新しい生命を宿すことに喜びを感じている間にも少しずつ体の変化は起こっています。赤ちゃんが胎内にいると色々な心配も出てくることも多いと思いますが1つずつ解決していくことで、ママになっていくんですね。
今日は、女性の悩みとしても多い「貧血」がテーマですが、特に心配な妊娠と貧血の関係をお話していきます。栄養についても触れていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
妊娠によって変化するママの身体
妊娠すると「貧血」に気を付けるように指導されたりしますが、食生活を意識していないと体は正直なので「しんどい」といった症状が出てくることになります。また、そんな中でも妊婦の体の中では、妊娠初期から胎児が一生懸命に栄養を吸収しながら、すくすくと育っています。
妊娠が安定期を過ぎるとお腹の中ではエコーで見ても、心臓がパクパク動いていたり泳ぐように移動したりして、生きていることを実感するころでもありますね。母乳を飲むために練習しているとも言われる「胎児のおしゃぶり」も可愛いものです。
この、しあわせな気持ちを不安にさせる「貧血」ですが、女性でしたら生理等で元々貧血気味だった人もいると思います。そういう意味でも女性の方が男性より貧血に慣れている傾向があります。
慣れると怖い貧血
貧血は慣れてしまうと自覚症状が出にくいこともあり、気が付いていない人もいます。そのためにも妊婦検診は必ず定期的に通うようにしましょう。
妊婦検診では、貧血を始めとする症状を改善して「安心して出産できる」状態を作るためにも重要です。
こんなに急激に変わる体内
妊娠初期は、体内の環境が大きく変化していきます。赤ちゃんの成長する部屋を整えているのですね。具体的には、次のようにママの体内は変動していくことをまとめてみました。
妊娠初期
ホルモンの影響や新しい環境を作るため自律神経が不安定になってきます。(※血圧のコントロールも不安定になり立ちくらみも起こすという初期症状が現れることがあります)
また、血液の働きは時間の経過とともに、胎盤の循環に対応するための水分を増やしていきます。その結果、赤血球濃度が薄くなっていくので貧血に近づいてしまいます。
妊娠中期
水分で増えた血液は、こうして薄くなるという「貧血」を起こしながら少しずつ進んでいくため「自覚症状」などの初期症状や変化に気付かないことも多いのです。赤ちゃんは鉄分を必要とするため、母体の貯蓄鉄も不足していきます。このように鉄欠乏するという状態を鉄欠乏性貧血といいます。
妊娠後期
出産が近づいてくると分娩時の大量出血の準備に入ります。そのため血液量は、通常の35%以上にも増えることがあります。血漿量が47%以上増えたり、赤血球量では17%も増えることもあります。
妊娠中は、胎盤への血液を供給や胎児の栄養、また酸素を供給するために、たくさんの血液中の鉄分が必要なのです。胎児が作る神秘ですね。
これは貧血?
貧血という名前を使っているけれど、一般的にいう血液検査での貧血ではないものがあります。例えば、夏場に「クラッとする」めまいのようなものから、立ち上がった時に「目の前がまっしろ」になったりして危険を感じた経験がある人は多いと思います。
これらは「脳貧血」という症状であったり、脱水によるものだったりします。血液が急に切り替えが出来なかったり、血圧の変動が急に起こったりするものです。今日は、妊娠している人の鉄分不足からくる貧血についてお話いたしますね。
貧血ってどういうこと?
では、先ほどから頻繁に出ている「貧血」について具体的に深堀していきますね。そもそも貧血とは、何をもって「貧血」というのでしょうか。
顔色が悪いとか、しんどくて動けないとかのイメージばかりが先行してしまい本当の貧血が分かっていないこともあります。
貧血と血漿量
血液というのは、55%が血漿となっています。妊娠中は、胎盤、胎児の栄養、酸素の供給が必要なので、たくさんの血液が必要なのですね。
貧血は、その血液中の血漿が増えてしまうために薄くなってしまいます。これは血液成分である赤血球や白血球、血小板などを除いた液体が血漿が、薄くなったということ、つまり赤血球の割合が減少したことを妊娠中の貧血は意味しているのですね。
鉄分摂取について
厚生労働省「日本人の食事摂取基準」を参考にしてみると、1日当たりの鉄の摂取基準は下記のようになります。
- 月経のない女性の場合 ➡ 6~6.5mg
- 妊娠初期の場合 ➡ +2.5mg
- 妊娠中期・後期 ➡ +15mg
- 授乳期 ➡ +2.5
このような鉄分鉄分摂取が理想なのですね。このまま鉄分が欠乏していくと何だか怖い気がします。良い対処法はないのでしょうか。
妊娠中の貧血は怖い?
妊婦さんが病院に10人いるとすると、そのうちの3~4人が貧血になっているというデータもあるのですね。妊娠中のママにとっても、赤ちゃんにとっても貧血は影響を及ぼすリスクのある症状となります。
妊婦の貧血は流産や早産の誘因となったり、分娩時には微弱陣痛になるなどの難産も起こす可能性があります。また、赤ちゃんが鉄の供給を行うことが出来ないと発育が遅れたり、赤ちゃんが貧血になるなどの心配もあります。
貧血の原因と赤ちゃん
ここで貧血の状態と一緒に、赤ちゃんの成長を見ていきましょう。
- 妊娠4~6週 ➡ ママが妊娠に気付き始める頃には、つわりが始まる
- 妊娠7~9週 ➡ つわりがある人はつらい時期(赤ちゃんの臓器形成が始まるので鉄を必要とする)
- 15週まで ➡ とくに鉄を必要とする時期に母体がつわりで鉄分を食事で摂取出来ない
上記をみると分かるように、ママが妊娠に気付いたときには「赤ちゃんの成長に大切な時期」を過ぎている可能性があるのですね。そうなると、急いでママが鉄分を補給しても追いつかないということが見えてきます。
その後には急速に成長していく赤ちゃんによって体内に蓄えられていた鉄分が底についてしまうのですが自覚症状が出にくいので、「しんどいのは横になったら治る」程度に考えてしまうことも治療の開始を遅らせてしまう原因となるのです。
赤ちゃんは大丈夫?
ママが貧血でしんどい思いをしているのですが、その時に胎内の赤ちゃんは大丈夫なのでしょうか?
実は、赤ちゃんにも影響が出てくることが分かっているのです。胎内での発育が遅れてしまうことで未熟児になってしまうことが問題の一つとされています。そのため貧血の治療を妊娠中は早急にするよう対策が求められます。
赤ちゃんが未熟児で生まれると
未熟児で生まれることを低体重児といいます。いろんな分類法があったので分かりやすく体重ごとに決められたので少しご紹介します。
- 2,500g未満 ➡ 低出生体重児
- 1,500g未満 ➡ 極低出生体重児
- 1,000g未満 ➡ 超低出生体重児
低出生体重児の赤ちゃんが増えている原因は、不妊治療の影響などで多胎児の赤ちゃんが増えたこと、新生児医療の発達で超低出生体重児の赤ちゃんでも救えるようになったことです。
しかし、妊娠期間は予定日近くまでもったのに、子宮内胎児発育不全で低体重になることもあります。そういう未熟児の赤ちゃんの原因がママの貧血だったり、飲酒や喫煙であることも深刻な問題ですね。
貧血の検査とは
血液検査で妊婦検診の際に行われます。食事からの鉄分補給だけでは足りずに、貧血と判断されると内服や注射で鉄剤を補っていく等の治療を検討されます。
静脈から血液を2~3mLほど採取して血液中の成分を数値化して診断する際の材料とします。
血液検査の項目
一般的な貧血検査は下記のように数値が決まっています。ヘモグロビン濃度・ヘマトクリット値・赤血球数を基本の3項目といいます。値の若干の差は医師の考えにもよりますが参考にしてみてくださいね。
一般的な貧血検査の数値(ヘモグロビン濃度・血液1dL中)
- 男性 14g以下
- 女性 12g以下
また妊娠貧血では、ヘモグロビン量が11.0g/dL未満で、ヘマトクリット値が33%未満となっています。通常の状態より、低めに設定されているということは妊娠すると少なからず貧血気味になる人がいるということの証明とも取れますね。
検査を受けないと
貧血は、出産をするときに様々なトラブルを引き起こすことが知られています。
- 体力の低下 ➡ 微弱陣痛(分娩が長時間になる・吸引分娩や鉗子分娩になったり、帝王切開となることもある)
- 弛緩出血 ➡ 分娩予後に子宮収縮の悪化(大量の出血を起こす・ショック状態を起こす・血液が固まらずに輸血が必要となる場合もある)
このことからも妊婦検診をきちんと受けて医師の指示に従うことが重要であると分かりますね。出血量が多い場合には生命に関わる危険性もあるのです。
妊娠中の生活
妊娠中には、特に規則正しい生活という当たり前のことが大切となってきます。
自分だけだと、少し無理をしていた仕事も考える必要が出てきたり、食事や家事の動作などで決して無理をしない程度の社会生活が大切です。
妊娠中の貧血の治療
健康体の時には、お薬に頼ることはお勧めできないとしても、妊娠中の貧血では頼りたいと感じることが増えてきますね。
しかし、勝手にサプリや食品以外のものを口にすると、ママはもちろん赤ちゃんに大きな影響を与える場合がありますので必ず医師に確認をしてからにしましょう。
鉄剤の副作用と補給について
葉酸サプリも手軽に摂取できるようになりましたが、近年では牛乳にも葉酸を含んだものが出ているので、食材など自分の身体に合うものを飲むようにしてくださいね。鉄剤の服用に関しては、下記のような副作用が現れることがあります。
- 便秘になる
- 下痢をする
- 便が黒っぽくなる
- 吐き気が強くなる
- 胃腸の調子を崩すことがある
貧血の治療が始まった時には、飲み忘れを防いで支持をされた通りに服用をするようにしましょう。
鉄剤と副作用
鉄剤を服用するという性質から、どうしても黒っぽい便になったりしますが、これは問題のないことなので服用は副作用が辛くない限りはきちんと飲むことを優先するようにしましょう。
但し、本当に辛い体調は自分にしか分かりませんので、副作用が辛い時には無理をせずに医師に相談をして最善の方法を一緒に見つけていくことが大切です。
また、鉄剤の治療をしている期間は、緑茶やコーヒーなどカフェインの多いものを摂取することは控えて置いた方が良いです。
妊娠貧血が重症の場合
内服では鉄の吸収率が高まらずに、貧血が重症と判断された場合には、静脈注射での鉄剤の投与が必要となります。その理由は、静脈注射でヘム鉄を入れることによりヘモグロビンの吸収に対して確実性が高まるためです。
また、病院で処方されるお薬は、お腹の赤ちゃんに影響はないので安心して治療を続けましょう。
貧血ではないとき
血液検査で貧血の治療をしても貧血のような症状が続く場合には別の疾患が隠れている可能性もあるので医師と相談の上で、必ず検査を受けるようにしていきます。
- 骨髄で赤血球の生産量が低下している
- 赤血球が破壊されている原因がどこかにある
- 体内のどこかで慢性的な出血が起きている
このように考えられる要因としては、再生不良性貧血や溶血性貧血、腎性貧血、悪性貧血などの生命を脅かすような難病の貧血が起こっている場合があるので検査が必要となるのです。
妊娠中の栄養
妊娠中は、つわりも含めて食事を思うように摂れないことが多いでしょう。しかし、必要な栄養素は摂取しなければと「食事がストレスになる」ようでは辛いですね。
貧血を予防する、あるいは改善するためにも「ひじき」を入れた「おむすび」を手が届きやすいところへ置いて、少し食べれそうなときに口にする程度で無理をしないのも一つの方法です。
必要な栄養素と妊娠
この「貧血」や「つわり」を抱えたままの期間は、いつまで続くのでしょうか。これには、人によっての個人差があるので安定期に入るまでの人~出産直前までの人までいます。
ですが、一般的には5カ月ごろの安定期には、つわりのピークは終わることが多いようです。この妊娠期間には、つわりで食事が摂取できないとき、妊娠貧血があるときなど、バランスのとれた食生活の工夫が必要となるので、これを機会に見直すことも良いでしょう。
食生活の改善
妊娠中の食生活には何を重視して摂取することが必要になるのか考えていきましょう。先ほども少し出てきましたが妊娠貧血の場合には特に、鉄分だけではなく葉酸を摂ることが重要となってきます。
全体的に妊娠期間中は、貧血気味になる人が多いために食生活を改善していきます。ダイエットや美容を目的とした食事では、妊娠中の身体には良くない影響を与えてしまうことがあります。自分の目で食材を確かめることやバランスの良い食生活のために重要な栄養素を見ていきましょう。
栄養素とバランス
妊娠中の貧血には、治療を必要とする人も治療をしなくて良い人も、貧血を予防する食事内容が効果的です。貧血の予防には、下記の組み合わせを意識してくださいね。
貧血改善の組み合わせ
- ビタミンC+鉄 ➡ ビタミンCには鉄分を吸収しやすい形に変える働きがある
- 酢+鉄 ➡ 一緒に摂取することで酢が胃酸の分泌を高めてくれるので鉄分の吸収が良くなる
- 動物性たんぱく質+鉄 ➡ 肉・魚・卵などの動物性たんぱく質を一緒に摂取すると消火が良くなり、吸収率が良くなる
鉄は、野菜や果物に豊富に含まれています。そして、動物性たんぱく質を含むものを合わせることや、酢を使った料理をプラスして食べたりと工夫をして吸収性を高めてみましょう。また、ビタミンB6は、動物性たんぱく質の合成を助けてくれるとともにヘモグロビンを生成する働きがあります。
貧血予防の食事を意識する
貧血予防の食事を心がけている人は、ヒジキやほうれん草、シジミ、アサリに含まれている鉄分を多く含む食材を摂るように意識してみてくださいね。これらは、赤ちゃんの成長が著しい妊娠初期から摂取することがポイントとなります。
レバーとビタミンA
妊娠貧血になると「貧血ならレバーを食べなさい」と昔から聞きますね。しかし、レバーというのはビタミンAを多く含んでいるために、過剰摂取してしまうと赤ちゃんの身体に良くない影響が出ることもあります。
何でもそうですがバランスよく適度な量を摂取するようにすることが大切ですね。
妊娠と体重管理
妊娠中は、どうしてもつわりが落ち着くと急に食欲が出てしまうために食べ過ぎてしまうことがあるのです。今の日本では、どこにでも食べ物がありますので、たくさん食べなくても栄養は摂ることが出来ています。そのため少し食べるだけで、カロリーオーバーになってしまうこともあるのですね。
妊娠中は、体重が増えすぎないように体重管理を徹底しましょう。体重が増えることで、妊娠後期には高血圧になったり出産が難産になるなどの危険も伴うようになることが問題なのです。
出産後は
出産を終えると、一息つく暇もなく育児が始まります。睡眠不足になる場合もあり、家事に育児にと大変な生活が続くため、自然と体重はもとに戻ることが多いので安心してくださいね。
どうしても産後太りを解消するために対処法を必要とするときには、助産師さんのアドバイスの他に、スーパーフードや植物性のオイルを使ったメニューを取り入れると良いかもしれませんね。
今日の学び
では、今日を振り返ってみましょう。
- 妊娠貧血は、妊娠初期から起こる場合があるが初期症状が出にくいので血液検査を定期的に受けることが大切
- 妊娠貧血を予防したり食生活を改善するためにバランスの良い食事を取り入れるようにする
- 妊娠貧血の中には、貧血の治療をしても改善されない難病の場合がある
- 貧血時の食事は、ビタミンや動物性たんぱく質を一緒に摂取すると吸収率が高まる
- レバーに含まれるビタミンAは過剰摂取で赤ちゃんに影響を与えるので適量を守る
赤ちゃんとママの生命を繋ぐ食事の改善は本当に大切ですね。今日の栄養のお話は妊婦さんだけでなく一般の女性にも共通して大切なことなので、今から意識する食事をして健康な毎日を送りましょう。
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