骨嚢腫と書いて、「こつのうしゅ」と呼びますが、漢字を見ると深刻な病気と感じますね。自分の周囲に、原因不明のまま骨折をする人がいたら、骨嚢腫が原因の可能性があります。
今日のテーマである骨嚢腫は、症状の軽いものから重篤な病気が隠れているものまでありましたので、詳しくまとめてみました。
病院によって、多少の見解の違いはあるようですが、分かりやすく解説をさせて頂きたいと思いますので参考にしてみてくださいね。
では、骨嚢腫とはどんな病気か、さっそく見ていきましょう。
骨嚢腫(こつのうしゅ)とは
骨の内部の骨髄という部分が空洞になり、血液の上澄み似た液体が溜まっていくものです。また血液の上澄みのようなものは、血清と呼ばれるものに似ているという意味です。
そして空洞の壁というのは、薄い膜に覆われていますが、この膜が体内の水分と結びついた時には、ちょうど夏祭りの「水風船」のような状態になります。
このような状態の水風船状態の壁膜が大きくなると位置的には骨の外側にある、厚みのある骨皮質を圧迫するようになります。この膨らんだ壁膜が膨張することによって、壁膜の厚みが次第に薄くなっていきながら、外部を圧迫していきます。
このため圧力による痛みが発症してしまい、重篤な場合には骨折してしまうということが起こります。
ほとんどが若年層に起こることが特徴として挙げられます。
また、骨嚢腫(こつのうしゅ)の好発部位としては「上腕骨」と「大腿部」とみられていますが、別の箇所にも発症することがあるので、正確な治療をするためにも専門の医師による診察を受けるようにしましょう。
また、よく似ている名称でもあり、膨張して大きくなる骨の病気「骨腫瘍」と間違えそうですが、病変部からは腫瘍細胞の確認されないために、骨腫瘍類似疾患(こつしゅよう るいじしっかん)として、「骨嚢腫(こつのうしゅ)」と「骨腫瘍(こつしゅよう)」は別の病気であると位置づけられています。
では、そのような骨嚢腫(こつのうしゅ)は何が原因で起こるのでしょうか。
骨嚢腫の原因とは
実は、骨嚢腫(こつのうしゅ)の原因は解明されていないことが多く、はっきりした原因としては不明となっています。
有力な説としては、「嚢腫内の圧力の異常ではないか」というものですが、こちらも今のところ、明らかにはなっていないようです。原因が分からないとなると不安になることが大きくなるかもしれませんが、早期に治療を開始することで、重篤な事態は防ぐことが出来るのです。
では、どんな症状がでたら「骨嚢腫(こつのうしゅ)」を疑って診察を受けるのか見ていきますね。
骨嚢腫の症状
嚢腫(のうしゅ)が大きくなり、骨皮質が薄くなりますので、本来であれば起こらない状況で骨折をしてしまうことがあります。
また、軽く転倒した等ふとしたことによって、腕(上腕部)で支えるといった負荷がかかった時に、骨折してしまうといったことが起こるので気が付いたり、受診のきっかけとなることが多いようです。
中には、他の原因で偶然にも単純X線の検査を行って発見されるといったこともありますが、そういった場合には骨皮質がしっかりとしているので重篤な状態に陥りにくいようです。
では、何かに行けばいいのでしょうか。
何科で受診すればいいの?
一般的には、整形外科で対応は出来るので、骨の専門医のいる整形外科を受診するようにしましょう。
住居のある地域にもよりますが、「骨・軟部腫瘍外来」という科がある病院もありますので、骨嚢腫が疑われる場合には「骨・軟部腫瘍外来」の方が詳細に検査が出来るでしょう。
検査では、どのようなことが行われるのかも、順番に見ておきましょうね。
骨嚢腫の検査と診断
まず丁寧な問診をすること、診察を丁寧にすることが骨軟部腫瘍診断(こつなんぶしゅよう)では最も重要視されます。
これは、画像診断の化学が発達した現在でも、受診者の普段の生活など聞き取りをすることが、「小さな発見につながる大切な診断」には必要なことから行われます。
現在の症状(自覚症状など)、受診者の年齢、現病歴(飲んでいる薬など)、既往歴、家族歴(体質や遺伝等)などを詳しく聴いて、診察した感じを丁寧に記録することから始まるのですが、他の病気との区別をするうえでも重要ですね。
問診や触診が終わると検査が行われます。
単純X線検査
単純X線を撮ってみると、この時期の撮影の様子からは、はっきりとした境界線がわかるような病変部が見えることが多いです。
ただし、骨折をしている場合には、骨折をした際の小さな骨片が嚢腫の病変内に落ちていることから確認できるため、特徴的だとも言われています。このように骨嚢腫の周囲にある骨皮質は、膨張していきながら薄くなるので、広がりも拡大していき骨折してしまうのですね。
詳細に調べるためには、他の検査も追加されます。
CT検査
CTでは、単純X線では見ることが難しい内部を輪切りの状態で、画像診断をすることが出来ます。
そのため、骨嚢腫の内部や周囲を確認するためにも、CT検査を行うことがあります。そして、骨折をしている時には、骨嚢腫の近くで骨片が確認されたりします。
嚢腫がある場合には、内部が水分で満たされているために黒く映ることがあります。そんな嚢腫をさらに詳しく見ていくために、追加される検査と意義を、次にお伝えいたします。
MRI検査
CTでは、見えにくい骨内の水分がMRIでは、液体として鮮明に映し出されます。
その時に、骨内に充実した塊(かたまり:この場合には、骨の中に何かがたくさん入っていること)が、一部でも認められたら可能性のある病気を一つ一つ除外診断していきます。
除外診断を簡単にいうと、可能性のある病気を全部調べていき、当てはまらない病気を一つ一つ除外することで最後に残ったものが、初めに予測した病気と一致するか確認をすることです。
この除外診断は、他の病気と間違えて誤診したりすることを避けたり、医師の思い込み等を防ぐ意味でも重要な検査と診断になります。
あらゆる可能性を視野に入れて検査を行っていきますが、その疑われるような病気の種類には、動脈瘤様骨嚢腫(どうみゃくりゅう こつのうしゅ)や、骨巨細胞(こつきょさいぼう)などの腫瘍、繊維性骨異形成(せんいせい こついけいせい)などです。
血管が膨張しているのか、細胞が増殖しているのか、骨の変形かなどに分けて検査をするということですので、正確な診断をしてもらうことは受診する人の不安を軽減することにも繋がりますね。
では、骨嚢腫と診断がでたら、どのような治療をしていくのか見ていきます。
骨嚢腫の治療
これまでの検査等で骨嚢腫と診断がついたら、症状により複数の治療を行っていくことになります。
手術の適応外
症状が軽いと判断されると、色々な方法で薬を患部に入れるという治療が行われます。
一般的なのは骨嚢腫の壁膜に穴を複数ほど開けていき、骨嚢腫の中にステロイド薬を注入する方法です。ステロイド薬は少し白濁した色をしており、強い炎症止めとしても様々な病気の治療に使われるものです。
大量に長期間となると支障が出てきますが、一時的で局所的な治療の場合には、大きな心配はいらないものです。また、中には骨嚢腫の壁膜に穴を開ける時に、小切開を加えることもあります。
方法としては、下記のとおりです。
- 画像で確認したあと嚢腫の中に、金属針を挿入していきます。
- 挿入した金属針から骨嚢腫の中身を吸引していきながら、同時に診断確定します。
- 造影剤を注入していき嚢腫壁を確認します。
- メチルプレドニン薬を嚢腫内に注入する(この時に注入する薬がステロイドです)
経過と予後
症状が軽かった場合の治療での難点は、再度同じように骨嚢腫を発症しやすいことにあります。
しかし、万が一骨嚢腫が広がりを見せたとしても、ステロイド薬の注入は骨嚢腫のある患部を傷めることなく出来ることから、様子をみながら繰り返し行いながら経過を見ることがあります。
深い侵襲がない軽度な状態とはいえ、再発率が高いということから上記の治療をくり返すことがあるのですね。
また、骨嚢腫の内側で骨の形成状態が良くない場合には、手術の適応となっていきます。
手術の適応
患部が単発であるときに手術の適応となった場合には、嚢腫減圧術という手術が行われることになります。
その術式は、「単発性骨嚢腫(たんぱつせいのうしゅ)」の内側で高くなった圧力を減圧することが出来ると、骨嚢腫の治癒が促進されるということに着目された手術方法になります。
- 骨嚢腫を掻爬(そうは:中身を出す)していく
- さらに骨嚢腫の嚢腫壁に特殊な機械で穴を開けます。
- 嚢腫の中と骨の外側にハイドロキシアパタイト製中空ピンを連絡させるように留置します。(薬剤の入ったものをイメージとしては『懸け橋』のように留めておくことです)
このような術式を用いることで、ドレナージ効果(小さな傷口を一部分だけ閉じずに、要らないものを排出できる状態にすること)が高まり、骨嚢腫の治癒が促進されるというものです。
ハイドロキシアパタイト
またハイドロキシアパタイトとは、骨や歯の治療にも使われている成分で、貝殻等の成分としても人間の身体の骨や歯の中にある成分です。
これは、人体への害が少ないことや、馴染みやすいことから、近年では人口の骨や歯根にも医用材料として使われています。
身近なところでは、歯磨き剤にも添加されているので、大丈夫なものなので安心ですね。再発率を考えると、いろんな手術の方法を研究する必要があり、現在もいろんな形で術式が考案されているそうです。
経過と発見
もし骨嚢腫に気付いたら、どうすればいいのでしょうか。
病的骨折をしている場合には、正常な位置に整復して固定する等の、骨折の治療を最優先させることが重要となります。
また、骨折が治癒していくと共に、骨嚢腫が治癒していくこともありますが、骨折が治癒したり、偶然に骨嚢腫が発見されたという場合には、単純X線検査で検査を行ったうえで、病的骨折を起こす原因と思われる病気の治療をしていくことになります。
骨折を起こしてしまいそうな場合や、他の良くない条件が重なってしまうことが考えられる時には、先ほどの治療を検討する可能性があります。
普段から骨嚢腫が疑われる症状がある時や、すぐに骨折してしまう、腫れてきたり、痛みがでてきた等が症状として現れた場合には、出来るだけ早急に「骨専門の整形外科」や「骨・軟部腫瘍外来」を受診するようにしましょう。
骨嚢腫と関連する病気や似ている病気はあるのか調べてみましたので、こちらも参考にしてみてくださいね。
動脈瘤様骨嚢腫(どうみゃくりゅうよう こつのうしゅ)とは
骨嚢腫と同じように骨内部が空洞状になりますが、動脈瘤様骨嚢腫の場合には内容物が、血液だということが大きく異なる点です。
嚢腫壁には色々な組織があり、病気の拡大が早いために、腫瘍ではないかと疑わせてしまうような要素を持ち合わせています。
また、骨嚢腫と間違えてしまいそうな部位には、血液が詰まるというものではなく、「A.骨を作る細胞」と「B.骨を壊す細胞」や「C.不規則な骨から成り立つ組織」で作られた空洞の集合体で形成されています。
ここで気を付けておくことは、良性の腫瘍の場合だと嚢腫に血液が溜まる性質があり、部分的には動脈瘤様骨嚢腫に似ているものを形成することがあることです。
「骨を壊す細胞に似ている細胞」が腫瘍になったものには、次の病気があります。
- 骨巨細胞腫(こつきょさいぼうしゅ)
- 軟骨芽細胞腫(なんこつがさいぼうしゅ)
- 繊維性異形成(せんいせいいけいせい)
これらの病気は、全体が腫瘍なのだけど、部分的には動脈瘤様骨嚢腫に似ているという変化があります。
しかし、動脈瘤様骨嚢腫の場合には、腫瘍がないことから、条件が該当して初めて、動脈瘤様骨嚢腫と診断されます。
症状の現れ方と検査
痛みを伴った腫脹(腫れあがること)で気付くことが多いようです。ただし、動脈瘤といった言葉が付いていても、拍動が認められるわけではないのです。
そして単純X線では、骨の一部が大きく膨らんで確認されたり、MRIでは内容物が特徴的な液面形成(この場合には液体で構成されているという意味)という状態が見つかることが多くあるようです。
造影剤で、強く現われる充実性の腫瘤が確認されると、診断がつきやすいようです。また動脈瘤様骨嚢腫の場合には、骨幹端(こつかんたん)に病変の中心があるので、画像を見ると分かりやすいのです。
治療の方法
手術をして、動脈瘤様骨嚢腫の中を掻爬(不要なものを掻きだすこと)して、治癒する場合や、変化のある骨を全部切除する場合がありますが、治癒する可能性も場所によっては困難になるため、発症した部位や症状に合わせた手術の方法が必要となります。
そして骨嚢腫と間違えやすいのは「骨腫瘍(こつしゅよう)」ですね。
骨腫瘍(こつしゅよう)
骨腫瘍には、良性と悪性の2種類があり、拡大の仕方としても、初めから骨に生じてしまう場合と、骨に転移していく場合とがあります。
単純X線等の検査に加えて、骨腫瘍が疑われる場合には、腫瘍や骨の組織サンプルを採取して顕微鏡で調べる生検が必要となります。
癌性(悪性)と非癌性(ひがんせい)の2種類のうち、癌性の腫瘍になると身体の別の部位へと転移する可能性が出てくるのです。
転位性の癌は、身体の別の部位(乳腺や肺など)で発生した癌が骨に転移したものに対して、小児期に発症する癌性の骨腫瘍は大体が原発性として起こります。
症状と検査
痛みのない「しこり(腫瘍)」が現れて、やがて痛みを生じるようになってくるのですが、初めの自覚症状としては骨の痛みが激しく起こる可能性があります。
その痛みは、安静時や夜間でも起こるようになり、少しづつ悪化していく傾向があります。
癌性の場合は特に、骨がもろくなりやすいため、負荷がかからずとも骨折をすることがあります。
検査では、血液検査をしてみると炎症反応の値が異常になる(高くなる)こともあり、痛みに対しては消炎鎮痛剤を使います。
単純X線とCT検査で骨の肥厚と中心のナイダス(腫瘍という個体ではなく異常な毛細血管等のこと)を確認できると診断できます。
転移性の骨腫瘍となると生命にも関わってきますので、早急に専門の医師の診断と治療を受けるようにしましょう。
まとめ
では、今日のまとめです。
- 骨嚢腫とは骨の内部が空洞になり、壁膜の圧力で骨折する可能性のある病気のこと
- 骨嚢腫は、大腿部と上腕部に好発して、若年層に比較的発症しやすい
- 骨嚢腫は、骨が専門の整形外科が骨・軟部腫瘍外来で受診することが重要
- 骨折している場合には、骨折の治療を最優先する
- 間違えやすい病名には、骨腫瘍や動脈瘤様骨嚢腫がある
中には、一刻を争う状態まで症状が進んでしまっていることもありますので、痛みや腫れが起きている時には、早急に病院へ行くようにしましょう。
毎日の食事をしっかりと摂ることと同じように、早期治療が一番の治療ともいえます。
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