怪我や病気をするようなことをしていないにも関わらず、「股関節が痛い」、「足首が痛い」、「踵が痛い」、「膝が痛い」、「関節が痛い」、「骨が痛い」といったことはありませんか?それも、左右にばらつきがあったり、ところどころが痛く、波があります。
そういった場合は、「成長痛(growing pains)」の可能性が考えられます。成長痛は病気の総称であり、明確な病気の定義は存在していません。では、この成長痛について詳しく説明をしていきます。
成長痛の原因
成長痛が発生する原因としては、身体的要因と精神的要因があります。よく骨が成長するため、それによる痛みであると思われることが多いですが、骨の成長は無関係になります。
以下に、成長痛の原因と、それに対する検査について述べます。
身体的要因
遊び疲れやスポーツ、部活活動がストレスとしてかかる場合があります。これらにより、成長軟骨が傷ついてしまい、成長痛が生じます。その他、骨端部分の軟骨組織の虚弱化が原因ともされています。このケースが大半を占めているとされていますが、以下に述べる精神的要因も大きく関与していると近年では言われています。
これら以外にも、自身の意志とは関係なく、無意識下の中で身体に指示を出す神経である自律神経の乱れも影響しています。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、血液の循環機能や消化器、代謝などが関係してきます。
精神的要因
親や周囲の人にかまって欲しいという気持ちが現れて成長痛が発生することがあります。家庭環境の変化、例えば、両親が仕事を初めてかまってもらえる時間が減ったり、兄弟が増えてかまってもらえなくなったとき等です。
子供の不安感や甘えたいという気持ち、かまってもらいたいのにかまってもらえないという寂しい気持ちや、もっと見てもらいたい、抱っこしてもらいたいのにしてもらえないといった欲求が満たされないことが、成長痛の痛みに変換されてしまうことがあります。その他にも様々な環境下での不安感も影響してきます。
検査
まずは、基本的には問診、触診、視診を受けてどういった状況なのかをある程度把握します。
場合によってはその後に整形外科でのレントゲン検査が行われます。整形外科以外のかかりつけの病院や整骨院、整体などでは、正しい診断を受けることができなかったり、設備が整っておらずレントゲン検査などの画像検査を受けることができない場合があります。
重複してお金がかかってしまったり、整形外科のある他院への紹介状のお金がかかってしまったりと余分に時間やお金もかかってしまうことがあるため、最初から整形外科を受けるようにすると良いでしょう。
成長痛の症状
痛みが生じる箇所は主に、太もも、膝の裏、ふくらはぎ、足首、足の甲、踵(かかと)になります。痛みが生じる箇所が不明瞭で全体的に響くような痛みが出ることもあります。
痛みは夜間に強く出現し、特に就寝前に痛みが増幅することがあります。そして、朝に目が覚めた時には痛みが完全に消失しています。
発症年齢
発症する年齢は幼児(赤ちゃん)から中・高生の成長期です。特に3~5歳の幼少期と小学生~中学生の年代に多いです。成長痛が最終的になくなる年齢は20歳前後と言われています。
痛みが強い時間
成長痛の痛みが増幅する時間帯は横になって骨が成長し易くなる時間であり、且つ1日の疲れが出やすい夕方から夜中になります。特に夜間が強いと言われています。よって、夜泣きの多い赤ちゃんは、成長痛が原因で泣いている可能性があります。夜泣きの多い赤ちゃんには要注意です。
また、起きて直ぐと運動中・運動後もストレスが感じられやすく、痛みが生じやすい時間になります。昼間は痛みが生じにくいです。
最も多いのは「膝」
子供の成長痛の痛みが最も多い部位は「膝」です。痛みが強い子供の中には、1日の中で成長痛が強くなってくる夕方~夜中に大声で泣く子供もいます。それほど痛みが強いということです。
成長期の障害で考えられるもの
子供の成長期に多いもので、筋膜性腰痛症や、腰椎分離症、腰椎滑り症、オスグッド病、セーバー病などの骨端症があります。これらは、スポーツや過剰な運動によって引き起こされることが多いです。成長痛は骨端賞とも呼ばれ、成長軟骨に痛みが生じる障害になります。
筋肉に引っ張られる軟骨がその牽引に負けることで炎症を引き起こし、これが悪化すると軟骨が剥離することもあります。放置をしておくと大変なことになるため、早急に病院へ行くようにしましょう。
成長痛の予防・対処法・注意点
基本的には、子供の成長に応じて治癒していきます。成長痛は病気ではないため、治療が必要というわけではありませんが、子供が成長痛の痛みを訴えた時には、いろんな対処法を行ってみると少しでも早く痛みが軽減するでしょう。
また、赤ちゃんのストレッチに関しては、幼児にするストレッチとは異なるため気を付けましょう。身体的要因と精神的要因に対する対処法を合わせて、いろいろな対処法を紹介していきます。
身体の使い過ぎに注意
身体の使い過ぎ(オーバーユース)によって成長痛が惹き起こされることがあるため、成長期にはなるべく練習量を変えることや、練習方法を考慮することが大切になります。
また、疲労が原因で起こるともされているため、痛む時には安静にしたり、身体を休めるなど休養をとることが必要です。十分に睡眠をとりましょう。十分に睡眠をとって、身体に疲れが溜まりにくくすることで、成長痛の予防に繋がります。
ストレッチ(stretch)
まず、ストレッチとは、「引っ張る」、「伸ばす」という意味になります。このストレッチ不足によっても成長痛が生じる場合があります。特に運動前・運動中の休憩時・運動後には必ずストレッチで何度もこまめに入念に行うことが大切です。ストレッチを行うことで、血流が促進され血行が良くなり、痛みが生じにくくなります。適度な運動とストレッチは定期的に行うことをオススメします。
赤ちゃんの場合は、自身でストレッチをすることができないため、両親やその他の家族がストレッチの代わりとなる運動をするようにしましょう。例えば、最初に赤ちゃんの足を片足ずつマッサージします。マッサージは指圧をするのではなく、優しく心臓方向に向かって撫でるようにします。次に、足を持って優しく引っ張る動作や、足首を優しく回す動作、足首を優しく引っ張って牽引をしてあげます。あまり強く引っ張ると脱臼したり、神経が引っ張られて神経麻痺になってしまうため、軽く優しく行って下さい。こうすることで、適度に股関節や膝関節、足関節に刺激を入れてストレッチをすることができます。
ストレッチは、人と比較して頑張りすぎないように、自身の状態に合わせて適度に行いましょう。無理矢理にストレッチをすると筋肉と関節をつないでいる靭帯や腱にストレスをかけて傷めてしまい、逆効果になります。ストレッチ中は、息を止めずに、息をしっかり吸ってから、伸ばしている間に息をゆっくり吐きます。息を吐き切ってしまったが、まだ伸ばし続けるというやり方は控えて下さい。息を吐きながらストレッチを行うことで、酸素が全身に循環しやすくなり、血液の循環も良くなります。よって、日常的に行う際には、入浴後などの身体が温まった状態で行うと更に循環も良くなります。筋肉も軟らかくなっている状態であるため、柔軟性も増してストレスも少なく行うことができます。また、精神的に緊張した環境では筋肉も緊張をしてしまうため、なるべくリラックスのできる環境を作って行うと良いでしょう。
ストレッチも間違った方法で行っては意味をなさないので、正しい方法を専門医から聞いて行うと良いでしょう。更に注意をする点は、怪我や病気の時にはストレッチをしないことです。怪我によりますが、特に骨折や捻挫、打ち身、リウマチを有しているなど、関節や筋肉に炎症を引き起こしているような怪我や病気を患っている場合には、ストレッチを行うことで炎症の範囲が広がったり、炎症が増幅する可能性があります。要注意です。
急な運動は控える
ストレッチ同様、運動前後に行うべき準備や対処を怠ると成長痛の原因になりえます。予防するためには、運動前に入念にウォーミング・アップやストレッチをしたり、運動後にはクールダウンとストレッチを必ずしましょう。適当にしては意味がないので、しっかりと行いましょう。
痛い部位を冷やす
運動の合間や運動の終了後には、水道水や水・氷・冷却材などで2~3分間冷やすといったクーリングも有効的です。氷や冷却材に関しては、当てたい部位に直接当てると急激に冷えすぎてしまい筋肉が過剰に緊張状態になったり、凍傷してしまうなど逆効果になる場合があります。そのため、タオルを一重巻くなどワンクッション置いて使用すると良いでしょう。
運動をしていない場合も、湿布で骨や関節を冷却すると良いでしょう。湿布は、関節痛用の白色の冷湿布を使用して下さい。茶色の温湿布は筋肉が凝っている場合などに使用するため、不適切になります。間違えて使用する方が多いため、気を付けましょう。
痛い部位を温める
ホットパックや湯船で筋肉を温めるといった温熱療法なども有効的です。
ホットパックは、ドラッグストア等に売っているレンジで500W、600Wで3~5分間温めると使用できる物が売られているため、それを代用することも可能です。安く、簡単に済みます。当てすぎると火傷の恐れもあるため気を付けましょう。「冷やす」治療でも述べたように湿布もオススメです。筋肉を冷やす用途で湿布を使用する際には、茶色の温湿布を使用して下さい。
つまり、関節には白い冷湿布を、筋肉には温めるための茶色い温湿布を利用します。よく分からないという方は医師や整骨院、リハビリ士などの知識のある専門医に相談すると良いでしょう。
テーピングを巻く
成長痛のある部位に合わせてテーピングを巻くことで、成長痛の負荷を軽減し症状を緩和させることができます。個人差はありますが、巻かないよりも巻く方が良いでしょう。直接的な効果を得られなかったとしても、プラセボ効果で症状が軽減する可能性があります。
テーピングも間違った巻き方をすると逆効果であり、部位によって巻き方が異なり、状態やその患者によってどのように巻くかも異なります。必ず、病院や整骨院で貼ってもらうようにしましょう。独学や我流で巻くことは避けましょう。
筋力トレーニングはバランスが大事
筋肉をつけようと筋力トレーニングをする子供もたくさんいます。特に、スポーツを行っている子供は毎日のように筋力トレーニングをする場合があります。
実は、これは間違っており、毎日筋力トレーニングを行ってしまうと、逆に筋肉に過剰な負担がかかり筋肉の炎症の元となります。筋肉が炎症を引き起こすということは、筋肉が骨とつながっている腱の部位も傷め、それにより関節に痛みが生じることがあります。つまり、毎日欠かさず筋力トレーニングをするということは、筋力をつけているのではなく筋肉と関節を傷めていることになります。何らかの疾患を引き起こす原因にもなります。
よって、筋力トレーニングは休養期間を入れて2日に1回にすると良いでしょう。また、同じスポーツを継続していると、筋肉も同じ筋肉ばかりを使うようになります。たまに使わない筋肉をメインにトレーニングを行うことも成長痛の予防に繋がります。どういった筋力トレーニングを受けると良いか分からない場合には医師や整骨院で相談をすると良いでしょう。また、リハビリテーションを受けることになった場合には、リハビリテーションのセラピストも専門になるので、そこで相談をすると良いでしょう。
マッサージやリラクゼーションを受ける
マッサージを行うのであれば、人体の構造は複雑なので素人手ではなく専門家に行ってもらうようにしましょう。マッサージやリラクゼーションを受けることで筋肉が柔らかくなり、関節への負担も減ります。これらは、肌を撫でるように摩擦する方法になり、痛みの感覚神経を麻痺させることで一時的に痛みを緩和させることができる可能性があります。
靴選びに注意
固い素材の靴を履いているとどうしても足の関節にストレスをかけやすく、筋肉も傷めやすくなります。よって、靴の素材は足が動きやすいように軟らかい素材を、靴のソウル部分もクッション性のある、足のアーチに滑らかな動きを出してくれるような歩きやすい靴を選ぶと良いでしょう。
正しい栄養摂取を心がける
筋肉や腱が成長する過程には必要な栄養素があります。これらの栄養が不足していると成長痛の症状は出やすくなります。
その栄養素とは、筋肉を生成するのに最も重要なタンパク質、ビタミンCや鉄分になります。ダイエットでタンパク質を避けることは避けた方が良いですし、なるべく好き嫌いをせずに栄養をしっかり摂ることが大切になります。
ビタミンCや鉄分などもサプリメントで取り込もうとする方も多いですが、サプリメントでは不十分になります。しっかりとこういった栄養を摂取した上で補助的に摂取するための物がサプリメントになります。サプリメントに頼らず日頃からしっかりと食事をしましょう。
精神的要因に対して
子供の訴えに耳を傾け、積極的にコミュニケーションをとっていくようにしましょう。赤ちゃんにも、しっかりとしたコミュニケーションやスキンシップを十分に行い、ストレスを溜めないようにしていきましょう。
身体的要因に対する成長痛であれば物を利用して介入し痛みを軽減させることができるため対処法も用意であります。しかし、精神的要因に対する対処は人対人の問題になるため、対処も難しくなります。どれが正しいとは言いにくくなりますが、不安な場合は医師に相談すると良いでしょう。
まとめ
子供の成長をみていく過程で、骨の痛みを訴えることが多ければ成長痛を疑って下さい。「足の骨や関節が痛む」イコール「成長痛」とは限らず、他の重篤な疾患の可能性もあるので、そこは自己判断で対処をせずに医師に相談しましょう。特に、痛みが異常な場合、感覚に違和感がある場合、歩き方に異変がある場合は早急に診てもらうようにしましょう。また、痛みの様子をずっと見て放置することはせず、なるべく早めに診てもらうようにしましょう。最初から整骨院へ行かれる方もいらっしゃいますが、整骨院ではレントゲン等の検査機器がなく、医師とは病気の知識も異なります。まずは、病院で診察を受けてその後の対処を考えていきましょう。
成長痛と判断された場合に、医師によっては「しばらくすればじきに治ります」と言って終わる場合があります。しかし、生活ができないほどあまりに痛みが強い場合には、整骨院へ行くのも手です。整骨院も様々であり、院によっては良し悪しがあるため、情報を集めて決めると良いでしょう。病院を受診する際は整形外科へ行きましょう。