朝起きて、立ちくらみがする。もしくはなかなか起きられなかったり、倦怠感がある。このような症状は仕事が忙しい大人では、意外と日常茶飯事なんてことがありますよね。
起立性調節障害は主に思春期の中学生に起こる病気です。先に述べた立ちくらみや倦怠感といった症状が常習化し、私生活に影響をあたえることがあります。
では、この起立性調節障害とは具体的にどのような病気なのでしょうか。症状や原因。そして、深刻な合併症について詳しくみていくことにしましょう。
起立性調節障害の症状とは?
起立性調節障害は自律神経失調症の1つでその名の通り、立ったときに症状を発症することが多いです。
座っていたり、寝ている状態から急に立ち上がるとめまいがすることがありますよね。この症状によく似ています。起立性調節障害では具体的に以下の症状を発症します。
立ちくらみ
病気症状の身体的特徴として最も多いのが立ちくらみです。
急に立ち上がるなど、体に急激な負担がかかると生じます。視野の暗転を感じることもあり、よろけてしまいます。また、症状が午前中に集中するという特徴があります。
詳しくは、立ちくらみを起こす4つの原因!予防や改善方法、病気の可能性も!を読んでおきましょう。
食欲不振
食欲が低下します。これも特に午前中にみられ、朝ごはんが食べられないといったことが特徴です。
起床後、すぐにご飯を食べることができず、気持ち悪さを感じます。詳しくは、食欲不振の原因を紹介!ストレスや病気が関係してる?を読んでおきましょう。
頭痛
頭痛は起立性調節障害でよくみられる症状です。ズキズキと痛みが継続します。
症状が進行すると気持ち悪くなり、嘔吐や吐き気といったことも起こります。
イライラ
病気症状の中でも心理的特徴として現れるのがイライラです。症状が積み重なり、精神的な負担となります。この病気の心理的な特徴として、強いイライラを感じることがあります。
また、学校がうまくいかないこともあリ少なくありません。それが、イライラが加速させることがあります。
夜間に目が覚める・寝つきが悪い
起立性調節障害では朝に弱いですが、一方で夜は目が冴えてしまうという特徴があります。
寝つきが悪く、時間が余っているので、さらに目が冴えるゲームなどをしてしまうことがあります。
起立性調節障害のやっかいなところ
これら症状は単に生活リズムの乱れと、一見して思えます。しかし、症状が病的に進行してしまうと、日常生活を営むことが難しくなってしまいます。
イライラが募って、周囲の友人関係が悪くなる。集中力が低下し、勉強についていくことができない。起きていても疲れているだけなので、やる気が起こらない。これら症状は深刻といえるでしょう。
一方で、検査で異常がみつからないことも多く、周囲の理解がなかなかなされないというのもやっかいです。夜型の体質になっていて、怠けていると大人が判断してしまうと、病気を見逃してしまうこともあるでしょう。
起立性調節障害の患者数
実際にこの症状を発症してしまうのは、思春期の子供のうち5〜10%といわえています。10人に1人が発症してしまうリスクがあるのです。これは意外と高い数字といえるのではないでしょうか。
血液検査などの健康診断で異常がでないため、判断することが難しいということも特徴です。そのため、もしかしたら患者数はもっと多いのかもしれませんね。
ただ、生活リズムが崩れていたり、朝弱いといったことがあるようであれば、この病気を疑ってみてもいいかもしれません。
起立性調節障害の原因
では、どうして起立性調節障害を発症してしまうのでしょうか。そこには体の臓器や生命活動を維持する自律神経の働きが大きく関わっています。
生命維持のかなめ「自律神経」
体は1日の中で興奮と鎮静を繰り返しています。起きて活動しているときは大なり小なり体は興奮しています。一方で睡眠中などは体は沈静化してします。
このようにオン・オフを司っている神経を自律神経といいます。自律神経はさらに2つに分類され、交感神経と副交感神経があります。体が興奮しているときは交感神経が優位になっています。反対に鎮静しているときは副交感神経が優位になっています。
自律神経は心拍のバランスも調整しています。興奮すれば心拍を上げ、沈静化すれば心拍を下げるよう作用します。起立性調節障害では特にこの心拍調整が関わっているといえるでしょう。
自律神経のバランスが崩れることが原因
思春期の子どもに起立性調節障害が多いのは、急激な体の成長と自律神経のバランスがあっていないことが原因としてあげられます。身も心も大きく成長する時期であり、不安定な時期でもあるのです。
身体的な成長だけではなく、多感で色々考える時期ですから、精神的ストレスが自律神経のバランスを崩すことがあります。これが症状を引き起こす引き金になることあるのです。
なかなか打ち明けられない子供
思春期では子どもは親に反抗することがしばしあります。このため、症状を発症していても、そのことを打ち明けられないなんてことがあります。
解決方法がわからず、心の中に閉じ込めてしまう。このようなことが続けば、精神的負担も大きくなりますし、症状が悪化してしまうことがあります。
親としてはそういった子供の異常や変化に気づいて、きちんと対応してあげる必要があります。
起立性調節障害の種類
起立性調節障害は大きく4つのタイプに分類されます。それぞれ、原因や現れる症状に違いがあります。具体的にみていくことにしましょう。
起立直後性低血圧
この状態はその名の通り、起立するなど急激な体位の変化があったとき、血圧が低くなる状態です。起立直後に強いたちくらみ、倦怠感、めまい、ふらつきを感じます。この状態では血圧が回復するまで25秒以上かかり、これが診断基準となります。
体位性頻脈症候群
起立時に大きな血圧の変化はみられないものの、その後、脈拍数が増加(頻脈)する状態です。強い動機を感じ、心臓が鼓動するのを感じます。倦怠感、ふらつき。血圧上昇に伴う頭痛が症状です。
神経調整性失神
起立時や体位が変わったときに異常はありません。しかし、時間経過共に血圧が低下します。顔面の蒼白、失神が起こります。朝礼が長いと稀に倒れる生徒がいますが、まさにこの状態です。
遷延性起立性低血圧
起立時や体位が変わっても、症状は現れません。
しかし、時間経過と共に血圧が降下していきます。動機や冷や汗などの症状がみられます。
起立性調節障害と合併症
急な体位の変化時のたちくらみなどの症状が続くと、心的にもかなり負担がかかります。そして、症状が進行すると、さらなる合併症を発症することがあります。
過敏性腸症候群
起立整調性障害によって自律神経のバランスが乱れると、過敏性腸症候群を発症することがあります。具体的な症状として長く続く下痢、もしくは便秘。そして頭痛もみられることがあります。
自律神経は体のあらゆる部位に張り巡らされています。腸は特にその影響を受けやすい臓器です。ストレスがかかるとトイレに行きたくなる、というのも自律神経の反応の1つです。
薬等で症状を緩和することはできますが、対症療法にすぎません。根本的な原因である、精神的なストレスを解消したり、体をリラックスさせることが治療の近道といえるでしょう。
詳しくは、過敏性腸症候群の症状をチェック!治療方法は?を読んでおきましょう。
精神疾患
自律神経の乱れが招く病気は身体だけに収まりません。精神病として発病することもあります。中学生であれば、不登校の原因になることもあり、深刻な事態を招く可能性があるでしょう。
具体的には適応障害や不安障害などを発症します。適応障害では環境や人間関係に適応できず、心的負担を抱えます。不安障害では、なれない環境や状況において、精神バランスが大きく崩れてしまいます。
いずれの病気にしても、学校内、家庭内において問題を発生させることがあります。社会との繋がりが断たれてしまうことに繋がるかもしれませんから、早期に対処する必要があるでしょう。
睡眠覚醒スケジュール障害
聞きなれない病名ですが、睡眠に関して異常が起こる病気です。人は夜になると眠くなり、太陽が上ると活動的になります。睡眠覚醒スケジュール障害ではこのようなリズムが崩れてしまうことが起こります。
主症状としては昼夜逆転があります。朝は起床そのものが難しくなったり、反対に夜は寝つきが悪く、いつまでも起きているといった症状がみられます。
規則正しい生活リズムがなされないため、体には疲労がたまります。精神的な負担を課すこともあり、イライラが爆発してしまうこともあるでしょう。
不調が体全体へ広がる
起立整調性障害は神経バランスが崩れてしまう病気です。その影響は消化器官である腸。そして心までにも及びます。心身ともに侵されてしまうと生活するのも辛くなってしまうかもしれません。
ただ、多くの場合が一過性であることは確かです。過度に心配する必要はありませんが、やはり規則正しい生活を心がける必要があります。また、ストレスがあるようであれば、適宜発散することが大切でしょう。
先に述べたように思春期というのはとても多感な時期です。色々なことに反応し、考え、時には周囲に馴染めないなんてこともあるかもしれません。それが、神経はもとより体のバランスを崩してしまうのです。
しかし、きちんと初期の段階で対処すれば、不調を最小限に止めることができます。子供本人が気づいていないこともありますから、親がきちんと見守ってあげることも大切でしょう。
起立整調性障害の治療
自律神経のバランスが崩れてしまう起立性調節障害。その治療法は時間をかけていくことが基本です。短時間で治ることは難しいですが、時間をかけていけば十分回復することができます。小児科に通って医師から言われることは具体的に以下のことがあげられるでしょう。
不規則な生活を改善
起立性調節障害では夜遅く就寝し、朝遅く起床するサイクルができていることが多いです。このため、このサイクルをなるべく規則正しく、かつ早めることがポイントです。
大切なのは時間をかけて時刻を早くしていく、ということです。例えば就寝時刻が午前3時であれば、まずは30分早く寝てみる。それを1週間続けてみます。
いきなり就寝時刻を1時間早めるというのは普通人でも難しいですし、体も慣れませんよね。少しだけ時間を早くし、それをなるべく継続していく。そして体が慣れたら、また少しだけ時間を早くする。これを繰り返していきます。
体位の変化
起立性調節障害を発症している人は体位の急激な変化に弱いです。横になった状態から急に立ち上がったり、少し激しい運動をするときなどですね。このようなことが続くと、症状が悪化することがあります。
このため、私生活の中ではゆっくりと動くこと。もしくは体を動かす前に少しずつ体を動かしてみるといったことを意識しましょう。立ち上がるときは足踏みをしてみる、深呼吸をしてみるといったことが効果的です。
リラックスできる環境を意識
湿度や気温にも気を配るようにしましょう。例えば夏場。温度が高く、汗をかくような環境は自律神経のバランスを崩す可能性があります。また、水分が少なくなると血圧が低下しますから、症状が悪化することもあります。体がリラックスできる環境を意識し、適度な水分を摂取をするようにしましょう。
運動をする
運動は自律神経のバランスを整え、ストレスを発散する効果があります。決まった時刻に運動することも、体のリズムを作ることができるので治療に効果的です。
運動は散歩程度のもので十分です。家の周りを軽く歩けば、気分転換になりますし、心が軽くなるのを感じるでしょう。少しずつでいいので始めてみてください。
無理はしない
先に述べたように神経バランスは短期で整えることは難しいです。このため、時間がかかるということを理解しておくことが大切です。そして治療中は無理をしないようにしてください。
いきなり就寝時刻を2時間早める。運動を何時間もしてしまう。これらはなかなか心理的ストレスがかかってしまいますよね。少しずつということが何よりのポイントです。
起立性調性障害と薬物治療
生活習慣を改善しても症状が治らないときは薬物治療を実施することがあります。この治療では血圧をあげる薬剤を服用し、血液循環を促進させます。
効果は個人差があります。服用を続けるケースもありますから、根気のいる治療となることもあるでしょう。病院へ通いつつ、薬をきちんと飲み続けることが大切です。
起立性調節障害との向き合い方
この病気は大人からみると、しばし怠けているように感じてしまうことがあります。いつも夜遅くまで起き、朝遅くまで寝ている。ゲームやスマホをいじり、怠けているように思えてしまうのです。
しかし、そこには神経が異常を起こしているという病気が隠れていることがあるのです。これを放置してしまうと、いろいろな合併症を発症することもありますから注意が必要でしょう。
一方的に決めつけることは簡単です。しかし、その背後に隠れた原因を探らなければ、病気は悪化し、生活習慣が乱れてしまうことがあるのです。これは親としてきちんと考える必要があります。
一方的なしつけや押し付けは子供の反発を招くだけでしょう。症状の改善には親子寄り添う必要があると思います。また、環境を変えてあげたり、子供のために何ができるだろうかという改善も必要です。
大人の起立性調節障害
子供に好発する起立性調節障害ですが、大人でも発症することがあります。原因は同様にストレスや不規則な生活によって自律神経がバランスを崩してしまうことが考えられます。
子供のよりストレスが多い環境に大人はいるのかもしれません。そして、その重圧もまた大きなものです。きちんとした治療や休息を取らなければ、病気は悪化し、より深刻な状態になるかもしれません。
どうも体調がおかしい。けど、健康診断では特に悪いところはなかった。そういった人は自律神経に異常をきたしているのかもしれません。まずは精神科に相談し、早めに対策を取るようにしましょう。
ストレスが多い現代社会だからこそ
思春期の子供にとって学校や家庭でのストレスが心を蝕んでしまうことがあります。特に起立性調節障害はそんなストレスをきっかけとして発症することがあります。
電子機器の発達によって生活にオンとオフの切り替えがなくなることもあります。深夜遅くまでスマホをいじることもできますが、体への影響が時として大きいこともあるでしょう。
そんなストレスが多い環境との付き合い方は、現代人の1つの問題ともいえます。体にはリズムがありますが、それが不規則なってしまえば、やはり体調を崩してしまうものです。
体の状態を見極め、きちんと休息を取っていく。必要であれば、ストレス源との距離を保ったり、気分転換をしたりして、体調を管理する。病気を回避するためにも必要なことでしょう。
まとめ
起立性調節障害は誰でもかかる可能性がある病気です。体調がどうも優れない、生活リズムが不規則、めまいが強い。これら症状が出ているときは要注意でしょう。
病気の改善のためには、まずは自分自身の生活習慣を見直してみてください。ストレスや生活リズム、環境などに原因があるのかもしれません。
その原因が見つかれば、改善するようにしましょう。少しずつ、時間をかけて、体に無理のない範囲で行なっていくようにしてくださいね。
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