「風邪をひいたかな?喉が痛いし、鼻水が出るし・・・」などと思っていたら、急に首が腫れて痛くなったという場合は、「亜急性甲状腺炎」かもしれません。
甲状腺の病気というと、「バセドウ病」や「橋本病」が知られていますが、亜急性甲状腺炎も甲状腺疾患の1つです。甲状腺の腫れに、痛みや発熱がともなうことが特徴です。自然に治ることが多く、めったに再発することもありません。
30代・40代の女性に発症することが多く、男性の12倍もかかりやすいといいます。亜急性甲状腺炎の原因や症状、治療法についてお伝えしますね。
亜急性甲状腺炎とはどのような病気?
「亜急性甲状腺炎」とは甲状腺疾患の1種です。甲状腺に炎症が起き、甲状腺が腫れて痛み、発熱します。自然治癒する性質の病気で、慢性化したり、再発したりすることもありません。
「亜急性」とは、急性より長く続く、急性と慢性の中間のようなものですから、治るまでに2~4ヵ月かかります。
30代・40代の女性に発症することが多く、男性の12倍もかかりやすいそうです。夏に発症することが多いようですが、冬に発症することもあります。
[亜急性甲状腺炎の原因]
亜急性甲状腺炎の原因は、まだはっきりしていません。亜急性甲状腺炎は、上気道の炎症に引き続いて発症するので、「ウィルスによる感染症」という説があります。しかし、感染の起因となるウィルスは、まだ特定されていません。
ウィルス性上気道炎との関連や起因ウィルスがはっきりすれば、ウイルス感染という説が、強くなるかもしれません。
ただし、人から人へ感染することはありません。
[亜急性甲状腺炎の症状]
亜急性甲状腺炎の特徴は、甲状腺が腫れて、痛みが生じ、発熱することです。
風邪のような症状
風邪のような症状が、亜急性甲状腺炎の前駆症状です。上気道の炎症、つまり咽頭炎・喉頭炎・扁桃炎・鼻腔炎が起こります。喉が痛くなり、鼻が詰まったり、鼻水が出たりします。この風邪のような症状は、ウィルス性の上気道感染の可能性があります。
風邪のような症状が出てから、2~3週間すると、突然、首の前の部分が腫れて痛みます。
甲状腺の腫れと痛み
①甲状腺の腫れ
突然、首の前の部分、つまり甲状腺の辺りが硬く腫れます。甲状腺全体が硬く腫れることもありますが、多くの場合、左右の甲状腺のどちらかの1部が硬く腫れます。
②甲状腺の痛み
甲状腺が腫れると、痛みが生じます。痛みの程度はいろいろです。
「あくびをしたり、首を伸ばしたりすると、少し痛い」という程度から、「首に触れただけで、ガマンできないほど痛い」という程度まで、人によって痛みが異なります(自発痛)。痛くて首が動かせないとか、痛くて飲食物を飲み込むのに苦労するとか、耐え難いほどの痛みが生じることがあります。
硬く腫れている甲状腺を押すと、痛みがあります(圧痛)。腫れも痛みも左右に移ります。初め、左側の甲状腺が腫れて痛んでいたら、しばらくすると、右側の甲状腺が腫れて痛むようになるという具合です。右に発症して左に移る場合もあります。
耳の後ろや頭まで痛くなる場合もあります。奥歯の痛みと感じることもあります。そのため、甲状腺疾患と思わず、耳鼻科・神経内科・歯科・整形外科などを受診する患者さんが多いようです。
③発熱
発熱します。微熱程度で済む場合も、38~40℃近い高熱が出る場合もあります。
甲状腺機能亢進症状
甲状腺が炎症を起こすため、甲状腺組織が破壊され、蓄積されていた甲状腺ホルモンが血液中に放出されます。血液中の甲状腺濃度が上昇して、甲状腺機能亢進症の症状とよく似ている甲状腺中毒症が起こります。一過性の甲状腺中毒症です。
心臓の活動が活発になり、頻脈になります。動悸や息切れが激しくなります。
全身に強い倦怠感があります。めまいや震えが生じ、暑さに極めて弱くなります。イライラや不安感が強くなります。大食・多飲・多尿・多量の発汗などが起きます。エネルギー消費量が増して、体重が減少することもあります。
甲状腺に蓄積されている甲状腺ホルモンの量は、普通は1ヵ月程度です。蓄積されている甲状腺ホルモンが全部放出してしまうと、甲状腺機能亢進の症状は自然に収まります。
人によっては、甲状腺ホルモンが正常に戻る前に、一時、甲状腺機能低下症になることがあります。一過性のものです。
(バセドウ病などの甲状腺機能亢進症との違い)
甲状腺機能亢進症が起きる原因として、最も多いのが「バセドウ病」です。バセドウ病は自己免疫疾患の1つです。身体の中に甲状腺を刺激する自己抗体ができて、これが甲状腺刺激ホルモンの代わりに甲状腺を刺激し、甲状腺ホルモンをどんどん合成してしまうのです。
バセドウ病では、過剰に甲状腺ホルモンが合成されて甲状腺機能亢進症を起こしますが、亜急性甲状腺炎では、甲状腺に蓄積された甲状腺ホルモン血液中に流れ出すだけですから、蓄積されたホルモンがなくなってしまえば、症状が続かなくなります。
亜急性甲状腺炎の治療
亜急性甲状腺炎は、甲状腺の腫れに痛みと発熱がともなうという特徴があるので、診断は、それほど難しいことはありません。むしろ、患者さん本人が甲状腺の病気と思わず、耳鼻科や歯科、脳神経内科などを受診することが多いようです。
亜急性甲状腺炎は自然治癒する性質の病気なので、治療は対症療法が主になります。
[亜急性甲状腺炎の診断]
問診・超音波検査・血液検査・アイソトープ(放射性ヨウ素)検査を行った結果で、診断します。
問診
甲状腺の腫れ・圧痛を触診して確認します。発熱や痛みの様子を患者さんから聞き取ります。だいたい、これで亜急性甲状腺炎と診断できますが、痛みをともなう甲状腺疾患が他にもあるので、超音波検査を行います。
超音波検査
甲状腺の中に小さな腺腫があると、出血して、血豆のような嚢胞(シスト)ができることがあります。この嚢胞は痛みを生じます。
超音波断層検査を行い、痛みのある部分に低エコー部が認められれば、亜急性甲状腺炎です。
血液検査
血液検査では、赤血球沈降速度とCRPの値を調べます。亜急性甲状腺炎では、赤血球沈降速度(血沈)が異常に低下します。炎症や感染症を示す指数であるCRPの測定値が上昇し、炎症反応が陽性になります。
血液中の甲状腺ホルモン濃度を調べます。甲状腺に蓄積されている甲状腺ホルモンが血液中に流れ込むので、甲状腺ホルモン濃度が高くなります。甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度は低下します。
バセドウ病でも、甲状腺ホルモン濃度が高く、甲状腺刺激ホルモン濃度は低くなります。しかし、亜急性甲状腺炎は、バセドウ病と異って、甲状腺刺激ホルモンが測定限界値より低くなることはありません。また、バセドウ病の原因となるTSH受容体抗体(TSHレセプター抗体)は、陰性です。
アイソトープ(放射性ヨウ素)検査
亜急性甲状腺炎では、甲状腺にヨウ素が取り込まれていません。バセドウ病ではヨウ素が取り込まれているので、アイソトープ検査で両者を判別することができます。
[治療]
亜急性甲状腺炎は自然に治る性質の病気ですから、治療は対症療法です。痛みや高熱を鎮め、動悸や震えなどの甲状腺中毒症の症状を抑えるようにします。
亜急性甲状腺炎は2~4ヵ月に渡る病気ですから、治療薬も長期に服用する必要があります。当然、副作用がありますから、お医者さんとよく相談しながら、指示に従って服用することが大事です。
アスピリンなど非ステロイド系抗炎症剤と鎮痛剤
炎症を抑え、痛みと発熱を鎮めることが必要ですから、軽症ならば、アスピリンなどの非ステロイド系抗炎症剤を服用します。痛みが強い場合は、鎮痛剤を併用します。
アスピリンなど非ステロイド系抗炎症剤を長く使用すると、胃痛や腹痛などの胃の不快感が生じることが多いので、お医者さんに胃腸薬を処方してもらいます。
また、非ステロイド系抗炎症剤は、血液が凝固するのを妨げて、出血しやすくなることがあります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍など出血性の持病がある人は、要注意です。お医者さんが投与できない場合もあります。
抗炎症剤・鎮痛剤は市販薬も多数ありますが、長期に渡って服用しますから、副作用を少なくするためにも、お医者さんの処方に従って服用することをオススメします。
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)
亜急性甲状腺炎には、プレドニン(プレドニゾロン)やデキサメサゾンなどの副腎皮質ホルモン剤、つまりステロイド剤が劇的な効果を上げます。ステロイド剤を服用すると、痛みがケロッと収まり、高い熱も下がります。
しかし、症状が収まったからといって、すぐ服用を止めると、ぶり返すことが多くなります。そのため、お医者さんの指導に従い、2ヵ月ほどかけて、少しずつ服用量を減らしていきます。ただし、高用量のステロイド剤の服用は2~3週間だけです。
ステロイドは効き目は高いのですが、副作用も大きくなります。顔が丸くなるムーンフェイスや筋力の低下が起きることがあります。血圧や血糖値が高くなることが多いようです。人によっては、糖尿病になることもあります。骨格内のカルシウム量が低下することもあります。
ステロイドの副作用を警戒するために、ステロイド薬の投与は慎重になります。首の痛みが耐え難いほどひどいとか、40℃前後の高熱が続くとか、症状が重篤な場合や、非ステロイド系抗炎症剤などを1~3週間投与しても効果がない場合、持病や体質などのために非ステロイド系抗炎症薬が使えない場合に、ステロイド薬を投与することになります。
「副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)は副作用が大きい」と、ステロイド剤を嫌う人も少なくありません。しかし、ステロイド剤は、亜急性甲状腺炎には極めて有効な薬です。お医者さんの指示に従い、よく相談しながら服用すれば、心配することはありません。
ベータ・ブロッカーの類
ベータ・ブロッカー(交感神経ベータ受容体遮断薬)やその類の薬剤は、甲状腺機能亢進のために、心臓や他の臓器が受ける影響を和らげます。動悸や息切れを抑えることができます。
イライラや不安などの精神的な症状や暑さに弱いことも、多少緩和してくれます。
症状が収まるにつれて、少しずつ薬を減らす
非ステロイド系抗炎症剤もステロイド剤も、症状が改善されるにつれて、少しずつ減らしていきます。
薬剤の減少や中止について、素人判断は極めて危険です。必ず、お医者さんの指示に従う必要があります。
甲状腺ホルモン補充
患者さんによっては、回復する前に、甲状腺ホルモンが低下することがあります。これは、炎症によって組織を破壊された甲状腺が正常に甲状腺ホルモンを産生できるようになるには、時間がかかるためです。
人によっては、甲状腺ホルモン低下症が発症して、強い倦怠感・疲労感を感じることがあります。また、特に治療を要するような症状の出ない人もいます。
甲状腺ホルモン低下症の症状が強い場合は、甲状腺ホルモン補充剤(L-サイロキシン)を投与して、血液中の甲状腺ホルモン濃度を正常レベルにします。
症状の重い時期は、安静に
亜急性甲状腺炎の症状が重い間は、できるだけ安静にするようにします。入浴を控える方がいいこともあります。
食物制限はありません。非ステロイド系抗炎症剤を服用していると、胃を荒らすこともあるので、なるべく消化のいい、刺激の少ない食事にします。
慢性化することも、再発することもない
甲状腺は自然に回復して、機能も正常にもどります。こじらしてしまって慢性化することも、再発する心配もありません。
甲状腺の腫れがひいて正常な形態に戻り、指で触れても異常な硬さを感じることがなく、押しても痛みがありません。ここで、治療は終了します。
再発ではありませんが、100人中5人程度が、亜急性甲状腺炎に2度かかることがあります。以前は1000人中1人と言われていましたが、不運な人が増えたようです。感染症という説が正しければ、一生に何回感染しても不思議ではありませんね。
[病院の何科を受診するの?]
亜急性甲状腺炎をはじめ甲状腺に異常があると思われたら、まず、かかりつけのお医者さんに相談し、総合病院か大学病院の内分泌科または内科を紹介してもらいます。
内分泌科もしくは内科を受診して、検査・診断・治療となります。
甲状腺疾患には、専門病院があります。東京では伊藤病院、大阪の長崎クリニックが有名です。日本甲状腺学会に問い合わせれば、近くにある認定甲状腺専門医を紹介してくれます。
甲状腺疾患について
甲状腺疾患は亜急性甲状腺炎の他にもいろいろあります。亜急性甲状腺炎と異なり、慢性化したり、再発したりする疾患もあります。
甲状腺疾患は、甲状腺の機能が変化する場合(亢進と低下)と、甲状腺の形状が変化する場合(甲状腺腫)とに分けて考えます。たいていの甲状腺疾患では、甲状腺が腫れて、甲状腺機能が変化します。
甲状腺疾患は、「お医者さんの適正な治療を受けさえすれば、それほど恐ろしい病気ではありません」と、伊藤病院の院長は言います。
[甲状腺ホルモン]
甲状腺ホルモンは甲状腺で合成され、身体の新陳代謝を盛んにします。
甲状腺
甲状腺は、首の前方にあり、蝶の羽を広げたような形で気管を抱くようにしています。とても薄い臓器ですから、正常な状態では、指で触ってもわかりません。それだけに、腫れてくると、指に触れますし、外から見ただけで腫れていることがわかるようになります。
甲状腺は内分泌器官といい、食物のヨウ素から甲状腺ホルモンを合成します。ヨウ素はワカメや昆布などの海藻に多く含まれています。
甲状腺ホルモンの働き
食物に含まれるタンパク質・脂肪・炭水化物は代謝されて、身体の組織を作ったり、エネルギーとなったりします。甲状腺ホルモンは、この代謝を促進したり、新陳代謝の過程を刺激したりする働きがあります。
甲状腺刺激ホルモンの働き
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳下垂体で分泌され、甲状腺ホルモンの合成を促進する働きがあります。
甲状腺ホルモンが低下すれば、甲状腺刺激ホルモンが分泌されて甲状腺を刺激します。逆に、甲状腺ホルモンが分泌過多になると、甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制され、甲状腺ホルモンを減少させるようにします。
甲状腺刺激ホルモンは、血液中の甲状腺ホルモン濃度を一定に保ち、正常に機能するようにしています。
[バセドウ病]
甲状腺ホルモンが異常に多く合成される、甲状腺機能亢進症の代表的な疾患です。
20代・30代に多く発症し、次いで40代、50代が発症します。男性対女性の発症比率は1:4です。甲状腺疾患全体の男女発症比は1:9なので、男性にも発症する疾患と言えます。
バセドウ病の原因
バセドウ病は自己免疫疾患の1つです。
免疫システムとは、身体の外から侵入する異物(細菌やウィルスなど)や、身体の中に生じる異物(癌など)を見つけて攻撃し、排除する仕組みです。免疫システムにより、ヒトは健康を維持しています。
ところが、免疫システムが狂ってしまうと、敵と味方の区別がつかなくなり、自分の身体の細胞や組織を攻撃するようになります。これが「自己免疫疾患」です。自己免疫疾患としては、膠原病がよく知られています。
甲状腺の表面には、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の受容体(レセプター)があります。バセドウ病では、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体(TSH受容体抗体)ができてしまいます。このTSH受容体抗体が、甲状腺刺激ホルモン(TSH)に代わって甲状腺刺激ホルモン受容体を攻撃するようになります。甲状腺刺激ホルモン受容体は刺激を受けて、甲状腺ホルモンをどんどん合成するようになります。甲状腺機能亢進症です。
TSH受容体抗体は甲状腺刺激ホルモンのように脳下垂体でコントロールされないので、甲状腺ホルモンは、合成され続けるのです。
遺伝的な要因も関係しているようです。
バセドウ病の症状
バセドウ病の症状は、①甲状腺腫 ②眼球突出 ③甲状腺ホルモン分泌過多による症状です。
①甲状腺腫
甲状腺全体がそのままの形で腫れます。若い人の方が大きく腫れて、首が太く見えることがあります。
②眼球突出
バセドウ病による眼の異常を、「バセドウ病眼症」といいます。眼が飛び出てきたり、上瞼(まぶた)が引っ張られて、眼が大きく見えたり、上瞼が腫れたように見えたりします。
③甲状腺ホルモン分泌過多による症状
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるため、代謝が活発になりすぎます。亜急性甲状腺炎の症状で書いたように、頻脈や動悸、息切れ、発汗、手の震えなどが起こります。エネルギー消費量が多くなるので、食事量が多くなっても、体重は減少します。強い倦怠感・疲労感、不安感、イライラがあります。
バセドウ病の治療
バセドウ病の主な治療方法は3つです。抗甲状腺薬などの服用、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術による甲状腺の切除です。
バセドウ病については、バセドウ病の初期症状とは?チェックする方法を紹介!を読んでおきましょう。
[橋本病]
甲状腺に慢性の炎症が起きる病気で「慢性甲状腺炎」ともいいます。自己免疫疾患の1つと考えられています。
甲状腺ホルモンの合成に影響がない場合もありますが、合成が低下することが多いようです(甲状腺機能低下症)。甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出すことがありますが、痛みはないので、「無痛性甲状腺炎」とも呼ばれます。
圧倒的に女性に多い病気で、男女の発症率比は1:20~30です。30代・40代に多く発症します。
橋本病の原因
免疫システムが何かの原因で狂い、ある種のリンパ球が甲状腺を攻撃するために炎症が起こるらしいと、考えられています。まだ、はっきり解明されていません。
橋本病の症状
甲状腺が硬く腫れてゴツゴツした感じになります。
甲状腺機能が低下すると、甲状腺の分泌量が減少し、代謝機能が低下します。「粘液水腫」というむくみが生じます。寒がりになり、皮膚が乾燥します。脈がゆっくり、弱く打つようになります。無気力になり、頭の回転が鈍くなります。
心臓機能・肝臓機能が低下します。人によっては、コレステロールが増えて動脈硬化を促進することもあります。
橋本病の治療
甲状腺機能低下症がなければ、特に治療を必要としないこともあります。甲状腺機能低下が激しければ、甲状腺ホルモンを補充します。血液中の甲状腺ホルモン濃度を確認しながら、慎重に薬を投与します。
橋本病については、橋本病は妊娠しくいの?症状や対処方法についてを読んでおきましょう。
[その他]
単純性びまん性甲状腺腫(甲状腺がその形のまま腫れるだけで、甲状腺ホルモンの合成には異常がない)、腫瘍性甲状腺疾患(甲状腺に腫瘍ができる)などが、あります。
まとめ 亜急性甲状腺炎は自然治癒する性質の疾患です
亜急性甲状腺炎は、甲状腺疾患の中でも、比較的心配の少ない病気です。甲状腺に炎症が起き、治るまでに2~4ヵ月かかるので、亜急性といいます。
30代・40代の女性に多く発症します。夏場に発症することが多いようです。咽頭・喉頭・扁桃・鼻腔の上気道炎(風邪のような症状)にかかった後に発症するので、ウィルス感染が原因ではないかという説があります。しかし、まだ、起因となるウィルスが特定されていません。
亜急性甲状腺炎の特徴は、甲状腺の腫れ、首の痛みと発熱です。バセドウ病他の甲状腺疾患では、甲状腺が腫れても、痛みや発熱をともなうことは、ほとんどありません。
甲状腺が炎症を起こして、甲状腺組織が破壊され、甲状腺内に蓄積された甲状腺ホルモンが血液中に漏れ出します。そのため、一過性の甲状腺中毒症状が見られます。血液中の甲状腺ホルモン濃度が一時的に高くなるので、甲状腺機能亢進症と同じように、動悸・息切れ・発汗・手の震えなどが生じます。
甲状腺内に蓄積されている甲状腺ホルモンの量は1ヵ月程度です。蓄積された甲状腺ホルモンがなくなれば、症状も収まり、血中の甲状腺ホルモン濃度も正常に戻ります。
亜急性甲状腺炎は自然に治る性質の病気ですから、治療は、炎症や痛みを抑えることが主になります。副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が、劇的な効果を上げます。動悸や息切れには、ベータ・ブロッカーが効きます。
非ステロイド系抗炎症もステロイド剤も長く服用する必要があるので、お医者さんとよく相談して、その指示に従うことが大事です。
亜急性甲状腺炎は完全に治ります。慢性化したり、再発したりすることはありません。しかし、似たような症状の甲状腺疾患があります。甲状腺疾患の中には、治療が遅れると厄介なことになるものもありますので、できるだけ早く、内分泌科か内科のお医者さんを受診してくだいね。
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