塵肺が発生する仕組みを知ろう!症状や原因となる粉塵を紹介!治療法と予防法は?

塵肺(じんぱい)とは、長期間に渡り、約1~5μmの微粒子、粉塵(ふんじん)を吸い込み続けた結果、肺の中に線維性病変などを生じる肺疾患です。

塵肺と言うと、一番よく知られているのが、アスベスト(石綿)による石綿肺ですね。石綿肺は建設業・造船業に従事する人達に発症することが多いのですが、鉱山や鋳物工場、研磨業、陶器製造などで働く人も、塵肺を発症しやすいと言われます。

塵肺は、空中に浮遊している粉塵を吸入しやすい場所で、長期間、働くことによって発症する職業性疾患の1つなのです。吸入する粉塵の量によって違いますが、ふつう、発症するまでに長い期間かかります。中高年になってから、発症することが多くなります。

塵肺の治療法は、まだ確立していません。対症療法が主なので、何よりも予防が大切です。塵肺の原因と症状、治療法と予防法についてお伝えしますね。

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塵肺とその原因

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塵肺は、約1~5μmという微粒子である粉塵が空中に多量に浮遊する環境で働いた結果、吸入された粉塵が肺胞に溜まり、病変を引き起こす職業性疾患の1つです。そのため、塵肺は、職業性肺疾患と言われます。

塵肺は、吸入する粉塵の量にもよりますが、発症までに長期間を要し、初期はほとんど自覚症状がありません。

吸入する粉塵の種類により、発症する塵肺症が違います。

[塵肺が発症する仕組み]

空気は気道を通って肺に到達します。鼻や口から吸入される空気は、鼻腔・口腔・咽頭・喉頭から気管に入ります。気管は左右に枝分かれして気管支となり、気管支はさらに細かく枝分かれして細気管支となります。それぞれの細気管支から数本の肺胞道が出ています。肺胞道の先端は、肺胞嚢(はいほうのう)という袋状の組織になっています。肺胞嚢の中は小部屋に分かれています。この小部屋が肺胞です。

肺胞は直径が約300μmで、約3億個存在します。肺胞で、ガス交換が行われます。大気中の酸素を血液中に送り出してヘモグロビンと結びつけ、血液中の二酸化炭素を受け取るのです。

人間の呼吸器は異物を排除するようにできています。空気中の大きな異物は鼻で排除され、小さい異物は気管や気管支の繊毛(せんもう)によって、排除され、体外に出されます。しかし、1~5μmの微細な粒子(粉塵)は排除しきれず、肺胞に到達します。

肺胞に到達した微粒子(粉塵)は、呼気とともに大半が排出されますが、残った粉塵が肺胞に溜まっていきます。日常的に粉塵が大量に浮遊する空気を吸入していると、肺胞に溜まる粉塵も多くなります。長期間、粉塵が肺胞に溜まり続けると、肺胞とその周辺に病変が生じます。

粉塵が肺胞に溜まり続けると、気管支に炎症が起きます。正常な肺胞が破壊されて線維組織に置き換わり、固くなって、酸素を取り込めなくなります。さらに進行すると、肺胞が縮小して、蜂巣肺(ほうそうはい)というように多数の嚢胞が見られる肺線維症を引き起こします。

肺胞がふくらんだままになり、弾力性を失い、気腫的変化が生じます。気腫的変化とは、肺実質が一部破壊されたり、損傷したりして、そこに必要以上に空気が溜まってしまうことです。

[塵肺の原因となる粉塵]

塵肺の原因となる粉塵は、大きく4つに分けられます。

1, 有機粉塵

カビや細菌、コルク・綿・線香・サトウキビ・合成樹脂の粉塵のことです。

2, 無機粉塵

石英や珪石などに含まれる遊離珪酸・蝋席・珪藻土・アルミニウムや酸化鉄などの金属粉・黒鉛・石炭・活性炭の微粒子のことです。

3, 特定粉塵

石綿(アスベスト)の粉塵です。

4, その他

紙紛・穀物紛・煙・油煙・風塵なども、塵肺の原因となります。

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塵肺の種類と症状

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塵肺は発症するまでに長い時間がかかります。そのため、初期は、自覚症状がほとんどありません。自覚症状が出る頃には、塵肺が進行していることが多いようです。

塵肺が発症するのは、粉塵を吸入するようになってから、最短でも1年、数年から十数年後と言われます。

塵肺の進行速度や症状は、粉塵の濃度・吸入量・吸入する期間・粉塵の種類・粉塵の粒子の大きさによって異なります。また、性別・年齢・生活習慣・体質によっても違ってきます。

いずれにしても、肺胞に病変を生じるので、肺機能が低下して、十分な酸素が取り込めなくなります。

発症すると、息苦しさを感じるようになります。進行するにつれて、咳・痰・息切れなどの症状が現れます。さらに進行すると、動悸が激しくなり、少し動いただけでも呼吸困難になります。最悪の場合は、死に至ります。

合併症として、肺結核を発症しやすくなります。

吸入する粉塵によって、塵肺の種類が異なり、症状も多少異なります。

[珪肺(けいはい)]

石英や珪石など遊離珪酸を多量に含む粉塵を、数年から十数年間に渡り吸入し続けることにより、塵肺が発症します。

鉱山の作業場・花崗岩や砂岩の切出し場・トンネル工事現場・研磨作業場・鋳物工場・陶器製造などで、長期間働き続ける人は、遊離珪酸を含む粉塵を多量に吸入します。意外な職業として、歯科技工士があります。

吸い込み続けた珪酸が肺胞に溜まり、肺組織を破壊して、マクロファージや上皮細胞を刺激して線維化させます。肺胞が線維組織に変わり、肺線維症を引き起こします。

変化は肺の上部に粒状の陰影が見えるようになり、進行すると、粒が結合して大きな塊(かたまり)状になります。

症状

肺胞の線維化や結節病変などにより、肺の呼吸機能が低下します。咳や痰が出るようになり、動くと呼吸困難になります。体重が減少し、倦怠感(けんたいかん)が強くなります。さらに進行すると、安静にしていても、呼吸困難が生じます。

合併症としては、肺結核・気管支拡張症・気胸・肺癌などが発症しやすくなります。まれに、関節リウマチを発症することがあります。

(気管支拡張症とは・・・)

気管支拡張症とは、気管支が円柱状や嚢(のう=ふくろ)状に拡張して元に戻らなくなる病気です。肺全体に起きることもあれば、部分的に起きることもあります。浄化力が低下して、血管が増加するので、血痰や膿状の痰が出るようになります。

(気胸とは・・・)

気胸とは、肺に穴が開いて空気が漏れ、胸腔に空気が溜まってしまう病気です。急に胸が痛くなったり、呼吸困難が生じたりします。

[アルミニウム肺]

アルミニウム工場・アルミニウム加工場などで、アルミニウムを含む粉塵を吸入することにより、塵肺が発症します。

アルミニウム肺は、比較的進行が速く、数年間で呼吸困難や衰弱などの症状が現れます。両側気胸をくり返したり、肺線維症を生じたりします。肺癌を誘発しやすくなります。

[ボーキサイト肺]

アルミニウムの原料であるボーキサイトの粉塵を吸入することで、塵肺が発症します。鉱山などボーキサイトを扱う場所で働く人に起きやすくなります。進行が非常に速く、発症すると2~4年で死に至ります。

[酸化鉄肺(鉄肺)]

溶接工に多い塵肺です。酸化鉄の粉塵を吸入し続けることが原因です。あまり進行しないと言われますが、無防備に吸入を続けると、数十年後には、肺がニカワのように固くなり、呼吸機能が低下します。呼吸困難が生じます。こうなると、治療の方法がありません。

[石綿肺(せきめんはい)]

石綿(アスベスト)は、不燃性・耐火性・非腐食性に優れています。軽くて加工しやすいので、建築や造船など、いろいろなところで使用されてきました。石綿には、クロシドライト(青石綿)・アモサイト(茶石綿)・クリソタイル(白石綿)などの種類があります。

石綿の粉塵を長期間吸入し続けると、胸膜を中心とした病変が生じます。石綿の粉塵によって生じる呼吸器疾患には、次のようなものがあります。

胸膜プラーク・胸膜肥厚斑(きょうまくひこうはん)

胸膜とは肺の外側を包んでいる薄い膜です。二重構造になっていて、胸腔にくっついている膜を壁側胸膜といいます。胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)は、壁側胸膜の両側に生じる不規則な白い陶器状の固い病変です。肥厚は1~10mm程度で、1~5mmが多いようです。胸膜プラーク自体が肺機能を損なうことはありません。良性の病変と言えます。

しかし、胸膜プラークは、石綿(アスベスト)に曝(さら)されない限り発生するものではありません。石綿肺特有の症状です。石綿(アスベスト)曝露から十数年後に発生しますが、初期症状の1つです。石綿肺の患者さんの多くに見られます。

悪性胸膜中皮腫

胸膜の表面をおおう中皮に発生する悪性腫瘍です。石綿(アスベスト)曝露(ばくろ)が原因です。石綿に曝されるようになってから、30~40年後に発症しやすいと言われます。低濃度の石綿に曝露しても、悪性胸膜中皮腫は発生します。

悪性胸膜中皮腫を発症する人のほとんどに、胸膜プラークが発生しています。

壁側胸膜の中皮細胞が癌化して悪性腫瘍になります。悪性腫瘍は、胸膜の内側の肺をおおっている臓側胸膜に浸潤し、さらに周辺組織やリンパ節に広がり、多臓器に転移します。

胸部や背部に痛みがあり、息切れしやすくなります。胸に水が溜まることもあります。発熱・倦怠感・体重減少などもあります。

アスベスト肺

高濃度の石綿(アスベスト)に曝露すると、アスベスト肺が発症します。肺胞が破壊されて線維化して、肺線維症が発症します。肺胞がカチカチに固くなって、酸素が取り込めなくなります。

石綿曝露開始から10年程度で発症します。咳や痰が出て、息切れするようになります。石綿曝露を中止しても、肺機能の機能低下は回復しません。でも、悪性中皮腫や肺癌と異なり、死に至ることはありません。

肺癌(原発性肺癌)

石綿肺の最悪の疾患です。肺癌は、気管支または肺胞の表面をおおう上皮に発生する悪性腫瘍です。石綿曝露の濃度が高いほど、発症しやすいと言われます。曝露開始から癌発生まで、30~40年かかります。

悪性中皮腫と違うところは、肺癌は喫煙習慣と密接な関係があることです。石綿に曝されている人がタバコを吸うと、肺癌になる確率は、石綿曝露も喫煙習慣もない人の50倍になります。

咳や痰、時には血痰が出るようになります。体重減少・倦怠感などは、他の癌の症状と同じです。

[農夫肺]

カビや細菌を吸入して発症する塵肺の1種です。「過敏性肺臓炎」の1種とも言えます。

ウシなどの家畜飼料となる枯草に発生するカビを長く吸い込み続けることで、アレルギー反応を起こすようになります。カビに対するアレルギー反応により、肺炎を生じます。これを農夫肺といいます。酪農家・牧畜業者などに多く発症します。

しかし、アレルギー反応から肺炎を起こすのは、カビだけではありません。カビや細菌など、ホコリとともに吸入して過敏性肺炎を起こす原因となる物質が50種以上あります。

塵肺は職業性肺疾患と言われ、ある種の職業に従事する人に発症するとされています。しかし、カビなどは高温多湿な日本の夏季には、風呂場や台所、洗面所、畳の下などで繁殖しますから、カビによる過敏性肺炎は、専業主婦に発症しやすくなります。

発熱・咳・呼吸困難が生じます。カビを吸入して6~8時間後に発症しますが、アレルギー反応を起こすようになるまでは、長い期間を要します。

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塵肺の治療と予防

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塵肺の根本治療は、まだ確立していません。対症療法が主流です。肺炎・悪性胸膜中皮腫・肺癌などには、抗炎症剤を投与したり、手術を行ったりします。しかし、病変を起こした肺の機能低下を回復させることはできません。

[診断と治療]

診断

胸部X線写真や胸部CT撮影などの画像診断が主となります。画像で、塵肺の特徴的病変が比較的はっきりと把握できます。

診断結果により、管理1~4までに区分され、それぞれ適切な指導や治療を受けることになります。

管理1は、特に肺に異常が認められず、何の措置も必要ありません。

管理2は、粉塵曝露の量を低減する措置を勧められます。

管理3でも、病変が軽症の場合は、粉塵曝露の量を軽減する措置で済みますが、病変の進行によっては、粉塵作業から転換するように勧められたり、指示されたりします。

管理4では、療養を指示されます。

管理2・3のレベルでも、合併症が起きている場合は、療養を指示されます。合併症としては、肺結核・結核性胸膜炎・続発性気管支炎・続発性気管支拡張症・続発性気胸・原発性肺癌が認められています。

健康診断は、就業時・定期健康診断・定期外健康診断・離職時の4段階で行われます。

粉塵に曝露される職業に就く時に、肺の状態が健康であることを確認します。健康な状態(管理1)の者は3年に1回、管理2・3で要注意の者は、毎年1回、定期的に診断を受けます。管理1と診断されても、塵肺の疑いが生じれば、定期外に健診を受けます。また、療養の必要がなくなった場合も、念のために健診を受けます。粉塵作業から離職する時も、健診を受けて、肺の状態を調べます。

治療

塵肺の根本的治療は、今は、まだ確立されていません。自覚症状を緩和する対症療法と、合併症を起こさないようにする予防が主となります。

肺機能が低下して呼吸不全を起こす場合は、気管拡張剤を投与したり、酸素吸入を行ったりします。咳や痰が激しい場合は、鎮咳薬や去痰薬を投与します。ステロイド剤を投与することもあります。

悪性胸膜中皮腫や肺癌の場合は、STAGEⅠ~Ⅱであれば、外科的療法、つまり手術を行うことができます。しかし、早期に発見することは難しく、わかった時にはSTAGEⅢ以上に進行していることが多いようです。そのため、手術が難しくなります。放射線療法と化学療法(抗癌剤治療)を併用することが多くなります。

合併症の肺結核や結核性胸膜炎など結核性肺疾患には、積極的な治療を行います。合併症の予防として、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種します。

また、塵肺と診断されたら、粉塵作業を離れて、粉塵を吸入しないようにします。悪性腫瘍でなくても、塵肺が進行していたり、症状が激しくて日常生活に支障が出たりする場合は、休業して療養に専念します。入院して加療することもあります。

塵肺と診断されたら、タバコはやめてください。喫煙習慣は、塵肺の症状を悪化させるだけです。肺癌発症の確率も高くなります。

労災申請

塵肺は職業性肺疾患ですから、労災補償の対象になっています。塵肺と診断されたら、各都道府県の労働基準監督署に申請します。

塵肺を発症すると、健康手帳を交付されます。健康診断や肺癌検査などを無料で受けられます。

[塵肺の予防]

塵肺で肺機能が低下すると、機能回復は極めて難しくなります。粉塵が発生しやすい職場で働く場合は、予防に努めることが大事です。

職場が行う予防

➀ 粉塵の発生量を減らします。粉塵が発生する場所に蓋(ふた)をしたり、水を撒いたりします。また、原料を水で濡らして、粉塵が空中に飛ばないようにします。

② 排気装置や除塵装置を設置して、粉塵を除去します。

③ 換気をよくして、外気で粉塵を薄めるようにします。

就労者が行う予防

粉塵作業を行う人は、できるだけ粉塵を吸入しないようにします。防塵マスクや送気マスクなどの保護具を装着します。粉塵が付着しにくい服装をするように注意します。

定期的に健康診断を受け、少しでも塵肺の疑いがあれば、精密検査を受けるようにします。職場と相談して、粉塵作業から転換するように努めます。

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まとめ 塵肺は何よりも予防が一番大事です

日本における塵肺患者数は、昭和50年代をピークにして、減少しています。1982年には46,000人いた塵肺患者が、2006年には6,000人まで減っています。これは、炭鉱の閉鎖にともない、石炭の粉塵が原因となる「炭鉱夫塵肺」を発症することがなくなったこと、また、石綿(アスベスト)が肺に及ぼす悪影響が明らかになり、建設業界をはじめ、さまざまな分野で使用されなくなったため、石綿肺患者が減少したことが大きく関係しています。

しかし、現在でも、粉塵作業に従事する人達が42万人います。塵肺症、また塵肺との合併症で療養を要する人は、毎年1,000人ほどいます。1年以上の長期療養を必要とする人は、むしろ増加傾向にあります。

炭鉱夫塵肺や石綿肺に代わって、珪肺やアルミニウム肺、酸化鉄肺などを発症する人が多くなっています。塵肺を発症する粉塵作業は、溶接が一番で、続いて陶器製造、鋳物製造、鉱物掘削、研磨業となっています。

職業性肺疾患とは言い難いのですが、カビや細菌などを長期間吸入することによりアレルギー反応を起こす過敏性肺炎(農夫肺)も、問題視されています。

塵肺は根本的な治療法がまだ確立されていません。それぞれの症状を緩和する対症療法を行うことが主流です。手術など外科的療法、放射線療法、化学療法、結核治療なども、行うことがあります。

治療法が確立されていない以上、塵肺は、予防が一番大事になります。粉塵作業に従事する場合は、職場がきちんとした対策を取っていることを確認するとともに、自分でも粉塵を吸入しないように防護措置を怠らないようにします。健康診断を定期的に受け、少しでも異変があれば、職場と相談して、配置転換や療養を考えます。専業主婦も、カビなどを吸入しないように、注意します。

粉塵作業に従事するならば、タバコはやめることをオススメします。タバコは、塵肺も含めて肺疾患を悪化させるだけです。

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