バセドウ病は、早期に治療を受ければ治る病気です。しかし、治療が遅れると、心不全など命にかかわる病気を引き起こします。
「首の腫れ」以外にも、初期症状はあります。それらを把握して、医者にかかるタイミングを逃さないようにしましょう。「女性の病気」と思っている方、注意してください。女性に発症しやすい病気ではありますが、男性がこの病気に罹らない訳ではありません。
甲状腺に発生する病気としては男性に発生する病気として最も可能性の高い病気になります。
病気の症状や初期症状などを知って、早期に病気を検査して治療が開始できるようにしていきましょう。
バセドウ病について
バセドウ病がまずどういった病気なのかについて紹介します。
「バセドウ病」という名前だけではどういった病気なのかひと目でわからないでしょう。初期症状の前に病気についての情報を紹介します。
バセドウ病とは
バセドウ病のバセドウ(バセドー)はドイツの言葉になります。英語ではグレーブス病と呼ばれこれらはどちらも病気を発見した医師の名前から付けられています。
日本では甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)といいます。漢字で表せばなんとなくどういった病気名のかわかるのではないでしょうか?
バセドウ病は首の喉仏に存在する甲状腺に異常が発生し、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまい、身体に様々な異常を発生させる病気になります。
バセドウ病は女性に発生しやすい
バセドウ病は若い女性に発症者が多い病気になります。
男性の4倍以上の数で女性に発生している病気で、20代〜30代の女性に最も多く発生しています。50代まで継続してこの病気に罹ってしまう可能性が高く、症状に関しても更年期障害と似ているため、判断しにくい傾向もあります。
発症者の確率は200〜400人に1人の確率で発生する可能性のある病気になります。
何らかのアレルギーを保持している人に発生する可能性が高いこともわかっています。上記に該当する人は、この病気についてしっかり認識して重症化させない内に治療を開始することが重要です。
バセドウ病が発生する原因
基本的な原因として過度なストレスや疲労の蓄積が関係していると言われています。
また、海藻類などに含まれているヨード(ヨウ素)が甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌を活発にすることから、ヨードの過剰摂取が原因になっている病気でもあります。
2011年にはヘルペスウイルスの一種であるエプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)が甲状腺の活性化を促していることが判明しています。ヘルペスウイルスは成人の9割以上が保持しているウイルスになります。
これがストレスなどを引き金に影響力を増してしまい、病気の発症に繋がると言うことが解明されました。
近年まで詳しい原因は不明とされていましたが、2017年の発表でそのメカニズムが明らかになった病気でもあります。
バセドウ病の症状について
具体的な初期症状や細かい症状については下記でも紹介しますが、大雑把な症状についてどの様な症状を発生させるのかについて紹介します。
最も代表的な症状が3つあります。
- 眼球の突出(甲状腺眼症)
- 頻脈
- 甲状腺肥大(首の腫れ)
バセドウ病の症状は甲状腺ホルモンの過剰分泌が原因。この甲状腺ホルモンは身体を元気にする働きがあり、ホルモンの影響で臓器を活発に動かしたり、代謝を促しています。
しかしこのホルモンのバランスが崩れると、筋肉の肥大など様々な症状を引き起こす病気に発展します。
甲状腺ホルモンは分泌不足になることでも甲状腺ホルモン低下症という病気が発生します。
バセドウ病チェック表
「バセドウ病とは」をみる前に、この病気が少しでも心配な方は、まずは、次のチェック表をやってみてください。
これは「○個チェックが付けばリスク△%」という数値を示すものではありません。「基本項目」の「首が腫れている」ことにプラスして、そのほかの症状があったら、それを医者にきちんと伝えてください。
★基本項目
首が腫れている
甲状腺が肥大する事で首の喉仏の下の部分が腫れるように膨らみます。
●目に関する項目
- 目が飛び出してきた
- ものが二重に見える
- 目の周囲がはれてきた
この症状は甲状腺ホルモンの分泌量が増加することで、目の裏への脂肪が蓄積されやすくなったり、目を囲っている筋肉が増強されることで眼球が押し出されてしまい眼球突出が発生する症状になります。
患者の3割程度の数の人にこの症状が確認されます。
●心臓に関する項目
- 少し動いただけで息切れする
- 少し動いただけで心臓がドキドキする
- なにもしていないのに脈が速くなることがある
- なにもしていないのに脈が不規則に打つ
- むくみがある
疲れやすくなったり不整脈などの症状を感じやすくなります。これも甲状腺ホルモンの影響により発症する症状です。
またホルモンの影響で血流に以上が発生する事で低カリウム血症の症状も発生します。
●消化器に関する項目
- 下痢ぎみ
- 食欲が増した
- 食べる量は変わらないのに体重が減った
体重の増減に関しては、代謝が活発になることで減少する傾向にありますが、逆に食欲も増進する場合は太ってしまう場合もあり、個人差があります。
短期間で急激な体重変化が確認される場合は注意が必要です。
●心に関する項目
- イライラする
- 寝つきが悪い
- 注意力が落ちた
この病気の影響で夫婦関係のコミュニケーションなどに影響が発生し、トラブルに繋がることも少なくありません。これは低下症の場合でも発生する問題になります。
明らかに精神状態に異常が感じられる場合は、何か原因となる病気が潜んでいないか他の症状を確認してみましょう。
●そのほかの項目
- 筋肉が減った、増加した
- 少し動いただけで汗が出る
- 疲れやすい
- 手足が震えることがある
- 暑がりになった
- 周期性四肢麻痺
- 38℃以上の高熱
など多くの症状が発生する事のある病気になります。周期性四肢麻痺については低カリウム血症が発生する事で発生する症状になります。
症状を見ても更年期の症状に共通している点が多いため、勘違いし易いので婦人科だけでなく内分泌科もあわせて受診して見ると良いでしょう。
初期症状を医師に伝える
チェック表を印刷して、あてはまる症状をチェックして医師に渡してください。医師に渡すことを躊躇してしまう方は、メモとして手元に持って口頭で伝えてください。
基本項目に「首の腫れ」を挙げたのは、バセドウ病では、これが最も初期に起ることが多いからです。分かりやすく「首」といいましたが、正確には「咽仏周辺」です。
バセドウ病は甲状腺という器官の病気で、そこに甲状腺があるのです。
バセドウ病の症状について
バセドウ病で起こる代表的な症状について更に細かく初期症状を紹介します。
具体的にどのように感じる症状が発生すればバセドウ病の可能性がるのかについて知っていきましょう。
バセドウ病と心臓
胸がドキドキして苦しくなる「動悸」、脈が速くなる「頻脈」、脈が不規則なリズムを打つ「不整脈」、そして「息切れ」は、バセドウ病によって心臓に異変が生じたときに起きる症状です。
・脈拍100以上
安静にしていても、脈拍数が1分間100以上を超えると、注意が必要です。「ドキドキ」は、「長い時間、ランニングをしているような状態」といわれるほど、激しく苦しいものといわれています。
息切れのポイントは「少ししか動いていないのに」という「違和感」を重視してください。というのも、息切れという症状は、「歳だから」とか「最近運動不足だったから」と思いがちで、軽視されてしまうのです。
・心臓4症状
先に挙げた、動悸と頻脈と不整脈と息切れの4つの症状は、「心臓4症状」として覚えておいてください。これが同時に起きたら、血液検査が必要でしょう。
バセドウ病と心
甲状腺には甲状腺ホルモンという物質があって、これが感情に影響を与えることが分かっています。甲状腺ホルモンの数値が高くなると、眠りにくくなったり神経過敏になったり、イライラが募ったりします。
逆に、とめどなく話し続けたり、異様にアクティブになったり、ハイテンションになったりという、躁状態になることもあります。
バセドウ病と目
バセドウ病の外から見える症状のうち、「首の腫れ」と同じくらいよく知られているのが、「目が飛び出てくる」症状です。正式には「眼球突出」といいます。バセドウ病患者の2割の方に出てくるそうです。
・まぶたの腫れ
バセドウ病では、眼球突出の症状が出なくても、目の周辺に異変が出ます。まぶたが腫れたり、目の奥が痛くなったりすることが多いようです。ところが、こうした症状は、結膜炎や目の疲労でも現れます。
さらにやっかいなのは、甲状腺ホルモンの数値が正常だったり、甲状腺の機能が正常だったりしても、バセドウ病による「まぶたの腫れ」や「目の奥の痛み」が生じることです。医師でも診断が難しいといわれています。
・だからチェック表
いかがでしょうか。チェック表の重要性がお分かりいただけたと思います。「頻脈」や「イライラ」といった「いろいろな症状」は、治療に取り掛かる前段階の「診断をくだす」ために重要な情報なのです。
バセドウ病の進行具合について
「新陳代謝」という言葉を聞いたことがあると思います。またダイエットを指導する方は、「痩せやすい体を作るには基礎代謝を上げよう」とか「基礎代謝が落ちると太りやすくなる」とアドバイスします。
「代謝」とは、体内に摂り入れたエネルギーと栄養素を、活動のために使うことをいいます。「代謝が高い」ということは、エネルギーを効率良く使っているということです。つまり代謝が高い状態は、「一般的には」良い状態なのです。
代謝の異常上昇
「一般的には」良い状態でも度が過ぎると、体に悪影響を及ぼします。バセドウ病は、代謝が高まりすぎた状態なのです。この説明を聞くと、なぜ「心臓ドキドキ」や「躁状態」が起きるのか、理解できると思います。
「代謝が過剰に高まる」→「心臓が過剰に動く」→「心臓4症状(動悸と頻脈と不整脈と息切れ)」という流れです。
心の動きも同じです。「代謝が過剰に高まる」→「心が乱れる」→「イライラ」「ハイテンション」「注意力低下」となります。
代謝と甲状腺ホルモン
代謝を高めるのは、甲状腺ホルモンです。
「甲状腺」には、「甲状腺ホルモン」を増やす「スイッチ」があります。そのスイッチの正式名称は「甲状腺刺激ホルモン受容体」といいますが、ここでは「スイッチ」と呼び続けることにします。
スイッチを押すと、甲状腺ホルモンが増えるので、甲状腺ホルモンが少なくなったら、そのスイッチを押せばいいのです。通常は、体内の甲状腺ホルモンの量を調整しながら、スイッチを押したり押さなかったりしているのです。
ところが、バセドウ病を発症すると、甲状腺ホルモンが少なくなっているわけではないのに、スイッチを押してしまう「輩」が現れるのです。その輩の名前は「自己抗体」といいます。自己抗体の勝手な行動が、バセドウ病の正体なのです。
原因不明
ではなぜ「自己抗体」が、勝手な行動をしてしまうのでしょうか。実はそれが分かっていないのです。ただ、ストレスや過労が、バセドウ病を発症させているのではないかという説があります。遺伝の影響も、ある程度あるのではないかとみられています。
バセドウ病の男女比
「甲状腺の病気は女性に多い」と一般的にいわれていますが、バセドウ病は、男性にも頻繁に起こる病気です。男女比は、1:4で「女性の方が多い」のは事実です。しかし、「甲状腺のすべての病気」でみると、男女比は1:9なので、「バセドウ病は男性が発症する甲状腺病としては最も多い病気」となります。
バセドウ病の年齢
発症年齢は、20~30代で過半数を占めます。次いで40代、そして50代という順番になります。
バセドウ病の検査
では、バセドウ病の検査方法について紹介します。
まず血液検査
バセドウ病が疑われると、採血をして、血液中の甲状腺ホルモン量を調べます。甲状腺ホルモン量が過剰であることと、「自己抗体」の存在が確認されると、診断が下ります。
ただ先ほど「まぶたの腫れ」のところで申し上げた通り、甲状腺ホルモンの数値が正常でも、バセドウ病による「まぶたの腫れ」や「目の奥の痛み」が生じます。
アイソトープ検査
そのときに行うのが「アイソトープ」という検査です。これは、甲状腺にアイソトープという物質が集まりやすいという性質を利用します。患者にアイソトープを飲ませ、アイソトープが甲状腺に集まれば、バセドウ病と診断されます。
アイソトープの別名は「放射性ヨウ素」といいます。「ヨウ素」は海藻に多く含まれている物質です。
バセドウ病の治療
バセドウ病が確定すると、薬が処方されます。
抗甲状腺薬
抗甲状腺薬は、甲状腺ホルモンが多くつくられることを抑える薬です。甲状腺ホルモンが過剰に出てくることで、代謝が高まりさまざまな症状が出るわけですから、甲状腺ホルモンが正常値になると、症状が和らぎます。
この薬の服用で注意しなければならないのは「医師が指示した量を厳守する」ということです。これはどの薬でもいえることですが、バセドウ病の治療では特に厳格に守る必要があります。
というのも、甲状腺ホルモンは減りすぎては困る物質だからです。抗甲状腺薬は甲状腺ホルモンを抑制する薬なので、軽症の患者が重症の患者と同じ量の抗甲状腺薬を飲んでしまうと、甲状腺ホルモンが減りすぎてしまうのです。
抗甲状腺薬の副作用
抗甲状腺薬の副作用は、かゆみと湿疹です。これは、服用開始から2~3週間後に起きるといわれています。起きない人もいて、副作用が起きる率は大体1割程度といわれています。さらに悪化する人もいて、39度の熱を出すことがあります。
肝臓の数値が悪化することもあります。
アイソトープ治療
アイソトープはバセドウ病の検査で使いますが、治療にも使います。アイソトープが、甲状腺の細胞の数を減らすのです。細胞が減れば、甲状腺ホルモンの量も減る、というわけです。
メリットは、手術をしないので、傷が残らない点です。デメリットは、これは抗甲状腺薬と同じですが、甲状腺の細胞が減りすぎるリスクがあることです。この点は医師の注意をよく聞いて、その指示に従うしかないでしょう。
甲状腺の細胞が減りすぎて、甲状腺の機能が落ちてしまったら、今度は甲状腺ホルモン薬が処方されます。
手術
甲状腺の細胞を薬で減らすのではなく、手術によって甲状腺そのものを切り取ってしまい、甲状腺の過剰な活動を抑制するのです。手術のメリットは、薬のいらない生活を取り戻せる点です。
一方で、デメリットは残念ながら手術の傷だけではありません。全身麻酔のリスクもありますし、再発の可能性も捨てきれないといいます。つまり、手術をしても完全に治らないケースもあるのです。
手術をして症状が治まったのに、数年後に再発するといったことも起こり得るそうです。受験や就職、妊娠などをきっかけに、再発することが多いそうです。このことからも、バセドウ病の原因のひとつに、ストレスが挙げられるのです。
バセドウ病の手術については、バセドウ病の手術について!リスクやその他の治療法は?の記事を参考にしてください。
まとめ
バセドウ病は心臓に負担をかける病気です。ですので、甲状腺ホルモンの濃度が高いうちは、医師から、活発な行動を避けるよう指示されます。十分に休養を取ることや、暑い日の外出を避けるなどです。
しかし、適切な治療を受け、甲状腺の機能が正常に戻れば、通常の生活を送れます。そのためにも、早めの受診と治療開始をおすすめします。繰り返しになりますが、冒頭のチェック表を行って、医師に示してください。
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