静脈炎の症状とは?原因や治療方法も知っておこう!

「最近、足のむくみがひどくて・・・」あるいは、「下肢にむくみがあって、熱っぽいし、赤くなっている」などと、お悩みの方はいらっしゃいませんか?

そんなあなたの症状、もしかすると、静脈炎かもしれません。

急性ならまだしも慢性化していたら、それこそ一大事です。早めに医師に相談しましょう。そんなあなたのために、今日は静脈炎についてお話ししたいと思います。

静脈炎とは

血管硬化

静脈炎についてお話しする前に、まずは静脈についてお話ししましょう。

静脈について理解するためには、人間の身体にある血管のしくみ、つまり心臓と血管のしくみについて理解する必要があります。

動脈と静脈の定義

まずは、動脈と静脈の定義について、辞書で調べてみましょう。

動脈

脊椎動物の血管系のうち心臓から酸素に富んだ(肺動脈のみは例外)血液を全身に送り出す血管。ヒトでは左心室から大動脈、右心室から肺動脈として出て次第に枝分れして、ついに毛細血管となる。その壁は静脈に比べて厚く、弾力性と収縮性に富んでいる。動脈では一般に心臓の拍動に伴う脈拍を触れる。

マイペディア

それでは、静脈はどうでしょうか?

静脈

身体の末梢から血液を集めて心臓に送り返す血管。毛細血管網につながって始まり、次第に合流して太くなり、ついに心臓の右心房に入る(ただし肺静脈は左心房)。動脈に伴って走るものでは普通その動脈よりも太い。静脈壁は一般に動脈壁に比べて薄い。深部以外に皮下を走る皮静脈または浅静脈と呼ばれるものもあり、皮膚を通して青い筋として見える。だkいた数の静脈には、所々に血液の圧勝への逆流を防ぐ不完全な弁膜、静脈弁がある。

マイペディア

動脈と静脈の定義からすると、「心臓は動脈を通して血液を全身に送り出し、酸素や栄養素を身体に供給し、運動などにより、体内で生成した二酸化炭素は、静脈を通じて心臓に戻される」ことがわかりますね。

このような人体の器官を、「循環器系」と言います。

それでは、循環器系について、もう少し詳しくご説明しましょう。

循環器系のしくみと静脈の役割

人体内でポンプの役割を果たしている心臓の左心室から、大動脈を通じて酸素をふんだんに含んでいる血液が体内に供給されます。動脈を通じて供給された酸素や栄養素は、身体の各部位で運動などにより、消費されて二酸化炭素を生成します。

体内で生成された二酸化炭素は、静脈に通じている毛細血管より取り込まれ、静脈を通じて心臓の右心房に戻ってきます。そこで、二酸化炭素を多く含んでいる血液は、肺動脈を通して肺へと運ばれ、肺で二酸化炭素を排出し、酸素を取り込みます。

肺で酸素をふんだんに取り込んだ血液は、肺静脈を通じて心臓の左心房に戻され、ふたたび心臓の左心室から大動脈を通じて全身へと送り込まれているのです。

つまり、静脈は、全身で生成された二酸化炭素を体外に排出するために、全身にはりめぐらされているのです。このことからも、人間のからだにとって、静脈がどれほど重要な役割を果たしているのか、想像に難くないですね。

静脈炎は、人間の身体にとって大切な静脈の内膜が、炎症を起こしてしまう病気なのです。

そして、静脈炎は血栓を伴うことが多く、逆に静脈血栓が静脈炎の原因となることもあります。したがって、静脈炎と静脈血栓症を判別することは難しく、便宜上、体の表面状の静脈に発症した静脈炎を「血栓性静脈炎」、深部の静脈に発症した静脈炎を「深部静脈血栓症」としているようです。

血栓性静脈炎は、比較的軽症で治癒するのに対して、深部静脈血栓症は、重症化することが多く、肺塞栓(エコノミー症候群)などの原因となることがあります。

静脈炎の原因

カテーテル

ここまで、動脈や静脈、心臓とその循環器系のしくみについてさらっとお話ししてきました。

そんなに難しい話ではないので、循環器系のしくみについて、皆様にもご理解いただけたと思っています。

それでは、一体、なぜ静脈炎を発症してしまうのでしょうか?その原因についてお話ししていきたいと思います。

静脈炎の原因

静脈炎とは、静脈の内側にある静脈壁の内膜が炎症を起こしてしまい、発症する病気です。

その発症原因から、以下の3つに分類することができます。

  1. 化学的静脈炎
  2. 機械的静脈炎
  3. 細菌性静脈炎

化学的静脈炎

化学的静脈炎を引き起こす原因として、主に輸液剤のpH値と輸液剤の浸透圧が挙げられます。まずは、輸液剤のpH値ですが、酸性やアルカリ性の強い薬剤を注入した場合に、静脈内の内膜が損傷する可能性が高くなります。

これは、正常のpH値が7.35〜7.45であるのに対して、酸性あるいはアルカリ性の強い薬剤を注入することにより、そのバランスが崩れてしまうことに起因します。

次に、輸液剤の浸透圧のお話ですが、輸液圧の浸透圧(重量オスモル濃度)が高ければ高いほど、静脈内の内膜を損傷してしまう可能性が高まるのです。

浸透圧は、水1kgあたりの溶解物の濃度で測るのですが、水に溶けている粒子と捉えると、重さによって測定されます。この値が高くなりすぎると、静脈内の内膜を傷つけてしまい、炎症を引き起こしてしまうのです。

薬剤の浸透圧値はさまざまですが、稀釈液などにより最終的な浸透圧値は等張値に近づけることができます。つまり、混合輸液の最終pHと浸透圧を念頭に入れて、薬剤を投与することが静脈炎の予防には大切なのです。

機械的静脈炎

機械的静脈炎の原因は、非感染性の物理的な要因となります。つまり、カテーテルが静脈内できちんと固定されていないと、静脈内膜を損傷してしまうのです。

これは、屈曲部にカテーテルを挿入したり、カテーテルを動かしたりすると、静脈内でカテーテルが動いてしまい、その結果、発生するのです。

細菌性静脈炎

細菌性静脈炎は、カテーテルを挿入する際に、細菌や真菌が侵入することにより発症します。

原因として挙げられるのは、きちんと手を洗わなかったことや正しく滅菌していなかったこと、さらには、消毒薬の不備や不適切な使用、カテーテルの汚染などが考えらえれます。

また、同じスタイレットやカテーテルを複数回使用した場合などにも、細菌や真菌が侵入する可能性があります。

静脈炎の症状

むくみ

静脈炎を発症すると、その箇所は索状に赤くなり、浮腫(ふしゅ)や痛む硬結(こうけつ)を生じます。また、下肢が腫れ、チアノーゼ症状が現れたり、体温の上昇、表在静脈の拡張などが見られます。

浮腫というのは、身体の間隙または体腔内にリンパ液や漿液が多量に溜まった状態で、皮下組織では外表からむくみとして認められます。水症や水腫、水気とも言います。(広辞苑より)

また、硬結とは、組織の一部が、異物の刺激、炎症、感染などの理由により、結合組織の増殖をきたしてかたくなることを言います。(マイペディアより)静脈炎は、発熱を生じたり、悪寒(おかん)を感じるなど、全身的な症状が見られることもあります。

外傷や鬱血(うっけつ)などで発症することも少なくなく、化膿を頻繁に繰り返す化膿性血栓性静脈炎が頻繁に発症するときには、悪性腫瘍の疑いもあります。

深部静脈血栓症は、浮腫が突如として現れます。わずか数時間で浮腫が進み、腫れも見られるようになります。

さらに鬱血が悪化すると、皮膚や粘膜が紫色になるチアノーゼ症状が現れ、痛みが強く感じられ、緊急の治療を要することもあります。この急性時に、適切な治療を施さないと、慢性期に入ってから、浮腫や下肢の倦怠感、静脈瘤などの「静脈血栓後症候群」を患うことになります。

静脈炎の治療法

医療機器

急性の血栓性静脈炎は、視診や触診などの診察で診察ができます。血栓性静脈炎の特徴として、下肢の腫れや色調、皮膚の温度、静脈の拡張度合いなどで診断できるからです。

また、現在最もよく使用されている検査方法は、超音波ドップラー法です。この超音波ドップラー法は、超音波のドップラー効果を用いて、血液の流れる方向や速度を調べることができ、血管の閉塞や狭窄の診断にも使用されています。

ドップラー効果とは、近づいてくる音は次第に高くなっていき、遠ざかっていく音は次第に低くなっていく現象を指します。このドップラー効果を血液の循環に応用すると、近づいてくる音や遠ざかっていく音の波形を超音波で診断することができます。

血液の流れに異常が発見されると、この波形に乱れが生じます。したがって、血栓性静脈炎のように、血管内で異常が起こると、その異常を検知することができるのです。

急性期の血栓性静脈炎の場合、局部を安静にして湿布や弾性包帯などを用いて治療すると、そのほとんどが数週間で治癒します。

ただ、慢性化すると、抗血小板薬やワルファリンを用いることがあります。ワルファリンとは、血管内で血液が凝固して血流を止めてしまうのを防ぐ薬です。

さらに、感染、あるいは静脈瘤炎を併発している場合には、血栓を除去したり、中には静脈を切断しなければならないときもあります。炎症が、深在静脈にまで達していると、肺塞栓の疑いもあります。

深部静脈血栓症の場合は、血栓の遊離が懸念されますので、肺塞栓を予防するために安静にして、下肢を高く上げておきます。それから、血栓を予防するために、ヘパリン製剤を投与します。

ヘパリン製剤とは、ヘパリンを使用した薬剤です。ヘパリン自体には、抗凝固作用はないのですが、アンチトロンピンによる各種セリンプロテアーゼの不活性化を促進して、静脈中の血栓が生成されるのを防ぎます。

その後、約1週間で、ワルファリンに切り替えることがほとんどです。

おわりに

笑顔 効果

ここまで、静脈炎についてお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?血栓性静脈炎は安静にしていることで、そのほとんどが治癒します。

ただ、急激な浮腫や痛みがあった場合は、肺塞栓を引き起こす可能性のある深部静脈血栓症の疑いがありますので、すぐに血管外科や専門医、内科医などの診察を受けるようにしましょう。

「我慢は禁物」です。

身体に異常を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。

  
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