「ねたきり」とは「寝たきり」のことです。事故や病気によって寝たきりになったり、重症心身障碍者が寝たきりになったりしますが、特に高齢者は、転倒して骨折したり、風邪をこじらしたり、認知症が進行したりして、寝たきりになることが多いようです。
そのため、「寝たきり」というと、「高齢者の寝たきり症候群」を意味することもあります。寝たきりになると、さまざまな弊害が生じて、身体の状態がますます悪くなります。
高齢者を中心として、寝たきりになる原因・寝たきりによって起きる弊害・寝たきりの予防についてお伝えしますね。
寝たきりの原因と状態
「寝たきり」とは、「常に仰臥している」「常にベッドで寝ている」状態を意味する俗語で、医学用語ではありません。
介護用語では、6ヶ月以上ベッドで寝ている状態を「寝たきり」といいます。
寝たきりになるには、事故や疾患によるもの、重症の心身障害など原因は様々ありますが、高齢化社会の現在、高齢者の寝たきりが問題視されることが多くなっています。
[寝たきりになる原因]
寝たきりになる原因は、いろいろあります。
①脳血管障害(脳卒中)による脳神経の損傷
脳出血・クモ膜下出血・脳梗塞・脳動脈瘤破裂などの脳血管疾患が起きて、脳神経を損傷すると、運動機能が障害されて、寝たきりになることがあります。
②心筋梗塞による低酸素脳症
心筋梗塞により心停止が起きると、脳に血液が送られず、酸素が欠乏して脳神経を損傷します。低酸素脳症により、運動機能障害が起きて、寝たきりになることがあります。
③認知症
アルツハイマー型認知症・レピー小体型認知症・脳血管性認知症などの認知症が進行すると、寝たきりになります。
④転倒による骨折
高齢者は骨粗鬆症が起きていることが多く、転んだだけで大腿骨などを骨折しやすいものです。骨折治療などでベッドに寝ていると、筋力が衰えて、寝たきりになることが多いようです。
⑤進行性の筋肉麻痺・進行性の神経麻痺
筋ジストロフィーや筋委縮性側索硬化症などの進行性の筋肉麻痺や、パーキンソン病やハンチントン病などの進行性神経麻痺により、寝たきりになります。
⑥外傷・脳腫瘍
事故などで外傷を受け、脳・脳神経・中枢神経・頸椎・脊椎を損傷すると、寝たきりになることがあります。
脳に腫瘍ができて、脳神経・中枢神経を傷害して、寝たきりになることがあります。
⑦重症心身障害者
脳性麻痺など重症心身障害児(重症児)の3割は、寝たきりになります。
⑧老衰
加齢とともに心身機能が衰えます。運動機能が激しく低下すると寝たきりになります。
[寝たきりの状態]
寝たきりにも、いろいろな状態があります。状態により、必要な介護が異なります。
①遷延性意識障害
遷延性意識障害とは、自力でも介護を受けても、起床できず、意識のない状態です。
定時的に、水分・栄養・医薬品を摂取するには、胃婁(いろう)、経鼻胃管栄養、または、点滴による静脈栄養になります。
定時的に、排泄物のオムツ交換が必要です。
定時的に、誤嚥性肺炎予防のために、痰の吸引と口腔ケアを行います。
定時的に、褥瘡を予防するために、体位交換を行います。
②完全な寝たきり状態
完全な寝たきり状態とは、自分でも介護されても起床できませんが、意識はある状態です。
水分・栄養・医薬品を、口から摂取できる人と、経口摂取が困難または不可能な人がいます。経口摂取ができれば、食事などの介助をします。限定的に経口摂取できる場合は、介助して口から摂取できるようにしながら、胃婁・経鼻胃管・点滴による静脈栄養になります。経口摂取が困難または不可能であれば、胃婁・経鼻胃管・点滴による静脈栄養で摂取します。
定時的に排泄物のオムツ交換が必要です。
誤嚥性肺炎予防のために、定時的に痰吸引と口腔内清浄を行います。
褥瘡予防のために、定時的に寝ている体位を変えます。
③準寝たきり状態
自力では起床できませんが、介護を受ければ起床が可能です。介護を受けて、車椅子・椅子・ソファ・ベンチ・トイレの便座に移動し、座っていることができます。座位を保つことが可能です。
水分・栄養分・医薬品の摂取については、経口摂取できる場合は食事などの介助をします。経口摂取が限定的な場合は、介助と、胃婁・経鼻胃管・点滴による静脈栄養を併用します。経口摂取が困難・不可能な場合は、胃婁・経鼻胃管・点滴による静脈栄養で摂取します。
定時的に、排泄物のオムツ交換が必要です。
誤嚥性肺炎予防のために、定時的な痰除去と口腔内清浄を行います。
定時的に体位交換して、褥瘡を予防します。
急性期・回復期の患者さんには、機能回復訓練(リハビリ)を行い、機能を回復するようにします。
慢性期の患者さんには、定時的に、起床・車椅子やベンチへの移動と座位の保持・トイレ便座での座位の維持をするように介護します。できるだけトイレに座って排泄できるようにリハビリ訓練を行います。
機能回復訓練(リハビリ訓練)は、介護施設でも自宅でも病院でも行えます。自宅の場合は、訪問介護・訪問リハビリによって行います。
寝たきりがもたらす悪影響
寝たきりになると、身体のいろいろな機能・能力が衰えてくるだけでなく、認知症の進行など精神的にも後退が目立つようになります。
寝たきりになった高齢者の心身症状を「寝たきり症候群」「廃用症候群」といいます。
[寝たきりは、なぜ身体に悪いのか?]
ヒトは常に地球の重力の影響を受けています。私達が立ったり歩いたり、普通に生活することは、全て重力に逆らっているのです。ヒトの身体の組織や機能は、長い間に重力耐性をつけるように変化してきました。
重力に抵抗するとは、立ったり歩いたり、普通に運動することです。ヒトは適度に重力に抵抗することで、健康や体力を維持できるのです。
寝たきりになると、重力の抵抗をほとんど受けなくなります。疑似無重力状態です。そのため、全身のいろいろな器官が悪影響を受けるようになります。
[寝たきりが身体に与える弊害]
寝たきり状態が続くと、全身のいろいろな器官に弊害・障害が生じます。
- 心臓血管の弊害として、立位を維持する能力(立位耐性)が衰えます。
- 肺には、無気肺(気管支が閉塞して肺に空気が入らず、肺がつぶれている状態)や、肺炎が起きます。
- 神経系にも悪影響を与え、身体の動揺が増大し、圧迫性神経疾患が発症します。
- 筋肉が衰え、関節拘縮が起きます。
- 骨格に重力がかからないため、カルシウムが溶けて流れ出てしまい、高カルシウム血症や骨粗鬆症になります。
- 便秘・尿失禁・褥瘡(床ずれ)が起きます。
このように、身体全体にいろいろな弊害・障害が生じますが、中でも注目されるのは、循環調節機能の低下と認知症の進行です。
[循環調節機能障害]
循環調節機能と立位耐性は密接な関係があります。長い間寝たきりでいる(長期臥床)と、立位耐性が低下し、循環調節機能が障害されます。
循環調節機能のおかげで立位・座位姿勢を継続できる
ヒトが臥位から立ち上がると、重力によって血液が下肢に流れて溜まります。心臓に戻る血液が少なくなるので、次に心臓から送り出す血液が減少します。血圧が低下して、脳に届く血量が不足し、めまいが生じて立っていられなくなります。
ヒトが重力に抵抗して立位・座位を維持して生活できるようにしているのが、循環調節という機能、循環調節機構なのです。
(心拍数の増加)
血圧が一定水準以下に低下すると、循環調節機能が働き、心臓や血管内の圧受容器の活動が抑制され、交感神経の活動が活発化して、心拍数が増加します。つまり、血液を送り出す回数を増やして、血液量の減少を補償するのです。
(血管収縮)
もう一つの調節機能として、末梢血管(四肢の血管)を収縮させ、血管抵抗を高め、血圧を上げます。血圧が上がるので、脳血流を一定に維持し、立位・座位を保ちながら、日常生活を支障なく送れるようになります。
循環調節能力の比較
循環調節能力を測定する機器が「下半身陰圧負荷装置」です。この装置を使って、心身障害者コロニーの重症心身障害児(重症児)と健常者の循環調節能力を比較しました。
重症児は寝たきり状態ですから、水平臥床の姿勢のまま陰圧負荷装置を使用します。寝たまま、装置のカプセルに下半身を入れ、カプセル内を陰圧にして(減圧して)、血液が下肢に流れて貯留するようにします。陰圧の程度で、直立した時、座っている時などと同じ状態にできます。健常者も同じ姿勢で同じ装置で下半身陰圧負荷を行います。
(陰圧負荷に対する血圧維持)
健常者と重症児に下半身陰圧負荷を行い、その平均血圧を比較します。
健常者群は、陰圧負荷に対しても、一定水準の血圧を維持できます。重症児は、全体に健常者の平均血圧を下廻りましたが、その中でも健常者の血圧に近い人達を「血圧維持群」、それよりも血圧が低い人を「血圧低下群」とよぶことにしました。
健常者は陰圧負荷に対して、心拍数が増大し、循環調節機能が正常に働いていることを示しました。しかし、重症児の血圧維持群では、心拍数は少し増えただけです。血圧低下群では、心拍数は変わらないか、むしろ減少しています。つまり、重症児の血圧維持群では、心拍数増加による血圧維持の調節能力が低下しています。血圧低下群では、心拍数増加による補償機構が働いていないのです。
(陰圧時の血管収縮)
血管収縮はノルエピネフリンというホルモンの濃度を指標として検査しました。健常者は安静時より陰圧時の方がノルエピネフリン濃度が増加して、血管収縮が正常に行われていることがわかります。
重症児は、安静時にノルエピネフリン濃度が高く、陰圧時に有意な変化が見られません。血圧低下群は血圧維持群よりも変化が小さくなりました。つまり、重症児では、血管収縮能力が低下しているのです。
長期臥床は循環調節機能を傷害する
わずか1~2ヶ月間、臥床して安静を保っていただけでも、全身の全血液量が低下します。そのために、循環調節機能が過剰に反応して、機能低下が起きます。
「寝たきり」とは、介護の用語で「6ヵ月以上臥床が続く状態」です。長く臥床状態が続くと、重力に対する適応能力が損なわれ、循環調節機能が障害されます。
寝たきりの人が立位や座位をとると、めまい・チアノーゼ・浮腫(むくみ)・血圧低下が起きます。そのため、立位や座位を維持できず、横になってしまいます。寝ているので、循環調節機能がさらに低下して・・・と、悪循環に陥ってしまいます。
重力に抵抗する姿勢が機能を回復する
寝たきりの重症児でも、血圧維持群は日常生活の中で座るという抗重力姿勢を取る機会がありますが、血圧低下群は完全に寝たきり状態でした。
介助を受けながら立つ、あるいは車椅子やソファに座るという重力に抵抗する姿勢を取ることで、循環調節機能だけでなく、身体の様々な機能を回復することができるのです。
[認知症の進行]
高齢者は、寝ている状態が続くと、認知症が進行します。あるいは、加齢により多少物忘れがある程度の人でも、安静状態が続くと認知症を発症したり、そのまま寝たきりになったりしてしまいます。
脳への刺激が少なくなる
私達は、日常生活の中で、外界からの多種多様な刺激に反応して、身体を動かし、物を考えています。脳に流れる血量も多く、脳は活発に働いています。しかし、寝ている状態では、外界から受ける刺激が極端に少なくなります。
ベッドに寝ている状態では、眠っているか、ぼんやりしているかの時間が多くなり、脳に対する刺激は、ほとんどなくなります。脳は不活発になり、何をする意欲もなくなります。
筋肉が衰えて、悪循環に陥る
ベッドに横になってばかりいると、筋肉や消化機能など身体機能が衰えます。ベッドから降りて立とうとすればフラフラするし、枕によりかかって座っていることもつらくなります。
自分では寝返りもうてなくなり、褥瘡(床ずれ)ができやすくなります。運動能力が低下して、さらに筋力が衰え・・・と、悪循環が起きます。
ちょっとした入院から寝たきり・認知症へ
今まで元気だった高齢者が、転んで足を折ったり、インフルエンザをこじらせたり、胆石の手術を受けたりなど、ちょっとしたことで入院し、安静を保っていたところ、認知症を発症することは、珍しくありません。
認知症とともに運動能力も衰えますから、寝たきりになり、病院から老人介護施設・養護老人ホームに直行することもあります。
寝たきり老人は作られる
寝たきり老人は日本では珍しくありませんが、欧米では、ほとんどいません。福祉大国スウェーデンの長期老人介護施設では、寝たきりの高齢者は4.2%しかいません。
それに対し、日本の長期老人介護施設では33.8%の高齢者が寝たきりなのです。世界の先進国の中では、最悪の数字です。
[健康寿命は70歳前半]
日本は、世界でも有数の長寿国で、平均寿命は男性79.55歳、女性は86.30歳です。ところが健康寿命を見ると、男性70.42歳、女性は73.62歳なのです。健康寿命とは、「何の制限もなく日常生活が営める年齢」ですから、男女とも健康で自由に暮らせるのは70歳前後まで、後の10年ほどは病気と闘いながら生きるわけです。
認知症や慢性の持病に苦しみながら、最悪は寝たきりとなって、長生きするのです。医療の発達のおかげで、昔なら死んでしまうような病気でも治療して、延命することができます。
[欧米に寝たきり老人が少ない理由]
欧米に寝たきりの高齢者が少ないのは、死に対する考え方と自立心が日本と大きく異なるからです。また、国の方針が「働けない高齢者は無用の存在」だから、寝たきり老人が増えるのです。
欧米では、無用な延命医療はしない
欧米では、「死は自然に迎える」ようにしています。「人間の尊厳を保ったまま、自然に死ぬこと」を良しとしています。無用な延命治療はしません。
(胃婁は高齢者虐待)
日本では、口から食事を摂れなくなった高齢者や寝たきりの障害者に、胃婁や経鼻胃管の挿入により、栄養や水分を摂取させます。静脈に点滴することもあります。
欧米では、「終末を迎える者が普通に食事ができないのは当然」と考えます。胃婁や経鼻胃管は虐待・倫理に反することと見なします。
私の母は90歳近くなってから食道癌を再発し、痛くて物が呑み込めないようになりました。医師の勧めるまま、胃婁をしたのですが、痛みと便秘に苦しみ、腹部に溜まったガスにより心不全を起こして亡くなりました。食べられなくてもいいから、薬が飲めなくてもいいから、胃婁をしなければ、あれほど苦しまずに済んだと、5年経った今でも悔やんでいます。
(安らぎを与える終末期医療)
無駄な延命措置・濃厚医療が、高齢者を寝たきりにして苦しめることがあるのです。終末期医療で大切なことは、延命ではなく、苦痛の緩和と安らぎです。だれもが、平穏に終末を迎えられるようにしたいものです。
自立が大事
欧米の高齢者は、終末期まで自立していようとします。嫁や娘の世話になったり、子供家族と同居したりなど考えません。老人介護施設に入所する人もいますが、多くは自宅で終末を迎えようとします。
自立していようと思えば、寝たきりにならないように努力します。介護する人達も、高齢者の意思を尊重して、自立を支援します。
働けない高齢者は無用
日本は、国民健康保険や介護保険の制度が整い、いかにも福祉先進国に見えますが、実情は老人福祉後進国です。
(姥捨て思想)
将来のある子供達や労働力である若年層に対して、国は様々な支援策を行います。しかし、高齢者社会でありながら、働けなくなった高齢者には冷たいものです。何かというと、年金を削り、医療費負担を増大させ、病気をすれば、寝たきりにしてしまう・・・まさに、姥捨て思想ですね。
(介護するのは家族)
高齢者の介護は、家族に押し付けます。嫁や娘は介護に明け暮れて疲れ果て、寝たきり老人を作ってしまいます。夫婦や兄弟姉妹による介護は、介護されるのも高齢者、介護するのも高齢者となります。適切な介護が行われなければ、介護高齢者は寝たきりになってしまうのです。
(在宅介護の充実が寝たきりを防ぐ)
スウェーデンでも介護費用を無制限にかけることはできません。介護費用を節約するために、老人介護施設による介護よりも、在宅介護を充実させたのです。1日に数回、訪問介護を行って、高齢者が自宅で自立して暮らせるようにしています。
日本でも在宅介護が増えてきましたが、独り暮らしの高齢者が認知症になると、養護老人ホームの入所を勧めるようです。施設にもよりますが、自立を奪われた高齢者は認知症が進行し、寝たきりになってしまうことが多いようです。
[寝たきり予防の6ヶ条]
高齢になっても、自分らしく生きて、人生を楽しみたいですよね。それには、寝たきりにならないようにすることです。
昔から「風邪をひくな。転んで骨を折るな。無用の義理に縛られるな」が、高齢者が健康に暮らす秘訣と言われています。「ひくな。転ぶな。義理を欠け」は、現代の高齢化社会にも通用する言葉です。
①脳血管障害と骨折に気をつける
脳血管障害(脳出血・脳梗塞など)、いわゆる脳卒中を起こすと、四肢が麻痺したり、言語障害が出たりして、高齢者はショックを受けます。脳血管性認知症を発症することもあります。意欲も気力も失い、機能回復訓練(リハビリテーション訓練)を受けるのも嫌がります。運動能力は衰える一方で、やがて寝たきりになってしまいます。
高齢者は骨粗鬆が多いので、ちょっと転んでも、骨折しやすいようです。骨折すると、痛みのために身体が動かせなくなり、ベッドで寝ていることが多くなります。わずか1~2ヶ月でも寝ていると、筋肉が衰え、関節が固まり、循環調節機能が低下して、起きられなくなります。
②過度な安静は寝たきりへの第一歩
高齢者は風邪をひいただけでも大事をとって安静にしがちです。家族や介護する人達も安静を勧めます。これに甘えてしまい、自分でできることもしなくなり、寝たきりになってしまうことがあります。
ケガをしたり、病気をしたりした時は、医師と相談しながら、できるだけ早く離床するようにします。自立した生活に戻るようにします。
③リハビリは早期に始めて継続する
脳血管疾患や骨折、ケガなどで運動機能に障害が生じた場合は、できるだけ早いうちから機能回復訓練を始めます。脳血管障害で神経を損傷しても、リハビリによって周囲の神経が補おうとします。
リハビリは、自立した生活を取り戻すために行います。独りで座って食事をし、トイレの便座に座って排泄できるようにします。独りで着替えできるようにします。車椅子で移動するようにします。「座位を維持して食事・排泄、独りで着替え」は、寝たきり予防の基本です。
座位を維持できるようになったら、歩行器や杖を使って歩行訓練を始めます。病院やリハビリ施設の訓練室で歩行するだけでなく、病院内・施設内を歩けるようにします。
自宅に戻ってからも、訪問リハビリや機能訓練デイサービスを利用して、機能回復訓練を続けるようにします。障害高齢者は、杖や車椅子を使って、できるだけ散歩したり、外出したりして、人と交流するようにします。
④生活にメリハリをつけ、自立を保つ
多少身体が不自由になっても、認知症を発症しても、自分ができることは、自分でするようにして、自立を保つようにします。特に、独りでトイレの便座に座って排泄することは、自立の基本です。
朝は必ず着替え、1日中パジャマで過ごさないようにします。散歩など軽い運動を日課にして、ぼんやりしていることがないようにします。
自立した生活を保つためには、環境を整えることも必要です。障害高齢者が、できる限り自宅で暮らしたいのであれば、バリアフリーにリフォームします。バリアフリーにすると、障害高齢者でなくても、転倒する可能性が低くなります。
⑤地域の介護・福祉サービスをフルに活用する
独り暮らしの高齢者も、家族と同居の高齢者も、自宅で自立した生活を続けたいのであれば、地域の在宅介護支援サービスをできるだけ利用します。厚生労働省も、現在は、在宅介護や在宅医療を奨めているので、介護支援サービスや介護制度も充実しつつあります。
機能訓練デイサービス・訪問医療・訪問介護・ホームヘルパーなどの支援を活用すると、介護高齢者も介護者も無理をせずに、自宅で暮らすことができます。介護保険が適用されることが多いので、地域の福祉関係者とよく相談してくださいね。
認知症の介護は、寝たきりではなくても、介護する家族に大きな負担がかかります。介護者支援の制度やサービスを活用すると負担が減ります。ショートステイを定期的に利用すると、息抜きができるので、高齢者介護がずっと楽になります。
⑥老人介護施設への入所は、高齢者本人の意思を確かめて
高齢者を介護する施設は多種多様です。民間経営の有料介護付き老人ホームやグループホーム、福祉法人・医療法人が営む特別養護老人ホームなどがあり、費用もシステムも異なります。民営の施設には、寝たきりになった場合は退所する決まりになっているホームや、介護保険が適用されない施設もありますから、入所する前に、慎重に検討する必要があります。
一番大事なことは、高齢者の意思です。寂しいけれど、自宅での独り暮らしを望む高齢者もいます。家族との同居を熱望する高齢者もいます。また、高齢者同士助け合って暮らすグループホームや、行き届いた介護を受けられる老人ホームへの入所を希望する人もいます。
ただし、あまりにも行き届いた介護をする老人介護施設に入所すると、認知症が進行したり、寝たきりになってしまう可能性もあるそうです。
まとめ 寝たきり高齢者は作られる
6ヶ月以上臥床状態が続くことを「寝たきり」といいます。高齢者社会では、「高齢者寝たきり症候群」「廃用症候群」を意味することがあります。
寝たきりでいると、身体の諸機能がどんどん衰えていき、合併症を発症することもあります。ヒトは長い間に重力に適応するように身体を造り上げてきました。重力に抵抗して座ったり、立ったり、動いたりすることで、健康や体力を維持できるようになっています。寝たきりでいると、重力に抵抗することがないので、いろいろな機能が衰えます。最も障害されるのが循環調節機能です。
寝たきりでいると、精神的にも衰えます。脳に対する刺激が少なくなり、脳が活発に働きません。認知症が発症したり、進行したりします。
寝たきりになる原因は、いろいろあります。高齢者の場合は、脳血管障害と骨折、認知症が原因となることが多いようです。
欧米では、自立を保ちながら、自然な終末期を迎えることを良しとしていますが、日本では、医療の手を尽くして延命するために、寝たきりの高齢者が増えてしまいます。また、適切な介護を受けられなかったり、高齢者が甘えたりするために、寝たきりになることが多いようです。
「寝たきりは作られる」のです。高齢者本人と家族など周囲の人々の努力で、寝たきりを防ぐことができます。同じ長生きするのなら、自立を保ち、自分らしく、日々を平穏に過ごしたいものです。
「ひくな。転ぶな。義理を欠け」を忘れずに、元気に長生きしましょう!
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