「口すぼめ呼吸」は、通常よりも酸素を多く摂取できる呼吸法です。文字通り、キャンドルの火を吹き消すような口の形で息を吐き出します。
口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など呼吸器系疾患の呼吸理学療法として医療現場で指導されています。呼吸困難を改善する呼吸リハビリテーションや手術後の呼吸器合併症の予防などで、口すぼめ呼吸と横隔膜呼吸(腹式呼吸)を訓練します。
口すぼめ呼吸の目的と効果、呼吸の方法とともに、口すぼめ呼吸を必要とする閉塞性換気障害についてもお伝えしますね。
口すぼめ呼吸とは?
「口すぼめ呼吸」とは、口をキャンドルの火を吹き消すような形にして、ゆっくりと息を吐き出す呼吸法です。呼気をゆっくり行うことで、酸素の摂取量が通常よりも多くなります。
呼気(空気を吐き出す)をゆっくり行うと、呼吸数・分時換気量・酸素換気当量が減少し、1回換気量が増加して、血液ガス交換が改善するという効果があります。
口すぼめ呼吸は、横隔膜呼吸(腹式呼吸)とともに、閉塞性肺疾患などの理学療法として医療現場で指導されています。呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)や、開胸・開腹手術後の呼吸器合併症を予防するためにも、口すぼめ呼吸と横隔膜呼吸が推奨されます。
[呼吸のしくみ]
呼吸運動は、肋間筋と横隔膜筋という2つの呼吸筋によって行われます。
空気を吸い込む(吸気)
空気を吸い込む時は、肋間筋が収縮して肋骨を持ち上げます。胸郭が前後左右の水平方向に広がり、空気が吸い込まれます。これを「胸式呼吸」といいます。
横隔膜筋がいっしょに収縮すると、横隔膜が下がります。胸郭が垂直方向にも広がるので、より多く空気を吸い込むことができます。これを「腹式呼吸」「横隔膜呼吸」といいます。
横隔膜筋と肋間筋の2つの筋がいっしょに収縮する方が、胸郭が水平・垂直の両方向に広がるので、空気をより多く摂りこめます。
空気を吐き出す(呼気)
肋間筋と横隔膜筋が弛緩すると、肋骨が下がり、横隔膜が持ち上がり、胸郭が狭くなって、空気が肺から押し出されます。
横隔膜と化学受容器
ヒトの体には、化学受容器があり、酸素O2と二酸化炭素CO2の濃度が一定になるようにしています。
末梢化学受容器は、酸素濃度の低下と二酸化炭素濃度の上昇を感知します。低酸素状態になると、神経を通じて呼吸中枢に伝えられ、横隔膜筋の収縮性を高めて、呼吸を行います。
中枢化学受容器は、二酸化炭素濃度しか感知しません。二酸化炭素の濃度が上昇すると、呼吸中枢を刺激して、横隔膜を動かし、呼吸を行います。
[口すぼめ呼吸の効果]
口すぼめ呼吸では、口をすぼめて、ゆっくりと空気を吐き出します。
ゆっくりと呼気すると、呼気時の口腔内圧が高くなります。気道内圧の上昇が陽圧降下となります。そのため、気道が閉塞するのを防ぐことができます。
口すぼめ呼吸をすると、呼吸数や1分間の換気量(分時換気量)、機能的残気量(呼気の終わりに肺に残っている気量)、酸素換気当量(全身で消費される酸素量と換気される空気の比率)が、減少します。1回の換気量と血液中の酸素飽和度(SPO2)は増加します。
酸素の摂取量が増える
つまり、口すぼめ呼吸をすると、気道が広がって、気道が塞がるのを改善できますから、息を吐くのが楽になります。しっかり息が吐けるので、息を吸い込むのも楽になります。気道の圧力が上がるので、肺胞をふくらませておくこともできますから、効果的な呼吸ができます。
気道の閉塞を防ぎ、1回の換気量が増え、効果的な呼吸ができるので、通常よりも酸素摂取量が多くなります。
口のすぼめ方によって呼気の速さや強さを調節できるので、呼吸と動作を合わせやすくなります。
横隔膜呼吸と口すぼめ呼吸をいっしょに行う
口すぼめ呼吸は、横隔膜呼吸といっしょに行うと、より酸素を多く摂りいれることができます。気道に空気が通りにくい閉塞性障害のある人に効果がありますが、肺がふくらまない拘束性換気障害の人にも良いようです。拘束性換気障害の人は、呼吸が浅く速くなります。
腹式呼吸と口すぼめ呼吸をいっしょに行うのは、気管や気管支、肺などに障害のある人に限りません。運動選手もより多くの酸素を摂取するために、行う人が多いようです。
[口すぼめ呼吸の方法]
口すぼめ呼吸は、次のように行います。
- 軽く口を閉じて、鼻から空気を吸い込みます。
- 口をキャンドルの火を吹き消すような形にすぼめ、ゆっくりと空気を吐き出します。吐き出す時間は、吸い込む時の2~3倍かけるようにします。
- 吐き出す(呼気)時間を少しずつ長くして、最終的には、吸気時間の5倍にします。
口すぼめ呼吸の注意点
呼吸リハビリテーションや肺や気道に障害・疾患のある患者さんに「口すぼめ呼吸」を指導する看護師さんや理学療法士さんは、次の点に注意します。「国家試験解答速報」など看護技術を紹介する看護師系サイトや「知恵コレ」でも、留意点についてくわしく述べています。
1, 呼吸音が聞こえるほど口をすぼめて抵抗をかけないようにします。
2, 頬をふくらませないようにします。頬がふくらむと、陽圧が頬に逃げてしまいます。
3, 空気を吸う時(吸気)は、必ず鼻から吸い込むようにします。吸気時は「口を軽く閉じて」と注意します。
4, 呼吸数は1分間に20回以下になるようにします。1分間に10~12回くらいが目標です。呼吸状態が低下していたり、1回の換気量が減少していたりする患者さんは、呼気努力がかなり困難になります。必要に応じて介助を考えます。
5, 最初から呼気時間を極端に長くしたり、呼吸を極端にゆっくりしないようにします。呼気をゆっくりさせようとして、力が入ると血圧が上がることがあります。口すぼめ呼吸は副交感神経を刺激してリラックス状態にするものですが、逆効果になってしまいます。
横隔膜呼吸を指導する
口すぼめ呼吸をする時は、横隔膜呼吸(腹式呼吸)に切り替えるように指導します。特に周術期の患者さんには必要な呼吸法なので、口すぼめ呼吸とともに、手術前から訓練を行います。
- 仰向けに寝て、膝を立て、楽な姿勢をとります。
- 口を軽く閉じて、鼻から空気を吸い込みます。その時、胸は動かさず、腹を持ち上げるようにして、大きく息を吸います。吸気の最後に、少し息を止めます。
- 口をすぼめて、ゆっくりと息を吐きます。この時、腹に力を入れ(腹筋を使って)、肺の空気を絞り出します。
初めは、なかなか上手にできない人もいます。指導する看護師さんは、「患者さんが焦らないように、落ち着かせ、励ますことが必要」と、「解答速報」他で述べています。呼吸のトレーニングは、少しずつ行います。
換気障害と慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患とは、慢性気管支炎と肺気腫という病気の総称です。閉塞性換気機能障害(閉塞性換気障害)と呼ばれる病気の中に含まれます。
慢性閉塞性肺疾患は、呼吸が効率良くできなくなる病気です。息を吐く時に、気道がつぶれて(閉塞して)空気を吐き切れず、胸がふくらんだままになります。そのため、息を十分吸い込むことができなくなります。肺の呼吸する機能が加齢によって低下するのです。「肺の老化」と言えます。
慢性閉塞性肺疾患は、長年、タバコを吸う習慣のある人に起きやすいといいます。タバコの有害成分が肺の老化を速めるのです。
口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患の患者さんには有効な呼吸法です。
[呼吸器系とは?]
呼吸器系は、空気の通り道である気道と肺のことです。
気道は、鼻腔・咽頭・喉頭の上気道と、気管・気管支の下気道になります。気管は2つに分岐して、左右の肺に入り、さらに枝分かれして気管支となります。気管支は枝分かれを繰り返し、細気管支となり、その先端に肺胞があります。
ガス交換の機能
肺の最も大きな働きは、ガス交換です。吸い込んだ空気から酸素を摂りこみ、身体の各組織で生じた不必要な二酸化炭素を吐き出して、酸素と二酸化炭素の交換を行います。
酸素と二酸化炭素のガス交換は、肺胞で行われます。摂取された酸素は動脈血によって身体の隅々まで運ばれます。酸素が十分に運ばれないと、各組織の細胞は十分に働かず、死ぬこともあります。
気道や肺に障害が起きて、呼吸が効率良く行われないと、ガス交換が十分できず、全身が酸素不足の状態になります。
(解剖学的死腔)
酸素と二酸化炭素のガス交換は肺胞で行われます。呼吸器系の鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・気管・気管支の気道は、空気の通り道で、ガス交換には関与しません。そのため、解剖学的死腔といいます。
何らかの原因で肺胞の1部が機能的にガス交換を行えなくなった場合は、機能的死腔(生理学的死腔)といいます。
[換気障害]
換気機能障害(換気障害)には、閉塞性換気機能障害(閉塞性換気障害)と、拘束性換気障害、その2つが混じりあった混合性換気障害があります。
換気機能は、呼吸器機能検査によってわかります。肺活量(肺がどのくらいの量の空気を吸い込み、どのくらいの量を吐き出すことができるか)と1秒率(どのくらいの速さで空気を吐き出すことができるか)を測定します。
1秒率とは、「努力肺活量(努力して吐き出す呼気の量)のうち、最初の1秒間にどれだけの率が吐き出せるか」です。1秒率によって、肺の弾力性と気道の閉塞の程度がわかります。呼吸器機能の検査で、1秒率が70%以下であれば、閉塞性換気障害と診断されます。
拘束性換気障害
拘束性換気障害は、肺自体が線維化したり硬くなったりして、呼吸機能が十分働かなくなり、肺をふくらませることができなくなることです。肺活量が低下します。
拘束性障害は、肺繊維症・間質性肺炎・塵肺(じんぱい)症などの肺疾患、肺切除や肺腫瘍、肺結核の後遺症、筋肉や神経の疾患による呼吸運動の障害などによって、起こります。
閉塞性換気障害
呼吸器機能検査において、閉塞性換気障害を示す呼吸器系疾患の総称です。何らかの原因で、空気が気道を通りにくくなる疾患です。
閉塞性障害は、気管支喘息・慢性気管支炎・びまん性汎細気管支炎・気管支拡張症・肺気腫・肺嚢胞症などの呼吸器系の病気によって起こります。
また、重症筋無力症やギランバレー症候群など胸郭の病気によって閉塞性換気障害が起きる場合もあります。
(閉塞性換気障害の病状)
閉塞性換気障害は、加齢とともに起きやすくなり、男性に発症することが多いようです。喫煙習慣のある人に発症しやすいと言われます。
肺細胞と気管支線が肥大した状態になります。進行性の全身性の病気です。一度発症すると、完治することはなく、患者は病気と一生つきあうことになります。
運動すると、動悸や息切れが起こります。咳や痰が多くなります。しかし、日常の生活習慣を改善し、適正な治療を行えば、症状や進行を抑えることができます。
[慢性閉塞性肺疾患の原因と症状]
閉塞性換気障害のうち、慢性気管支炎と肺気腫を総称して「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」といいます。長期間の喫煙習慣のある中高年男性に発症することが多いので、生活習慣病の1つと考えられます。
糖尿病は代謝の生活習慣病ですが、慢性閉塞性肺疾患は、肺の生活習慣病です。
慢性閉塞性肺疾患の原因
慢性気管支炎と肺気腫は、タバコの有害成分によって引き起こされることが多い疾患です。
タバコの有害成分により、気管支に炎症が起き、空気の通りが悪くなります。肺胞が破壊されて、肺気腫になります。酸素と二酸化炭素のガス交換の機能が低下します。身体全体が酸素不足になります。
一度変化した気管支や肺胞は、元の状態に戻ることはありません。
加齢も、慢性閉塞性肺疾患の原因となります。
慢性閉塞性肺疾患の症状
気管支に慢性的な炎症が起きるので、咳や痰が多くなります。歩いたり、階段を上ったり、運動すると、動悸や息切れが起こります。
患者さんによっては、喘鳴(ヒューヒューいう呼吸音)や呼吸困難を起こすことがあります。身体全体が酸素不足になり、いろいろな組織に障害が起こります。
慢性閉塞性肺疾患の治療
治療は、日常生活の中で患者自身が行う方法と、医療機関で行う方法とがあります。
1度慢性閉塞性肺疾患にかかると、元には戻りません。進行性の全身性の病気ですから、症状はしだいに悪化します。感染症などを起こすと、重篤化します。でも、適正な治療を行うことで、症状を改善して、運動能や身体の活動性を高め、病気の進行を遅くすることができます。合併症を防ぎ、生命予後を改善できます。
[患者自身が日常生活で行う治療方法]
患者自身の行う意志が重要になります。呼吸法は極めて有効な治療法です。
①禁煙
タバコの有害成分が原因ですから、治療の第一は禁煙です。
②口すぼめ呼吸
息を吐く時は、胸の中の気圧が高くなり、空気を気道から押し出します。しかし、慢性閉塞性肺疾患の場合は、気管支がつぶれて、空気が通りにくくなっています。
口すぼめ呼吸をすると、口を細くして、息をゆっくり吐き出すので、気管支内の圧力が高くなり、気管支がつぶれにくくなるので、空気の通りが良くなり、呼吸が楽になります。
慢性閉塞性肺疾患の患者さんの中には、自然に口すぼめ呼吸を行っていることがあります。
③腹式呼吸(横隔膜呼吸)
慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、息が吐きにくくなります。息を吐いても、空気を吐き出しきれず、胸がふくらんだままの状態になります。横隔膜呼吸をすれば、腹筋が横隔膜の動きを助けるので、呼吸が楽になります。
(呼吸リハビリテーション)
口すぼめ呼吸と腹式呼吸を合わせて、「呼吸リハビリテーション」といいます。呼吸法の訓練とともに、運動療法や栄養療法を行います。
慢性閉塞性肺疾患だけでなく、開胸手術・開腹手術を行う場合、術後の呼吸器系合併症を予防するために、手術前から、口すぼめ呼吸と腹式呼吸をトレーニングします。
④排痰法
気管・気管支など気道に炎症が起きると痰が生じます。痰が気道に溜まると、空気の通りが悪くなり、咳が出やすくなります。細菌が増殖して感染症を引き起こす可能性があります。痰は、できるだけ排出するようにします。
水分をたっぷり摂り、痰を出しやすくします。痰を出しやすい姿勢を患者が自分で見つけるようにします。マッサージ器などで振動を与えると、痰が出やすくなります。
1日の中で、最も痰がよく出る時間に合わせて、処方してもらった気管支拡張薬を飲みます。
⑤在宅酸素療法
低酸素症(動脈血酸素飽和度が90%以下になる)が進行すると、呼吸困難(息苦しい)になり、心臓・肺・腎臓・肝臓などに障害が生じます。そのため、酸素療法を行い、酸素を吸入します。
自宅で行う酸素療法が、在宅酸素療法です。
在宅酸素療法により、息苦しさのために制限されていた活動範囲が広がります。酸素不足から他の臓器に障害が起きるのを防ぎ、寿命が延長される可能性が期待されます。
⑥感染予防
慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、普段の生活において、風邪やインフルエンザなどに感染しないように注意します。
外出時にはマスクを着用し、手洗いとうがいを必ずします。睡眠不足・過労・ストレス過多になると、免疫力が低下するので、無理をしないようにします。
インフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンなどの予防接種を行うようにします。慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、インフルエンザウィルスや肺炎球菌に感染すると、重篤化して、生命に関わる危険性を生じることがあります。
[医療機関で行う治療方法]
医療機関つまり病院などで行う治療方法は、薬剤などによる薬物療法、酸素マスクなど器具を使用する治療法、手術による外科的治療があります。
医者は、気道閉塞の重症度・症状の程度・憎悪(病状が悪化する)の頻度などを総合的に診て、段階的に治療法を増強させます。
①気管支拡張薬の投与
歩いたり、階段を上がったり、身体を動かして、息切れや動悸が激しくなると、気管支拡張剤を投与して、空気の流れを良くします。
気管支拡張薬は薬物療法のメインになります。副作用を避け、治療の効果を上げるために、吸入薬がススメられます。中でも、長時間、気管支を拡張できる薬が、良く使用されます。
②吸入ステロイド薬
気道閉塞が重症で、憎悪を繰り返す場合は、気管支の炎症をとるために、ステロイド薬を吸入します。喘息を併発した場合にも、ステロイド薬を吸入します。
③抗菌薬とステロイド薬の投与
慢性閉塞性肺疾患の患者さんは、インフルエンザや風邪などに感染すると、急激に症状が悪化して、重篤な状態になります。これを「急性憎悪」「急性憎悪期」といいます。
急性憎悪時には、抗菌薬とステロイド薬を投与します。ステロイド薬は吸入薬ではなく、点滴または経口薬になります。
④非侵襲性換気療法(換気補助療法)
呼吸不全が進行した場合、睡眠時の呼吸に障害がある場合は、小型の人工呼吸器につないだマスクを装着して、呼吸の補助をします。これを「非侵襲性換気療法」「換気補助療法」といいます。
よく使われる方法が「非侵襲性陽圧換気療法」です。小型の人工呼吸器につないだマスクとヘルメットで口と鼻を覆い、上気道から換気を補助します。
補助療法を行うポイントは、呼吸リハビリテーションや栄養療法、薬物療法が、十分に適切に行われているのに、症状が悪化している患者に行うことです。
⑤外科手術
患者さんの状態によって、「侵襲性換気療法」を行うことがあります。気管を切開して、カニューレを挿入し、換気を補助し、痰を排出させます。
症状により、「肺容量減少術」が検討されることがあります。過膨張した肺を切除します。
まとめ 口すぼめ呼吸は腹式呼吸と合わせて行う
口すぼめ呼吸は、口笛を吹くような形に口をすぼめて息を吐き出す呼吸法です。
口すぼめ呼吸は、慢性閉塞性肺疾患など閉塞性呼吸障害(閉塞性呼吸機能障害)という呼吸器系疾患の患者さんに、理学呼吸療法としてススメられています。
口をすぼめて、ゆっくり息を吐き出すと、気管・気管支・咽喉頭・口腔内という空気の通り道である気道の内圧が上昇します。気道の圧力が高まると、気道が閉塞するのを防ぎ、肺から空気を押し出すことができます。空気を吐き出してしまうと、空気を多量に吸い込むことができます。呼吸を効果的に行うことができます。呼吸が楽にできて、通常よりも酸素の摂取量が多くなります。
慢性閉塞性肺疾患など閉塞性呼吸障害を起こすと、息を吐き出すことが困難になります。口すぼめ呼吸をすると、気道閉塞を防いで、息を吐き出すことができます。呼吸が楽にできるようになります。
肺には、酸素と二酸化炭素のガス交換という機能があります。呼吸が効率良く行われず、ガス交換機能が低下すると、全身が酸素不足になります。酸素不足になると、全身の諸機能に障害が生じます。最悪の場合、組織の細胞が死ぬ危険性もあります。
効果的な呼吸を行うには、口すぼめ呼吸とともに腹式呼吸(横隔膜呼吸)を行います。肋間筋と横隔膜筋の収縮と弛緩により、胸郭が広がったり狭くなったりして、呼吸を行います。腹筋を使う腹式呼吸では、胸郭が前後左右・上下に広がるので、多量の空気を吸い込んだり、吐き出したりできます。口すぼめ呼吸とともに腹式呼吸を行えば、より多くの酸素を摂取できます。
口すぼめ呼吸と横隔膜呼吸は、慢性閉塞性肺疾患など閉塞性呼吸障害の主要な治療法です。
慢性閉塞性肺疾患は長年の喫煙習慣が主な原因です。慢性閉塞性肺疾患を発症したら、呼吸法を口すぼめ呼吸・横隔膜呼吸(腹式呼吸)に改めるとともに、タバコを吸うことをキッパリ止めることです。
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