聞き慣れない「耳管開放症 (じかんかいほうしょう)」という病気ですが、実は、誰にでも起こる可能性がある病気なのです。
今回は、耳管開放症についてその症状と原因・予防策をご紹介するとともに、もし耳管開放症にかかってしまったら、どうしたらよいかをご紹介させていただきます。
この記事の目次
そもそも音が聞こえる仕組みとは?
そもそも、音が聞こえる仕組みを簡単に説明しておきましょう。
耳は大きく、外耳・中耳・内耳と3つに分けられており、外耳でキャッチされた音が、振動にかわり、中耳、内耳へと振動が伝わることで、音が認識されます。
外部の音は、外耳でキャッチされたあと、鼓膜にその振動が伝わります。その後、その振動は、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の順番に、耳の奥の骨へ順番に伝わって行きます。
外耳・中耳・内耳の3つの構造と鼓膜、アブミ骨の面積で、最初にはいってきた音圧が、最初に外耳でキャッチされた音の約22倍に増幅されます。
約22倍にまで増幅された音圧が、アブミ骨に伝達され、音は蝸牛の中のリンパ液中を伝達し、音の受容器に伝えられます。
耳管開放症とは
音が聞こえる仕組みの中でご紹介した、外耳・中耳・内耳のなかでも、耳管開放症を発祥する場所は、「耳管」という、「中耳」にあたります。
耳管とは、中耳(耳の鼓膜から奥)と咽頭(鼻や喉につながるところ)をつなぐ器官のことで、主な役割としては、空気圧を調整したり、耳の中の分泌物を咽頭に排出する役割をもっています。
この耳管は、通常は閉じており、中耳の調整が必要な場合のみ開き、その後、すみやかに閉じる仕組みになっています。しかし、耳管開放症を発祥すると、開放されたままの状態となり、しかし、その耳管が空いたままの状態になってしまう病気です。
耳管開放症の症状
耳管開放症を発祥した場合、どのような症状が現れるのでしょうか。
耳閉感
耳がボーっとしたり、耳がふさがった感じする症状です。中耳炎などでも見られる症状で、耳管が開いているのにもかかわらず、塞がった感じがします。
飛行機に乗った時に気圧の関係で、耳が「ぽーん」となってしまうような症状です。耳管開放症の場合、ツバをのみ込んだり耳抜きをしても治りません。
自声強調
自分の声が耳の中で響く症状です。これも耳管狭窄や中耳炎などでも見られる症状です。耳閉感で、耳がぼーっとしてしまう事と合わせて、耳の中で、自分の声が反芻して聞こえます。
そもそも、外部の音ではなく、自分の声を自分の耳で聞く場合は、音の振動が外耳から鼓膜伝わる過程が省かれ、内耳に直接音が伝わります。通常であれば、中耳・外耳を介して、ある程度音が逃げてくれるのですが、耳管開放症の場合は、音が逃げにくくなり、自分の声が外音と同じように伝わってしまうため、自声強調が起きてしまうのです。
自分の呼吸音が響く
呼吸の際に、吸いこんだ空気は、耳管を通して出入りしています。
この耳管を通して空気が入ってくるので、呼吸の周期に合わせて鼓膜にも振動が伝わるため、耳管が開放されたままの状態ですと、自分の呼吸の音がより大きく伝わるのです。
めまい・耳鳴り
耳管が開いたままの状態が続きますので,普段ならば気にならない程度の音が、約22倍以上にも増幅されて伝わってきます。
そのため、エレベーターに乗った時に感じるような、耳が「ポーン」とするような状況に加えて、小さな音が慢性的に大きく聞こえるため、めまい・耳鳴りといった症状もみられます。
耳管開放症の症状:その他
その他にも、バランス感覚が鈍くなり、直立歩行が難しく感じたり、低い音が聞き取りにくい、音程がずれて聞こえる、自分の出している声の大きさが分からないと言った症状が考えられます。
耳管開放症を発症すると、上記のような症状が現れ、時には大きな耳あかがとれると言われています。この耳あかが内部で炎症を起こしてしまうと、脳にも影響し、重大な病気を引き起こしてしまうようです。
上記のような症状が出たら、出来るだけ早めに医師の診察をうけるようにしましょう。
耳管開放症の原因
日常生活に支障を来す恐れのある「耳管開放症」ですが、どんなことが原因で起こる病気なのでしょうか。
不規則な生活リズム
睡眠不足や栄養不足により、発症する事が多いようです。健康的な生活リズムを保てていますでしょうか。睡眠不足や、暴飲暴食等の不健康な生活リズムから、耳管周りの血行が悪くなり、伸縮機能が低下し、開いたままになってしまうと考えられています。
ストレス
最近は、この原因が一番多いようです。特に、無理なダイエットをして、急激に体重を落とすことに成功した場合です。
無理なダイエットにより脂肪を燃焼させる際に、耳管周辺の脂肪も燃焼してしまうため、耳管が開いた状態になってしまうのです。
無理なダイエット
体重が減少する事によって、耳管開放症を発症するという因果関係は今のところないようです。しかし、ダイエットにより、体脂肪が減少する過程で、耳管の周辺の脂肪が減少し、周辺の筋肉がかたくなり弾力性が失われるため、耳管が閉じにくくなってしまうのではないかと考えられています。
また、原因2でも記載している通り、ダイエットによるストレスも要因の1つと考えられており、生活習慣そのものが密接に起因し合っているのです。
妊娠中の女性
実は妊娠中の女性は、耳管開放症を発症しやすい傾向にあります。米国の大手医院の調査によれば、妊婦さんの20%が耳管開放症を発症していたそうです。
現在、妊娠や出産に伴う耳管開放症の因果関係は、はっきりとはしていませんが、出産に備えて筋肉を緩めるホルモンが多量に分泌された結果、耳管の周囲の筋肉が緩まり、弾力性が失われた事により、耳管が開いたままの状態になるのではないかと考えられています。
ホルモンバランスの乱れ
これもまた、直接の因果関係が証明されている訳ではありませんが、ホルモンバランスの乱れが、耳管開放症を発症する確率を上げているのではないかと考えられています。
あるクリニックの調査結果によると、15人の耳管開放症患者のうち、7人が避妊ピル(経口避妊薬)を服用していたとの結果がでています。避妊ピルのホルモン分泌のバランスを乱す作用が原因となり、耳管開放症を発症したと考えられています。
また、避妊ピルを服用していなかったとしても、女性の場合は、過度なダイエットやストレス、不規則な生活習慣から、ホルモンバランスを崩してしまいますので、十分に注意しましょう。
耳管開放症にかかってしまったら
上記の5つの原因から発症する可能性のある耳管開放症ですが、もし、耳管開放症の症状がでてしまったらどうしたらよいのでしょうか。
症状が悪化し、病状が進行してしまっている場合には手術での治療が必要ですが、症状が軽度の場合は、日常生活を見直す事で治す事が可能です。そこで、自宅でできる、適切な治療方法をご紹介します。
水分をまめにとる
耳管開放症は、耳管の周りの筋肉が堅くなり、伸縮性が失われる事によって耳管が開いたままになってしまいます。
そこで、できるだけ多くの水分をまめに摂取する事で、血流を促進し、細胞を柔らかくして、伸縮性を取り戻す事ができるのです。
血行促進マッサージ
内耳をマッサージする事は出来ませんが、できるだけ耳の周りをホットタオル等で暖めながらマッサージするようにしましょう。
血行が促進され、耳管周辺の筋肉もほぐれくることにより、自然治癒力を高める事が出来ます。
横向きに寝る
仰向けで寝るよりも、横向きに寝たほうが、耳管が閉じやすくなるようです。これは、前屈みになると症状が和らぐ原理とおなじく、耳管の粘膜が重力などにって圧迫されるため、腫脹し、開いていた耳管が閉じやすくなるためです。
過度なダイエットは今すぐやめる
過度なダイエットにより、栄養不足になっていませんか。また、ダイエットをきにするあまり、ストレスを溜め込んでいないでしょうか。
急激な資質制限や水分カットによって耳管開放症を発症する可能性が高まってしまいます。ダイエット中の方は、短期間で大幅に体重を落とすようなダイエットは、プラン変更してみましょう。
耳管開放症になった場合に注意すべき事
耳管開放症の症状が出てしまった人が、注意すべき点が1つだけあります。それは、「鼻すすり」です。
耳管開放症になった人は、耳管が開いてしまっていますので、この状態のまま鼻をすすると鼓膜を引っ張ってしまいます。鼓膜を引っ張る事により、強く引っ張られ箇所にはくぼみができ、そこに耳垢がたまっていくと、耳の内部で炎症を起こしやすくなってしまうのです。
中耳炎等の炎症を発症してしまうと、その後の治療が難しくなり、回復が遅れてしまうようです。何気なく「鼻すすり」が習慣になっている人は注意が必要ですね。
耳管開放症がひどくなってしまったら?
耳管開放症の症状が進行してしまったら、すぐに医師の診察を受けるようにしましょう。
病院で行っている治療は以下のようなものがあるようです。自然治癒に比べて早期の回復が見込めますので、参考にしてみてください。
病院で行ってくれる耳管開放症の治療
耳管の耳管咽頭部の入り口に注射をして、わざと膨れさせて開口部を狭くする方法や、咽頭部に薬を噴霧して、耳管に炎症を起こさせて粘膜を膨張させることによって、耳管を狭くするといった方法も試されています。
耳管開放症の症状が出たら
病院での治療にある、駐車や薬を用いて故意に粘膜を膨張させる方法は、症状が進行しており、かなり重い症状が出ている場合にとられる治療方法です。
双方とも、故意に粘膜を膨張させて、開いてしまっている箇所を狭くする方法ですので、基本的には漢方や自然治癒力を用いた治療が一番だと考えられています。
まとめ
以上、耳管開放症の原因とその治療法をまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。聞き慣れない病名ですが、現代社会が抱える「ストレス」や「不規則な生活リズム」といった問題と密接に関わっている病気です。
いつ、どのタイミングで誰が発症してもおかしくない病気ですので、十分注意するようにしましょう。
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