肺性心とは?原因となる病気を知ろう!呼吸しづらい人や食欲がない人は注意!

「肺性心」というものを聞いたことがあるでしょうか?名前から察するに、何か肺の病気だということくらいしか分かりませんよんね。

しかし、肺性心になると、様々な弊害が現れます。毎日の生活にも支障が出ますから、体に異常を感じたら放置せず、早めに病院で医師の診察を受けましょう。

では、肺性心の仕組みと症状、対処法などについて、詳しくお話いたします。

肺性心とは

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肺性心とは、肺の病気が原因で肺での血液の流れが悪くなり、肺へ血液を送り出している右心室に負担がかかって、右心室が大きくなったり(右室拡大)、右心室のはたらきが悪く(右心不全(うしんふぜん))なった状態です。

もともとの心臓病でなく、肺の病気が原因で心臓に異常が起きたものを肺性心といいます。

右室拡大とは

肺の疾患が原因となって、肺の中での血液循環が滞るようになると、心臓が送り出した血液がきちんと肺に流れず、右室に貯まっていきます。

肺に病気があると肺での血液のめぐりが悪くなって、心臓が送り出した血液がきれいに肺に流れず、右心室に血液が貯まるようになります。右室に血液が貯まることによって、右室拡大が起こるのです。

右心不全とは

心不全とは、血液を体中に送り出すポンプの役割を果たす心臓の働きが低下することによって引き起こされます。心臓の働きが低下すると、ポンプとしての役割もうまくいかず、血液の循環が悪くなります。いわゆる、鬱血状態となるわけですね。心不全が「鬱血性心不全」と呼ばれるのもこのためです。この心不全の原因が左心系にあるものを「左心不全」、右心系にあるものを「右心不全」と言います。

右心系は、全身を巡って戻ってきた動脈血が肺でガス交換され、酸素を多く含む動脈血となって心臓へ戻ってくる、肺循環と呼ばれる一連の流れを司っています。そのため、右心系の働きが悪くなると、静脈血がきちんと心臓へ戻らず、心不全となるのです。

右心不全の場合、浮腫、胸膜腔内に液体が貯まる(胸水)、腹腔内に液体が貯まる(腹水貯蓄)、頸動脈が腫れる(頸動脈怒張)、肝臓腫大などの症状が見られます。

肺性心の原因

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肺性心には、慢性と急性がありますが、ここでは慢性肺性心を引き起こす原因について
ご紹介します。

慢性の肺疾患

  • 慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)
  • 肺結核後遺症(はいけっかくこういしょう)
  • 肺線維症(はいせんいしょう)

肺血管の疾患

  • 肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう)
  • 原発性肺高血圧症

慢性肺性心の中で最も多い原因としては、慢性閉塞性肺疾患と肺線維症が挙げられます。

肺性心の症状と治療法

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肺性心は肺の病気が原因で心臓に疾患が出るというものですから、早期発見に超したことはありません。そのために必要なのが、初期症状を知っておく、ということです。

肺性心は、肺高血圧症を経て引き起こされますが、肺高血圧症の段階では症状が出ず、無症状というのが特徴です。その後、肺動脈の血圧上昇に伴って病気が進行してくると、運動時に疲れやすくなるなどの初期症状が現れ始めます。

呼吸困難や疲れ

肺性心になると、気管支や肺の病気になった時のように、呼吸困難や疲れが現れます。少し動いただけなのにすぐに疲れてしまったり、息苦しく感じたりといった症状が、肺性心ではよく見られます。

ただし、呼吸困難や疲れと言うのは他の病気でも起こりえますし、気管支喘息や気管支炎などでも現れるため、これだけでは判断は難しいでしょう。

めまいや失神

さらに症状が進行して重度の肺性心になると、強いめまいで失神したり、体に痛みを感じることがあります。気管支喘息や気管支炎などではめまいや失神が起こることはありませんので、このような症状が出たら肺性心を疑いましょう。

食欲低下

さらに病状が進み、右心不全を併発すると、足のむくみや食欲不振を引き起こすこともあります。右心不全になると、頸動脈が腫れる、「頸動脈怒張」が起こるため、比較的分かりやすいと言えます。

右心不全の進行によって肝臓や消化器官が腫れることで食欲低下が起こり、その後、足のむくみや腹水、胸水などが起こってきます。

喘息に似た症状も

右心不全によって肺に水が貯まると、夜間の呼吸困難や咳など、喘息に似た症状が現れる場合があります。気管支の腫れがひどい場合には、ヒューヒューという喘息のような音が聞こえることもあります。こうした症状は左心不全によく見られますが、右心不全でも起こるので厄介です。

自己判断は難しいので、早めに医療機関を受診するようにしてください。

慢性肺性心の治療法

慢性肺性心の場合、肺の病気が原因となっているため、元となる疾患を治療することが必要です。まずは医師の診察を受け、原因となる疾患を特定することから始めましょう。

主な原因となるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)とは

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すでにご紹介したように、肺性心の主な原因の1つに慢性閉塞性肺疾患があります。この疾患はCOPDと呼ばれることもあり、患者数は年々増えています。COPDというと、喫煙者がかかる病気として耳にした人もいるかも知れませんね。もともとは喫煙経験のある中高年に多い疾患でしたが、近年は若年層の喫煙が増えている関係で、若年層での発症も増えているようです。このCOPDが肺性心を引き起こすきっかけになることが多く、喫煙と肺性心は切り離して考えることができない関係です。

COPDはたばこ病と呼ばれることもあり、その名の通り、喫煙を通してばこの煙に含まれる有害物質を長期間にわたって吸い込むことで、肺に炎症が起こる病気です。肺の炎症によって肺胞壁が破壊され、肺が異常に拡大する「肺気腫」の他、気道がむくむ、気管支の中に痰が詰まるなどの症状が引き起こされます。そして、肺気腫と気管支の病気が作用し合い、肺が正常な状態に戻らなくなるというものです。

通常、わたしたちは口から空気を吸い込み、吸い込んだ空気は肺を経由してガス交換をされ、再び口から出ていきます。これが通常の呼吸ですが、COPDになると、吸い込んだ空気が肺から出ていかず、肺の中に留まることになります。

空気が肺の中に貯まると、酸素と二酸化炭素の交換を行う「肺胞」と呼ばれる組織が拡張し、破壊されるというサイクルを繰り返すこととなり、やがて袋状のものが形成されるようになります。肺の中に袋ができてしまうことで、肺全体が膨らみ、膨らんだ肺によって心臓が圧迫される、と言う状態を引き起こします。

COPDの症状

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COPDの特徴的な症状としては、息切れや咳、痰が絡む他、痩せるなどの症状が挙げられます。しかし、これらの症状は必ずしも現れるわけではないようで、人によってはほとんど症状が現れないこともあるようです。無症状の場合、POCDの診断は困難を極めます。

多くの患者は、COPDになると、初期症状として息切れや息苦しさを感じます。そしてさらに症状が進むと、安静にしている時でも同様の症状が現れるようになります。

また、POCD患者の3分の1が他の病気を併発しているというデータもあります。COPDの合併症として多い病気としては、

  • 糖尿病
  • 心臓病
  • 骨粗鬆症
  • 抑鬱

などがあり、これらの病気を併発している患者は、経過が悪くなる傾向にあり、死亡のリスクも高いと言われています。

詳しくは、copdとは!症状や原因、進行具合を知ろう!治療法はあるの?を参考にしてください!

COPDの予後

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COPDの予後は、諸症状に悪化が見られるかどうかで変わってきます。息切れや咳、痰や胸部の不快感などが増したり、さらに悪化すると、患者の呼吸機能の低下を招きます。そしてそれは、死亡リスクを高めることにもつながるため、症状の悪化に素早く気づくことが非常に重要なのです。ポイントとしては、痰や咳が増えた、胸に不快感や違和感が現れた、などの変化を見逃さないことです。少しでも違和感を感じたら、早急に医師の判断を仰ぎましょう。

 気腫合併肺線維症

場合によっては、肺気腫と肺線維症が合併した「気腫合併肺線維症」発症することもあります。気腫合併肺線維症は、肺のあらゆる部分が壊れて、肺自体の面積が小さくなるというものですが、肺の面積が小さくなると、酸素を取り入れてガス交換をする機能が低下し、重症化するため厄介です。さらに、肺線維症の合併により肺がんになるリスクも高くなるため、注意が必要な疾患です。

COPDの治療

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COPDの原因ははっきりとは分かっていないものの、喫煙関係経験者の発症率が高いため、喫煙との関係は深そうです。COPDの厄介な点は、治療法がなく、症状を緩和させることしかできないということです。1度POCDになってしまうと、肺が元に戻ることはないと言いますが、それは治療方法がないためなのですね。COPDになってしまったら、免疫力を高めたり、喫煙したりするなどの対処方が必要になります。

では、そん厄介なCOPDの治療法についてご紹介します。COPDの治療法には、患者本人の努力でできることと、医師の指導が必要な2種類があります。薬物療法などもありますが、基本的には生活習慣を改善する方法がメインとなります。

自分で行う治療法

禁煙

なんと言っても大切なのは、COPDの原因とも言えるたばこを絶つことです。この場合、たばこの本数を減らしたり、ニコチンの少ない種類に変えるなどでは意味がなく、完全にたばこを止めることが必須です。甘い考えを捨て、きちんとCOPDを治療するという固い意志の元行うことが必要なのです。

運動療法

息切れや息苦しさが主症状であるCOPDですから、体を動かすことは極力避けたいですよね。しかし、運動不足による体力の低下が、症状の悪化を招くことにつながりますから、ウォーキングなどの軽い運動を無理なく行うことが大切です。

また、運動を始める前にはきちんとストレッチをして体をほぐし、運動する体制を整えましょう。運動中に具合が悪くなった場合に備え、気管支拡張薬を常備しておくこともお忘れなく。

栄養管理

COPDの人は、栄養と水分をきちんと摂るように意識しましょう。体型によって管理方法も異なります。

肥満ぎみの人は、適正体重を目指し、食事量や食事の内容に気をつけましょう。脂っこいものや甘いものなど、脂肪の増加につながるものを避けるほか、太りにくい食べ方を心がけることも大切です。

お腹に脂肪が多いと横隔膜の動きが悪くなり、スムーズな呼吸が難しくなります。それにより二酸化炭素が体内に貯まりやすくなり、体が酸欠状態になるのです。これによって息苦しさを感じたり、心臓への負担も重くなりますから、肥満が病気の悪化につながることは一目瞭然ですね。

反対に、痩せぎみの人は呼吸だけで体力を消耗してしまい、さらなる体力低下を招いてしまいます。COPDの人は健康な人に比べて風邪などが重症化しやすいため、栄養をしっかり摂って免疫力を高め、体力を落とさないようにすることが大切です。

また、COPDの症状にあるように、痰が気管支に絡みやすくなります。絡んだ痰をスムーズに出しやすくするためには、水分補給を多めに行うことが大切です。普段あまり水分を摂らないという人も、意識してたっぷり摂るようにしましょう。

医師の指導の元で行う治療

ワクチン

風邪などの感染症が重症化しやすいため、ワクチンの接種が重要と言われています。症状の悪化を防ぐワクチンには、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの2種類があり、特にインフルエンザワクチンは重症化を防ぎ、死亡率を半減させる効果もあるということです。

薬物療法

完治しないと言われているCOPDですが、薬による治療は行われています。治療に使われる薬にはいくつか種類がありますが、最もよく使われているのが気管支拡張薬です。名前の通り、気管支を広げて空気の通りをよくする薬で、運動前や運動中に使用することで、息切れを解消してくれます。運動療法のところでも名前が挙がりましたが、運動中に具合が悪くなった時にも使用できます。また、息切れが日常的に続いてる人は、効果が長期間持続するタイプを使用します。気管支を広げる薬以外にも、咳を沈めたり痰を切れやすくしたりする薬もありますし、気管支の炎症を抑えたり、細菌を殺して感染を防いだりする薬も出ています。

ただし、これらの薬を使う場合には、必ず医師の相談の元、指示に従って使用してくださいね。

外科手術

上記のような内科的な治療で改善が見られない場合、手術によって治療する方法もあります。

手術の方法としては、内視鏡を使って破壊された肺の一部を切除する方法が取られます。およそ肺20~30%を切除するこの手術では、内視鏡の他に、開胸せずに行う胸腔鏡手術も用いられます。

酸素療法

内科的治療を行っても低酸素血症が改善されない場合、酸素ボンベから酸素を吸入する方法があります。酸素の吸入は鼻に通した専用のチューブを通して行いますが、最近では液体酸素がコンパクトになり、外出時の負担も減ってきているということです。

急性肺性心

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急性肺性心は、肺動脈が閉塞して肺高血圧症になることで起こります。発症した場合、症状が重篤なため、緊急の処置が必要になります。

急性肺性心の原因

手術や分娩、重度の外傷などにより、長期間の安静を強いられることで、静脈の中に血栓ができ、その血栓がはがれて肺動脈に入ってしまうことがあります。このはがれた血栓が血液の流れを妨げ、肺性心を引き起こすことがあるのです。

また、特に病気やケガがなくても、長時間同じ姿勢を取り続けることで肺性心を引き起こすこともありますので、電車や飛行機などの長距離移動の際には、意識的に姿勢を変えるなどして対処しましょう。

急性肺性心の症状

急性肺性心になると、急激な呼吸困難や胸の痛み、チアノーゼを起こし、時として失神や喀血を伴うこともあります。発熱や頻脈が見られ、ショック死や突然死を引き起こすことも珍しくないため、早急な対処が必要です。また、急激な右心不全を起こすこともあります。

急性肺性心の治療

急性肺性心は、静脈内にできた血栓が肺動脈を塞ぐことで起こりますから、治療には血栓を溶かしたり吸引したりする他、人工呼吸器の使用などが必要となります。急性肺性心は最悪の場合ショック死に至ることもあるため、早急な対処が重要です。

肺性心の予防法は?

残念ながら、肺性心に有効な予防法はないようです。ただし、肺の疾患や気管支疾患が原因となるため、このような疾患を持っている人はきちんと治療することが大切です。

また、急性肺性心の場合、同じ姿勢を取り続けることで引き起こされるため、意識的に下肢を動かしたり、体制を変えたりして、血栓ができにくい状態を目指すことが重要です。

まとめ

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肺性心になると、日頃から息切れや疲れやすさ、めまいや失神などの危険があり、日常生活にも支障が出てしまいます。何をするにも息切れがしてしまっては、些細な楽しみも心から味わうことができず、辛いですよね。

また、最悪の場合は死に至ることもある病気ですから、油断せず、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

喫煙者の場合は、COPDになるリスクも高いため、何よりもまず、禁煙をオススメします。たばこ好きの人には辛いですが、1度なってしまうと治らない病気ですから、予防が何よりも大切です。日々の生活の中で健康に気を配り、病気と無縁の生活を送りたいものですね。

  
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