足の方は、内側に足を回す際に、回りすぎてしまい、骨格配列が崩れることで痛みを伴います。
扁平足の方は、足裏にあるアーチ部分が平らになっている為、インソールをつけることで、アーチ部分を強制的に作り上げ、うかせることで痛みが緩和されます。
インソールは、スポーツなどにも使用されていて種類も豊富で、安いものだと1000円以下で購入出来、値段も様々です。まだ使用されたことの無い方は、店内でいくつか試着をしてみて検討されるといいと思います。
また、オーダーメイドで自分にあった形を作った方が、痛みが緩和されると言われています。皮などを使ったしっかりとした素材の場合は、3万円~4万円ほどの値段ですが、5年ほどは使用可能です。
詳しくは、扁平足の治し方は?原因や症状、自力で治す方法について!を読んでおきましょう。
外傷が原因の場合
踵骨の骨折や外傷が原因で、神経を圧迫している場合は、手術により対応します。踵骨が骨折や外傷を受けると、屈筋支帯が伸びたり縮んだりします。
これにより、神経や血管を圧迫している場合は、手術で屈筋支帯を切り離して、神経にかかっている圧迫を軽減させます。
下肢静脈瘤が原因の場合
下肢静脈瘤とは、血液の逆流を防ぐ為の静脈の弁が正しく閉じなくなり、血行不良がおきて、足に血が溜まる病気です。特に女性に発症しやすいと言われています。下肢静脈瘤は良性のため、放置される方もいますが、血液循環不良により、足根管症候群を引き起こす可能性があります。
下肢静脈瘤になる原因は、血管の老化で血液を心臓に戻すことが難しい為に発生します。その為、血液循環を改善することで、足根管症候群を緩和することが出来ます。
■足のむくみを改善するマッサージ
つま先を上げ下げしたり、寝転がり足を上に上げてブラブラさせたり、ふくらはぎの裏側を上方向にマッサージして、足に溜まっている血流を改善させることで、症状が緩和できます。
■弾性ストッキング着用
弾性ストッキングとは、締め付けのあるストッキングで、締め付けることによりふくらはぎのポンプ作用を助け足に血液が溜まるのを防止します。弾性ストッキングは、足首からふとももにかけて、徐々に圧力が弱くなり、心臓に血液が戻るように工夫されています。市販のものと医療用のもの、2種類ありますが、医療用の方が締め付けが強いです。
■硬化療法
硬化療法は、硬化剤という薬剤を下肢の静脈瘤に注射をして血管を硬くする治療方法です。注射した後に、皮膚の上から圧力をかけて、血管の内側を接着させ、静脈を完全に閉塞させます。弱い静脈を閉鎖することで、正常な静脈のみ血液が走るようになるので、症状が改善されます。しかし、進行した静脈瘤には治療効果は期待出来ないと言われています。
■手術
下肢静脈瘤の手術は2種類あり、血管をしばる高位結紮術(こういけっさつじゅつ)と、血管を引き抜くストリッピング手術です。高位結紮術は、血管を縛ることで、血液の逆流を防ぐ手術方法です。また、ストリッピング手術は、静脈の中にワイヤーを入れて、ワイヤーごと静脈を引きぬく方法です。
以前は全身麻酔で行われていましたが、現在では局所麻酔で日帰り手術が可能になってきています。体への負担が強いことや、手術後に痛みや出血を伴います。
筋肉による圧迫が原因の治療
神経と血管は、筋肉によって囲まれています。その為、筋肉が緊張することで、神経や血管を圧迫して、足裏の痛みや痺れ感を引き起こす場合があります。
特に、長母趾屈筋(ちょうぼしくっきん)と呼ばれる筋肉は、前へ押す力が強いので、この筋肉の緊張を改善することで、圧迫を改善できます。長母趾屈筋はストレッチにより、筋肉の緊張を改善する事ができます。
■長母趾屈筋ストレッチ方法
- 座った状態で足の指を持ち、反らします。
- 更に力を入れて、足首も反らします。
30秒反らして、30秒基に戻すという動作を繰り返し行うことで、ふくらはぎから足の指にかけての筋肉をストレッチすることが可能です。
炎症が原因の治療方法
炎症が原因の場合は、アイシングを行い炎症を緩和させます。アイシングをする際には、冷たいと感じる感覚を通り越して、感覚がなくなるほど冷やすことがポイントです。目安の時間は30分程度です。
血行不良が原因の治療方法
血流が悪く血流障害を起こしている事が痛みの原因になっている方は、超音波治療や低周波治療を行い、血流の改善が期待できます。
■低周波治療
低周波刺激により、筋肉に収縮を起こす治療方法で、血流改善が期待できます。
■超音波治療
超音波の振動による温熱効果で血流改善が期待出来ます。また、傷や筋肉の損傷した部分の治癒を促進する効果もあります。
おわりに
足根管症候群は、何らかが原因となり頚骨神経が圧迫されることで、足の裏にしびれや痛みを伴う病気です。痛みや痺れを感じていても歳だからと何も対策をしないと、神経がもともとの機能を取り戻すのは難しくなります。
症状のある方はまずは、整形外科を受診して原因を特定しましょう。原因が分からない場合でも今回取り上げた治療方法と試すことで、生活に支障が出ないほどに改善することが可能です。
関連記事として、
これらを読んでおきましょう。