悪寒戦慄(おかんせんりつ)と言われて、症状がすぐに思い浮かびますか?随分と恐ろしい字面ですが、恐らく誰もが経験したことのある、とても身近な症状の一つです。
意外なところに原因が隠れていることもある悪寒戦慄、よくあることだからと言って放っておくのも良くないかもしれませんし、逆に気にしない方がいいこともあります。
今回はこの悪寒戦慄について紹介します。どの様な症状で原因は何なのか、詳しい内容を見ていきましょう。
そもそも悪寒戦慄とは?
悪寒戦慄とはどういったものなのかについて紹介します。
誰もが経験しているであろう一般的な症状と、それが発生する原因について紹介します。
悪寒戦慄ってなに?
一気に悪寒戦慄と言ってしまうと分かりづらいかもしれませんが、「悪寒」だけだとその症状はすぐに思い浮かぶでしょう。気温の低下から来るそれとは明らかに違う、病的な寒気のことです。
悪寒戦慄と言うのは悪寒の症状が震えや身震いを併発することです。
そもそも震えるという行動は寒さを感じた時に筋肉を震わせ、熱を生み出して体を温めようとする自然な作用なのです。ですから病気であるかないかに関わらず、体が寒いと感じたら震えが起こるということになりますね。
悪寒戦慄の症状、ただの悪寒と何が違うの?
悪寒と悪寒戦慄の具体的な違いは症状の程度になります。悪寒戦慄は一般的には医学用語として使用されている言葉になります。看護師さんが使用するケースが多いでしょう。
名称からも分かる通り悪寒<悪寒戦慄という具合に悪寒よりも更に酷い症状を悪寒戦慄とよんでいます。
表現としては歯をガチガチ言わせるほどの症状が悪寒戦慄。(どうしたって止まらない悪寒)
動ことで治まったり、布団をかぶれば治まる症状が悪寒になります。
更にそれと同様の症状に寒気があります。寒気を入れると寒気<悪寒<悪寒戦慄という順番になります。
寒気は少し身震いする程度。服を1枚着込みたくなる程度の症状になります。
最も症状が強い悪寒。それが悪寒戦慄になります。
悪寒戦慄の代表的な原因は、あっぱりあの病気!
まず考えられるのがやはり風邪、もしくはインフルエンザでしょう。
風邪やインフルエンザのひき始めに、悪寒戦慄が発症したことの無い人の方が少ないのではないかと思われます。
ただし風邪の症状は、咳や喉の痛みが中心で体温もあまり高温にはならないため、インフルエンザに比べて悪寒戦慄が起こることは少ないです。インフルエンザは風邪とは違い、特殊な症状を多く持っています。代表的な例が「悪寒戦慄の後の急激な体温上昇」でしょう。
大体39℃以上、人によっては40度を超えることもあります。また、全身の関節痛や筋肉痛を伴う場合も風邪ではなくインフルエンザの可能性が高いです。この季節で最も怖い病気なので、悪寒戦慄の他に急な体温の上昇や体の痛みなどを確認したら、早めにお医者さんに相談しましょう。
熱が出てないのに悪寒戦慄が現れる原因は?
風邪やインフルエンザ以外で悪寒戦慄を引き起こす、最も意外な例を紹介します。
よく乱れるあれが関係して問題が発生しています。悪寒を強く感じたときはこの原因を疑ってみましょう。
風邪でもないのに寒くて震えるのは自律神経の問題かも
熱が無い時に悪寒戦慄が起こった場合、まず疑われるのが自律神経失調症です。
自律神経の働きには交感神経と副交感神経という2つの神経が関わっていて、通常なら人間の活動を担う交感神経は昼間に優位になり、休息を担う副交感神経は夜に活発になります。
これらの神経のバランスが崩れてしまうと、活動するはずの昼間に副交感神経が優位になって「寝ても寝足りない」と言った症状を引き起こしたり、逆に休養するはずの夜間に交感神経が優位になって不眠を引き起こしたりと、あべこべな状態になります。
寒くないのに寒気がして震えるという症状も、なんとなく似ていますね。
また、自律神経失調症には悪寒戦慄の他に頭痛や手足の痺れ、疲れやすい、落ち込みやすい、悪寒戦慄とは逆に暑くもないのに顔が火照ると言うような症状も見られます。自律神経が乱れる主な原因は不規則な生活や仕事などによるストレスが大きく影響しています。
もしこれらの症状と合わせて問題が発生してる場合は生活習慣を見直して症状を改善していきましょう。
更年期の自律神経の乱れは、特に悪寒戦慄を引き起こしやすい
熱が無い時の悪寒戦慄は自律神経の乱れが関わっていると説明しましたが、中でも更年期における自律神経の乱れは特に悪寒戦慄を引き起こしやすいと言われています。
更年期を迎えたら手や足が冷えるようになった、顔が火照るようになったと言うことは無いでしょうか。更年期になるとホルモンバランスが崩れることにより自律神経が乱れ、血の巡りが悪くなり、体温の調節が難しくなります。その結果、悪寒戦慄を引き起こすのです。
女性では、更年期障害の影響で悪寒戦慄が頻繁に発生してしまい、寝込んでしまうという事もよく聞かれる症状になります。
女性では45歳〜55歳の間で最も多く発生し、男性では10年遅い55歳〜65歳の間に発生しやすい傾向があります。
女性の場合は3人に1人は何かしらの更年期障害の症状を強く感じているというデータがありますので、もしひどい症状で悩みを抱えている場合は婦人科を受診して相談してみると良いでしょう。
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悪寒戦慄が発生する大きな原因は
- 感染症
- 自律神経失調症
- 更年期障害
の三つになります。
これ以外にも稀に病気が隠れている可能性もあります下記で悪寒戦慄を発症させる事のある病気とその関連性について紹介していきます。
悪寒戦慄を伴う病について
上記以外にも悪寒戦慄を伴う病気があります。どの様な病気の可能性がるのか、またその病気を見極めるために、一緒に発生する症状についても合わせて紹介していきます。
もし上記の原因に当てはまらないなー。と感じている人は病気の可能性を疑って病気を早期発見早期治療して症状を改善していきましょう。
肺炎
肺炎は悪寒戦慄以外の症状が発熱や咳など風邪とよく似ているので混同されがちですが、正確には細菌やウィルスが肺に入り込むことによる病気です。
症状としては
- 1週間以上続く風邪の様な症状
- 38度以上の高熱
- 肺機能低下による酸欠症状(唇が紫色になる)
- 胸や肺付近の痛み
- 息切れ、全身の怠さ
が発生します。
インフルエンザにより抵抗力が弱まり併発することも多いですが、肺炎球菌などの原因となる菌は年間を通して存在していることは忘れないで下さい。
特に高齢者が肺炎を発症してしまった場合は、他の病気との合併症状を引き起こして死に至るケースも非常に多い病気になります。
心疾患やがんなどの病気に次いで死因の3位に位置している病気になりますので十分注意しましょう。
食中毒
食中毒でも悪寒戦慄が発症することがあります。特にサルモネラ菌に感染した場合は高熱が出るので、悪寒戦慄を引き起こしやすいです。サルモネラ菌の感染源はたまごが多く、ペットとのキスからも感染の可能性があります。
吐き気、下痢の症状が強く現れることが特徴です。嘔吐などが無くても強い腹痛が発生する場合もあります。
たまごは常に10℃以下で保存し、使った調理器具はしっかりと洗いましょう。ペットを飼っている場合は、調理前に念入りに手を洗うように心がけましょう。
特に夏場に発生しやすい問題ですので、冬場は感染症、夏場は食中毒に注意しましょう。
腎盂腎炎
腎臓内で尿を溜める腎盂という場所があるのですが、そこに尿道かリンパ腺を通って、もしくは血液にのって細菌が入り込み、腎臓内に炎症を起こすのが腎盂腎炎です。
腎臓は血液を濾過して尿に変換し、体外に老廃物を排出する働きを担っている臓器になります。この臓器が正常に働かないと、血液中に老廃物が蓄積します。
悪寒戦慄の他に38℃以上の発熱や吐き気などの症状がありますが、これは急性の場合です。
恐ろしいのは慢性腎盂腎炎で、だるさや食欲不振といった症状のために気付かれないことも多いのです。
他の症状としては尿の量の減少、頻尿、血尿、体のむくみなどの症状が現れます。
気付かないうちに症状が重くなると危険なので気を付けましょう。
胆嚢炎
胆嚢が炎症を起こした状態ですが、多くの場合は胆石が胆管に詰まって胆汁が詰まってしまうことにより引き起こされます。
原因が細菌の場合でも、胆石が胆嚢に傷をつけることが細菌を侵入させる原因となっているので、いずれにせよ胆石を予防することが胆嚢炎の予防となります。
脂肪分の多い食事は胆石のもとですので気を付けましょう。悪寒戦慄以外の症状はみぞおちの痛み、悪心、黄痘などです。
虫垂炎
一般的には「盲腸」として知られている病気で、盲腸の先の虫垂に炎症が起こる病気です。
悪寒戦慄以上に特徴的な症状は急激な腹痛と発熱で、この発熱が原因で悪寒戦慄が併発する可能性があります。虫垂が直径1cm以上に腫れていると切除手術が必要になります。
通常であれば我慢できないような異常な腹痛に襲われるのですが、稀にこの痛みが弱いのか、痛みに強いのか、我慢しきってしまう人が居ます。
盲腸になっている状態で長時間放置すると盲腸の中に溜まっている菌が炎症を強めて破裂してしまいます。48時間以上腹痛を我慢した時に80%の人が破裂するというデータが出ています。
現在では破裂した場合の死亡率は1%未満にまで低下していますが、一昔前までは菌が腸内に回って致命傷となる症状でした。
もし悪寒とともに腹痛が発生している場合は急性虫垂炎の症状も視野に入れて病院での診察をしていきましょう。
悪寒戦慄を発生させないための予防法
悪寒戦慄が不安を引き起こす…さらに悪寒戦慄が発生しやすくなる・・・と言う悪循環。どうすればいいの?と困っていませんか?
症状を予防する有効な対策方法と対処方法を紹介します。
とにかく精神を落ち着ける
これは更年期の方にもそれ以外の方にも言えることなのですが、ストレスが自律神経の乱れを助長するため、熱も無いのに悪寒戦慄を引き起こしたことを気にし過ぎると症状が悪化する可能性があります。
悪寒戦慄自体は体に害が無いので、まずは落ち着くようにしましょう。また、更年期の方は血の巡りの悪さから悪寒戦慄が発症している可能性が高いので、まずは体を温めてみましょう。
夏であっても暖かい飲み物を飲み、温めのお風呂にしっかりとつかりましょう。
運動と休息のメリハリで対処
ウォーキングなどで適度に汗を流す運動も効果的です。
さらに、ストレスでにより自律神経が乱れている可能性のある人は、好きなことをしてストレス発散をする他に、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにすることも大切です。
例えば副交感神経が優位になるべき夜であれば、深くゆっくりと呼吸の出来るウォーキングや湯船につかることが効果的になります。ランニングやシャワーは交感神経を刺激するので、こちらは朝の方がおすすめです。
休んでいるときと活動しているときの差をハッキリさせる事で自律神経がしっかり交互に働いてバランスを保ちやすくなります。
日中の疲労感で夜は寝付きが良くなったり、睡眠ん質が向上しますので非常に有効な方法になります。運動不足はあらゆる症状や病気の元になる原因ですので、出来るだけ運動を行うようにして対処していきましょう。
風邪やインフルエンザの予防方法
特にこの季節は、風邪やインフルエンザを警戒している方が多いでしょう。風邪にしてもインフルエンザにしても感染症で人から人にうつるものです。極力人混みは避け、風邪やインフルエンザの感染者に近づかないようにしましょう。
特に、インフルエンザについては長期間の休養が義務付けられてしまうので、インフルエンザに感染してしまったら自分のためにも他人のためにも外出は控えるようにして下さい。ウィルスは空気中に飛散しているのでマスクの着用は効果的ですし、感染差の触れたつり革などに付着していることもありますので手洗いは必須です。基本的なことですが、甘く考えずにきちんと意識していきたいところです。
また、インフルエンザに感染したら一刻も早く薬を処方して貰いたいと思うかもしれませんが、ウィルスが増殖した12時間後以降でないと正確な結果が得られないそうです。タミフルなどを処方してもらえない可能性がありますので注意して下さい。
悪寒戦慄が発生している人の看護のポイント
まず、悪寒の原因がどこにあるのかを明確にしましょう。
熱があるのであれば、薬などを使用して早期に休ませることが重要になります。目の充血や体温、関節症状などから感染症にかかっていないかなどを確認してください。
感染症の場合は、悪寒が発生している間は体温が上昇していて、免疫細胞が戦いやすい状態を作っている状態ですので体を温めてあげましょう。
しばらくすると、熱が上がりきり顔が赤らんで熱を冷まそうとして患者は暑く感じるようになります。この状態が自患者にとって最も辛い状態で症状のピークになります。
効率よく体を冷やしてあげてください。
看護のポイントは原因を明確にする事・安心させてあげること・安静にさせておくこと・1時間〜3時間置きに症状を確認して最適な処置を行うこと。この4点になります。
食事は可能な範囲で行って水分補給だけは忘れないように、簡単に患者自身が行えるようにしてあげましょう。
まとめ
多くの人が身に覚えのあるであろう悪寒戦慄ですが、その原因となる病には放っておけないものも含まれていることがわかりました。
ただの寒さ、ただの震えだと侮り、その結果体の調子を悪くすることの無いよう、少しくらいは気にしておきたい症状なのかもしれません。
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