洞性徐脈とは?症状・原因・治療法を紹介!スポーツ選手に多いの?

洞性除脈という症状をご存知でしょうか?

心臓のペースメーカーである洞結節が我々の心臓の鼓動ををコントロールしていますが、その電気信号のペースがゆっくりになって1分間の心拍数が60拍以下に下がった状態をいいます。

洞性除脈になると何か問題があるのでしょうか?我々が生活する上で支障があるとすればどういったことに気を付けたらいいのでしょう。

本稿では不整脈の一種であるこの洞性除脈について理解し、その原因や症状を認識することで心臓の問題について身近なものとして捉え、大切な健康を守っていく手段となるヒントをお伝えしていきます。

当稿を読み進めれば、充実した日常生活を送るためには健康が最も大切であることをご理解いただけるでしょう。

心臓の働きと不整脈

洞性除脈

心臓は血液を全身の送り出すポンプの役割を担っています。このポンプを動かすには心筋と呼ばれる心臓の筋肉そのものが規則的に動いてくれなくてはなりません。

心筋を動かすためには微弱な電気による刺激(刺激伝導系)が心筋を通して心臓全体に広がることで“ポンプ”としての機能を維持しています。

洞結節の役割

この心臓の動き、微弱な電気信号を発生させる大元が洞(房)結節(どうけっせつ:sinus node)と言います。洞結節はいってみれば人間に本来備わっている“自然”のペースメーカーであり、心筋に規則的に動くよう電気という信号の指令を出しているのです。

この“電気的興奮”が心臓にある右(左)心房ー右(左)心室に伝わって血液が心臓から押し出される時に感じる「ドクン」という音が『拍動』になります。

不整脈とは

不整脈(ふせいみゃく:Arrhythmia)は心臓の『ドクン』という拍動や脈のリズムが不規則になる状態をいいます。不規則とは異常に遅かったり、逆に速すぎたり、1拍分飛んでしまったたり(脈を打たない)する症状です。

この脈の乱れを起こす原因は大きく分けて3つ程あります。

①期外収縮:心房性期外収縮、心室性期外収縮

②頻脈:心房頻拍、心房細動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群

③除脈:洞不全症候群、房室ブロック

①は脈が飛ぶケースです。洞結節からの本来のリズムより早く電気的興奮が出現するため、心臓の『ドクン』という拍動のリズムが不規則になります。

②は洞結節での電気の発生が早くなったり、電気の異常な回路が新たに作られて心臓の無駄な鼓動が発生する状態です。

③洞結節での電気的興奮が低下したり、心房や心室の手前で消失する症状です。除脈には他に迷走神経亢進による生理的反応と、スポーツ活動による心筋機能の向上としての機能的反応があります。

深刻な不整脈

不整脈には身体にそれほど問題のないものもあれば、深刻な状況を招くものもあります。この“怖い不整脈”にはどんなものがあるか見ていきましょう。

心室内での電気的興奮がまったくの不規則な状態を示す「心室細動(しんしつさいどう:ventricular fibrillation)」は不整脈の中でも極めて重篤な状態を示します。心室の無秩序ともいえる細かな震えは心臓のポンプ機能を一瞬にして低下させ、死の危険が目前に迫ります。

心室内での機能不全として「心室頻拍(しんしつひんぱく: ventricular tachycardia)」も危険度が高く、脈が1分間に120拍以上になる場合は心室細動に移行する危険性がある症状です。

不整脈については、不整脈の原因とは?症状や治療方法も合わせて紹介!を参考にしてください。

洞性除脈とは?

心臓仕組み

心臓の拍動は通常、1分間に60~80回程起きます。「ドクン」という心臓が血液を推し出す時の音を1回として、1分間に最低60~80回程度はあるということです。

この心臓の規則的な拍動である基準値が60拍/分以下の場合を除脈(じょみゃく)といい、発症する原因が心臓のペースメーカーである洞結節に起因するため洞性除脈(どうせいじょみゃく)と呼ばれます。

洞性除脈は洞結節からの電気的興奮のペース(洞調律)は変わらないため心臓の動くリズムも一定に保たれています。逆に正常な洞調律以外の除脈や頻脈(脈が一定以上に多いこと)、または何らかのリズムの異常が見られる状態を不整脈といいます。洞性除脈は除脈性不整脈(じょみゃくせいふせいみゃく)の一種で、以下の4つに分類されます。

  • ①1分間に60拍以下の心拍数で規則正しい拍動の洞性除脈
  • ②洞結節からの電気的信号が一時的に停止する「洞停止」
  • ③洞結節からの電気信号が心房にうまく伝わらない「洞房ブロック」
  • ④洞結節からの電気信号が心室にうまく伝わらない「房室ブロック」

心臓のリズム形成とは?

心電図

心臓の電気的信号のリズムは基本的には以下のルートで伝わっていきます。

洞結節ー心房筋(心房収縮)-房室結節ー刺激伝導系(ヒス束・プルキンエ繊維)-心室筋(心室収縮)

微弱な電気の刺激により血液を一時的に溜める心房と、さらに溜めて今度は全身に送り込むためのの心室との規則的な収縮によって“ポンプ”活動が行われています。

洞結節はこのリズミカルな電気信号の大元であり、房室結節を経てプルキンエ繊維に至るまでの刺激伝導系はいわば“送電線”の役割を担っていることになります。

心電図でみる洞性除脈

心臓の電気的興奮や活動状態を診るための判断指標として心電図(Electro-cardiogram)が使われます。心電図の1サイクルは心臓の1回の拍動に相当します。

心電図の波形は大きく分けると4つの山(P・R・T・U波)と2つの谷(Q・S波)があります。この内P波は心房の興奮(収縮)を示し、Q・R・S波は心室の興奮を現しています。

洞性除脈の場合は1分間当たりの心電図波形の数が少なくなり、P波の形も変化なくリズムも規則正しく洞調律(電気信号のペース)は変わりません。

洞性除脈の症状

頭痛

洞性除脈、または除脈の症状は一般人とスポーツ選手では分けて考える必要があるでしょう。

日常生活と非日常生活環境であるスポーツ活動中ではおのずと心臓の負担も大きく変わるため心拍数や一回拍出量等の心臓機能に大きく違いが出るからです。

一般人における洞性除脈の症状

自覚症状としてはめまいや失神、視界が一瞬白くなる、ふらつき等が出ます。1分間あたりの心拍動数(心拍数)が少ない除脈の場合、脳への必要血流量が不足するために起こる症状です。

こういった症状の多くは洞結節に何らかの問題が生じている場合であり、アスリートにしばしば起こるスポーツ心臓とは分けて考える必要があります。

スポーツ選手における洞性除脈

別名、スポーツ心臓症候群とも呼ばれるのが「スポーツ心臓」という症例で、スポーツ選手に多くみられる安静時心拍数の低下した状態を言います。一般人の洞性除脈と違い、スポーツ特に持久系種目選手のそれは多くの場合病気ではなくスポーツ環境的適応とみなされ問題にはなりません。

スポーツ心臓は高強度の運動に耐えなくてはならないスポーツ選手特有の身体的適応状態であり、心臓そのものやもちろん洞結節に異常があるわけではないため治療の必要はありあません。スポーツ心臓は特に長距離ランナーや自転車、クロスカントリー選手等の持久系選手に多く存在する症状です。

洞性徐脈の原因

pacemaker

基本的には心臓を動かすペースメーカーである洞結節のはたらきが弱まったために起こります。

先天的なもの、加齢による心筋の衰えに起因するもの、心筋梗塞や房室ブロック(刺激伝導系障害)などがあげられます。またスポーツ心臓による心筋機能の更新によっておこる場合もあります。

先天性によるもの

甲状腺は喉仏(のどぼとけ)の下にある器官で代謝促進(新陳代謝)作用のある甲状腺ホルモンを分泌します。

心臓の働きに直接作用するこの甲状腺ホルモンの働きが低下して分泌が抑制された状態を「甲状腺機能低下症」といい、低体温・浮腫・体重増加・発刊現象・皮膚乾燥・意欲低下等の症状が現れます。

甲状腺機能低下症になると心臓では心筋の収縮力低下、血圧低下、そして洞性除脈の症状を呈します。その程度は中等度までがほとんどで、重度の除脈でペースメーカーが必要だったり、完全房室ブロックになることはほとんどありません。

因みに低下症とは逆に甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態を「甲状腺機能亢進症」といい、は心臓の心筋収縮力を高める働きがあるため、血圧や心拍数を上昇させ、不整脈、特に心房細動は20%合併すると言われています。

加齢によるもの

心臓は1分間に約70回拍動(心臓自身が動く)するとして、1時間では4200回、年間にすると3,650万回、というふうに計算していくと加齢に伴って心臓の機能も低下するわけですから、その拍動にも陰りがみえることになります。

しかも心臓は生まれてからまったく休みなく動くわけですから、加齢によって拍動する力やリズムが狂ったとしても不思議ではありません。因みに心臓の寿命は人生80年として29億2000万回とも報告されています。

心臓と同じようにそのペースメーカーである洞結節も当然のことながら寿命が存在します。この寿命を少しでも伸ばすためには健康でストレスのない日常生活を送ることが重要なのです。

刺激伝導系障害(房室ブロック)

洞結節から出た電気的興奮が心房までは伝わるのですが、心室に伝わらない状態を房室ブロックといい心臓疾患による障害に属します。洞結節からの電気信号が右(左)心房でブロック(止まって)されているためこの名がついています。

房室ブロックでは心室の収縮リズムが不規則になるか、酷くなれば停止することも考えられます。血液を送れない状態なのでめまい・ふらつき・失神等を起こす場合があります。

房室ブロックはその程度によりⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度に分けられます。Ⅰ度、もしくはⅡ度では電気信号の伝わり方が遅くなるだけ、もしくは時々伝わらないために脈と脈の間が間延びしたり1拍分とんでしまったり、といった不規則な不整脈となります。

一方Ⅲ度房室ブロックは「完全房室ブロック」とも呼ばれ電気信号が心室へまったく伝わらないため、失神・動悸・息切れ・疲労感等を起こし場合によっては突然死に繋がる恐れもでてきます。

Ⅲ度房室ブロックの場合はその危うさから人工ペースメーカー植え込みによる「ペースメーカー治療」が必要となる場合があります。

自律神経に起因する除脈

自律神経(じりつしんけい:Autonomic Nerves)は脈拍・血圧・発汗・消化活動をコントロールしている神経です。自律神経にはアクセルの役目を果たし日中の活動期に優位となる交感神経(こうかんしんけい)と、ブレーキの役割を果し夜に優位に働く副交感神経(ふくこうかんしんけい)があります。

このうち副交感神経優位の状態になれば洞結節の電気刺激誘導は抑制され、洞調率が伸びて洞性除脈になりことがあります。夜の睡眠時やリラックスしている状態では除脈の頻度が高まるというわけです。

身体の生理的変化なので洞結節の機能低下はなく、したがって検査や治療は必要ありません。

スポーツ心臓

安静時心拍数が一般的な基準範囲(60~80拍/分)よりも大きく下回る場合を「スポーツ心臓」と呼びます。長距離などの特定種目のアスリート等に多くみられることから競技特性によってスポーツ心臓か否かが大きく変わると考えられています。

特に長距離ランナーや水泳の長距離種目スイマーなどは「安静時心拍数」が45拍/分を下まわるようなケースが多くみられます。安静時心拍数が少なくてすむのは心臓から出る1回の血液量である一回拍出量が心肥大によって増えるからです。

対策と治療

専門医受診

日常的であればもちろん、一過性であっても「めまい・ふらつき・失神」等の症状があれば病院での検査をお薦めします。

例えスポーツを日常的にしている場合であっても、生理的な除脈だとしても専門医に診てもらうことで精神的な安心も得られるからです。

診断と治療

心電図検査を用いることで洞性除脈の状態がわかります。洞性除脈が確認されると洞結節からの電気信号の伝わり方の詳細を調べたり、心臓の動きを超音波で診る場合もあります。

さらにトレッドミル上での運動負荷を加えた運動負荷心電図検査をする可能性もあります。こういった精密検査を受けることであなた自身の心臓の状態を確認し医師との相談のもと、最善の対策を施すことが可能です。

仮に洞性除脈があったとしても心臓の生理的変化やスポーツ心臓だったり、軽度のもので無症状であれば経過観察が主で治療の必要はないとされます。専門家の間では洞性除脈で軽度ならば深刻な症状にはならないとの判断がつくからです。

ただ重度の場合はしっかりとした治療が必要となります。その中心は薬物療法で抗不整脈薬を使うケースが多くなるでしょう。

健康診断

あなたが居住する地域であれば毎年自治体から健康診断のお知らせが届くはずです。またお勤めの会社が指定する検診もありその中には心臓を中心とする循環器系を調べる項目もあります。

健康体とはいえ年に1度は自分の身体の状態をチェックしておくことは必要でしょう。わずかな時間と手間で心の“安心・安定”を手にいれられるわけですから是非受けておくことをお薦めします。

健康的な日常生活

不整脈は社会的・精神的なストレスや慢性疲労・運動不足・喫煙・食習慣・過度の飲酒等の生活習慣が原因とされています。仮に問題のない洞性除脈であった場合でもこういった生活習慣が乱れていては健康な身体の状態を維持することはできません。

最近では栄養過多による肥満も心臓病の大きな原因となり、合併する高血圧症・糖尿病・動脈硬化症等と共に生活習慣の改善が緊急の優先課題とされています。

疲労を改善しストレスを軽減するためには日常生活での習慣を改善することが重要です。あなただけではなく、家族全員で食習慣を含む生活の質を改善し動きやすい身体を手に入れることで、活動状態も高まり健康の問題も解消できるはずです。

基本的なことですがストレスを解放しやすくし疲労をためないための睡眠を十分にとるなどの体調管理があなた自身の病気予防と治療につながります。

まとめ:洞性除脈

健康

心臓を動かすための電気信号を発生させる洞結節のリズムがゆっくりになることで安静時心拍数が60拍/分以下になることを洞性除脈といいます。洞性除脈は除脈性不整脈の一種で心拍数(脈の)規則性が乱れることはありません。

軽度の洞性除脈では「めまい・息切れ・過度の疲労感」等が現れますが、重度になると「失神・心不全」といった症状が出現します。

また心臓自体には病的な問題のない生理的な除脈症状もあり、自律神経である副交感神系が優位になる場合、さらにスポーツ活動によって心臓のポンプ機能が向上するスポーツ心臓等が含まれます。

洞性除脈に限らず多くの不整脈は心臓そのものに負担がかかっていたり、本来備わっている“ペースメーカー”洞結節のリズムに問題がある場合があるため専門医への受診が必要でしょう。

心臓は生まれてから1日も休みなく一定のリズムを刻んで我々の何気ない日常を支えてくれています。1年に1度くらいはこの“がんばり屋”さんのチェックを怠らなければ、これからもあなたの生活をいつも陰からしっかりと支えてくれるはずです。

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これらを読んでおきましょう。

  
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