食事をした後というのは眠くなったり、体が少しばかりだるくなるなんてことがありますよね。食べ物を食べたわけですから、体がその対処に追われているわけです。もちろん、体質性のこともありますし、普通は病的な影響があるわけではありません。
一方で食後低血圧を招き、しばしふらつきを感じる人がいます。時としては失神してしまうこともあり、怪我の元になってしまうことがあります。周囲に家族がいなければ、事故につながってしまう可能性があるかもしれませんね。
では、この食後低血圧はどうして起こるのでしょうか。また、具体的な症状にはどのようなことが起こるのでしょうか。これらのことについてみていくことにしましょう。
食後低血圧の原因は?
食後に起こる低血圧は食事性の低血圧とも呼ばれます。食事をした後というのは当然ですが、胃の中に食べ物がある状態です。消化器官はこれら食べ物を消化・吸収しなければなりません。そのため、多くの血液がこれら部位に集中します。
すると、体全体の血液量が減るため、血圧が一時的に正常値を下回ってしまいます。もちろん、通常であれば血圧低下に伴って、心拍数を上げたり、血管をより収縮させるなどの血圧を上げる作用が働きます。
しかし、加齢に伴う循環機能の低下、また自律神経の働きが弱まっているとこの作用がうまく働かず、低血圧のままとなってしまうのです。結果、食後低血圧を招いてしまうのです。
若い人にもみられる食後低血圧
低血圧の症状は身体・神経機能が低下した高齢者に多くみられます。体の機能が下がっていると、食事という負担でも症状を発症してしまうことがあります。
一方で炭水化物を摂りすぎる食生活やストレスが多い若者にもしばしみられることがあります。体は健康なのに、自律神経のバランスが崩れていると発症しやすいのです。
自律神経のバランスを崩しやすいのは不規則な生活や偏った食生活にあります。特に食生活に限っては過度なダイエットをしてしまうということが背景にあります。
食後にふらつきやめまい、また意識が遠のくような症状が出ているようであれば、注意が必要でしょう。きちんとした生活習慣を送る必要があるかもしれません。
自律神経失調症との関連
自律神経のバランスが崩れ、機能低下を起こしてしまう病気を自律神経失調症といいます。先に述べたように生活習慣に乱れがある人が後発しやすいといわれています。また、ホルモンバランスが崩れる更年期の女性にも多いです。
自律神経失調症を発症すると、食後の低血圧だけではなく、体の火照り、めまい、目がちかちかする、集中力の低下、うつ症状などを発症することがあります。
これら症状が深刻化すると、私生活を脅かすこともあるため注意が必要でしょう。現代医学に頼るというよりは生活習慣を正すことが治療のポイントで、周囲のサポートも必要です。
食後低血圧の症状
では、食後に起こる低血圧では具体的にどのような症状を発症するのでしょうか。
食事をきっかけとして、ご紹介する症状に心当たりがあるようであれば注意が必要かもしれませんよ。
めまい・ふらつき
血液が消化器官に集中することで、脳の血液量が一時的に低下します。それに伴ってめまい・ふらつきを発症します。特に椅子から立ち上がるような、体勢が変わった時に頻発します。
症状が軽ければすぐに解消されますが、症状が強いケースだと回転性のめまいを感じたり、そのまま動けなくなってしまうことがあります。
発作とも言える強い動悸を感じることもあり、その場にうずくまってしまいます。低血圧の状態が長く続いている可能性があるので専門家に相談してみることをおすすめします。
頭痛
脳への血液量が減るため、脳の血管は一時的に血液量を増やすために血管が膨張します。この時、脳内の圧力が増加するため、頭痛を発症することがあります。
締め付けられるような痛みがめまい・ふらつきと一緒に発症することがあります。脳血管へ負担をかけているため、しばし合併症に気をつける必要があるでしょう。
全身の倦怠感
食後にだるさを感じたり、急に眠くなるような時は低血圧症状を発症していることが考えられます。伴ってやる気や集中力の低下も起こりますのでしばし仕事に支障をきたすことがあります。
食後に何か作業をすることがあると思いますが、低血圧症状がでてしまったときは無理をせず、休むことが大切です。無理をしてしまうと症状が悪化することもあるので注意してください。
失神
強いめまい・ふらつきののち、そのまま意識を失ってしまうことがあります。これは高齢の方に多いですが、倒れた時に頭をぶつけてしまうこともあり、用心する必要があります。
低血圧の傾向があったり、普段からふらつきを感じるようであれば、急な体勢の変化には気を払う必要があります。また、家族にそういう人がいれば気を払うようにしましょう。
体の変化に敏感になる
食後に明確な症状が起きている。もしくは、食べ過ぎた時に上記のような症状を発症することが多い。このようなことに心当たりがあるようであれば、対策をきちんと取る必要があります。
高齢者を始め、不規則な生活をしている人も食後低血圧の可能性があります。失神性の低血圧によって大怪我を招いてしまうことや重篤な病気を招くこともありますから、警戒しておく必要があるでしょう。
些細なことですが、体の変化に敏感になる必要があります。めまい・ふらつきが常習化してきたら、それは症状が進行していることを意味しています。きちんと対処するようにしてくださいね。
食後低血圧の深刻な合併症
慢性的な低血圧を患っていると、体全体に影響を及ぼし始めます。血管の中の血液の流れが悪くなることで起こる病気は時として命の危険もあります。具体的には以下の病気があげられます。
脳卒中・脳梗塞
脳梗塞は脳血管に老廃物や血栓などが詰まることで、それより先の血管に血液が行き渡らなくなる病気です。脳の細胞に深刻な影響をあたえ、命の危険性もあります。
日頃から低血圧症状を起こしていると、血液の循環機能が低下し、血管に老廃物が溜まりやすくなってしまいます。これが脳梗塞の引き金になってしまうのですね。
脳梗塞の原因は低血圧の他にも動脈硬化、糖尿病、高血圧などの生活習慣病がありますが、食後の低血圧をきっかけにして起こることがあります。症状が日に日に強くなっているという人は用心する必要があるでしょう。
心筋梗塞
心臓に血液を送る冠状動脈という部分が梗塞してしまう病気です。脳梗塞と同様に、血管が詰まってしまいます。心機能が著しく低下するため、早急な治療が必要です。
この梗塞の原因も脳梗塞と同じメカニズムで発症します。つまり、低血圧により血管の中を流れる血液の循環機能が低下し、老廃物が溜まりやすくなっているのですね。
心筋梗塞の症状は人それぞれですが、発症時に強い胸の痛みを訴え、その場に倒れこんでしまいます。一分一秒が命取りとなるため、早急に病院へ搬送するようにしましょう。
糖尿病との関連
糖尿病患者にはしばし低血圧を発症している人がいます。これは糖尿病によって起こる神経障害が原因です。自律神経の機能が低下し、血圧をコントロールするのが難しくなってしまうのですね。
椅子から立ち上がった時に発症するようなめまいや立ちくらみが起こり、また食後には強い倦怠感を感じるようになります。これを起立性の低血圧、もしくは脳貧血と呼びます。体の機能が弱まっているため、病気治療にも気を配る必要があります。
生活全体に影を落とす可能性がある
食後の低血圧は甘く考えられがちな症状です。ちょっとしたことでめまいがするのは誰しも経験がありますし、それを大ごととして受け止める人はすくないかもしれません。
しかし、高齢者であったり、生活が忙しい人はたかがめまいでもその背後に病気が隠れていることがあるのです。それが循環器の病気であれば命の危険もあるでしょう。
また症状が強くなるほど、体を動かすのが億劫になることもあるでしょう。心の健康状態も悪くなりますから、生活全体がどこかくらいものになってしまうかもしれませんね。小さな症状だけども、きちんと対策を考える必要があるのです。
食後低血圧の改善・対策
では、食後に低血圧症状がみられ、辛いと思っている人はどのような改善・対策があるのでしょうか。身近なところからできる対処法として、以下のことがあげられます。
食事の量を減らす
低血圧の原因は消化器官に血液が集中してしまうことでした。それは食べ物の量が多ければ多いほど、エネルギーを使わなければなりますから、症状を発症しやすくなります。
このため、まずできる予防策としては食事量を減らすことがあげられます。いつも食べている量より少し少な目の量を意識してみてください。よく噛んで食べれば、満腹感を得ることができるのでそちらにも気を配ってみましょう。
消化の良いものを食べる
消化に時間がかかる食べ物を食べると、それだけ消化にエネルギーを使うことになります。なので、なるべく消化の良いものを意識して食べるようにしましょう。
また、よく咀嚼するというのも消化器官に負担をかけない方法としておすすめです。あまり噛まずに食べ物を飲み込んでしまうと、やはり消化に時間がかかりますから注意が必要です。
飲酒・喫煙は控える
飲酒は血圧を下げる作用があります。低血圧の症状に加え、お酒による効果がで症状がより悪化してしまうことがあるでしょう。普段からよく飲酒をするという人は控えるようにしてください。
タバコには血管を収縮させる効果があります。低血圧でただでさえ血流が悪い状態なのに、血管が細くなってしまうと、これも同様に症状を悪化させることがあるので注意が必要です。
規則正しい生活を心がける
低血圧の原因の1つである自律神経の乱れ。これは日々の不規則な生活習慣からは発症することがあります。夜遅くまで起きていたり、睡眠が不十分だと神経バランスは乱れてしまうでしょう。
自律神経のバランスを整えるためには、規則正しい生活を心がけましょう。なるべく早い時間に睡眠をとり、それを習慣として定着させる。就寝・起床時刻を守るように生活してみてください。
カフェインもおすすめ
カフィエンには自律神経を刺激して、血行を良くする効果があります。血液の循環が滞っている体にコーヒーなどの飲み物は効果的といえるでしょう。
少しの運動をする
低血圧の人には運動は避けた方がいいことがあります。血液のめぐりが悪くなっているのですから、運動は体に負担をかけてしまうことがあるでしょう。
一方で、全く運動をしないというのも健康に悪いです。運動は体の血液循環を良くする効果があります。低血圧の症状が怖いということで、体を動かさなければ、より症状が悪化してしまうこともあります。
なので、無理のない範囲で、ウォーキング程度の軽い運動を日々行ってみることをおすすめします。気分転換にもなりますから、ぜひやってみてください。
薬との付き合い方
低血圧ではしばし、薬を用いた治療法を行うことがあります。症状改善や予防法として効果を示し、辛い生活から解放してくれることが期待できるでしょう。
一方で、薬の役割は症状の改善や予防であって、根本原因は解決されていません。その原因は人それぞれですが、その原因と向き合い解決していかなければ、薬との付き合いは一生続くことになります。
本態性の低血圧では原因が不明であることもありますが、それ以外では生活習慣に原因が隠れていることがあります。そちらの改善もすることを忘れないようにしてください。
持病の薬にも注意を
持病があって、降圧薬やステロイド薬を服用している。その結果、しばし薬剤性・ステロイド性の低血圧を発症することがある。そういう人もいるのではないでしょうか。
特に食前に薬の服用があると、食事後に低血圧を起こしやすいようです。症状が強いようであれば、きちんと医師に相談するようにしてください。
薬は体質や体調によって効果が変わってきます。降圧薬が効きすぎてしまうということも十分考えられるでしょう。体調管理のためにも、面倒ともわず相談してくださいね。
低血圧と似たような症状を招く病気
食後に限らず、日常生活を送っていると体に不調を感じることがあるかもしれません。それは低血圧の可能性もありますが、そうではないこともあります。
可能性として、以下のことが考えられるでしょう。
ダンピング症候群
胃の摘出手術に伴い、栄養素の吸収が急激に行われ、低血糖症などを招く病気です。胃という消化器がなく、食べたものが腸へそのまま届くので、術後の食事に気をつける必要があるでしょう。
ダンピング症候群の改善方法は低血圧と同様、食事に気をつけることです。つまり、よく噛んで食べたり、一度に少量ずつ食べるなど消化器官に負担をかけない食事法がポイントになるでしょう。
詳しくは、ダンピング症候群とは?症状・種類・治療法・予防法を紹介!を読んでおきましょう。
メニエール病
耳の奥にある内耳という部分に水が溜まることで起こる末梢性の病気です。回転性のめまい、耳が聞こえなくなる(突発性難聴)などが主症状です。強い倦怠感を感じるので私生活に支障をきたすことがあります。
症状の発症は突発的で、場所を選びません。しばし、強いストレスを受けたときに発症することが多いようです。一方で中枢性の疾患の疑いもあるので用心しましょう。
詳しくは、メニエール病の完治の期間は?原因や治療方法についてを参考にしてください。
良性発作性頭位変換眩暈症
良性発作性頭位変換めまい症 は頭の位置が回転するなどして変化することで、耳の規管が刺激を受け強いめまいを感じる病気です。耳石と呼ばれる体の方向を司る石の移動がめまいを発症させます。
基本的には自然に治っていきますが、症状が改善されない場合には手術によって処置することがあります。再発率が高いこと、そして治しにくいこともあるので、初期治療がポイントといわれています。
パーキンソン病
自律神経を刺激するドーパミンの分泌が悪くなる病気です。神経の働きが悪くなるため、血圧が上がりにくく、低血圧を招きやすくなります。特に姿勢が急に変わるとめまいや立ちくらみを発症しやすいです。
病気の原因はわかっておらず、1000人に1人が発症するといわれています。50代以上で発症するのが大半ですが、40代の人でも発症することがあります。薬やリハビリによって治療をしていきます。
詳しくは、パーキンソン病の初期症状とは?治療方法も紹介!を参考にしてください。
まとめ
食後の低血圧は原因があって発症します。その背景には日常生活の不摂生が隠れていることがあります。まずはこの原因を探り、改善法を実践していくことが治療の第一歩でしょう。
一方で年齢が原因で症状が起きているようであれば、食事量を減らしたり、分散させるなどの工夫をしてみるようにしましょう。体から発せられる情報を受け取り、調子を整えながら、ゆっくりと過ごすというのも、体に必要なことだと思います。
そして、あまりに症状が出ているようであれば、一度病院で検査を受けるようにしましょう。命に関わることもありますから、たかが低血圧と思わず、用心するようにしてくださいね。
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