ST低下という言葉を聞かれたことはありますか?皆様も健康診断などで一度は、心臓の検査をされたことが、あるのではないでしょうか?その心臓の検査の時に使われる、心電図に表示される記号が「P・R・T・Q・S」の文字です。そのなかのSとTのグラフが低下することで、どのような病気が、隠されているかを知ることができます。
そうなのです。ST低下とは心電図に現れた、グラフの流れを表した言葉なのです。心電図を見ても、良く分からないと思われますが、健康診断の時にこのグラフの、見方を知っていたら、自分の心臓の良し悪しがわかると思います。心臓は私たちの身体では、とても大切な働きをしています。
心電図に現れたST低下の意味をよく理解して、心電図のグラフを見ると、一層自分の身体の健康に、注意が向くのではないでしょうか?
ST低下とは一体どのようものを、現すのかと言うことを、詳しく調べてみましたので、一緒に見ていきましょう!
心臓について
まず私たちの心臓の機能を知りたいですね。私たちの心臓はどのような働きをしているのでしょうか?
私たちの心臓は毎日全身に、酸素と栄養を送るために、一分間に60~80回とリズミカルに拍動をしています。心臓の筋肉はポンプの役目の、電気的な活動をこなして、心電図は電気的活動を、グラフにしています。
心臓の筋肉に血液が足らなくなると、心筋虚血が起こります。心臓の筋肉に酸素と栄養を送る、冠動脈が細くなったり、けいれんを起こしたりするのです。そうすると心電図上に異常が発生して、ST低下が現われてきます。
STとは
心電図のSTとは一体どのような事でしょうか?
STというのは心臓の心室筋の活動が、心臓の全身に血液を送り出すのに必要な、活動の回復する過程を、心電図上で表します。正常な人でもSTが低下することは見られますが、主に心筋症・心室肥大・狭心症・低カリウム結晶・薬剤によるもので、ST低下が見られます。
急に胸が痛む症状が出ていれば、狭心症の心臓に栄養を送っている、冠動脈という血管が、狭くなっていることが疑われます。
STとはS波の変化
STとはS波が水平になる部分の、小さな下向きのS波が変わる部分を指します。STの部分は水平な基線と、一致するのが正しいのですが、STの低下は全て異常所見です。
2㎜までの上昇は正常な健康な人にも見られます。
ST低下の意味
STの低下とはST部分が、基本線よりも下がることを意味します。
この場合に考えられる病気は、心筋の虚血を疑います。労作性狭心症の場合、発作が始まると何事もなかった様に、元の基本線に戻り、発作時は著しくST低下が見られます。
心筋虚血や狭心症では、STは水平か右下に低下します。右上がりの頻繁時に、見られるST低下は正常です。
心電図の見方について
それでは心電図の見方を見てみましょう!基本波形を覚えていただくと、とても分かりやすくなります。
基本波形
心電図の見方は初めの小さなドームの波を「P波」次にとがった背の高い波を「R波」次の大きめの波を「T波」と言います。
心電図の波形はこの3つの波の繰り返しからできています。R波の前後に小さな「Q波」「S波」があり、これを合わせて「QRS波」と言います。
- 洞結節にスイッチが入る→P波
- 電流が心房から房室結節に流れる→PQ時間
- 心室(左脚、右脚)に電気が流れて心臓が収縮する→QRS波
- 電流の流れが一時的に途切れ、心臓が弛緩する→T波
PQの時間は絶対的不応期と言って、どの様な強い刺激を与えても反応しません。またSTの時期は、相対不応期と言って、比較的強い刺激のある場合は反応します。
心筋細胞は自分が仕事を行っているときには、他からどのような仕事の依頼があっても、全く反応しない時期があるのです。この時期を不応期と言います。
ST低下とは
STと心電図についてみてきました。それではST低下とはどのような事を言うのでしょうか?
心電図のST低下
心電図上でST低下がみられるといわれる場合、心臓の血流が減少した変化が起こり、代表的なものに、狭心症があります。
ストレイン型はST低下といっても、血流の減少ではなく心室肥大が見られます。ストレイン型というのは、穏やかに低下して、急に上昇するタイプの型です。心電図でST低下というのは、狭心症の疑いがあるということで、循環器科で調べてもらうとわかります。
心臓は絶えず、血液を送るために、収縮と弛緩を繰り返しています。STの低下とは、元の心臓の形に戻るのが、少し遅いことを意味しています。
心電図のST低下は、心筋虚血の証明となります。普通胸痛発作が起こるのは、心臓が冠状動脈硬化症になる場合があります。たと胸痛発作が起こらなくても、心電図には虚血性の疑いのある、STの変化が見られます。冠状動脈硬化によって、心臓の筋肉の心筋に、血液の不足や酸素不足に、陥らせることになって、心電図でST低下を、起こさせることになるのです。
ST低下の定義・意味・疾患について
ST低下の定義については、S波とT波が基線よりも下にある波形をいって、虚血性変化を示すST低下は、水平型と下降型があります。
またST低下の意味については、心臓の内側の心内膜で、部分的に血液が急激に不足する、虚血状態が起きている、心内膜虚血になります。
またST低下を伴う疾患としては、労作性狭心症(EAP)や不安定狭心症(UAP)などがあります。ST部分が水平に低下している場合は、心筋虚血や狭心症発作などが疑われます。
ST水平低下の心筋虚血
STが水平低下している場合、心筋が血液の不足を招きます。心筋が血流不足を起こす、虚血状態になる原因は、冠状動脈の内腔が、動脈硬化で狭くなって、十分な血液量を心筋に、送ることができなくなるからです。
心筋虚血は血液中の酸素の需要と、供給のバランスが崩れることによって、酸素需要より酸素供給が、少なくなるからです。
狭心症発作
ST低下を伴う狭心症ですが、狭心症発作も心筋虚血と同じく、動脈硬化による冠状動脈の内腔が狭くなるため、心筋に十分な血液量を、届けることができなくて起こる発作です。
糖尿病や脂質異常症など、高血圧による動脈硬化で、血管狭窄が起こります。
労作性狭心症(EAP)
ST低下が起こる労作性狭心症は、安静にすると治るのですが、歩行や階段などの労作の時に、胸が締め付けられるなどの症状出ます。
不安定狭心症(UAP)
ST低下が伴う不安定狭心症は、労作性狭心症が進んで、安静時でも胸が、締め付けられるような症状が出て、心筋梗塞に移行する場合が多くなってきます。
心電図によるST心筋虚血
いよいよ心電図によるSTの、心筋虚血についてみてみたいと思います。
心筋が虚血状態になると、心電図に現れるはずですが、必ずしも虚血があったからと言って、心電図に現れるとは限りません。また心電図に変化があっても、血液の流れが減少する、虚血状態でない場合もあります。
多くは心筋が虚血状態になりますと、心電図のST部分の低下がみられる、虚血性変化が見られます。またT波の部分が、下向きになることもあり、そのあとにU波が出ることもあります。
屋内でランニングや、ウオーキングをするトレッドミルや、運動者のトレーニングを行う、自動車エルゴメーター、階段を上り下りする、マスター負荷試験などを、利用して運動すると、運動することで心臓の仕事量が増えて、酸素供給が増加するため、心筋は多くの酸素の需要が必要となります。
この様な運動をすると動脈硬化があると、安静時に異常がなにも見られなくても、心電図上に心筋虚血の、ST低下がみられることになります。
ST低下のメカニズム
ST低下のメカニズムはどのように、なっているのでしょうか?
心筋内の電極
心筋虚血により心筋が異常をきたすと、心筋内部のマイナス電位が、周囲よりも弱くなって、細胞膜の静止膜電位が小さくなります。
虚血の状態が続くと、イオン交換ポンプの機能が支障をきたすようになり、細胞内外にあるKイオンの濃度差が、正常よりも少なくなってきます。
心筋内外のKイオン
Kイオンだけが細胞内で、細胞内外に行き行きができるため、Kイオンの濃度差が、正常よりも少なくなると、普段のKイオンの流出が減少するので、細胞内電位が十分に低くなれません。
正常の部位よりも、若干高い電位になるので、Kイオンはここから、正常部位に向かって、常に電流が流れだすようになり、そのため心筋障害が、起こった状態になります。この状態の電気の流れを、障害電流といいます。
心電図によるST低下
心電図がST低下となるのは、この障害がまだ心筋の、内側だけで起きている場合は、障害電流が外側の、正常部位に向かって流れます。基本線が上方に動くのは、電極に流れ込んでくる形になるからです。脱分極中のST部分が、他と比べることのないほど、下方にシフトして見え、低下状態です。
心電図によるST上昇
一方より悪化すると外側まで、全体が異常をきたすこととなり、障害電流は周囲に向かって、流れる形になって、ST上昇となります。これは基本線が低下に動いて、電極から見ると、反対向きになるためです。こちらの形の方が、状態が悪化していて、心筋梗塞になる手前の状態と言えます。ですからST上昇は、より注意が必要となってきます。
障害部位の電位が高い部分から、プラスからマイナスに流れ、脱分極中は電流が流れないので、OVは実際にはST低下と見えます。障害電流によって静止時に、直流電位が上がります。本来の基本線から、新たな基本腺ができます。
危険なST低下
それではST低下の中で危険なSTは、どのようなものか見たいと思います。
心電図でST部分というのは、左右の心室に電流がながれ、そのため心臓の収縮がおこる、QRS波の終わりから、電流の流れが一時的にストップして、心臓が緩むT波に移行して、T波の収縮から、回復までの間の、波形のことをいいます。
正常な場合はST部分は、水平な基線と同じ位置にありますが、心筋虚血が疑われる場合は、ST部分がその基線よりも、下がっているわけです。
動脈硬化が原因の労作性狭心症
労作狭心症が起こるのは、高血圧、脂質代謝異常、糖尿病、喫煙などで動脈硬化になり、心臓の冠動脈が狭くなって、心臓に十分な酸素や栄養を、送ることができなくて起こります。
労作性狭心症の原因は、動脈硬化で起こりますが、狭心症発作を起こした場合は、STが基本線よりも水平のまま、可なりのレベルで低下します。ここでST低下が起こるわけです。そして発作が始まると、もとの基本線の位置に、何事もなかったように戻っていきます。
ST低下は色々あるのですが、頻繁時によくみられる、右上がりのST低下は正常なので、心配しなくてよいですが、心筋虚血の場合は、STは水平もしくは、右下がりに低下します。
労作性狭心症は発作がないときでも、運動負荷心電図を撮った場合には、労作性狭心症特有の、水平低下を起こしやすくなります。これは労作性狭心症は、冠動脈硬化症の進行上で、みられる胸痛発作だからです。
危険なST低下のタイプ
危険なST低下には、水平と右下がりの2つのタイプがあります。運動負荷心電図に異常がみられて、ST低下は水平線を描くか、右下がりのST低下になるか、2つのタイプに分かれます。
また正常な場合でも、運動で心拍数が上昇した場合は、ST低下が現われる時があります。これは運動によって、相対的に血液量が不足することで起こり、冠動脈硬化症の血管狭窄が、なくても現れます。この場合は右上がりのST低下を見せますが、運動負荷陰性と捉えることもあります。
ST検査
さてST低下について少しは、お分かりいただけたと思います。ST低下が心電図で出た場合に再検査がされます。その再検査方法で、はっきりとしたST低下の危険性がわかります。その時の再検査方法には、どのようなものがあるのでしょうか?
ホルター心電図
このホルター心電図は24時間装置を身に、つけられるところに利点があります。小型の軽量の装置です。この小型の軽量の装置を身に着けて、日常生活における心電図の記録を、解析観察することができるのです。
労作とは無関係に、不整脈と冠動脈が痙攣発作をおこす、冠攣縮性狭心症は夜や、早朝に見られます。短時間の心電図や、負荷心電図検査では、解ることが不可能なので、日常生活における長期の、心電図が必要となるわけです。
このホルター心電図の名前の由来は、アメリカの物理学者の、Holter博士の名前から由来して、このHolter博士は24時間、心電図記録法の発表者なのです。
このホルター心電図で、日常生活の中から心筋虚血や、不整脈が起こるかということがわかり、症状が心臓と関係あるのかということも分かります。
ホルター心電図の使い方は、胸に電極を取り付け、テープレコーダー系のホルター心電図を腰に固定して、心電図を記録して、コンピューターで心電図を解析します。
心臓超音波検査
もう一つのST低下の再検査方法は、この心臓超音波検査です。この検査は高周波数、これは人間の耳では聞こえることのない、超音波を発信させて、返ってくる反射波を受診します。心臓の状態を、画像に映し出して診断する検査です。
超音波は心臓から反射波エコーを受診して、画像に映し出して、心臓の様子を確認できます。放射線を利用しないので、レントゲンのX写真やIR検査のように、被爆することがありません。妊婦や乳幼児などは特に安心して、検査を受けることができます。
心臓超音波検査では、形態的な診断のできる、心臓の形の異常を発見できます。また心臓の機能的診断もできます。心臓が拍動しているそのままの状態を、画像でみることができるのです。
検査方法は前胸部や手首や、足首に電極を付けて、仰向けになって上半身を露出して、身体にゼリー剤をぬって、プローブという超音波発信器を、肋骨の隙間に沿うように、当てて行われます。検査する時間は20分~30分程度です。診断は医師が画像を見て、その場で診断します。
まとめ
皆様ST低下について、少しは知識を広めて頂けましたでしょうか?ST低下とは心電図上に現れる記号のことで、心臓の電気の流れを示したものです。
ST低下が起こることは、正常人間でも起こりますが、心筋虚血が疑われることが多いです。ST低下と言われたときは、循環器科で再検査してもらって、確かめられることが良いと思います。ホルター心電図のような簡単なやり方もありますので、ST低下が起こった場合は、循環器科でよく相談されるほうが良いのではないかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。生きている者にとって一番大事な、心臓を労わり、変化が見られたら迷わずに、専門医を訪れてくださいね。