40代、50代の女性にとって、最大級のハードルが更年期障害です。
この年代は、子育てや仕事や親の介護など、体力も神経もすり減らす問題が山積みなのに、体がいうことをきいてくれないのです。
ほてりや頭痛もつらいのですが、ここでは、特に「めまい」についてみてみたいと思います。
めまいの種類
更年期障害によるめまいの症状には、複数の種類があります。「とにかくグルグル」といった表現では、医者は適切な治療ができません。患者さん自身が症状をきちんと把握し、医師に具体的に言い表せることは、治療の第一歩です。
つぎの症状の中から「私のめまいはこれ!」を見つけてみてください。
回転するめまい
「回転するめまい」は、家の中にいれば天井や壁が回って見えます。外にいるときは周りの景色が回っているように見えます。
しばらくすると、自分が回っているのか、自分以外のものが回っているのか、区別がつかなくなります。また「突然回り始めた」のか、「徐々に回転し始めた」のか、も覚えていてください。
ふわふわしためまい
この症状を経験した人は「小舟に乗っているときのような」とか「雲の上を自由に歩いているかのよう」といったように表現します。「ふわふわ」感がキーワードです。
この症状でも、「その症状がどのように表れたのか」ことと、「その症状がどのくらいの時間、続いたか」という点はおさえておいてください。
めまい以外の症状
めまいと一緒に起きる別の症状も、しっかり覚えていてください。
難聴になったり、耳鳴りがしたりといった「聞こえ」の不調や、手足がびりびり、または、じんじんしびれるといったこともよく起きます。
めまいが強くなって、足元がふらつく場合も注意が必要です。そのほか、ホットフラッシュや、頭痛が伴った場合もきちんと「特記事項」として医師に伝えられるようにしておいてください。
・症状メモ帳
そのために「症状メモ帳」を用意しておいてください。記録する事項は「日時」「何をしているときに起きたか」「前兆」「めまいの種類」「プラス・アルファ」「継続時間」「どうやって治まったか」など、詳細に記しておきましょう。それを医師に見せると、きっと治療に役立つでしょう。
そもそも更年期障害とは
最近は男性の更年期障害も話題になっていますが、それでもなお、更年期障害で苦しむのは、圧倒的に女性です。この「病気」にかかる女性は、身体面、精神面の両方から「攻撃」を受け苦しみます。
更年期障害はなぜ起きる?
なぜ女性がこの「攻撃」にさらされるかというと、子供をつくることと関係しています。身体の中で別の生命を作り出すのですから、さまざまな「準備」が必要です。そしてその準備は、「綿密」かつ「複雑かつ複合的」でなければなりません。
その難しい仕事をやり遂げるために必要なのが「ホルモン」です。
複雑なスケジュールを管理
女性が子供をつくれるようになるまでには、十数年から数十年かかります。初潮から始まり、定期的な生理、妊娠前、妊娠中、出産、そして閉経、――というスケジュールは、短期間でこなせないからです。
つまり女性は、数十年にわたって、体の状態を変化させているのです。女性の体は「自然と」綿密な人生のスケジュールを組んでいるのです。
また、子供をつくる臓器は「子宮」だけではないですよね。脳や血液、骨など、全身を使って子供をつくります。それらの臓器や器官が、ばらばらに動いていたのでは、大きな目標「子供をつくること」を達成できません。複雑に、そして複合的に「連係プレー」をする必要があるのです。
様々な状態に合わせて、数々の器官を「自然と連係プレーさせている」のが、「女性ホルモン」なのです。
更年期障害の状態
女性ホルモンの働きがあるからこそ、あたかも「自然と」機能しているように見えるのです。また、女性ホルモンが正常だから、複数の器官は「連係プレー」できるのです。
ですから、加齢により女性ホルモンが減ったり正常に働かなくなると、女性の体は「不自然」になり「ばらばらプレー」をし出すのです。その状態が、更年期障害という形で現れるのです。
めまいの原因と対策
それではめまいの種類ごとに、原因と対策をみていきましょう。
回転めまいの原因と対策
耳の重要な役割は、「聞こえ」のほかに、「平衡感覚」を保つ働きです。平衡感覚とは、「自分が傾いている」とか「自分は回転している」とか「自分が乗っている車が加速を始めた」といったことを感じる能力です。
耳はさまざまな器官で構成され、そのうち、平衡感覚を感じる器官は、三半規管(さんはんきかん)といいます。三半規管が、女性ホルモンが低下することで正常に機能しないことが分かっています。平衡感覚が失われると、回転しているような気持ちになります。三半規管を鍛えるには、三半規管を鍛える方法を紹介!効果的なツボや食べ物とは?の記事を参考にしてください!
この対策としては、カルシウムの摂取が勧められます。また、軽度の場合は、家事や仕事の合間に、首や頭を回すことで症状が和らぐことがあるそうです。
ふわふわめまいの原因と対策
ふわふわした感じのめまいが生じることを、「浮動性めまい」といいます。この原因は、うつ病、視力障害、脳腫瘍、高血圧など、さまざまな疾患が考えられます。
女性でなくても、また、更年期の人でなくても、うつ病や高血圧は発症します。でも、更年期障害を患っている女性は、症状が悪化する傾向にあります。
また、「このふわふわ状態は、更年期だから仕方ない」とか「もう少し年を取って、更年期が過ぎれば、症状が治まるって聞いているし」といって、放置しないでください。もし深刻な血管の病気や脳の病気が、ふわふわめまいを引き起こしている場合、更年期障害の治療とは別に、専門の治療しなければならないからです。
「ふわふわ」は、更年期障害の方に多くみられる症状です。だからこそ、くれぐれも「自己診断」はしないでください。別の医者にかかる「セカンドオピニオン」も積極的に活用してください。
その他の原因
肩こりや首のこりで、めまいが起きることがあります。更年期障害の年代と、肩こりの年代は、ちょうど一緒ぐらいです。更年期障害の治療が進んでいるのにめまいが治まらない場合、肩こりや首のこりに原因があるかもしれません。
また「メニエール病」や「突発性難聴」といった病気も、めまいを引き起こします。さらに自律神経が乱れると、ほてり、頭痛、動悸、のぼせと一緒に、めまいが生じます。
症状が軽いうちは、小休止することで治まることがあります。また、症状が重くても、なんとか乗り切れてしまう場合があります。それで「我慢すればいいんだ」と考えがちです。
更年期障害の治療法は、日進月歩です。婦人科の受診で治らない場合、脳神経外科や耳鼻科などの医師も治療してくれます。
また、よりマイルドな治療もあります。漢方です。漢方は、西洋医学より効き目はゆっくりですが、体への負担が少ないことから、認知度は上がっています。
まとめ
更年期障害の苦しさは、とてもつらいものです。うつ病を発症し、自殺を図る人もいるくらいです。症状の痛さだけではありません。治療を受けても治らないと、セカンドオピニオンを求めて次の医者を探します。
それでも改善しないと、サードオピニオン、フォースオピニオンを求めてさまようことになります。これは、治療費もかかるし、時間もかかります。治療には、医療者との信頼関係の構築が必要ですから、人間関係のストレスものしかかってきます。
それなのに、40代50代の女性は、治療に専念できない人が多いです。加えて「更年期障害は女性が必ず通る道」とされ、「当然視」されてしまいます。「しょうがないでしょ」という不用意な言葉に傷つけられることもあります。
もしこれを読んでいる方が、男性や、若い女性であれば、更年期障害のつらさを分かってあげてください。理解があるだけで、気持ちが軽くなるからです。「更年期障害の先輩」は、「後輩」に「この病気にはゴールがある」ことと、「一生続くわけではない」ことを教えてあげてください。
そして、あなたがいままさに更年期障害に悩んでいるとしたら、どうか治療に専念してください。その苦しみを我慢する必要はありません。治療はどんどん進歩しています。
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