これは先天性のものが多いのですが、生まれつき心臓に穴が開いている病気です。心臓に穴が開いているとなるとちょっとこわいですね。それを聞いただけでも、身内としては落ち着かない、何かとてつもないことが起きたという、それこそ奈落の底に落ちた気持ちになります。
ですが今はかなりの率で完治して、その後も普通の人と同じ生活することができるようになっています。現代の医学はそれほど進歩しています。
それに手術自体も昔ほどの大掛かりでもなく、カテーテルというもので行うと、手術自体も3~5時間ほどで済み、傷も数か所で、入院も数日ほどで済み、社会復帰も早いということです。
今回は、心房中隔欠損症という病気についてお伝えします。
心房中隔欠損症とは?
名前からして、恐ろしい病気のようですが、その病状自体は非常にシンプルで、心臓に4つある部屋の仕切りに穴が開いているという病気です。
この開いている穴は、生まれながらのものであり、何かの異常で穴が空いたままになっているようです。
心臓の機能
人間の心臓は、4つの部屋に分かれており、それぞれ左心房、右心房、左心室、右心室となっています。また、血管には静脈と動脈に2種類あり、全身を巡る血管から血液が心臓に戻ってくるものを静脈、心臓から全身へ血液を送る血管を動脈といいます。
静脈は、戻ってくるということから、二酸化炭素やその他老廃物などを多く含み、一旦右心房、右心室に集まり、その後肺を目指して移動します。その肺を通り、きれいで酸素と栄養を含んだ血液がもう一度、今度は左心房、左心室を通して全身に送り込まれます。
つまり静脈は全身を通って、戻ってきて動脈は身体の隅々へ酸素と栄養素を送る役目を負っています。一度心臓を通るのは、ため込んで鼓動を打って送りだす役目をしているのです。
心房中隔
一度戻ってきて、一時的に通る右心房とその後全身へ送られるために入ってくる左心房には、仕切られている壁があり、その血液の内容物が違うために、完全に分かれています。
この壁を心房中隔といいます。この壁に穴が開いていて、血液がきっちりと分けられないのがこの病気です。
心房の欠損
もともと乳児の際には、右心房と左心房には穴が開いており、生まれてから間もなく、この穴は自然に塞がるようになっています。
ところが、1500人に1人ぐらいの割合でこの穴が塞がらないことがあります。これが心房中隔欠損症という病気です。中隔というのは壁という意味です。
場所が心臓というところではありますが、特に身体には痛いとか重いとか、はっきりわかる症状がでれば、すぐに発見できるのですが、実際には痛みなどもないため、発見が遅れるケースが多いようです。
また、この穴の大きさも人によりまちまちです。大きいと、身体に異常を発しているケースが多いので、すぐわかるのですが、穴が小さいと、特に小さい頃は症状も出ずに、この障害に気づかないケースも多く、さらに大人になっても気付かずにいることもあるのです。
この大人でも気づかない症状ですとやっかいです。つまり生活に何らかの影響が出ているのですが、実際には簡単に考えられてしまい、見過ごされてしまっているのです。
身体の成長が進むと、血液を全身に送る量も増え、心臓の負担も大きくなることから、負荷がかかります。そのため動悸や息切れなどが起こり、初めてこの病気に気づくことは少なくありません。ある意味仕方のないことかもしれません。
心臓の先天性の病気
先天性の心臓病で、心房中隔欠損症に似た病気は以下のようなものがあり、どれも治癒には手術などの大がかりな治療が必要になるものばかりです。症状によってはこれらの疑いもあるため、簡単に説明しておきます。
僧帽弁閉鎖不全症
心臓にある血液の逆流を防ぐ弁が、うまく機能せず、開きが悪かったり、閉じなかったりして、血液が逆流してしまうことです。やはり動悸や息切れを引き起こします。
大動脈弁狭窄症
心臓から、身体の隅々まで血液を送る動脈の心臓からの出口の部分が狭くなることにより、血液が流れにくくなり、内部の血液が増えて心筋の肥大を招く症状です。
これは心筋の肥大も招くことで、二重の障害を持つことになります。心筋の肥大は、筋肉が動きづらくなる関係で、早晩、手術などの対応が必要になると思います。
詳しくは、大動脈弁狭窄症とは?症状や原因、手術の方法を知ろう!を参考にしてください!
胸部大動脈瘤
こちらの症状は、心臓から出て身体の中央にある横隔膜までの大動脈の血管が詰まることにより、部分的に拡張してしまうことです。最悪破裂することで命に関わることもありますので、充分な注意が必要となります。
破裂してからの対処は、まずその対応が難しくなります。また、なんの前触れもなく突然に起こることが多いため、対応を間違えると、死を招くこともありますので、注意が必要です。
腹部大動脈瘤
胸部と似たような感じの症状ですが、こちらは動脈の血管の壁が弱まり、拡張してしまうことです。これが、段々と膨らんでしまうことで、破裂する可能性があります。
上記の胸部大動脈瘤同様、破裂の際は命に関わることになります。この場合は突然死の可能性が高まってしまいます。
僧帽弁狭窄症
先に述べた心臓の弁がある理由により、固くなってしまい通常の動きをしなくなることで、血流が悪くなることです。弁が固くなる理由は、リウマチ熱が原因とわかっています。
肥大型心筋症
心臓の左右の心室が、はっきりした原因がないにもかかわらず、肥大してしまうことです。正常な動きができないことにより、血液がうまく流れなくなる症状です。
心筋の肥大は、うまく心臓が血液を押し出す動きが出来なくなると同時に、その圧迫により弁も開きにくくなりことで、同様に血液が流れなくなることもおきます。
心室中隔欠損
これは、逆に心房ではなく、心室に穴が開いてしまっている病気です。これも同様、生まれてまもなく塞がることが普通なのですが、それが塞がらないことにより症状が出ます。
この場合は心不全、肺のうっ血、動悸などで、乳児などは、力が出ないため、ミルクを飲めなくなることもあります。この場合、そのままにしておくと、成長にも影響がでます。
慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症
肺の動脈が血栓で塞がってしまうことにより、灰の内部の血圧が上昇する病気です。こちらも他と同様に、息切れ、動悸などの症状を引き起こします。
原因としては、血栓ができてしまうことですが、主に寝たきりで身体を動かさない人などに多い症状です。血栓は他にも、エコノミー症候群のような状態でもできやすいため、寝たきりや身体を長時間に渉って動かさないことを避けることが重要です。
この肺血栓は脳梗塞と同様に、詰まった先の肺胞には酸素などが届かず、壊死といって細胞が死んでしまいます。そのため、肺の活動が充分におこなわれなくなることが起きます。いずれにせよ、恐ろしい症状の一つです。
左房粘液腫
心臓は常に動いているのと、温度が高いため、腫瘍などはほとんどできないのですが、この病気は心臓に腫瘍ができることです。できるとしても、ほとんどが良性のものですが、稀に悪性もありますので、もしこの診断が下ったら、組織検査をする必要があります。
また、やはり腫瘍ですから、手術で取り除く必要があります。この腫瘍は他の場所にもできますが、段々と大きくなることがほとんどなので、可能な限り切除をすることで、回復を望みます。
心房中隔欠損症の症状
心房中隔欠損症の症状を紹介します。
自覚症状
この病気の特徴は、身体が成長する前は、ほとんどの人は自覚症状がありません。身体が成長してくると、血液の循環などがうまくいかないことにより、呼吸困難などの息苦しさを感じるようになってきます。
また、肌の色が血液の循環の影響で、普通と違ってきたり、風邪などを普通の人よりも引きやすい体質になります。これらの症状も、まさか心臓に穴が開いているからとは、夢にも思わないことと思われます。
先にも述べたように、この穴が小さいと子供の頃では症状もないので、発見が大人になってからということが多くなります。
動悸
心臓の血液を送る役目をする場所に穴が開いていることにより、通常よりも血液を全身に回す量が減ってしまいます。また、酸素を充分に含んだ血液を送れないことも影響し、心臓を過剰に動かす要因となり、動悸が起こります。本人は、動悸などの症状を感じますが、特にはそれが異常と感じないので、軽い症状の場合は見逃されがちです。
また、多少の運動でもすぐに動悸を引き起こす傾向になります。つまり、静脈内と動脈内の血液が混ざってしまうため、明らかに酸素が不足してしまうのです。この病気の人は、身体を動かしても継続できにくい身体になっていますが、これが最大の原因となります。
息切れ
こちらも、血流が減り酸素の供給量が少ないため、息切れがしてきます。動悸などではあまり異常を意識しませんが、息切れぐらいになりますと、普通でないと感じるようです。
病院で聴診器を充てると、異音がするようになります。これは、幼少時に聴診器を充て細かく検査していれば、発見が早いといわれていますが、割と幼少時には雑音が聞きにくいため、発見が難しいようです。
風邪、肺炎などの疾患
血流が悪くなると、身体の隅々までに栄養や酸素が運ばれません。その結果、身体の成長もそうですが、活動に影響もでます。疲れやすい、動きにスピードが出ないなどがその典型的な症状です。
その他にも重大な問題があり、それは血液が汚れやすくなるのです。つまり、浄化された血液とされてない血液が混ざり合ってしまうため完全に酸素が不足するのです。これらが相乗に作用してしまい、免疫などの力も落ちてきて風邪や肺炎などにかかりやすくなります。
子供のころは、他の子でも風邪などはひきやすいので、気が付きにくいのですが、中学生ぐらいになってもそのような症状が続くようでしたら、何かの病気がある可能性を疑った方がいいと思います。
肺高血圧
血液がきれいに浄化されないために低酸素状態になり、肺の血圧が高まってしまうことです。息切れや呼吸が浅くなってしまうことが主な症状となります。肺への血流をよくする薬の投与で改善をはかります。
心不全
血流が悪くなるために、心臓全体の動きが弱まります。この心不全は心臓の他の機能も弱めることにつながりますので、早い段階での対応が必要になります。
詳しくは、心不全の原因って?引き金となる病気を知っておこう!を読んでおきましょう。
心房細動
心臓の動きがきちんと正しく鼓動しない症状です。血栓が出来やすくなったり、不整脈が起こり動悸や呼吸困難を伴うことがあります。
また、血流の流れも悪くなることからできる血栓が、脳へ流れてしまうことがあり、脳梗塞などにつながる危険性もあります。こちらも早い段階での対応が望まれます。
詳しくは、心房細動とは?原因・症状・治療方法を理解しておこう!を参考にしてください!
心房中隔欠損症の原因
今のところは原因がわかっていません。本来、成長するにしたがって、この心臓の穴はふさがるのが普通なのですが、ふさがらないという何か特別の力が遺伝子の影響により起こったものと解釈するしかないようです。
つまり、結局のところは遺伝子が原因と考えられているのが一般的です。そして、この遺伝子の問題となると、多くの難病と同様、対処法で症状を軽くすることが主目的となります。
今の段階では、この対処法を持って、症状をやわらげる以外にありません。ですが、この対処法をいくら続けても、当面の症状はやわらぎますが、病気が治るという決定的なものではありません。
心房中隔欠損症の治療法
心房中隔欠損症の治療方法を紹介します。
手術
可能であれば手術を行います。年齢的なものもあり、あまりの幼時の場合は手術はできません。今の基準では、穴の大きさにもよりますが、体重が15キロを超えるぐらいまで成長した段階で行われるのが一般的です。
以前は開胸手術を行う、大々的な手術でしたが、最近は、カテーテルを使用する手術が主流です。この手術ですと、傷跡もほんの数ミリのものが数個残るだけの小さいものとなる上に、他の菌からの感染リスクが少ないということもあることが多く施される理由になっています。また、傷口も早く閉じるために入院期間も短く済むこと、それが、社会復帰なども早くなるメリットにもつながります。
実際に手術は心臓の穴を双方から、塞ぐものをはめ込む形になります。その塞ぐものは、アンプラッツァーという形状記憶の金属で作られたものを右心房と左心房側から穴を挟み込むような形でふさぎます。
術後は、やはり身体の中に遺物が入ることから、拒絶反応を起こすことがあります。よってしばらくは、抗生物質などを服用します。場合によってはこの反応が長引くこともあり、予断は許されません。
また、金属アレルギーの患者にはこの方法は適しません。よって、この手術をしない病院もあります。ただ、国際的な医療機関の見解では、たとえ金属アレルギーがあっても、手術をしてはいけないということにはなっていません。
基本的には、金属系の栓をする訳ですが、これは数か月もするとその上を膜ができて同化するようです。そうすればアレルギーの症状は出ないとの考えのようですが、この辺はまだまだデータ等の収集段階であり、どのように対応するかは、医師との話の上で決定することが多いようです。
費用
保険で行われる手術であれば、実際の費用よりも相当抑えられるとのことです。実際、保険がきかない手術が300万円から400万円です。その費用がかかると考えると、保険の自己負担は30%でなおかつ高額医療費の対象になるので、数万円で済みます。
日本はこの保険システムが発達しているので、費用は本当に抑えられています。他の国ではこのような金額では行うことはまず無理といってもいいかもしれません。逆に裕福でないと手術が受けられないというのがほとんどです。
心房中隔欠損症の予防法
心房中隔欠損症は、先天性の病気で、受精卵が発生した時点で、この病気になることはプログラムされてしまっているため、予防法はありません
。また、心房中隔欠損症を持つ子どもは心房中隔欠損症になるかどうかですが、ならない確率の方が断然高いです。厳密には、先天性心疾患を持たない親同士の子どもより、5〜10%ほど高い確率で心房中隔欠損症を持つ確率が高くなります。
例えば、10%高い確率で心房中隔欠損症をもつ確率が高くなるとした場合、正常の親から心房中隔欠損症の子どもが生まれる確率は約1/1500ですが、片方の親が先天性心疾患を持つ時の子どもが心房中隔欠損症になる確率は約1/1364です。
もし、自分が先天性心疾患を持っていて、とても心配な場合は、子どもを持たないという選択肢よりも、早期発見に全力を傾ける方が得策です。
まとめ
いかがでしたか。遺伝子による先天性の病気には恐ろしいものもたくさんあり、正直どう対処したらいいかと考えてしまうかもしれません。
今回の心房中隔欠損症は、医学の進歩により、カテーテルによる手術でほぼ完全に治る見込み出てきていることで、そういう意味では安心といえるでしょう。
今後も医学に進歩が今まで不治の病といわれたものも、どんどんと完治するものが増えてくると思われます。
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