ポッコリお腹というのは下っ腹がぽっこりと出てしまっている状態だそうです。
下腹部がポッコリしたり贅肉が溜まってしまったりと、お腹周りは何かにつけ目立つことも多い部分です。それにしてもお腹というのはなぜこうもポッコリと膨らんでしまうのでしょう。
お腹には内臓があります。内臓は食べたものを消化・吸収する器官ということはご存じでしょう。それ以外にお腹にはどんな役割があるのでしょうか?
本稿ではお腹の機能や特性について理解を深め、目立ってしまうお腹のふくらみや余分な脂肪を解消しお腹をへこます方法について検証していきます。
最後までお読みになればあなたはお腹を「へこます・膨らます」といった筋肉のコントロールが自在にできてエクササイズの効果を実感できるようになるでしょう。
お腹に力を入れるメカニズム
お腹をへこますためには、お腹にどういった筋肉や組織がありそれがどういう風に動くかといった仕組みを理解する必要があるでしょう。
なぜならお腹の中の動くイメージがわからないと、自ら行う動作と脳内で一致させることはできず運動がただ形だけのものになってしまうからです。
そこでまずはお腹にある筋肉とその動き方、そして特有の圧力のかけ方にについて学んでみましょう。
お腹にある空間
お腹には内臓があってその各器官で食べたものを消化吸収する働きを担っています。内臓の後ろには背骨が上下に通っていて脊柱を形成しています。
脊柱の前には腹腔(ふくくう:Abdominal Cavity)があります。腹腔とはいわば人体のお腹部分にある空間のことで、そこに内臓全体を膜で覆っている腹膜腔(ふくまくくう)や腹膜後腔(ふくまくこうくう)がすっぽりと入っています。
内臓はその機能をしっかりと発揮するために定まった位置になくてはなりません。もし内臓が腹膜腔内であっちこっち動いていたのでは正常に働いてくれません。その安定に関わっているのが腹腔内圧です。
内臓全体を覆っている腹膜(後)腔と腹腔との間には空間がありそこの圧力は常に一定に保たれています。また腹膜腔内、つまり内臓の各器官の間も空間があり圧力が存在しています。
お腹の中の圧力
通常、腹腔内圧(ふくくうないあつ:IAP Intra-Abdominal Pressure)とはこの内臓を覆う腹膜腔の外側を指しています。腹腔内圧はいってみれば内臓を囲む風船です。その風船には空気が入っておりその内圧を高めるためには、周りにある腹腔壁をすべて緊張させる必要があります。
腹腔壁の緊張を高めるためにここではじめて筋肉の出番となります。腹腔の上に位置する①横隔膜、下にある②骨盤底筋、前全体の特に下腹部を覆う③腹横筋、さらに腰部に位置する④多裂筋の四つが立体的に収縮することで腹空内圧が初めて高まるのです。
腹腔内圧上昇の効果
お腹内部の圧力が高まることで何か良いことはあるのでしょうか?
実は腹腔内圧を高めることで直接的・間接的にお腹をへこます効果が高まるのです。まずはそのメカニズムをチェックしてみましょう。
脊柱の安定と重力負荷の軽減
腹腔内圧が高まることで脊柱が安定します。脊柱はそれ単独では様々な圧力に耐えることはできません。そこで必要になってくるのが、背中側を中心とする抗重力筋の支持機能と全面の腹空圧機能です。この二つの働きによって、脊柱は安定し様々な動作に耐えうる機能を維持できます。
“(大黒)柱”が安定することで腰椎や骨盤への負担が軽減され腰痛の軽減や改善に繋がります。腰の痛みや違和感が軽減すると動作が活発になり、今迄の運動量や質が向上することで運動としての効果が一層高まるというわけです。
使われずに眠っていた深層筋群が目覚める
腹空内圧を上昇させるために腹腔壁が緊張すると、深部深層筋群が使われる(使える)ようになります。深層筋群とは前述した以下の筋肉です。
- ①横隔膜
- ②骨盤底筋
- ③腹横筋
- ④多裂筋
深層筋群はその位置や特徴を把握していなければ、まったくと言っていい程どうしたら働かせられるかがわかりません。深層筋群はそれだけ使い方が難しく、仕組みを理解せずトレーニング形態だけを学んでも得られる効果はほとんどないでしょう。
また、これら深層筋群によって腹部の内臓が締め付けられることで例えば“いきむ”という運動に直接関わり排便・排尿等にとって必要不可欠な要素となるわけです。
腹空内圧の上昇は日常動作に深く関わるだけでなく、人間にとって必須な行為にも大きく影響することを覚えておきましょう。
腹腔内圧を高めるためにはこれら4つの深部筋が強調して働く身体環境の整備が必要となることを理解しておく必要があるのです。
お腹まわり;出っ張る原因
お腹周りが気になる場合、その原因はどこに潜んでいるのでしょうか。多くはあなたの日常生活に起因する場合がほとんどでそれを改善することでお腹周りのサイズダウンも比較的容易に可能となるはずです。
お腹まわりの脂肪や、その特性を理解して正しい対処法を実践してみるといいでしょう。
体脂肪を理解する
お腹まわりの脂肪はサイズアップの最も大きな要因です。
体脂肪とはその名の通り身体にある脂肪量を示す言葉です。体脂肪には皮下につく脂肪である皮下脂肪(ひかしぼう:Subcutaneous Adipose tissue)と、お腹周りの筋肉と内臓の間につく内臓脂肪があります。
皮下脂肪は男性に比べ女性が付きやすく体温維持やエネルギー貯蔵の役割があります。一方内臓脂肪の過度の蓄積は生活習慣病・動脈硬化・脳卒中等の原因となります。こちらは彼に伴って蓄積するという特徴を有しています。
因みに生活習慣病を患う可能性のある内臓脂肪ですが簡単なチェック法もあるのでご心配な方は是非、試してみてください。計算式は以下の通りです。
・ウエスト(cm)÷身長(cm)=0.5以上 内臓脂肪型肥満傾向があると判定されます
ポッコリお腹とは?
下腹部がポッコリと膨らむポッコリお腹は見た目の印象として決して良くありません。実は骨盤が真横から観て後側に傾きやすくなる後傾(こうけい)により内臓下垂(ないぞうかすい)が起こっている結果ともいえます。
内臓下垂とは腹腔の圧力が低下して内臓が全体的に下に下がってしまう状態です。こうなると腸が圧迫され、特有の蠕動運動(ぜんどううんどう:Peristaltic Motion)を阻害し便秘が起こりやすくなります。
もちろん腹腔内圧も低下しお腹にある深部筋群を使うことができず、さらに内臓脂肪や皮下脂肪を溜めやすい状態に陥ります。
特に下腹部には体内に摂りこまれた余分なカロリーを中性脂肪として蓄える白色脂肪細胞(はくしょくしぼうさいぼう)が多いため、脂肪を溜めやすい環境にあると言えるでしょう。
腹空圧を高める;ドローイン
近年お腹に効くエクササイズとして多くの関係者の間でも取り入れられているのが「ドローイン」というトレーニング法です。
ドローインは体幹トレーニングのひとつで、運動というよりむしろ呼吸法と言った方がいいかもしれません。呼吸法ダイエット、またはドローイングダイエットという名称として広まっておりその汎用性は高いといえるでしょう。
特に脂肪の溜まりやすいお腹周りや下腹部への刺激効果が高く内臓の動きも促進されるため体調を良くする意味でも是非実施されることをお薦めします。
ドローインの方法
以下にドローインのやり方を示します。
①仰向けに寝て両膝を立てる姿勢をとります
②腰のあたりに手のひら1枚入る程度のスペースを空けます
③骨盤前側にある左右の腰骨の出っ張り*1、そこより少し内側を指で押すポイントAとします
*1:上前腸骨棘:ASIS
④片方(両方)の中指&薬指で真上から押すようにして左右のポイントAに圧を加えます
⑤ゆっくりとした10秒をめやすにその姿勢で息を吐きながら最後は息を吐き切ります
⑥ポイントAを指で押し続けながら息をゆっくり吸っていき最後まで吸い切ります
ドローイン:大切なポイント1
ドローインを効果的に行うにはいくつかの大切なポイントがあります。
一つはこの息を「吐き切る・吸い切る」という呼吸法です。これができないとお腹の圧力(腹腔内圧)がしっかりと高まらずお腹を「膨らます・へこます」といった内臓運動のコントロールができないため効果が高まりません。
二つめは腰の部分を床やマットにつけないで運動を繰り返すことです。オリジナルのドローインは逆に腰の部分を床に付けるかタオル等を置くことで圧を感じるように行っていました。
しかしそれでは骨盤が後傾しやすくなり大筋群である腹直筋の活動ばかりが強調され腹筋運動となんら変わりません。
ドローインの目的はあくまでお腹を自在に「へこませる膨らます」ための腹腔内圧の調節です。調節機能をコントロールする腹横筋の働きは最初のポジション(筋の長さ)によって決まります。
ドローイン:大切なポイント2
ドローインに関してさらに大切なポイントを紹介します。
腹横筋が働くことでお腹の中の圧力は一気に高まり背骨周辺にある小さい筋肉やその他の軟部組織達が背骨と一緒に動くことでケガのリスクは低下します。
腹横筋は別名コルセット筋とも呼ばれお腹を背骨に向けて絞っていく、または背骨寄りに引き寄せる筋肉として働きますが、しっかりと伸びた状態にしておかないとちゃんと縮んではくれません。
腹横筋の機能を高めるためにはドローインに入る際の姿勢がとても重要です。真横からみて骨盤を前側に傾ける前傾(ぜんけい)にすることで腹横筋がしっかりと伸びている状態になり、こうすることで筋の張力が高まり縮みやすくなります。
筋肉は縮むことが得意で伸びることは不得意です。しっかりと縮むためにはその前段階でしっかりと伸びていなくてはなりません。骨盤を前傾にするとはまさに腹横筋が伸びるための準備運動をするということに他ならないのです。
お腹をへこます方法
ドローインを始め近年、お腹周りのシェイプアップやへこます対策として様々なトレーニング法が確立されています。しかしそういったトレーニング方法もきちんと身体の仕組みを理解していなければただ形だけで継続できない運動となりかねません。
以前、お腹をへこます運動でイメージするのは腹筋運動でした。しかし残念ながら腹筋運動ではお腹をへこませる効果はほとんどありません。運動についての理解があればそれは当然のこととして受け止められますが、「腹筋=お腹の贅肉をとる」といった考えが未だに残っていることも受け止めなくてはなりません。
ここからはお腹のシェイプアップに貢献したり、ダイエット効果の高い運動方法について検証していきましょう。
体幹トレーニング
体幹トレーニングは先に述べた腹腔内圧を調節した状態で行う主に体幹(胴体)部の運動を指します。特にインナーマッスルと呼ばれる腹横筋・腹斜筋・横隔膜・骨盤底筋・多裂筋等、普段日常動作ではあまり動かない深層筋群を活動させることができ下腹ダイエットとしても効果的です。
体幹トレーニングの中で広く利用されている種目が「ブリッジ系」と言われる手や脚(または膝)で体幹を支える動作です。四つん這いで片方の腕や脚を交互にあげる動きもその一つといっていいでしょう。
さらに効果を上げるために骨盤を前傾しておこないましょう。深部筋のひとつである腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)が腰椎(骨盤)から大腿骨内側に付着し、しっかりと伸ばされ張力を発揮できる状態で使われるため運動効果が一層高くなります。
体幹トレーニングはこうした深部の筋肉を積極的に働かせ腹空圧上昇を伴って内臓の動きを活発化させることができます。そのため脂肪燃焼効果も高くなり平時での代謝を示す基礎代謝もあがりやすくなるのです。
ウォーキング
近年有酸素運動であるウォーキングの価値が見直され、脂肪燃焼に効果的なダイエット法として人気が高まっています。
ウォーキングは最も手軽な運動としておすすめで、一定時間・定期的に行うことで足腰やお尻腿裏等への筋力強化、さらに呼吸筋を刺激して心肺機能を高めるエクササイズとしても効果的です。
はじめて行う場合は運動の強さ(歩く距離と速度)によって後日筋肉痛になる可能性もあるため、ウォーキングの前後でストレッチをすることも忘れないでください。
筋トレ
自宅で手軽にできるちょっとした筋トレも最近はひそかなブームになりつつあります。本来自重(自分の体重)を使うことでおこなえるため道具もいらず手間もかかりません。
やり方によってはとても効果が高く腰痛や肩こり予防としても利用価値のある自宅筋トレも是非、取り入れてみるとお腹をへこませる効果は高いといえるでしょう。
特に熱生産が高まり食べ物で余ったエネルギーを体内で活発に燃やすことができる褐色脂肪細胞を活性化する運動が良いとされます。
ポイントは褐色脂肪細胞が多く存在する肩甲骨や背中を動かすことです。背中を刺激する運動は同時にお腹の圧力も高めてくれるためお腹まわりやウエストのサイズダウンにも貢献します。
背中やお腹のトレーニングは普段の姿勢にも良い影響を及ぼし日常生活での適度な筋肉運動を実現してくれます。
呼吸訓練
我々は日常生活で呼吸を意識することはありません。このまったく意識しない呼吸を胸式呼吸と呼び主に胸腔内(肺と心臓が収まっている部屋)での呼吸運動が行われます。
この胸式呼吸とは別に横隔膜(おうかくまく:Diaphragm)の運動によって腹腔にまで圧力をかける呼吸を腹式呼吸と呼びます。俗に言うお腹にまで空気を入れるといったイメージを持ちますが当然のことながら肺のように直接空気を入れる器官と同じようにお腹に空気を入れることはできません。
横隔膜は“膜”とはいいながら実際には筋肉と同じ働きをします。胸式呼吸でも横隔膜は最初に動いて肺の拡張収縮を助けますが、腹式呼吸ではより横隔膜の動きを大きくすることでその下の内臓に圧をかけ腹腔内圧の制御や骨盤底筋のコントロールとの協調運動に関与しています。
近年、お腹そのものの運動と共にこの横隔膜の運動も加えることがお腹をへこますためのトレーニングとして重要との理論が確立されています。横隔膜ストレッチを可能にする呼吸器具も開発されていますので試してみるのもいいかもしれません。
お腹へこます:まとめ
お腹周り、特に下腹部は白色脂肪細胞が多く存在するため余分な脂肪が溜まりやすく、特に内臓脂肪の蓄積は生活習慣病や動脈硬化・脳卒中といった病態のリスクが高まります。
お腹周りの脂肪蓄積は日常生活の動きにメリハリをなくし運動不足になることも懸念され、するとさらに一日の活動量が減ってしまうといった悪循環になりかねません。
近年は気になる部分を先に鍛えたり、運動のとっかかりとしてお腹をへこます、お腹まわりをシェイプアップするなど目的別に特化した運動プログラムも増えています。
お腹をへこます、ウエストのサイズダウンのポイントは腹腔内圧のコントロールです。この腹腔の内圧を高めることで普段はほとんど使われない深部筋群が使われるようになり、脂肪燃焼や基礎代謝を高めることが可能です。
腹腔内圧の上昇は内臓機能の働きも活性化させ、栄養素の消化吸収率を高め腸の蠕動運動も活発になることで便秘改善やお肌の老化防止にも役立ちます。
体幹、特にお腹周りはスッキリとシェイプアップすることで見た目の印象がガラリと変わるものです。
健康で充実した日常生活にスッキリしたお腹やメリハリの効いた体幹を目指してみましょう!
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