右軸偏位とは?原因として考えられる病気と心電図の見方を紹介!

健康診断で心電図検査をすることってありますよね。心臓の拍動を詳しく検査することで、心臓の状態を知ることができます。単に聴診器で聞くよりも、精度が高い検査法です。

心電図の所見の1つに右軸偏位があります。聞いたことがないという人も多いかと思いますが、これは心臓の電気活動の状態を表しています。心配する必要はありませんが、健康診断で指摘されたら心臓のことですから、気になってしまうかもしれませんね。

では、この右軸偏位とはどういった状態なのでしょうか。心電図の仕組みや心臓の構造。そして、同じような症状について、合わせてみていくことにしましょう。

右軸偏位とは

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心臓は右心房上部にある洞結節という組織から電気刺激が発せられ、興奮・拍動しています。この電気信号の流れは右心房から左心室、つまり前を向いた時に右上から左下へと流れます。

電気信号は洞結節から発せられますが、その後、房室結節という部分を通過し全体へ行きわたります。心電図では、これら電気の流れを感知し、波形として表します。この電気の流れを電気軸といい、心室筋心房興奮が起こります。

右軸偏位はこの電気の流れが右側に寄ってしまっている状態をいいます。右軸偏位は心電図上に特徴的な波形を示しますが、何かの病気であることは稀なので、過度に心配する必要はありません。反対に左に寄っている状態を左軸偏位といいます。

右軸偏位が示す意味とは

心臓は通常、胸の中心にあります。そして、基本的には縦になっています。右軸偏位が検出された人は、心臓が傾いていることがあります。心電図で電気の流れの方向に異常があるのはそのためです。心臓に傾きがあるだけならば病的な問題は全くありません。

一方で右軸変異が検出されたとき、病気の可能性があるなんてこともあります。非常に稀ではありますが、自覚症状等がある場合は詳しい検査をする必要があるでしょう。

詳しい検査が必要な場合は、心電図以外の心臓検査などで異常があるときです。血液検査でも異常がみつかると、心臓に何かしらの負担がかかっていることがありますから、注意したほうがいいでしょう。

どんな人にみられる?

右軸変異は高齢者、子供によくみられます。健康診断で心臓について指摘されると心配になってしまいますが、心臓の傾きに関することなので、心配する必要はありません。

また、痩せ型の人にもよくみられます。痩せ型の場合、心臓の収まるスペースが小さくなるため、心臓が傾きやすいという特徴があるためです。このケースについても心配する必要はないでしょう。

心電図と心拍の測定について

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心電図を測定するとき、体の四肢、胸部に検査機を装着します。中学生の時の健康診断でベットに横になり、検査をしたという記憶がある人も多いでしょう。

四肢の表面から心臓の電位を読み取る電極をつけますが、これを四肢誘導といいます。四肢に誘導される電位にはそれぞれ名前があります。右手:aVR、左手:aVL、左足:aVFとなります。右足はアースです。

ちなみに誘導とは心臓の興奮ベクトルをどこの方向から見るかということです。興奮ベクトルはいわば電気信号の伝わる方向と大きさ。興奮ベクトルは角度によって長さや大きさが違うように見えます。

四肢ともう一つ胸部にも電極をつけ、電位を図ります。これを胸部誘導といいます。胸部誘導では第4肋間胸骨、第5肋間胸骨という部位に電極を6つ貼り付けます。

体の各部位に電極を貼り付けることで、様々な角度から心臓を検査することができます。つまり、より詳しい心臓の状態を確認することができる、ということですね。

四肢誘導の意味:双曲誘導法

四肢や胸部に電極を貼ることで、心臓の状態を正確に測ることができる心電図。各部位で計測される波形には様々な意味があります。具体的には以下があります。

I誘導

左心室の側壁の状態を見ることができます。対象者の左側から心臓をみているということですね。心臓の電気信号は左下の方向へ流れるため、I誘導の波形はとても重要な意味を持っています。

II誘導

心臓は左下に向かって尖っている形をしています。II誘導ではこの心尖部から見ることができます。I誘導同様、電気信号の流れを詳しく知る重要なポイントとなります。

III誘導

心臓の右心室側面、左心室下壁を見ることができます。測定しても、個人によって大きく変わる波形を示します。そのため、III誘導には決まった波形はありません。

以上の3つ誘導を四肢誘導の双曲誘導法といいます。

四肢誘導の意味:単極誘導法

単極誘導法とは基準となる場所から身体上の1点の電位を測定する方法です。具体的には以下の3つがあげられます。

aVR誘導

心臓を右肩の方向から見ることができます。具体的には右心房・右心室を観察するのに効果的です。

aVL誘導

心臓を左肩の方向から見ることができます。具体的には左心室の側壁を観察するのに効果的です。

aVF誘導

心臓を真下の方向から見ることができます。具体的には左心室の下壁を観察するのに効果的です。

心電図の見方

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右軸偏移は心電図の所見でみられる症状でした。心電図は心臓の電気的な活動を波形として表してくれます。では、その波形にはそもそもどういう意味があるのでしょうか。普段何気なくみている波形を詳しくみていくことにしましょう。

波形の意味とは

心電図波形ではいくつか山や谷が存在します。これは心臓の各部位の興奮・収縮を意味しています。では、具体的な名称や意味についてみていきましょう。

P波

P波は心房部の興奮・収縮を表します。心電図に見られる最初の山の部分です。少し低めの波形が見られるはずです。この幅は心房が興奮〜収縮までの時間を表しています。電気信号が伝導し、心房筋が興奮することで収縮を起こします。

QRS波

QRS波は心室部の興奮・収縮を表します。マイナスの電極から始まるため、波形は一旦マイナス軸方向へ表示され、そして最も高く鋭い山を作りそして、またマイナス軸方向へ表示されます。R波同様、QRS波の幅は興奮〜収縮までの時間を表しています。

T波

T波は心臓が収縮し、その後回復する際に見られる波形です。QRS波のあと少し低めの波形がみられます。この部位に異常が見られると、深刻な病気の可能性があります。

U波

T波の後にさらに小さな山が心電図波形に表示されます。これはU波と呼ばれます。どうしてこの波形が出ているのかは現在でもわかっていませんが、心室に関係した現象と考えられています。

波形の間隔にも意味アリ

上記の波形はそれぞれの部位の興奮・収縮を意味していました。一方で、波形と波形の間隔にも、心臓の状態を知るために重要な情報が隠されています。

PP間隔

P波から次のP波までの間隔をPP間隔といいます。心臓の興奮・収縮の間隔ですね。より詳しく言えば心房の興奮から次の心房の興奮までの間隔です。心房を興奮させる電気信号は洞結節という部分から発せられます。PP間隔はこの洞結節のリズムということもできます。

PQ間隔

心房の興奮(P波)から心室の興奮(QRS波)までの間隔です。この幅によって心房から心室へ伝わる電気信号の速さがわかります。間隔が短ければ伝導は速く、反対に長ければ伝導は遅いということになります。

RR間隔

心室の興奮(QRS波)から次の心室の興奮(QRS波)のまでの間隔を表します。1分間あたりの心室の興奮を心拍数といいますが、このRR間隔を調べることでこれを算出することができます。

QT間隔

心室の心筋細胞が電気的にオンになっている時間間隔です。この間隔が長いと徐脈(脈拍が遅い)と判断でき、反対に短いと頻脈(脈拍が早い)と判断することができます。

右軸偏位と病気の可能性

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心電図で右軸偏位が見つかっても、多くの場合問題がありません。医者自身もそんなものがあるよ、とかなり軽い気持ちで通達することがあるでしょう。

一方で右軸偏位以外に他の症状を発症しているときは、何かしらの病気の可能性があります。心臓に異常があると、それだけでかなり注意しなければなりません。では、具体的にどのような病気があるのでしょうか。

右室肥大

その名の通り、右心室部の肥大が起きている状態です。右心室は肺に血液を送る手前の部屋です。この部分の肥大が起こるのは肺に何かしらの異常が起きていることが推察されます。

右心室の血液は肺へ供給され、肺を循環します。その循環の間で、血液には酸素が取り込まれます。そして、再び心臓へ戻り、全身へ送り出されます。

右心室は高い血圧に耐えられるようにはできていません。そのため、一度右室肥大を起こしてしまうと、戻ることはありません。症状が進行すると、全身症状に発展することがあります。

ただ、自覚症状はほとんどありません。心電図検査で右軸偏位や右心肥大を指摘されたときは、詳しい状態を調べるために精密検査を受けた方がいいかもしれませんね。

心房中隔欠損症

心房は左右に左心房・右心房があります。この部屋を区別する壁が心房中隔という組織です。この病気はその名の通り、心房中隔に欠損がみられます。具体的には小さな穴が開いてしまいます。心電図でしばし右軸偏位を検出します。

先天性心疾患の1つで、その割合は10%ともいわれています。それほど珍しい病気ではないということですね。心臓に穴があいているといっても、重篤な症状を発症するために手術をし、ほとんどの方が完治します。

幼児期の症状として体重が増えない、風邪をひきやすいなどがみられます。また、呼吸困難といった重篤な症状が起こることあり、この場合では手術を検討する必要があります。

詳しくは、心房中隔欠損症とは?原因・症状・心臓の病気を知ろう!治療法や手術にかかる費用はどれくらい?を参考にしてください!

肺性心

肺の血液循環に異常が起こり、右心室に悪影響を及ぼしている状態です。具体的には右心室肥大・右心室不全などが起こります。病気が進行すると様々な症状を発症するようになります。

具体的な症状として咳や痰の増加、血痰、浮腫などがみられます。症状が重度となると呼吸困難、肝腫大、腹水などが起こります。早急な治療が必要とされるでしょう。

肺の血液循環が阻害される原因は結核の感染、血栓塞栓症、高血圧などがあります。超音波検査やX線検査によって、肺の状態を確認し、診断していきます。

詳しくは、肺性心とは?原因となる病気を知ろう!呼吸しづらい人や食欲がない人は注意!を参考にしてください!

閉塞性肺疾患

肺性心の原因の1つに慢性閉塞性肺疾患があります。これは喫煙を主とした有害物質を長期間吸引することで、肺に炎症性の疾患を発症している状態です。喫煙者の生活習慣病ともいえるでしょう。

十分な酸素を吸引できなくなるため、ちょっとしたことで息切れを起こしたり、疲れやすくなります。咳や痰がみられるもの特徴です。体が疲れやすくなったというのであれば注意が必要です。

喫煙によって肺の細胞が破壊されてしまうと、呼吸機能がそれ以上回復することはありません。現時点が最良の状態なのです。このことを強く認識する必要があるでしょう。

右軸偏位と左軸偏位

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右軸偏位は電気的な信号が右の方向へ流れてしまう状態でした。病気の可能性は非常に稀であるため、それほど心配する必要がない状態でしたね。

一方で左軸偏位という状態もあります。右軸偏位と同様に、電気的な信号が左の方向へ流れてしまう状態です。では、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。

どんな人にみられる?

左軸偏位は肥満の方、妊婦、そして高齢者に比較的よくみられます。症状単体では問題ありませんが、高血圧やなどがみられるようであれば心臓に何かしらの異常が起きていることがあります。

どんな病気が考えられる?

左軸偏位では左室肥大が起こっていることがあります。左心室に継続的な負担がかかっているのですね。特に肥満の方であれば、高血圧が引き金になることがあるでしょう。このため、食生活をあらため、症状を改善していく必要があります。

心臓は24時間365日、休みなく鼓動しています。1つ1つの負担は小さくても、これだけ続けているとやはり負担になってしまうのです。血圧が高い。そう指摘されている人は今後、左室肥大をはじめとする心臓の病気にならないために注意が必要でしょう。

こんな自覚症状には注意

健康診断で左軸偏位と診断される人は少なくなりません。しかし、ほとんどの場合、無視できるほど症状は軽微なものです。実生活に影響を及ぼすということもありません。

ただ、心臓に何かしらの負担がかかっていることは推測できます。胸痛や動悸が起きているなどの胸部の異常があるようであれば、一度詳しい検査を受けた方がいいかもしれません。

その他の心臓の異常

右軸偏位や左軸偏位のほか、心電図でわかる心臓の異常には様々な種類があります。時として重篤な症状を発症していることもありますから、注意が必要です。具体的には以下があげられます。

異常Q波

心電図の波形で最も高いQRS波。この部分に異常が出ると異常Q波という波形を示します。心臓の拍動で最も大きな波形ですが、その分重篤な症状を発症していることがあります。

代表的な疾患として心筋梗塞があります。心臓を動かす心筋への血液供給が絶たれてしまい、心臓が小刻みに震え、やがて壊死してしまう病気です。

このような時、波形に2つの異常が起こります。1つは山の高さが低くなる。そしてもう1つが波形の幅が広くなるということです。早急な対応を必要とされる状態です。

陽性T波

心電図でT波部分が高い山形になる状態です。具体的には高陽性T波といいます。左右の心室に何かしらの異常が起こっている可能性があり、注意が必要です。

具体的には高血圧、血液の逆流などが起こっている可能性があります。ただ、検査時の緊張などの影響で波形が乱れることもあり、慎重な検査が必要です。

陰性T波

T波が心電図横軸より下に示されてしまう状態です。心電図ではT波が最も変化が起こりやすいといわれています。この波形の異常は狭心症や心筋梗塞の可能性が示唆されます。

一方で過呼吸や精神的なストレスがあると、波形に出やすいことがあります。このため、診断時には年齢や健康状態を総合的に判断する必要があります。

房室ブロック

心臓の電気信号に遅延がみられる状態です。遅延そのものは問題がありません。心臓機能を高めている運動選手等によくみられます。進行するとめまい、たちくらみなどを発症することがあります。

期外収縮

不整脈の1つで脈拍が一時的に不規則になる状態です。自覚症状はなく、重篤な症状を発症することもありません。ただ、生活環境の中でストレスが心身にかかっている可能性があります。

睡眠不足、疲労、たばこといった外部要因が心臓に負担をかけてしまうと、期外収縮を好発します。この状態が長く続くことは、もちろん好ましい状況ではないため、体を休ませることが大切です。

詳しくは、期外収縮の原因とは?原因となる病気や症状を知ろう!診断方法と治療方法も紹介!を読んでおきましょう。

まとめ

心電図検査をして、心臓に右軸偏位がある。そういわれると、不安になってしまうものです。心臓の異常はなんとなく重症と思ってしまうからからもしれませんよね。

ただ、心臓の異常といっても先天的なものや、ほとんど影響のないことがほとんどです。右軸変異もその1つですから、診断されたとしても心配する必要はないでしょう。

一方で生活習慣に何かしらの不摂生があるようでしたら注意してください。飲酒、喫煙。その他、高血圧などは心臓に負担をかけてしまいますから、要注意です。

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これらを読んでおきましょう。

  
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