メトヘモグロビン血症の原因ってなに?症状や治療方法って?

メトヘモグロビン血症と聞いても何なのかがわからない方が多いと思います。あまり知られていないようですが、実際にこの病気は身近に起きています。鑑別が困難で発見が遅れるものもあり、突然発症することや軽度のものから重度のものまであります。

では、メトヘモグロビン血症とは何なのかを説明していきます。

メトヘモグロビン血症とは

メトヘモグロビン血症 血液

メトヘモグロビン血症は健全な人にも起こりうる病気です。遺伝性と中毒性に区別され、ほとんどが中毒性により後天性(誘発性)で発症するものがほとんどです。遺伝性の場合、メトヘモグロビンを代謝する酵素の先天性欠損(常染色体劣性遺伝)によるものがあります。

中毒性は薬物中毒やその他にも原因物質が挙げられます。どのようにしてメトヘモグロビン血症になるのか、発症しやすい年や症状などを記していきます。

好発年齢

乳幼児や成人にも発症し、メトヘモグロビン血症の発症に年齢や性別の差は見られていません。

しかし、身体が小さく体内に有する血流量も大人に比べて少ない乳幼児期では遺伝性においても中毒性においてもメトヘモグロビンが生成されやすく、メトヘモグロビン血症に陥りやすいため、乳幼児は特に注意が必要です。

血液中のメトヘモグロビン量が増える

メトヘモグロビン(MetHb)とは、正常な血液中にわずかに存在する異常ヘモグロビンのことを言います。

ヘモグロビン(赤血球/Hb)は酸素を血液に運搬する役割をしており。メトヘモグロビンである異常ヘモグロビンは、血液の組織への酸素運搬機能を低下させるヘモグロビンの機能不全構造に当たります。血液の酸素化を低下させて、低酸素血症を誘発する可能性が高まります。この異常ヘモグロビンはヘモグロビン全体の2%未満を占めています。

メトヘモグロビン血症は血液中のメトヘモグロビンの濃度が上昇した状態を言い、先ほども述べた様に後天性であることが多いです。健常者でも血中のメトヘモグロビン濃度が2%を超える時があり、全身に酸素を運搬する機能的ヘモグロビンが減少してしまいメトヘモグロビン血症を発症します。

また、メトヘモグロビンは酸素と結合している正常なヘモグロビンの酸素の解放を阻害します。つまり、正常なヘモグロビンに作用して正常なヘモグロビンと酸素の結合を強くし、解放を妨げることで組織へ運搬される酸素が減少します。メトヘモグロビンの濃度が上昇していくと、この作用が増えるため酸素血流量が減って貧血を誘発し、「機能性貧血」を引き起こすことがあります。

メトヘモグロビンの症状

メトヘモグロビン血症の症状は顕著な状態にならないとわからない場合が多く、症状が曖昧です。風邪やウイルス感染症、インフルエンザ等の症状と類似しており、正確な診断が遅れることが多いです。インフルエンザに類似した症状が見られる場合は、メトヘモグロビン値の上昇及び、一酸化炭素中毒症(カルボキシヘモグロビン血症、一酸化炭素ヘモグロビン)の検査を行、早期に対応されます。

メトヘモグロビン値が15%以下の場合、無症状で貧血に起因する症状がみられるのみで自覚するほどには至りません。値が20~30%の場合、頭痛、倦怠感、運動耐容能低下、意識消失、眩暈(めまい)、精神状態の変化、酸素欠乏症状、チアノーゼ、意識消失などの症状がみられます。値が30~50%では、息切れ・頭痛が生じます。値が50~70%の場合、不整脈、痙攣発作、昏睡、混迷、嗜眠(しみん)を生じてきます。値が70%以上になってしまうと死亡となるリスクが高まります。

なお、値が20~70%の場合には併発する症状がみられることがあります。その併発される症状は、心血管疾患、心肺疾患、貧血、敗血症が挙げられます。その他の異常ヘモグロビンはメトヘモグロビン血症の低酸素血症を助長させる可能性があります。

メトヘモグロビン血症の予後

治療の有効性は高いですが、発覚までに時間を要し、正しい診断が遅れることから未治療であったり、治療の遅れがでるため罹患率は高く早期の死亡率も高くなる可能性がでてきます。

メトヘモグロビン血症の原因

メトヘモグロビン血症 赤ちゃん

メトヘモグロビン血症の原因は意外と身近な物が原因で起きている場合と、遺伝性のものがあります。

身近な物というのは、そこに含まれていて良いのか!と思わせてしまうものまであります。では、一体どのようにな物が原因で誘発されるのかを説明していきます。

治療薬も原因になりうる!

なんと、身体の病気を治すために用いる処方薬や化学物質の吸引、その他の吸入治療などによりメトヘモグロビンの形成を誘発される場合があります。例としていくつかの薬物とその対象を以下に挙げます。

  • ダブソン(DDS):抗菌薬。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)・皮膚科疾患・カリニ肺炎の予防薬。ハンセン病の治療に用います。
  • ニトロプルシドナトリウム:静注用降圧薬、血管拡張薬。
  • ニトログリセリン:窒素をベースとした心疾患治療薬。主に狭心症の患者などに用いる心血管拡張剤。
  • リドカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、セタカイン:麻酔薬(内視鏡検査、気管内挿管、気管支鏡検査、歯科の前処置、経食道心臓超音波検査、腹腔鏡検査などのスコープ検査にて用います)に含まれる化学物質。
  • 新生児用塗り薬のクリーム:EMLAクリーム。局所麻酔薬の共融混合物。
  • セレコキシブ:関節炎の鎮痛剤。
  • フルタミド:前立腺癌の治療薬。
  • 一酸化窒素(NO):肺血管拡張の薬。吸入器。

特に、一酸化窒素は強力にメトヘモグロビンを誘発します。どの程度かと言いますと、吸引された一酸化窒素の約85~90%がメトヘモグロビンを直接形成します。この一酸化窒素は治療薬の他に、ストーブなどの排気にも含まれているため適度に換気が必要になります。死に至る確率も上がるため、厳重に注意をしましょう。

以上に記したような治療薬を使用していて何かおかしいと感じた場合には、直ぐに医師と相談するようにしましょう。

食品にも含まれる!

意外と身近な食品にも含まれているため、注意が必要です。以下に、簡単にまとめるとこのような物が挙げ、更に細かく説明していきます。

  • 硝酸塩・亜硝酸塩:強力な酸化剤。防腐剤。食品添加物、肥料、井戸水の流出による産生や食品への混入。
  • スルホンアミド:サルファ剤。広域スぺクトル抗菌薬。
  • 硝酸ナトリウム:肉・魚の防腐剤。

メトヘモグロビンはヘモグロビンが酸化されることで生じます。硝酸塩や亜硝酸塩も強い酸化作用をもつため、原因となりやすいです。これらは野外路などで生じ、それを含む食物、つまりBBQなど野焼きでの料理や食品添加物などを摂取することでメトヘモグロビン血症を発症します。硝酸塩を含む飲料水もあり、これにより発症した例もあります。

また、窒素肥料などの肥料にも含まれており、肥料が土壌に流出して井戸水に混入していることもあります。高濃度の硝酸を含む井戸水で調理された物を摂取した場合も発症してしまいます。

身体が小さい乳幼児に汚染された井戸水を使用したベビーフードやミルクを摂取させて発症することもあります。胎児のヘモグロビンは簡単に酸化してメトヘモグロビンになってしまうため、6カ月になるまでは高濃度の硝酸塩を含む食品や飲料水は避け、なるべく井戸水を使用しない食べ物をえお食べさせると良いでしょう。また、たき火や暖炉などの煙がたつ場所も避けた方が良いでしょう。

脱水にも要注意

実は、脱水がメトヘモグロビンの産生を誘発させるどころではなく亢進させてしまいます。特に下痢を患う乳幼児は脱水症状によるメトヘモグロビン血症を誘発しやすいです。

乳幼児でなくとも発症する可能性があるため、適度に水分を補給するようにしましょう。

その他の外因性要因

治療薬や水以外にも様々な原因があります。農薬や殺虫剤、除草剤などの薬品に加え、ニトロベンゼンやニトロエタンなどのマニキュア液に含まれる薬品、自動車・ボート・バイク等の排気ガスの吸入、工業用化学物質(樹脂、ゴム製接着剤など)の吸入などが原因として挙げられます。これらを気にしていてはキリが無いでしょう。

これらに接触をする時にはマスクを着用するようにする等の対処をしていくと少しでも発症の可能性を下げることはできると思います。

メトヘモグロビン血症の治療について

注射

メトヘモグロビン血症の治療は、その度合いによって治療内容が異なってきます。

症状が進行していればしている程、治療方法も身体に大きなストレスを与えるものになり、治療費も高くなってしまいます。以下に、詳しく説明をしていきましょう。

軽度の場合

軽度の場合は、酸素療法にて体内に残存する正常なヘモグロビンの酸素運搬機能を最大限に高めていきます。これにより適切に治療をすることが可能になります。

中等度~重症の場合

中等度~重度の場合は、メチレンブルーを使用します。これはメトヘモグロビン血症の治療に最も利用されている方法で、WHO必須医薬品リストにメトヘモグロビン血症治療薬(特異的解毒薬)として記載されています。体重1㎏に対し1~2㎎の量をゆっくりと注射していく方法になります。通常、投与後は1時間以内に改善することが多いです。

この治療を受けた症例の中には、メチレンブルー投与後12時間までにメトヘモグロビン血症が再発したため、メチレンブルーを反復して使用したケースもあります。先天性(遺伝性)のメトヘモグロビン血症では薬品による治療効果は得られにくいとの報告がされています。

メチレンブルーは危険性の高い治療薬のため、スキルのある医師に行ってもらうようにしましょう。何が危険か、様々な副作用がみられるためです。副作用としては、ショック、アナフィラキシー、腎不全、溶血性貧血、メトヘモグロビン血症の憎悪が報告されています。

輸血を行う場合もある

上記でも述べたように、血液中のメトヘモグロビン量が70%以上の場合は致死的な状態に陥っています。

この場合、メトヘモグロビン値を急激に低下させるために輸血を行ってヘモグロビン量を増やし、体内にあるメトヘモグロビンを減らすように体内にあった血を体外へ出すという「交換輸血」という方法がとられます。場合によっては、メチレンブルーの投与を施行しながら輸血を行う場合もあります。

酸素吸入

一酸化炭素など、メトヘモグロビン血症の誘発因子となる物質を呼吸時に吸入してしまった場合、呼吸器の機能を保持するために酸素吸入の方法がとられます。

濃度の高い一酸化炭素を吸入して重度のメトヘモグロビン血症を発症した際に施行されます。これ以上に重度の溶血性貧血を発症した場合には、「血液透析」の施行を考慮する必要もあります。

まとめ

農薬 危険

メトヘモグロビン血症は発見と治療が遅れて死亡するリスクの高い非常に身近な疾患です。対処が遅れる可能性があるならば、なるべく対策をしっかりできるようにしましょう。

特に乳幼児がいる場合は注意が必要です。肥料や農薬の利用、水や食べ物に注意をし、密室にいる際には換気を怠らないといった対策を行っていくと良いでしょう。

  
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