多くの女性が冷え性に悩まされているので、「手足が熱い」と聞いたら体温が高くて羨ましいと感じる人もいるかもしれません。しかし、手足が熱くなるのも冷え性の場合があるという事を知っていますか?冷え性といっても、手足は冷えずに、内蔵が冷える場合もあります。
手足は熱を外に発散して体温調整を行う場所でもあるので、手足の温度の変化を見ることで病気を疑う事もできます。自分の体だけでなく、赤ちゃんや子供の病気を確認する1つのサインでもあるので、日ごろチェックしておきましょう。ここでは、手足が熱くなる原因や治療方法について詳しくご紹介します。
手足が熱い事について
手足の熱さは体の異常を感じるサインの1つでもありますが、実は私達の体は病気でなくても日常的に手足が熱くなる時があります。
皆さんは、それがどんな時か知っていますか?ここでは、日常的に手足が熱くなる時と体温調節について詳しくご紹介します。
日常的に手足が熱くなる時は?
皆さんは日常的に「手足が熱い」と感じる時は、一体どんな時でしょうか。正解は、眠くなる時です。人は眠りに入る時は、体温を低くして眠り、昼間活動している時は、体温を上げます。
部屋を暗くしたり、周囲が暗くなると、体は夜だと認識して睡眠ホルモンのメラトニンという物質を分泌し始めます。このメラトニンが分泌されると、眠気が襲い、体温を下げる準備を行います。体温を下げようと、熱を手足などの末端から逃がそうとするので、手足が熱くなるのです。
体温調整とは?
体温調節機能は、人が健康を維持する為に、重要な生体恒常性の1つです。人の平熱は36.5℃±0.5℃で、周りの気温が変化すると、体温を維持しようと熱を作ったり、熱を外に放出しようとする動きをします。
体温の調整機能は、間脳の視床下部という部分が行っています。この視床下部には、体温調節中枢があり、体温のコントロールをする司令塔のような働きをしています。この体温調節中枢の働きにより、私達の体温は37℃前後に保つことが出来ます。
しかし、細菌やウイルスの感染や炎症などが起こると、体内酵素が活性化するように温度を高く設定します。体温を高くするという司令が出ると、体では血管を収縮させて体内の熱が篭るようになったり、ふるえを起して熱を作るようにします。
熱の原因が取り除かれると、温度を下げる司令が出て、体は血管を弛緩したり、汗をだすことで体内の熱を外に逃がす働きをしたり、骨格筋を弛緩させて、熱を作らないようにします。体の熱は手足の先から逃げるので、温度を下げる必要がある時は、手足が熱くなります。
また、視床下部は女性ホルモンや自律神経などもコントロールしている為、女性ホルモンや自律神経が乱れることで体温調整に影響がでる場合があり、手足の温度に変化が現れます。
手足が熱くなる原因と対処法
眠い時に手足が熱くなるのは、誰もが当たり前に起こる事なので、心配する必要はありません。子供の手足が熱いと感じた場合は、ただ単に眠いだけということもあります。
しかし、中には病気が原因で手足が熱くなる場合もあるので注意が必要です。ここでは、手足が熱くなる原因や症状、対処法、治療法についてご紹介します。
体に熱が篭っている
「手足が熱い」と聞いて、一番初めに考えられるのは、体に熱が篭っていることです。身体には体温調節機能が備わっています。その為、体温を下げようとする時は、手足などの抹消の血管を広げて、皮膚から熱を逃がそうとします。逆に、体温を上げようとする時は、血管を収縮して熱を閉じ込めます。
特に、夏は気温が高くなり、日差しを浴びると体温が上がります。そうすると、体を冷やそうと手足の血管が拡張され、熱があるように感じます。また、合わせて全身に汗をかいて、熱を逃がそうとします。
熱が体に篭る原因は、病気の場合もあります。最も多いのは感染症ですが、白血病などのガンや膠原病、甲状腺機能亢進症、精神的な病気でも発熱します。子供で一番多い原因は、風邪によるものです。高い体温にした方がウイルスを退治しやすくなるので、脳から司令がでて発熱します。
症状
熱が出ると、熱を外に出そうとして手足が熱くなる以外にも、汗をかいたり、呼吸が速くなります。また、水分のコントロールが出来なくなると、脱水症状になります。脱水症状の場合は、汗がかけない場合があるので、熱中症や日射病の疑いがある場合は、注意しましょう。
赤ちゃんや子供の場合は、大人よりも体温が高いので、比較的に脱水症状に気付きにくいです。熱中症の時は、口を開けたままにしたり、ハァハァと呼吸をしているのが特徴的です。他にも、脱水症状の症状が進むと、下記のような症状が見られます。
- 唇が乾く
- 元気がない
- 不機嫌
- 疲れている
- 頻繁におっぱいやミルクを欲しがる
- 汗をかかなくなる
- おしっこが出なくなる
赤ちゃんは、大人よりも体の水分の割合が高く、多くの水分補給を必要としています。その為、大人よりも脱水症状にかかりやすいので注意してみましょう。
赤ちゃんが汗をかいているのに、唇がガサガサしている場合は、水分が足りていない可能性があります。涼しいところで休ませて、水分補給をしっかりとさせましょう。
一方で、冬の場合は気温が寒い為、熱を体に閉じ込めようと働きます。その為、熱が篭る状態は、冬場よりも夏場に多く見られます。冬場でも見られる症状としては、高熱を出した場合です。
子供が高熱を出した場合は、最初は手足は冷たいですが、次第に手足が熱くなってきます。高熱で手足が熱い場合は、既に熱が上がりきっている状態で、回復傾向に向かっているサインです。この状態になると、汗をたくさんかくようになります。
対処法
手足が熱く高熱が出ている場合の対処法は、まず熱を下げる為に布団を薄くし、解熱剤を使用します。汗をかきやすいので、下着はこまめに取り替えるようにして、スポーツドリンクなどを用いて、水分補給をしっかりと行いましょう。
子供が高熱で、手足が冷たい場合は熱が上がりきっていないので解熱剤を使うと治療が遅くなります。手足が冷たい状態の時は、これから熱が上がろうとしている為、無理やり薬で抑えてしまうのは返ってよくありません。
自律神経失調症
肺・心臓・血管・消化管・膀胱・子宮・内分泌線などの体の各器官には、交感神経と副交感神経と呼ばれる自律神経が備わり、「活動」と「安静」のバランスを整えています。2つの神経は真逆の働きをする為、バランスが崩れると、様々な症状を感じるようになります。
例えば、ゆっくりと休んでいるのに、心臓が早く動き、動悸をかんじたり、呼吸があらくなったりするなどが起こります。このバランスの乱れを、自律神経失調症と呼びます。
その中の1つの症状として、手足が熱くなるといった症状が見られるようになります。自律神経失調症は、ストレスや緊張、生活習慣の乱れから引き起こされると考えられています。その為、検査で確認することはできずに症状から判断されます。
症状
自律神経失調症で現れる症状は、下記のようなものがあります。自律神経失調症の疑いがある場合は、これらの症状が現れていないか、まずは自分で確認してみましょう。下記の症状の中から5個以上該当する場合は、自律神経失調症の疑いがあります。神経内科のある病院を受診して、病変が見つからなかった場合は、自律失調症と診断される可能性があります。
- 全身症状:疲れ、だるさ、眠気、食欲不振、体が重い、フラフラする、立ちくらみ、めまい
- 頭:頭痛、頭が重い、ボーっとしやすい
- 呼吸:呼吸が上手く出来ない、息苦しい、息切れする
- 心臓:動悸、胸が苦しい、不整脈、血圧の変化
- 消化管:胸焼け、胃がムカムカする、吐き気、下痢、便秘、胃痛、お腹の張り
- 膀胱:トイレが近い、残尿管、尿が出にくい
- 生殖器:生理不順、月経痛、不感症
- 精神:不安感、イライラ、緊張、不眠
- その他:冷え、のぼせ、痺れ、震え、耳鳴り、ほてり、肩こり、目の疲れ、口の乾き、皮膚の痒み
治療方法
自律神経失調症は、症状や程度に個人差がある為、辛いと感じる症状を緩和させる対処療法を行います。例えば、頭痛や胃もたれ、腹痛や不眠などの症状がある場合は、それにあわせた薬の処方を行います。他にも、自律神経失調症薬や抗うつ薬などが場合によって処方される場合もあります。
過度なストレスや精神負担や生活習慣が原因に大きく関係している為、根本治療をするには生活習慣の見直しがとても重要です。ストレスを解消する方法は、人それぞれですが、楽しいと思える時間を増やすことがストレス発散に繋がります。
中でも、入浴や音楽を聴く、趣味の時間をつくる、適度な運動は効果的だと言われています。カウンセリングによる心理療法を受けたり、音楽療法やアロマテラピーなども精神的な症状を緩和させてくれます。
更年期障害
女性に毎月起こる生理は約40年間続き、50歳を過ぎると閉経を迎えます。閉経前後の5年間を更年期と呼び、この時期に起こる様々な症状を更年期障害と呼びます。
更年期には、女性ホルモンの低下が見られ、ホルモンバランスが崩れます。これにより、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗、抑うつ、不眠などの症状が見られます。手足が熱くなるのを感じた上で、上記の症状が見られた場合は、婦人科を受診される事をオススメします。
治療方法
更年期障害の治療法は、大きく分けて「ホルモン補充療法(HRT)」「漢方薬」「抗うつ薬」の3つ挙げられます。ホルモン補充療法(HRT)は、少なくなった女性ホルモン(エストロゲン・卵胞ホルモン)を補充する薬です。
これを服用することで、ホルモンバランスを整えて症状を緩和させます。保険適用でき、更年期障害の根本的な治療方法として効果が期待出来ます。漢方は、抗うつ薬は、ホルモン補充療法が効果がなかった場合や、使用できない場合に症状を緩和するのに、用いられます。
神経障害
手足の神経が上手く機能しなくなることでも、手足の熱さを感じます。熱さよりも痺れや痛みを感じる人の方が多いです。神経障害の代表的な病気の1つに糖尿病が挙げられます。糖尿病の合併症状として、糖尿病性神経障害があり、これは手足の末端部分から感覚が鈍くなるといった症状が見られます。
初めはあしの指や足裏にピリピリ、ジンジンするようなほてり、熱さ、痛み、痺れなどの症状が起こります。症状が悪化すると、手の指にも同様の症状が現れ出し、痛い冷たい、熱いなどの全ての感覚に対して鈍感になります。他にも、足の裏に何か張り付いたような違和感や夜に症状が強く現れることがあります。
糖尿病の他にも、多発性ニューロパチー、多発性神経炎、手根管症候群、足根管症候群などの病気でも神経障害がおき、手足が熱くなる場合があります。
治療方法
神経障害の原因のほとんどは、他の病気からの合併症です。その為、根本治療としては原因となる病気を治すことで症状が良くなります。
例えば、糖尿病性神経障害の場合は、糖尿病がよくなることで、症状が改善されます。痛みやしびれが酷い場合は、薬を使ってコントロールすることも可能なので、医師に相談してみましょう。
先端紅痛症・肢端紅痛症
先端紅痛症は、稀な疾患ではありますが、手足の熱さ、皮膚が赤くなるといった症状が現れ、数分~数時間続く病気です。骨髄増殖性の疾患、高血圧、静脈不全、糖尿病などの病気の合併症として引き起こされる場合もあれば、原因が不明な場合も多くあります。
多くの場合は、20歳を過ぎてから急に原因不明で発症します。症状が現れた時に、冷水にひたすと症状が緩和される場合もあります。しかし、機能不全になると重症になる場合もある為、何度も手足が熱くなる異常を感じたら一度病院を受診しましょう。
治療方法
先端紅痛症の一般的な治療方法は、「温熱を回避する」「安静にする」「四肢の挙上する」「冷却する」の4つで、これらにより症状が緩和される場合があります。
原因の疾患が特定できない場合は、エフェドリン、メチセルジド、プロプラノロールなどの血管を収縮する薬や、ガバペンチン、プロスタグランジン類似体、アスピリンなどが有効な場合もあります。
バーニングフィート(灼熱足)症候群
寝る前に手足が熱くなるのは普通の事だとお話しましたが、熱くて眠れないという場合は、バーニングフィート症候群の可能性があります。
これは、寝る前に足の裏や手のひらが熱くなる特徴があり、糖尿病や甲状腺機能低下症、ビタミンBの欠乏、血流障害などが原因となって引き起こされます。
対処法
原因に合わせた治療が必要ですが、原因不明の場合は下記の対処法を行ってみましょう。これらを行うことで症状が和らぐ場合があります。
対処法
- 自分の足のサイズにあった靴を選ぶ
- 冷水で冷やす(血行不良が原因の場合は、返って悪化する場合もあります)
- 炎症を抑える薬を服用
- 足を休ませる
内臓型冷え性
手足が温かく、お腹が冷たい人は、内蔵型冷え性の可能性もあります。冷え性と聞くと、手先・足先が冷えると思っている方も多いですが、内臓型冷え症の場合は、逆に手足が熱く、内蔵が冷えてしまいます。自覚症状がない為、隠れ冷え性とも呼ばれています。
内蔵の理想的な温度は、37.2℃~38℃と言われ、この温度を保つのには、平熱が36.5℃程度必要と言われています。平熱が35℃と低い人は、内蔵型冷え性の可能性があります。内蔵の温度が低くなると、血液の流れが悪くなり、血行不良による様々な症状が現れます。
他にも、免疫力も低下するので風邪を引きやすくなります。内蔵の温度が1度下がると、代謝が約15%低下し、老廃物が体に溜まり易くなります。
症状
内蔵型冷え性は、自覚症状を感じない人も多いので、気付きにくいです。下記のような項目に複数当てはまる場合は、内蔵型冷え性の可能性があります。
- 常に顔色が悪い
- 平熱が36度以下
- 下腹部の温度がワキよりも冷たい
- 肩こりがひどい
- 手足がむくみやすい
- 寝つきが悪い
- 朝起きるのが辛い
- シミ、そばかす、くすみ、ニキビなど肌トラブルが多い
- 胃腸が弱い、胃腸炎にかかりやすい
対処法
内蔵型冷え性の原因は、筋肉力が不足、低血圧、運動不足が原因だと言われています。女性は筋肉量が男性よりも少ないため、冷え性になりやすいです。
冷え性解消には、下腹部を温める方法もありますが、根本的な改善としては、体質改善が重要になります。適度な運動をして筋肉を、基礎体温を上げる対策が必要です。
おわりに
人は眠くなると、手足が温かくなります。これは、自然な事なので特に心配する必要はありませんが、眠くない時に手足が熱い場合は、体に熱が篭っていたり、病気が原因の場合もあります。
自分で原因がある程度特定出来る場合は、今回紹介した対処法を取り入れてみましょう。頻繁に起こる場合は、他に併せて起こる自覚症状を確認して、医師に相談しましょう。
関連記事として、
これらの記事も読んでおきましょう。