花粉症などの鼻炎や風邪などの影響で鼻水が出てくれば、ティッシュで鼻をかむのが通常ですよね。とはいえ、混雑中の電車の中や仕事で両手が塞がっている時など、人前で鼻をかむことができずに鼻をすすってしまうことは、誰しも1度や2度は経験があるでしょう。
しかしながら、そのような鼻をすする行為が何度も繰り返されると、その鼻をすする音によって自分が思っている以上に周りの人たちを不快にさせているかもしれません。また、頻繁に鼻をすする行為は、鼻だけにとどまらず耳の病気など様々な悪影響を招いてしまう可能性があります。
そこで今回は、鼻をすする行為が引き起こす悪影響について、多面的にご紹介したいと思いますので参考にしていただければ幸いです。
鼻をすすることが招く体外的な悪影響
鼻をすする行為が引き起こす悪影響と言っても様々であり、一言で紹介するには無理があります。そこで、鼻をすする行為が引き起こす悪影響について、自分の身体の外側に対する影響と自分自身の身体内に対する影響に分けて、ご紹介していきたいと思います。
まずは、鼻をすする行為が招く体外的な悪影響について、ご紹介したいと思います。
周囲を不快・不愉快にさせる
日本では春先にスギ花粉が飛散することによって、くしゃみ・鼻水・鼻づまりに苦しむ人が少なくありません。今や花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)は、国民病とまで言われることがあります。その花粉症の大変さを知るがゆえに、人前で音を立てて鼻をすする行為について、日本人はどちらかと言うと寛容であると言えるでしょう。
また、日本では恥の文化を背景にして、人前で鼻をかむ行為を恥ずかしいと思ってしまう傾向もあり、人前で鼻をかむ行為をマナー違反と捉える人も多いようです。それゆえ、人前で鼻をかむ行為を控えようとするあまりに、鼻をすすることになってしまうという側面があることも否定できない事実だと言えるでしょう。
しかしながら、人前で音を立てて鼻をすする行為を繰り返せば、人前で音を立てて鼻をかむ行為と大して違いはありません。むしろ、鼻をすする際の「ズルズル」・「ズルル」という特徴的な音が繰り返されると、いくら鼻をすすることに寛容的な日本人であっても不快感やイライラ感を募らせてしまうでしょう。
実際にある調査では、周囲の人が鼻をすする音に不快・不愉快と回答した人が、全体の約40%に達したと言います。ましてや、鼻水が多く溜まっている状態で、くしゃみでもされると周囲の人が被る被害は甚大です。くしゃみで鼻水が飛散する懸念は、近年の抗菌ブームに代表される清潔感を求める動きによって高まることはあっても、その懸念が少なくなることはないでしょう。とすれば、音を立てて鼻をすする行為も早晩にマナー違反となるのではないでしょうか。
いずれにしても、現在でも音を立てて鼻をすする行為は、周りの多くの人を不快・不愉快にさせている事実があり、鼻をすする人はその事実について認識しておく必要があるでしょう。
鼻をすすることは海外ではNG
日本では無意識的に行ってしまう鼻をすする行為ですが、海外の国々では明確にマナー違反となって、日本以上に周囲の人から顰蹙(ひんしゅく)をかってしまいます。
特に欧米諸国などの外国において、公共の場所で鼻をすすることは比較的大きなマナー違反だとされていて、それを知らずに海外旅行先で鼻をすすってしまうと周りから白い目で見られることになります。ヨーロッパの国々では、くしゃみについても人前でしてしまった場合には、「エクスキューズ・ミー(ごめんなさい・すみません)」と一声かけることが文化的な習慣となっています。
この点、イギリス人やイタリア人などの欧米人は、人前でもティッシュやハンカチで鼻をかみます。というのも、鼻をすすって「ズルズル」・「ズルル」と繰り返し音を立てるよりも、鼻をかむ方が不快な音の数が少なくなるという非常に合理的な理由からです。
このように外国人の多くにとっては、鼻をすする際の音は非常に不快・不愉快に感じられるようですから、日本国内であっても海外から観光客が多くなり国際化が進む以上は、くしゃみ・鼻水への対応に気を配る必要があるでしょう。
ウイルスの感染拡大
花粉症はアレルギー反応によるものですから、くしゃみ・鼻水によって症状がうつることはありません。しかしながら、ウイルス性の風邪では、くしゃみ・鼻水によってウイルスが他人への感染原因となることがあります。それゆえ、鼻をすする行為で鼻水が溜められた後に、くしゃみが発生するとウイルスの感染拡大リスクが飛躍的に高まると言えるでしょう。
ですから、鼻をすする行為が直接的に風邪などのウイルス感染拡大原因とはなっていなくとも、くしゃみによって飛散する量を増やしているという点で、鼻をすする行為は間接的なウイルスの感染拡大原因と言えるでしょう。
鼻をすすることが招く体内的な悪影響
このように鼻をすする行為は、周囲の人たちに迷惑をかけるという意味で体外的な悪影響をもたらします。一方で、鼻をすする行為によって、自分自身の身体内にも悪影響を引き起こすことがあります。
そこで、鼻をすする行為が招く体内的な悪影響について、ご紹介したいと思います。
中耳炎の原因になる
鼻をすする行為は、中耳炎を引き起こす可能性があります。中耳炎とは、耳の鼓膜から奥の部分を中耳と言い、その中耳が炎症を起こす病気のことです。
中耳は、中耳の最奥部に存在する主に蝸牛(かぎゅう)・三半規管・前庭からなる内耳(ないじ)につながる空間的な器官であって、音や空気の振動を伝えたり、外界の空気圧との気圧調整を行ったりする器官です。
この中耳からは耳管(じかん)と呼ばれる管が出ていて、耳管は口と食道の間である喉の咽頭部にまでつながっています。通常は、耳に入り込んだホコリや細菌などが中耳内の粘膜にキャッチされて、耳管の中の線毛の動きによって咽頭の方へと運び出される自浄作用が働いています。
しかしながら、頻繁に鼻をすすると中耳内の圧力が陰圧になり、つまり中耳内の圧力が他よりも低くなり、耳管の中の空気の流れが中耳方向に流れやすくなります。すると、鼻を通じて体内に入った細菌やウイルスが耳管を通じて、中耳に侵入してしまうのです。そして、その細菌やウイルスが中耳の粘膜に付着して、急性中耳炎などの中耳炎を発症してしまうのです。
子どもは特に中耳炎になりやすい
子供は大人に比べて物理的に耳管が短いために、頻繁に鼻をすすっていると中耳の陰圧によって細菌やウイルスが侵入しやすく、中耳炎になりやすいとされています。
中耳炎には急性中耳炎・慢性中耳炎・滲出性中耳炎など様々なタイプが存在しますが、最も一般的な急性中耳炎の場合は、耳の痛み・発熱・一時的な難聴などの症状が現れます。そのため、特に上手く鼻がかめない幼児期の子どもが頻繁に鼻をすするような状態の場合には、保護者が注意深く見守るとともに、子どもが鼻をかむ手伝いをすることが必要とされます。
癒着性中耳炎
癒着性中耳炎は、慢性中耳炎の一種で、中耳内の空気が失われて鼓膜が中耳腔に癒着してしまう状態の病気です。癒着性中耳炎の原因は、主に次の通りです。
耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは?
耳管狭窄症は、何らかの原因によって耳管が閉じたままになる病気です。具体的には、飛行機に乗って飛び立つ際に耳が詰まった感覚になりますが、この耳が詰まった感覚が長く続く症状が現れる病気です。
そもそも、耳管は閉じられているのが通常ですが、唾を飲み込むなど嚥下運動をする際に短時間だけ開放されて空気が通り、中耳内の圧力と外界の圧力が調整されます。飛行機に乗って耳が詰まった感じになると、唾の飲み込んで「耳ぬき」をするのは、この圧力調整をしているのです。
この耳管狭窄症は、鼻炎や副鼻腔炎などによって耳管付近が炎症を生じると、その炎症による腫れによって耳管が圧迫されて耳管が閉塞してしまいます。そして、中耳内の圧力調整が上手く機能しない結果として、癒着性中耳炎に至る場合があります。
耳管開放症とは?
耳管開放症は、耳管狭窄症とは逆に、何らかの原因によって耳管が開放したままになる病気です。耳管開放症になると、自分の声が常に大きく聞こえたり、自分の呼吸音が聞こえるような感覚になります。
耳管開放症の原因や発生メカニズムは未だ明確には解明されていませんが、ダイエットによる体重減少、女性の妊娠、経口避妊薬のピルの服用などとの関係が指摘されています。
このような耳管開放症となっている際に、頻繁に鼻をすすると中耳内の圧力が低下して陰圧となり、癒着性中耳炎を引き起こす場合があります。
鼻をすすることになる原因
このように鼻をすする行為には、周りの人たちを不快にさせる体外的な悪影響と、中耳炎など自分自身の身体を不調にさせる体内的な悪影響が存在します。
それでは、どうして人は鼻をすすってしまうのでしょうか?そこで、鼻をすすることになる原因について、ご紹介したいと思います。
鼻水が垂れる
鼻をすすることになる直接の原因は、当たり前のことですが鼻腔から鼻水が大量に分泌されて、鼻腔から流れ落ちることにあります。
そして、その鼻水を大量に分泌させる要因は様々で、主に次のような要因が挙げられます。
- 風邪(鼻かぜ)
- 花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)
- 通年性アレルギー性鼻炎
- 温度変化による寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)
人前で鼻をかむ行為の恥ずかしさ
前述のように日本では恥の文化を背景にして、人前で鼻をかむ行為を恥ずかしいと思ってしまう傾向があります。それゆえ、人前で鼻をかむ行為をマナー違反と捉える人も多いようです。
ですから、人前では鼻をかむ行為を極力控えようとすることによって、鼻をすすることになってしまうという側面もあるでしょう。
チック症(チック障害)
チック症(チック障害)とは、チックと呼ばれる突発的で頻繁に現れる身体の一部の不規則な動きが、一定以上の期間続く障害のことです。
このようなチック症の症状の一つとして、鼻をすする動きが現れる場合があるのです。
チック症の症状
チック症は、特に子どもに多く発症する病気とされています。例えば、次のようなチック症状が現れることがあります。
- せわしなく目をまばたきさせる
- 頻繁に顔をしかめる
- 鼻をすすることが癖のように現れる
- 咳払いを繰り返す
- 唐突に首を振る
- 奇声を発する
- 片足をひきずる
この他にも様々なチック症状が現れることがありますが、共通するのは人間が普通に生活を送る上では違和感を感じる奇妙な動きをすることです。そのため、母親が最初に子どもの動きに違和感を感じて病院を受診するケースが多いようです。
チック症の原因
チック症の原因は、完全に解明されているわけではありませんが、主に子どもの脳が発達の途中であることから未発達な神経系の存在によって神経が過活動を起こすために症状が現れると考えられています。
それゆえ、チック症の多くは、発症しても成人する頃までには治るケースがほとんどであるとされています。
チック症の種類
チック症には、一過性のチック症・慢性チック症・トゥレット症候群に分類されます。
一過性のチック症は主にチック症状が続く期間が1年未満で、慢性チック症は主に症状が継続する期間が1年以上の場合です。そして、チック症の症状が多種類現れる場合を、トゥレット症候群(トゥレット障害)と呼びます。
鼻をすすらないようにする方法
このように鼻をすする行為は、自分の身体だけでなく、周囲にも迷惑をかけてしまいますから、なるべくならば鼻をすすることは控えるようにしたいものです。
それでは、鼻をすすらないようにするには、どのようにすれば良いのでしょうか。そこで、鼻をすすらないようにする方法について、ご紹介したいと思います。
鼻症状が現れたら薬剤を服用する
鼻水が出る原因となる風邪や花粉症を含めたアレルギー性鼻炎に罹患しないに越したことはありませんが、鼻をすすらない方法として風邪や鼻炎にならないことを挙げるのは現実的ではありません。
ですから、風邪やアレルギー性鼻炎によって鼻水などの鼻症状が現れた場合は、速やかに病気に対応した薬剤を服用して、鼻症状を抑制することが最も現実的な対処法だと言えるでしょう。風邪ならば鼻かぜに対応した市販薬や病院の処方薬を服用し、花粉症などのアレルギー性鼻炎ならば市販あるいは処方された鼻炎薬を服用しましょう。
ティッシュを常備し鼻をかむ
鼻水が出てきたらティッシュで鼻をかむようにすることも、当たり前ですが鼻をすすらないようにする対処法の一つとなります。
たしかに、前述したように日本では恥の文化を背景として、人前で鼻をかむことを恥とする思いがあるかもしれません。しかしながら、鼻をかむ時も、鼻をすする時も周囲を不快にさせる音がする点では、全く変わりはありません。むしろ、欧米の人たちが考えるように、鼻をかんでしまった方が不快な音の数は少なくなるでしょう。
また、日本では街頭で広告目的のポケットティッシュが頻繁に配られていますから、鼻をかむためのティッシュに困ることも無いのではないでしょうか。
さらには、繰り返し鼻をすすることで自分に悪い印象を持たれるよりは、風邪や花粉症なのでと一声かけて鼻をかんだほうが、印象の低下も少ないのではないでしょうか。
チック症への対応
チック症については、その多くの場合で成長とともに自然と治癒していきますので、基本的には薬剤の投与といった治療はせずに、家族や周りの人がチック症状を理解して見守ることが必要だとされています。
ただし、慢性チック症やトゥレット症候群などで学校生活や家庭生活が困難になる場合には、薬剤を投与する薬物療法がとられるケースもあります。慢性チック症やトゥレット症候群においては、患者それぞれで現れるチック症状が異なりますので、専門医の下で治療をすることが大切になります。
ちなみに、鼻をすするような動きのチック症状が現れた場合には、医師の指導の下で見守るか、鼻をすする動きが癖として定着しないように家族が手助けするかの、いずれかの対応をとることになるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?鼻をすする行為が引き起こす悪影響について、ご理解いただけたでしょうか?
風邪や花粉症などの仕方ない事情があるとしても、鼻をすする行為が何度も繰り返されると、その鼻をすする音によって自分が思っている以上に周りの人たちを不快にさせています。また、頻繁に鼻をすする行為は、中耳炎の発症など自分の身体の内にも悪影響を招いてしまう可能性があります。
ですから、いつ鼻水が出てきても対応できるように、ポケットティッシュをカバンの中に常備して、いざという時にはティッシュで鼻をかむようにしましょう。
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