ヒトメタニューモウイルスは、主に気管支炎や肺炎など細菌感染を起こすウイルスです。小児など1歳から3歳までの子供がかかりやすい病気といわれています。
あまり馴染みのない名前ですが、別名hMPV感染症もしくはHMPV感染症ともいい、この細菌は2001年に発見されたという新種のウイルスです。発見が遅くなった理由は、ほぼ風邪と同じ症状を引き起こすということと、2001年に発見されたRSウイルスにも似ているということで、その区別、選別が難しかったことも上げられます。
今回はこのヒトメタニューモウイルスについてお伝えいたします。
この記事の目次
ヒトメタニューモウイルスとは?
このウイルスに感染すると、風邪と同じ症状でも風邪薬や風邪に合わせた対処法では全く効き目がありません。
ウイルスの一種
ほぼ同時期に発見されたRSウイルスと同様、気管支などに影響を与えます。他にもたくさんのウイルスが発見されていて、それぞれに特徴があります。
主に経口、飛沫、接触などにより感染し、その症状を引き起こします。
特徴
風邪に似た症状を引き起こすのですが、風邪と同じ対処法を行っても、まったく効果はありません。ですから、幼児で風邪の症状を起こした時は、風邪と決めつけずに医師の診断の元、検査をきちんと行うことが重要となります。主に気管支や肺炎などを引き起こす呼吸器感染症のウイルスの一種です。
また、この感染で通常は免疫ができるのですが、幼児のうちで何度もかかってようやく免疫ができてくるという特徴があり、年齢を重ねるごとに免疫力が強くなっていくと同時に、もし再度かかった場合には症状が段々と軽くなるとされています。
そして乳幼児や小児がかかるということで保育園、幼稚園には通って大丈夫かという心配もあるのですが、学校感染症の指定の病気ではないので、通園には問題ないということでメディアも発表しています。
つまり、インフルエンザや水疱瘡と違って、出席停止にはならないということです。ただ、常識の範囲からいって、休ませるのが一般的な対応となっており、今後は出席停止の扱いになる可能性があります。
感染経路
飛沫感染と接触感染がほとんどです。感染力は非常に強く、インフルエンザなどと同様、くしゃみや咳などでその飛沫から感染したり、手などに付着する菌が身体に入り込んでしまう接触感染が多い経路となります。
これらは後にも説明しますが、やはりうがいや手洗いの励行で感染を防げます。
潜伏期間
菌が付着し、そのタイミングから実際に症状が出るまでの期間は、約1週間弱といわれています。ですから、すぐに症状が出るわけではありません。そして、ウイルス排泄期間はおおよそ1~2週間となっています。
また、子供の2歳までにはほぼ半分、9~10歳までには、ほとんどの子がかかるほど感染率高く、まれに大人もかかるケースがあります。これは特に免疫力が落ちている高齢者がほとんどという状況です。
これまではこのヒトメタニューモウイルス感染症にかかると、ただの風邪ひきで処理していることが結構あったようです。これは普通の風邪の対処法をしてしまっていたとになり、重症にならなければ、これはこれで問題はないと思います。ただ、普通に幼稚園や学校に行ってしまっているので、集団感染の恐れもあり、他の人には迷惑な話です。
流行のピーク
季節によって、感染する数が増える時期と逆に減少する期間があります。冬場の12月ごろから、春先の5月頃が一番患者数の増える時期です。
ただあくまでも統計的にこの時期に多いということです。それ以外の時期にも、数は少ないですが、罹患する人はいます。
ヒトメタニューモウイルスに感染した時の症状
ヒトメタニューモウイルス感染症の症状はほとんど風邪と一緒です。
違いといえば、その細菌の違いというぐらいです。
鼻水
これは頻繁に鼻水が流れ出てくるので、丁寧に拭いてあげることが望ましいのですが、しつこく鼻を拭くと、鼻の下がカサカサになってしまいます。ですから、吸引機で取ってあげるなり、摩擦の起こらないティッシュで拭き取る様にしないと、鼻の下が荒れてしまいます。
また、幼児が鼻をかむことは難しいので、ていねい対処することを心がけることです。
発熱
個人差はありますが、熱は1週間ほど続きます。熱の出始めは寒気が出ますので、布団を沢山かけて調整します。熱は体力を消耗しますが、この熱が菌と戦っているので、本来は無理に熱を下げないようにするほうがいいのです。
あまりにも高熱で辛そうであれば、解熱剤で対処することもいいかと思いますが、それほど辛そうでない場合は、頭を冷やす氷枕やおでこを冷やすことで対処します。
これは、無理に熱を下げてしまうことで菌が残ってしまうこともあり、治ったかなと思った頃にまだ体力が復活しておらず、無理をするとぶり返すことがあるからです。
また、水分の補給は適宜行うことが望ましく、汗が出た後は、すかさずに補給します。それほど喉が渇いていないような状態でも、脱水状態にならないように気をつけることが大事です。
咳と痰
このヒトメタニューモウイルスは急性呼吸器感染症を引き起こす菌なので、特に呼吸器に症状が出やすくなります。それが咳と痰になります。
これも個人差がありますが、1週間程度続く傾向があります。
気管支炎
ヒトメタニューモウイルスに感染し重症化してしまいますと、気管支炎や肺炎を併発します。特に呼吸器系に悪影響を及ぼしますので、呼吸が苦しくなり、微熱が続きます。
呼吸する際に空気が肺へと入る途中の気管のことを気道というのですが、ほとんどの場合、この気道に菌が付着して、炎症を起こします。この症状がひどい状態になった場合は、最悪入院ということになります。
呼吸困難
気管支炎同様、重症化してくると呼吸困難に陥ります。これは喘鳴(ぜいめい)といって、呼吸する度に激しい音が喉の奥から出てきてしまいます。ゼーゼーという音が多いようで、当然に呼吸が苦しいと感じます。
この症状は、仰向けに寝ていると更にきつくなる事もあるので、その際は上半身を起こした形を維持した方が呼吸が楽になります。
この呼吸困難の状態は、喘息持ちの人がかかると特にひどくなるので、恐らく入院しての治療となります。
ヒトメタニューモウイルスの治療法
このヒトメタニューモウイルスに対する治療法は、特効薬というものはありません。その症状に合わせた対処療法を行うことが一般的です。
解熱剤
医師の診断を受けると、熱が高めであれば解熱剤を処方されます。このヒトメタニューモウイルス感染症になると、38度ほどの高熱が出ますので、身体がきついようであれば服用し様子を見るべきです。
熱だけでの症状であれば、あえて使わずに安静していてもいいのですが、咳や痰が絡むなどの症状もひどいようであれば、その内の一つでも症状を緩和させるようにすべきでしょう。
ただ解熱剤は一回ではほとんど下がらないので、医師の診断の元において様子を見て処方するようにしてください。
痰を切る薬
咳を抑えると同時に、痰を切るためにも処方すると楽になるでしょう。人によってはあまり痰の出ない人もいますので、その場合はあえて使用する必要はありません。
これも体質によるもので、いくら薬をもらったからいっても、あえて飲む必要はないということになります。
気管支の拡張剤
感染して呼吸器症状が現われている時は気道が狭まっているので、気道の拡張剤を使用し呼吸を楽にします。
こちらも根本的な治療にはならず、呼吸が苦しい時の対処法ということになります。
水分補給
先にも書きましたが、熱が出ている場合は、体内の血液やリンパ液の循環を活発にする必要もあります。ですから、喉が渇くということの他に、菌を体外に排出するために水分を多く取るようにします。
水分はミネラルを含んだスポーツ飲料などでも大丈夫であり、この水分補給が、痰を切りやすい効果にも繋がります。
また栄養補給も必要なのですが、食事をすることはよくありません。というのも、食事は消化、吸収に体力を使います。このタイミングで体力を失うようなことは、止めておいた方がいいでしょう。
もしどうしてもというのなら、ゼリータイプのビタミンが入っている栄養補助食品などがお勧めで、決して咀嚼などを必要としない、消化のほとんどいらないものがいいでしょう。
睡眠と休養
熱や咳が出ている時は、横になっていても、体力もかなり消耗するので、やはり安静が大事です。普段よりも当然睡眠時間も多くなりがちです。
それだけでも治癒に近づいていることになります。
ヒトメタニューモウイルスの予防法
ほとんど小児がかかるということで、あえて予防することは必要ないというか、感染対策も無駄になるということも考えられます。
ですが、症状がひどくならないことを目的とした予防法であれば行うようにしたいものです。
うがい、手洗い
外出した後の基本的なことです。特に手洗いは重要です。石鹸で指の先から指と指の間を丹念に洗うようにします。意外に見落としがちなのが、手首です。
ここも注意して洗うようにします。
感染者との接触
感染者とは接触を避けるのが望ましいのですが、なかなか完全に避けることは難しいです。
あえて言うなら、親としては必要以上に外出を避けるべきといえるでしょう。
マスク
こちらも感染予防には必須といえますが、きちんと正しくマスクをしている人は少ないようです。
いろいろなサイトでも正しい装着方法などが紹介されていますから、参照してください。
共用を避ける
もちろん、家族間のタオルなどは共用しないで、個別に使用したほうがいいかと思いますが、感染したその時だけは使用を避けます。
その他、幼稚園、学校など
学校関連は、インフルエンザなど出席停止にする病気はかなりありますが、このヒトメタニューモウイルス感染症は、出席停止にするという決まりはないようです。そのような状態なので小児のほとんどがかかってしまうことは当然と考えられます。
この辺は、もう少し医療の世界でも何らかの対処法を考えるべきと思われます。
似ているウイルス
症状としてもこのヒトメタニューモウイルス感染症に似たものがたくさんあります。
中にはこの感染症よりもひどい症状を引き起こすものもあります。
RSV感染症
こちらも割と最近に発見されたウイルスによる感染症でRSV感染症ともいいます。これは症状だけでなく、ウイルスの遺伝子や型も非常に似ています。当然見た目での判断はできません。
インフルエンザ
毎冬、空気の乾燥時期になると、必ず流行します。このインフルエンザウイルスが感染源となるのですが、接触感染や飛沫感染で移ります。
かかるとかなりのダメージを受けるということで恐れられていますが、ある意味きちんとした生活習慣と食生活を心がけることで、防ぐことはできます。
この場合の生活習慣とは、きちんとお風呂に入り、シャワーなどで済ませないとか、睡眠時間をきちんと取る、空気の乾燥にはマスクで対応し、寝室も適度の湿度を保つということです。
そして食生活は、生野菜や発酵しているものを多く取るようにします。野菜や納豆、漬物、刺身などです。人間の身体は食べたもので出来ています。野菜や発酵食品は細胞が生きています。この生きている食べ物をたくさん取ることが身体に非常にいいとされています。
今の人は加工食品である、パンやカップラーメン、揚げ物など死んだ食べ物を食べすぎています。これでは健康的な身体を作れません。このような生活習慣、食生活を正しい形に変えて、継続することで抵抗力の強い、健康な身体になると同時に予防策にもなる訳です。
マイコプラズマ肺炎
こちらも最近よく聞く病気です。マイコプラズマという細菌が気管に入り込んで炎症を起こし、肺炎となってしまいます。これは気管支の炎症が元で、咳がかなり出ます
治療法としては、抗菌薬で対処することがほとんどで、よくなるのですが、咳が続くケースが多いです。
パラインフルエンザ感染症
あまり聞きなれない病気ですが、やはりヒトメタニューモウイルス感染症などに症状が似ていて、喉や気管支に炎症が起き、激しく咳が出ます。
ちなみにインフルエンザと名前が付いていますが、まったく通常のインフルエンザとは関係もなく、症状も全く違います。
これも飛沫感染、接触感染で罹患しますので注意が必要となります。
ヘルパンギーナ
これもウイルス性の感染症で、主に夏場に流行します。特徴としては、口内炎ができたり、発熱により、頭痛や関節が痛むということになります。これも小児がかかる病気なのですが、大人にも移ります。そして、夏風邪というイメージがありますが、最近は一年中あります。
症状はやはり風邪の症状ですが、インフルエンザと間違う人も多いとのことです。
ヒトメタニューモウイルスにより併発する病気
このヒトメタニューモウイルス感染症により、他の病気を併発します。
ただこの場合、ヒトメタニューモウイルス感染症だけでなく、風邪やインフルエンザなどでも以下のものは併発します。
中耳炎
これも主に子供がかかることの多い病気で、耳の中が炎症を起こし、痛みと共に膿が出てきます。鼻水をすすることで、耳の内部に細菌が入り込むことが原因と考えられます。抗生剤の使用で治まります。
アデノウイルス(プール熱)
別名プール熱と呼ばれるアデノウイルスは、夏のプールなどで感染するケースが多く、そのためにプール熱とも呼ばれています。
特徴としては、やはり風邪の症状であり、喉の痛みが強く、さらに流行結膜炎という症状も引き起こしているケースがあります。目やにや目の充血、痛みがある場合はアデノウイルスと考えていいでしょう。
肺炎
昔から風邪をこじらせると肺炎になると言われていますが、それだけで肺炎になる訳ではありません。一番多いのは肺の中にウイルスや細菌が入って炎症を起こすことが肺炎なのです。
確かに風邪を引いた時など、免疫力が落ちているので、肺に細菌やウイルスが入ると肺炎にかかりやすいと言えます。これは、がんなどにかかっている患者にしても結局は免疫力が落ちているためなのです。そのために肺炎は死亡原因の第4位となっています。ですが、身体がほぼ健康状態であれば、そのような菌からは影響を受けないのです。
容連菌(ようれんきん)
これも細菌性の感染症で、やはり小児がかかりやすい病気です。風邪との違いは、鼻水や咳がほとんど出ないということです。そういう意味では、ヒトメタニューモウイルス感染症とも区別が簡単につきます。
それ以外の症状としては発熱、喉が痛む、イチゴ舌といって舌にぶつぶつができます。また、喉元のリンパ節が腫れることもあり、飲み込んだりすると痛みを生じます。
イチゴ舌などは、口の中を見るとこれはすぐにわかりますので、もし舌にぶつぶつが出来ているようなら、間違いなく容連菌感染症ということになります。
感染原因は飛沫感染、接触感染の他、経口感染といって、手などの付いた菌が口に入ったことによります。
まとめ
今回はヒトメタニューモウイルスについての記事でした。
症状としては風邪とほぼ同じということですが、やはり医師の診断の元、きちんとした対応をしたいものです。
また、重複感染といってウイルス耐性の薬を服用することで逆に耐性の病気が威力を発揮して別の方の病気が重くなることもあります。
ですが、このヒトメタニューモウイルス感染症という知識があらかじめあれば、風邪の症状が出たときの対応も応用が利くのではないのでしょうか。
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