突然ですが、「ガングリオン」についてはご存知でしょうか?ロボットアニメのタイトルでもなければ、SF映画に出てくる宇宙船や異星人の名称でもありません。手や足などの間接付近に急にできてしまう、こぶのことです。
簡単に言ってしまえば、ゼリー状の液体が体内の袋にたまり、膨らんでしまった状態です。大抵の場合は軟骨程度の硬さがあり、触るとコリコリとした感触がありますが、ケースによって多少変わります。また大きさも場合によりけりです。豆粒程度の大きさしかない時もありますし、ゴルフボール程度の大きさになる場合もあります。
また、ガングリオンは良性腫瘍ですので、差し迫った危険はありません。その硬さと大きさから「悪性腫瘍ではないか」と不安になる人も多いようですが、ご安心ください。そして基本的にはガングリオンに痛みはありませんが、稀に痛みを伴うケースもあるようです。
今回の記事ではそうした痛みが伴うケースはもちろん、ガングリオンが出来る原因などについても幅広く紹介したいと思います。
ガングリオンが痛むケース
上述のように、ガングリオンが出来たとしても基本的には痛みを感じません。というより、ガングリオンそれ自体は本来無痛なのです。
ただ、出来た個所によっては激しい痛みを生む元になるかもしれません。
手足に出来た場合
痛みを伴うガングリオンの中でポピュラーなのが、手足に出来てしまう場合です。
特に足の場合は甲や側面、はたまた指の間に出来たとしても、履物によって圧迫されることで痛みを生みます。足はただでさえ、狭い場所に神経が密集している部位でもあります。そこにガングリオンが出来てしまい、また履物によって体の内側に押し込まれてしまうとどうなるのでしょうか。答えは簡単です。神経がガングリオンに強く圧迫されてしまい、痛みやしびれを引き起こしてしまうのです。
ちなみに、手に出来てしまった場合も同様です。手も同じく狭い箇所に神経が集中しているため、ガングリオンが肥大化すると圧迫されやすくなり、痛みを感じる可能性が高まります。とはいえ、手の場合は足と違って、履物をする必要はないので比較的、痛み辛いと言えます。もちろん手袋をつける必要がある際は別ですが、そうでない限りは、足の時程は痛みません。
膝に出来た場合
実は膝に出来てしまったガングリオンは、かなりの確率で痛みと痺れを生みます。膝は日常生活のあらゆる局面で使われるため、最も負荷がたまりやすい部位の一つです。そのため、膝に出来たガングリオンは刺激を受けやすいのです。
私達は立つときや座るときはもちろん、ジャンプするときや歩いたり走ったりするときも膝で屈伸運動を必ず行います。寝返りを打つ時ですらです。そのたびに体重分の負荷がかかっているのです。ガングリオンがその刺激によって悪化してしまうのは、当然のことかもしれません。特に膝の皿の裏側に出来てしまうと、屈伸の度に神経をダイレクトに圧迫してしまうため、一層痛みを感じます。
要するに、ガングリオンの中では性質が悪い部類ですので、一刻も早く病院での治療を受けられることをオススメします。
オカルトガングリオン
一層ロボットや宇宙船のようなアグレッシブな名前になってしまいましたね。冗談はさておき、恐らくガングリオンの中で最も性質が悪いケースでしょう。簡単に言ってしまえば、強く痛む上に治しづらいという悪質な特徴の持ち主です。
まずそもそもオカルトガングリオンとは、関節の中の、それも奥の方に出来てしまうガングリオンでして、骨内ガングリオンとも呼ばれています。関節の奥の方にあるということは、それだけ神経に近いところに位置しているということです。つまり、何らかの行動の度にすぐに神経を強く圧迫してしまうということです。
言い換えれば、痛みの質も頻度も他のガングリオンより上だと言えます。さらに悪いことに、骨の中にあるため触診ではその正確な位置がわからず、治療し辛いのです。そのため、治療の際にはMRIやエコー検査がまず必要となります。語れば語るほど、最悪の状況だと言えますね。
ちなみにオカルトガングリオンの場合、外見上の変化は殆どありません。そのため、ガングリオンが出来ていることに、当事者自身も気付きづらいのです。強い痛みを四肢に感じた場合は、無理せずすぐに病院に行くべきです。
ガングリオンの原因
冒頭でも記述いたしましたが、ガングリオンの正体とは黄色いゼリー状の液体です。それが袋の中にたまることで、ガングリオンが出来ます。ではこのゼリー状の液体とはそもそも何でしょうか。
これは、関節液(関節の動きを滑らかにする潤滑油)や滑液(手足の腱の動きをスムーズにするためのもの)が蓄積し、凝縮されたたものです。だから手足の中でも、間接付近に出来やすいんですね。
また、ガングリオンの発症率は圧倒的に女性の方が高いというデータもあります。男性平均のおよそ3倍の発症率を記録しており、特に20代から50代の間に発症することが多いようです。このことから、恐らく女性ホルモンが何らかの関係を持っていると考える人も居多いです。しかし、残念ながらガングリオンが発症する理由とメカニズムは解明されていません。
そのため、正確な予防策などはわかっておりません。ですが、仮説はいくつか打ち立てられておりますし、中には有力視されているものもあります。
外部からの衝撃によるもの
「ガングリオンは外部からの衝撃に対するクッションや盾としての役割を果たしているのではないか、そのために形成されるのではないか」という仮説です。つまり、四肢をどこかに強くぶつけた際に、その衝撃に対する防衛機能が働き、クッションとしてガングリオンが形成されるのではないかという仮説です。
防衛機能が働いたとして、それがどのようにガングリオン形成につながるかというメカニズムは説明しきれていませんが、現在有力な説の一つです。
ちなみにその発展形として、ガングリオンを優しくなでることで、「外部衝撃の恐れはもうなくなった」というサインになり、自然とガングリオンが解消されるという怪しい説もあります。
精神的ストレスによるもの
精神的な強いストレスを、継続的に長期間感じ続けることでガングリオンが形成されるのではないかという仮説です。精神的なストレスを強く感じると、肉体が緊張します。その緊張状態が続くことで血管の収縮の程度が弱まってしまい、血行が悪くなります。
すると老廃物の排出が滞るようになってしまい、その溜まってしまった老廃物が凝縮し、ガングリオンになってしまうのではないかという仮説です。
関節の過剰動作
要するに、関節を動かし過ぎるためにガングリオンが出来るのではないかという仮説です。
関節を動かすと、靭帯周辺の細胞と筋に振動が伝わり、また擦れることで刺激が発生します。その刺激が余りに強く、また頻度が多すぎると関節液と滑液が過剰に分泌され、やがて凝縮し蓄積をしてしまうのではないかという考えです。
各液体は分泌されるほど濃縮が進み、やがてゼリー状になっていき、そしてガングリオンになってしまうという仮説です。
この仮説に基づいて予防策を実行する場合、関節を過剰な動作と負荷は禁物なります。もし関節部が披露していると感じた場合、休ませ、マッサージやアイシングなどを行うと良いでしょう。
ガングリオンの治療法
実はガングリオンは、治療をしなくても治ることが多いです。もともと良性腫瘍ですので転移などによる拡散性もありませんし、放置しても自然完治することの方が多いです。
とはいえ、やはり何事にも例外は存在します。前項でも紹介させて頂いたように、中には大きすぎるものや強い痛みを伴うもの、四肢のどこかを痺れさせてしまうガングリオンもあります。そうした重いガングリオンの場合は、可及的速やかに治療するべきです。
また病院でのガングリオンの治療方法は主に4つあります。穿刺治療法、圧迫治療法、レーザー治療法、切除手術の4つです。
穿刺治療法
要するに、注射器でガングリオン内部のゼリー状の液体を吸い出してしまう方法です。安価なうえにすぐ行えます。費用は一回あたり、高くても3000円前後です。
もちろんデメリットもあります。それはとにかく痛い上に、再発率が高いことです。ゼリー状のドロッとした液体を抜くために、やや太めの注射器を使います。この張りの太さが痛みを感じさせます。また、液体がたまっている袋自体は治療せず、そのままです。ですので、その残された袋に再び液体が貯まってしまい、再発するかもしれません。
とはいえ、術後に1,2週間ほど患部を包帯などで圧迫することで再発を防ぐことも出来ます。
圧迫治療法
文字通り、ガングリオンを押しつぶす治療法です。これまた、特別な器具を使わないため、即座に行える上に安価です。
しかし、ガングリオンを潰す為にかなり力で圧迫することになります。そのため、もし押す箇所ややり方を誤れば、神経を傷つけてしまいます。
レーザー治療法
レーザーといっても、何も患部を焼き切るわけでも老廃物を破壊するわけでもありません。一言でいえば、「回復の促進」です。患部の代謝を高めることで、痛みの元となる物質を排出と回復を促進し、また神経の炎症と興奮も落ち着ける効果があります。
肉体的には非常にローリスクで安全ですが、二か月近く継続的に施術しなければならないこともあり、結果的に費用はかさみます。
切除手術
これもまた文字通りと言いますか、ご想像の通りだと思います。要するに、ゼリーが溜まってしまう袋それ自体を切除する手術です。
袋自体を完全に取り除くため、再発の心配がなくなります。さらに国民健康保険などが適用されるため、意外とそこまで高額にはなりません。
しかし、ガングリオンの出来た部位によっては、切除の際に神経の傷つけてしまうことがあります。結果、四肢の一部に痺れなどの後遺症が残るかもしれません。
まとめ
最後にややヘビーな話をしてしまいましたが、やはりガングリオンは基本的に無害です。痛みがほぼありませんし、放置しても完治することが多いためです。しかし、中には悪質なケースがあるのも確かです。ですので、ガングリオンが出来ても暫くは放置し、万が一悪化するようであれば、病院に行き医師と治療法について相談するべきでしょう。