胸が苦しいとか、階段を上がったり、少し早歩きをしただけで息が上がってしまうことはありませんか。それは、お年寄りだからということは関係なく、若い人もそのような症状がでます。
もしかしたらそれは、肺うっ血を起こしているかもしれません。今回はその肺うっ血について、お伝えします。
肺うっ血とは?
なんらかの影響で肺の血管内の血液の量が増え、血液の流れが滞ることを肺うっ血といいます。肺の中の血液が増えることにより、流れが滞ってしまうのです。
これは歳をとっているというような、年齢的な要素は関係ないようです。若い人でも突然発症することがあります。
症状
普段歩いているようなスピードでも何か息苦しくなってきた、あるいは、階段の上り下りが苦しい、足が重いというようなこと感じたら、肺の血液が滞っている肺うっ血かもしれません。これは、その病気自体は大したことはないので、たとえかかったとしても、重傷にはなりません。
まだ軽い症状の時は、そうでもありませんが、段々重傷になると夜に寝ている時に息苦しくなったり、目を覚めたりします。そして、喘息のように咳が出て、呼吸をするのにも困難な状況になることもあります。それを放っておいたりすると、肺水腫という肺に水が溜まる病気になる可能性があります。
また、痰が出やすくなるのも特徴です。肺水腫の一歩手前の肺うっ血では、それほど出ませんが、血液が若干混じる痰がでることもあります。
これらの症状は診断する時にレントゲンを撮影して、その検査での陰影がバタフライシャドウという、蝶が羽を広げた形の陰影が主に観察されます。そして、胸を聴診器で確認すると「ごろごろ」とした音が確認されるのも特徴の一つです。
原因
血液が増えることの原因として挙げられるのは、心臓弁膜症、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、貧血、肺疾患、栄養失調などです。
これらは一般的に心臓の働きが弱っていることから、血液の流れが悪くなることが原因と思われます。血管内の血液が停滞気味となり、血管から漿水なるものが溢れてきます。
つまり、血液の送り込みが弱いためということになります。
治療法
呼吸自体が苦しくなっているので、血液中の酸素を増やす目的で、酸素吸入や人工呼吸器を使用します。心臓弁膜症が影響している時は、心臓の動きを助けるために強心薬を投与し、水分を排除するため、利尿薬を使用します。
肺のうっ血自体が、心臓の弱まりが原因のため、ほとんどの場合が入院をしての治療となり、安静が求められます。特に他の病気の影響も強い場合は、他の病気の対処も合わせてしなくてはいけません。
予防法
普段より、多少の負荷を心臓にかけて、心臓や血管の働きを良くする必要があります。ですがもちろん、肺水腫の兆候がみられたら、止めることは当然です。最もこの類は医師の診断を元に行ってください。
もともと心臓があまり強くないところへ、過度な運動をすると、余計に負担がかかり、さらに悪い状況になりうるからです。それでは、逆効果となってしまいますので、充分な注意をしてください。
肺うっ血は、他の病気が原因でうっ血します。主に、肺水腫、心臓弁膜症、急性呼吸窮迫症候群です。こちらの症状についてもまとめておきますので、参考にしてください。
肺うっ血を引き起こす、主な病気
肺うっ血を引き起こす原因となる病気を紹介します。
肺水腫
次に、肺水腫について紹介します。
・症状
肺うっ血と同様な症状の他、血の滲んだ痰がでます。また、呼吸困難な状況はさらに深刻です。横になることができないぐらいの状況になり、身体を起こしたほうが呼吸はしやすくなります。
最もその状況になる前に、病院で手当てをされていると思いますので、そこまでの状態にはならないでしょう。
・原因
肺うっ血をしている状態で、血管から漿液が漏れ出し、肺の中へ流れ込む状態をいいます。つまり、肺に漿液という透明のさらさらしている液体で、水のようなものがたまってしまうことです。
当然、水が溜まるわけですから、通常の肺の活動である、空気から酸素を効率よく血液内へと送り込むことが出来にくくなります。悪化すると、呼吸が困難となり、横になると更に苦しくなります。その他、血液の流れも悪くなっているため、むくみやチアノーゼといって、唇や顔色が紫色っぽくなってきます。
これらは、心臓の病気が原因のものを心原生肺水腫、外傷や有毒ガスの吸入、感電などが原因のものを外因性肺水腫と呼びます。
・治療法
血液中の酸素濃度を上げることが大前提となり、酸素吸入や人口呼吸器を使用することになります。また、心臓の働きを強める薬の投与を行います。
心臓弁膜症
心臓弁膜症についても知っておきましょう。
・症状
自覚症状が目立って出ることはなく、徐々に進行していきます。症状としては、呼吸困難、動悸が激しくなったり、息切れがして初めて解かる状況です。年をとった状態で、息切れ等をした場合は、正直心臓弁膜症とは考えられないのが普通です。この辺の判断は、まず当人ではできないでしょう。よほどひどくなってから、ようやく、医師の診断を仰ぐ形となるのはほとんどです。
また、症状としては、胸が痛む場合もあります。この胸痛は、弁膜症以外で、例えば、狭心症や心筋梗塞などもありますから、その症状の状態をきちんと観察することが大事です。
・原因
心臓は、収縮したり弛緩したりして、血液を身体全体に送り出しています。その際に、血液が一方の方に流れるように、つまり逆流しないようにするための弁が計4つあります。この4つの弁が何らかの原因により異常を来たし、血液をスムーズに身体の隅々まで送り込めない状態になります。
これには、先天的なものと後天的なものがあります。また、さらに狭窄症と閉鎖不全症に分けられます。先天的は読んで字のごとく、生まれつきのもの。後天的とは、それなりに歳をとったときに発症するケースです。
◆狭窄症
弁が癒着などの影響で、しっかりと開かずに狭い状態で流れを悪くしている症状です。そのため心臓の房に血液が溜まりやすく、血栓という血のかたまりができやすくなります。これはまた、血管を塞ぐ梗塞などを引き起こす原因となります。
◆閉鎖不全症
弁が完全に閉じない状態で、血液の逆流が起きてしまう病気です。血液が房に残ってしまい、そのために心肥大という状態を引き起こします。心肥大とは、血液が溜まりこむことにより、心臓が膨らんで肥大化することです。
・治療法
心臓弁膜症は自然に治ることはありません。なんらかの治療が必須となります。治療法は内科的治療、外科的治療の二つに分かれます。
●内科的治療
心臓の筋肉を収縮させる強心剤や流れをよくするために利尿剤を使用しますが、一時的な処方による傾向が強く、根本的な治療法としてはあまり適してないというのが実情です。
●外科的治療
弁そのものを人工のものにする方法と、手術により修復する方法が取られます。一般的にその症状により対応します。普通に弁膜症にかかっている場合は、症状も緩やかに進むため、早急な対応はしません。ただ、肺水腫などの合併症が一番怖いため、その状況をよく把握した上での対処となります。
最近では人工心肺装置なる、心臓を止めても身体に血液を循環させてくれる装置もできていることから、昔のようなとても難しい手術ではなくなっています。今は、割と安全に手術に望むことが可能となっています。
急性呼吸窮迫症候群
・症状
血液中の酸素濃度が低下したことにより、呼吸が困難になり、頻呼吸という状態になります。普通は、原因となる外傷や病気が発症してから1~2日ほどで症状が見られます。まれにもう少し時間がかかる場合もあります。
症状として、呼吸が苦しく速くて浅くなり、眠るにも眠れない苦痛を伴います。また、身体の表面的な特徴として、チアノーゼといって、血管内の酸素濃度が低くなるため、皮膚や粘膜が紫色になり、特に部分的に唇や手足の先が紫色になることがあります。
・原因
外傷、肺血症、急性膵炎、肺炎が原因で血液の滞り、水が肺に流れ出る症状です。こちらもやはり肺の中に水分があふれるため、肺水腫と同様の症状を引き起こします。通常の肺うっ血と違うのは、他の病気の影響を受けているというところです。ですから、心臓や肺に別段異常はなく、敗血症など他の病気の影響がなければ、この難しい病名にはなりません。
つまり、肺の内部の空気を溜め込む袋や、毛細血管が傷つけられると、血液や漿液が肺の隙間に漏れ出し、多くの肺胞が空気を取り込めなくなるのです。それが原因で空気中の酸素を血液へと流れなくなり酸素濃度が低下します。
ちなみにこの「敗血症」というのは、血液の中に病原菌が入り込み、やがて全身がその病原菌に犯されていくもので、これはこれで恐ろしい病気です。
・治療法
いまだにこの病に対する確実な治療法は確立されていません。しかもこの病にかかると致死率も50%以上と危険な病気とされています。現在のところ、一般的な治療法として、酸素の吸入として人工呼吸器を使用します。
そして、副腎質ホルモンの薬物療法です。この薬を投与し、安静することが最も早く治す方法とされています。が、第一原因が外傷によるものであれば、まずはその外傷を治すのが急務であることは、いうまでもないでしょう。
まとめ
いかがでしたか。あまり馴染みのない病気でも、その症状から、かなり怖い病気だとお解かりになったと思います。かの有名な尾崎豊さんもこの肺うっ血から肺水腫を引き起こして、亡くなられたと聞いています。
今までは、病気というのは、痛くなった、症状が重くなった、と状態が悪化してから医師に頼り、対処してきました。ですが、これからは未病が必要といわれています。つまり、症状が悪化する前、その症状が顕在化する前に、病気の可能性となる原因を突き止め、病気にかからないようにすることが大事だと思います。
今回お伝えした、肺のうっ血も、その可能性があればすぐに医師の診断を仰ぐことが望ましいと思います。そうすれば、呼吸困難などの苦しい状態にはならないでしょうし、是非皆様にはそのような状態にはならないでいただきたいと思います。
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