肘という漢字が入っているから、腕の肘に関することと想像はつくと思いますが、主に子供に起こる症状なので、実際にご自身のお子様が、肘内障にならない限り、あまりなじみはないものと思われます。
子供の腕が急に上がらなくなったり、痛がったりしている時は、案外この肘内障になっている場合が多いようです。今回はこの肘内障についてお伝えいたします。
肘内障とは?
主に小さいお子様に起こる怪我という分類に入るかと思います。まだ、身体が出来きっていない5~6歳ぐらいまでの子に多い現象です。
腕の肘のあたりにある、輪状靭帯(りんじょうじんたい)が、腕を引っ張ったことにより、外側にずれて起こる軽い脱臼です。この軽い脱臼は亜脱臼と呼びます。
つまり肘の部分にある靭帯と呼ばれる筋が力が加わることにより、伸びてしまうことです。怪我をした直後は子供も痛がり、泣き出したりします。
じっとして動かさない、厳密にいうと痛いので動かせないという、いわゆる脱臼に似た症状ですが、その痛めた筋の位置にもどしてあげると普通の状態に戻ります。結構自然に治ることもあります。
肘内障の症状
肘内障の症状を知りましょう。
腕が上がらない
怪我をした直後は痛がります。そして、その腕が上がらない状態になるため、使わなくなります。その時点で、親御さんはたいていおかしいなと気づきます。小さい子供で自分のことをうまく表現できない子は、伝わらないことがありますので注意が必要です。
また、中には痛いために腕を隠したりするケースもあるようです。その経過を見逃さずに、どうしたのかを聞くようにしたほうがいいと思います。基本的に腕を下げっぱなしにして、ほとんど動かさないようにしている場合がほとんどです。
肩や手首が痛い
肘内障を引き起こしても、その患部が痛むことなく、肩や手首が痛くなることがあります。実際の患部より別のところが痛くなる現象を放散痛といいます。これは、神経が脳へつながっていることで、肘の部分と肩や手首が同じ神経を通ることから、別の場所が痛んでしまうのです。
放散痛を引き起こしている場合は、肩や手首が痛いといって病院へ診察を受けに来る方もかなりいます。
この放散痛は肘内障だけに起こる事ではなく、よくあるのが、腰痛のケースです。腰痛は実際には腰が痛いのではなく、首や肩、背筋に異常があってその影響が放散痛となって腰が痛くなっているケースがあります。
この場合は首や肩、背筋の治療をすると、腰痛も治まるケースがあるのが、放散痛のよくあるケースとして報告されています。
関連痛
放散痛と同様に、患部とは違う部分が痛むもので、末梢神経に痛みが出るのを関連痛といいます。この場合に起こる関連痛は皮膚が痛くなるケースです。
患部である肘の上下左右などの皮膚が痛み、肘自体は痛みを感じてないか、気がついていない状態です。このような場合もどこが患部なのかを見極めるためには医師の診断を仰ぐことになります。
触られるのを嫌がる
子供は怪我をした際にはその場所を隠したがります。肘内障を起こした後は、そっとしておけば痛くないこともあるため、そのまま腕をだらんとしていることが多いと思います。そして、親がどうしたのか問いただし、触ろうとすると、嫌がり隠します。
脱臼との違い
見た目では、肘内障はわかりません。ずれているのが靭帯だけなので、普通のように見えます。ですから、痛いなどの反応があって初めて肘内障とわかります。
ところが脱臼は、見た目普段の形と違います。その部分が腫れていたり、部分的に不自然な膨らみが出来ていたりと普通でない形状をしています。
肘内障と同様に動かさないか、その部分をだらんとしているケースは同じです。ちなみに肘内障の場合は腫れることはまずありません。
骨折との違い
骨折は文字通り、骨が折れることですが、患部は熱を持ち腫れることが一般的です。さらにそれが日々悪化し腫れの度合いもひどくなっていきます。最悪、微熱が出ることもあります。
また、肘内障はレントゲンを撮ってもその状態はわかりませんが、骨折はレントゲンを撮ればその箇所はすぐに判明するのが特徴です。レントゲンにはっきりと骨折個所が写ります。
まれに骨折しても骨にひびが入った程度であれば、平気にしている人もいます。つまり、ちょっと痛いけど、ぶつけたからとかの痛みと思っている訳で放置しているのです。
これはそのままにしておくと、骨がいびつなままでくっついてしまう場合がありますので、注意を要します。
肘内障と骨折の違いや種類について
肘内障と症状が似ているので、その判断をするための目安として、骨折との違いも明記しておきます。
閉鎖骨折
外から見ても、骨折には見えない状態です。皮膚などには異常は見られず、内部の骨が折れているだけの症状です。
この場合、骨のつなぎ方もきちっとしてギプスで固定しないと、つながりがうまくいかず、折れた所が短くなったり、極端に太くなったりすることがあります。これは注意しないと、再度骨折しやすい状態になる可能性も高いとの報告があります。
開放骨折
一見して、骨折と解るもので、骨が折れたうえ、その回りの皮膚組織などがちぎれたり、傷を負っていて出血等が認められる状況です。
治すには骨をつないだ上に、傷を負っている皮膚などを縫ったりする必要があります。また、その傷の部分は化膿することが予想されますので、その後は抗生物質などの服用も必要となり、経過観察が重要になります。
詳しくは、開放骨折とは?症状や治療法、応急処置について!を読んでおきましょう。
裂離骨折
靭帯が切れる際に、骨も一緒に剥がれることで、以前は剝離骨折と呼ばれていました。
かなりの負荷がかかったことによる骨折で、治すにはギプスによる固定が必要です。かなりの期間が必要となるケースが多いようです。詳しくは、剥離骨折とは!原因や症状、治療方法を知っておこう!を参考にしてください!
若木骨折
子供の骨が非常に柔らかいので、普通にぽきっと折れることもありますが、折れずに曲がることがあります。これを骨折と呼ぶのは変ですが、若木骨折として骨折に分類しています。
これは、骨がしなるような状態になり、曲がった反対側が裂けるような状態になっています。子供は痛がる反面、レントゲンを撮っても解らないことがほとんどです。その箇所の固定と痛み止めなどで、経過観察を行うことが一般的な治療法です。
詳しくは、若木骨折ってどんな骨折?症状や原因を知ろう!治療法や予防法、診断方法は?を参考にしてください!
横骨折、縦骨折
骨が折れる方向によって、それぞれ名称が違います。骨の長い方に対して、垂直に折れるのが、横骨折といいます。更に、骨の長い方向にして、平行に折れることを縦骨折といいます。
斜骨折、螺旋骨折
斜骨折は骨の長い方に対して、斜めに折れることをいい、螺旋骨折は、ねじれるように折れることです。いずれにせよ、ギプスでの固定が治療法になります。
骨粗鬆症
骨折に関連することを明記したので、骨粗鬆症についても明記します。正直、肘内障になる子供はほとんどいないので関係ありませんが、年寄りには重要な問題です。高齢で特に女性には、かかる率が非常に高いという報告があります。
いわゆる、骨に必要なカルシウムが減ってしまい、骨の密度が減りスカスカになってしまうのです。普通に過剰な力が加わると折れますし、圧迫しただけでも潰れる圧迫骨折というものがあります。こうなると、人工骨を入れるしかありません。
特に高齢になってからの骨折は、その後身体を動かせないこともあり、どんどん筋肉も弱る傾向にあります。そうすると、寝たきりに可能性も非常に高まるので、高齢での骨折は十分に注意が必要となります。
上腕骨顆上骨折
こちらはよく肘内障と間違うケースがあります。肘のすぐ上の骨が折れる状態で、痛がり方が、肘内障とは違うということと、腫れや色も赤くなることで、分かると思います。つまり普通の骨折なので、レントゲンで確認するとすぐに判明します。
デッドアーム症
これは、骨折と違い脱臼の一種なのですが、一度脱臼をして治した際に、骨との骨をつなぐ関節の部分が傷ついている状態で、脱臼が直ってもひどく痛む症状です。
治し方が雑ですと、このようなことが起きますし、また脱臼自体が激しい力が影響した場合、関節内部が傷ついてしまうことです。
痛みは増してくる傾向にあるので、早い段階で医師の診断を受けることが望ましいと思います。
肘内障の原因
子供はなかなかじっとしている子は少なく、まして活発な子は、動きが読めません。ですから、手をつないで歩いていても、突然走りだしたり、別な方向に向きを変えたりするので、その際に加わる力で、肘内障を引き起こします。
不意に引張る
子供と手をつないでいる時に、子の危険を察知して、例えば自転車や自動車が来て避けるため、腕を引っ張ったりすることで、負荷がかかり肘内障を引き起こします。また、子供同士でふざけあって腕を引っ張ったりすることも原因の一つです。
このように不意に力を入れることにより、子供の関節は柔らかいので、肘内障を引き起こしやすいということです。
手つなぎジャンプなど
よく両親が子ども左右の手をお互いがもって、ジャンプさせたりしてますが、このような遊び方は危険です。年齢が小学校高学年なら問題はありませんが、低学年の時は肘内障になる可能性が非常に高いといえます。このような手つなぎはやめたほうがいいでしょう。
転倒、運動中など
別の例でいうと、転んで地面に手をついた時にも、肘内障になることもあります。運動中が特に多いのですが、転んだ時、もしくは転びそうになった時は、手をついたり、勢い余って腕を転倒時にぶつけます。その蔡に肘内障になってしまうのです。
その際は怪我を伴うこともありますので、怪我の痛みと同様に肘内障を引き起こしないかも確認をしたほうがいいと思います。当然、骨折やねんざもありえます。
子供が寝そべっている時の起こし方
子供が寝そべっている時に、腕をつかんで引き起こすと、肘内障になります。両手の手首を持つなら、まだ可能性としてそれほど高くはありません。特に腕を持つことは危険ですから止めましょう。
肘内障の治療法
肘内障の治療法はどのようなものでしょうか?
整復術
普通の肘内障であれば、整形外科で簡単な治療で治ります。それこそものの数分で治療が終わると思います。中には大事をとってレントゲンをとり、状況を把握して治療にかかる医師のいると思いますが、この肘内障に関しては、そこまではしないのが一般的です。
ですが、レントゲンは骨折の可能性があるかを確認するために撮るものと思われます。肘内障では、レントゲンを撮って確認しません。
この治療で関節を元に戻すことを徒手整復といいます。医師自ら、子供腕を取って動かすだけの治療です。そして、元の位置に関節が戻ると、何事もなかったかのように腕を動かせるようになります。治療には器具も使わずに、簡単ですぐに終わります。
また、この治療は肘内障になってからすぐに行うことが必要です。時間が経つごとに治りにくくなると同時に、癖になりやすいということです。
さらに、子供がよく肘内障になるようでしたら、親御さんが治し方を習っておいてもいいかもしれません。ちょっとしたコツを覚えておけば、病院にいかずとも治すことができます。結構親御さんが治しているケースが多いとの報告もあります。
回内法
整復法で直すには、無理に行うと痛みを増加させる原因となりますが、頻繁に肘内障が起きるならば、回内法をマスターしておくといいかもしれません。これは、腕を内側に回して直す方法で一般的な方法です。
外科手術
非常に重い場合は、手術により接合する必要がでてきますが、まずこのようなことはまれです。肘内障では、まず手術での治療はないと考えていいと思います。むしろ、この場合は亜脱臼のケースがほとんどです。
肘内障の予防法
手をつなぐ時
原因として、そのほとんどが腕を強く引っ張ったりすることにより、肘の靭帯が伸びることです。ですから、子供と手をつなぐのはいいことなのですが、腕を引っ張ったりすることのないようにするしかありません。
ただ、親はそのように意識していても、子供は割りと活発に動くことが多く、その場合はなんとも避けようがありません。その際に肘内障が恐いからと子供が突然動き出したら、手を離すことは危険です。そのほうが事故や怪我の元になります。
なるべく手をつないで歩く時は、その行動範囲を狭めたつなぎ方がいいかと思います。つまり、広範囲に動けないような位置で手をつないでおくことです。そうすれば、不意に飛び出したりして腕を引っ張ることの心配はなくなると思います。
また、手をつなぐ時は、手のひらでつなぐようにすれば、手首がクッションとなり腕にダイレクトに力がかからず、肘内障をさけることができます。さらに腕などを直接つかまないということが予防につながります。
転びそうな時
子供は、周りに意識が行かないこともあるので、足元もおぼつかず、転んだり転びそうになることはよくあります。そんな時はつい腕を引っ張ってしまい、肘内障になる可能性が高まります。
ある意味やむをえないのですが、先に述べた、腕をつかまずに手の平で手をつなぐようにすることが予防のつながります。
寝ている時
子供は身体が柔らかいせいか、寝ている時の不自然な格好でちょっとした負荷がかかることがあります。その負荷で肘内障になることがまれにあります。
このようなことでよくあるのが、朝起きると腕が痛くなっているというケースです。医師の診断によって判明しますが、朝起きた時に痛くなっているということから、割と筋肉痛と勘違いをするケースもあります。これは注意を要します。
放っておいて腕がずっと使えないままということにもなりかねませんので、よくその状態を確認したほうがいいと思います。
運動している時
何か運動中にぶつけるとか、身体を支えるために肘に負荷がかかってことで肘内障になるケースも多いようです。運動中は夢中になっているので、その痛みや腕を動かしづらいという意識がなく、気がつかないこともあります。
運動自体を止めるわけにはいきませんが、腕を動かすことにより、痛がるようでしたら、症状を確認することが必要です。また、これも放っておかないようにすることが肝心です。
再発しやすくなる
これは脱臼も含め、一度でも肘内障になると、以後もちょっとしたことで再発しやすくなります。これを癖になるというのですが、以後もなるべく肘内障にならないようにする用心した方が賢明です。
一般的にはかかった直後から1週間ぐらいは用心した方がいいかと思います。この時期は一番再発が多いのです。
まとめ
いかがでしたか。身近に起こりうる肘内障ですが、脱臼とは違い、気づかずになっていることが多いように思えます。そのほとんどが親御さんとの手をつないでいるときなのですが、正直子供は突然に身体を動かしたりするので、避けることも難しいように思います。
ですが、手をつながないでいるのも、もっと危険です。そういう意味では、手をつないでいる時は、よく言い含めておく以外にないのでは、と思います。
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