蒙古斑(もうこはん)という青あざを知っていますか?赤ちゃんの頃にお尻付近にあったという話をお母さんから聞かされたこともあるのではないでしょうか。この蒙古斑は日本人であれば、ほぼ全員が生まれた時からある青あざのことで、お尻や腰の位置に存在しています。
この青あざは一般的には歳を重ねるにつれて薄く消えていきますが、中には成人しても残ったままの人もいます。また、お尻以外の場所に出来る蒙古斑もあり、その場合は自然と消えない場合や悪性腫瘍になる可能性もあります。
ここでは、蒙古斑の概要、原因、種類や治療方法について詳しくご紹介します。
蒙古斑について
ここでは、蒙古斑の概要とメラノサイトの概要についてご紹介します。
蒙古斑とは?
蒙古斑とは、先天的に皮膚に出来る青いアザのことです。日本人は出世時の出現率は99.5%であると言われています。モンゴル人、日本人、中国人、エスキモー、ビルマ人などの蒙古人種の場合は、80%~90%の確率で現れると言われています。
蒙古斑の「蒙古」とはモンゴル人種という意味があり、黄色人種に多く発生した症状のため、モンゴリアンスポットと発表され、蒙古斑と呼ばれるようになりました。
名前通りに、黄色人種である日本人のほとんどに現れるのが当たり前だと考えられており、男女の出現率の割合に大きな差はありません。実際は、黄色人種だけでなく、白人や黒人にも現れているが、目で確認できないだけとも言われています。東洋人以外の人種に発生する率が低いので、海外の病院で確認された場合、虐待によるあざと勘違いされる可能性があります。
蒙古斑には特別な治療やケアは必要ありません。個人差はありますが、10歳前後までに自然となくなります。しかし、稀に成人の方でも残っている場合があります。残っているからといって身体に異常があったり、病気であるわけではありません。しかし、洋服で隠せない程度に非常に目立っていたり、大きくなったり、濃くなったり、美容的に気になる方は保険適用でレーザーで治療することが可能です。医師に相談して適切な治療方法を検討しましょう。
蒙古斑が出来る原因は、詳しくは解明されていませんが、メラノサイトが関係していると考えられています。
メラノサイトとは?
メラノサイトとは神経系の細胞の1種です。形状はアメーバのような形で、突起物があります。メラノサイトとは、表皮の基底層に存在しメラニンを生成する細胞のことで、メラニン生成細胞、色素細胞とも呼ばれています。このメラノサイトが生成するメラニンはユーメラニンとフェオメラニンの2種類あり、作られるメラニンの種類や量によって色に影響します。
メラノサイトの役割は、紫外線を浴びるとメラノサイトが活性化し、メラニン色素を生成します。皮膚の細胞の日照量に対してメラニン色素を生成して、肌の色を変化させることで、紫外線からの刺激から肌を守る役割があります。メラニンが生成されないと、細胞が紫外線により破壊されて、肌が炎症を起したり、水ぶくれになるなど障害が現れ始めます。
メラニン色素が異常に皮膚に沈着するとシミやそばかす、ほくろの原因になるので、メラニン色素があることは害があると考えている方もいますが、実際には重要な役割があります。
その他にも、髪の色が白髪にならずに黒く保っていられる事や、黒人や白人、黄色人種などの肌の色、網膜の色もメラニン色素の量が関係しています。また、赤ちゃんがお腹にいる際には、メラノサイトは体の中心、腰あたりに位置し、神経細胞を作る働きがあります。この腰の位置で活性化した後に、皮膚へと移動します。肌の表皮付近で発生した、メラニン色素は私達の目でみて黒色に見えますが、肌の奥の部分で作られたメラニンは青く見えます。
蒙古斑の種類は?
蒙古斑はできる場所によって、呼び方や原因、症状が異なります。ここでは、蒙古斑の種類と症状についてご紹介します。
蒙古斑(もうこはん)
一般的な蒙古斑は、小児の背中部分、おしりから腰の位置にかけて青色が強くなります。その後は、日が経過するにつれて薄くなり個人差がありますが10歳前後には、ほとんどの部分が消滅します。
しかし発生した方の約3%が成人になっても残ったままだと言われ、これを持続性蒙古斑と呼びます。その多くは、直径2cmほどの丸型の青色斑です。蒙古斑が出来ることを一説ではママがおむつを替える時に楽しめるように、神様がお尻を青くしたとも言われています。蒙古斑があると心配する方もいますが、気負いせずに、このような気軽な考えを持って自然に薄くなるのを待ちましょう。
蒙古斑が出来るはっきりとした原因は解明されていませんが、メラノサイトが関係していると考えられています。精子と卵子が組み合わさった初期の固体を「胚」と呼びます。この胚が発育していく過程で、メラノサイトが刺激を受け、メラニン色素が発生することでアザとして現れると考えられています。もともとメラノサイトは体の中心部に位置して、胎児期までには皮膚の方へと移動します。
その為、お尻から背中にかけた位置で活発に動いており、メラノサイトが皮膚へと移動していく間に、真皮の中で残ってしまうことが原因と考えられています。
異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)
通常は、お尻や腰の位置にかけて現れますが、稀に腕や足、お腹、胸などに現れる場合もあります。このような特殊な位置に出来る蒙古斑は、異所性蒙古斑と呼ばれて成人しても消えることがありません。
異所性蒙古斑は特に身体に影響する重大な病気ではありませんが、美容上の問題で、レーザー治療を検討される方も多くいます。特に異所性蒙古斑が服に隠れない位置に現れている場合は、学童期に周りから指摘されたり、からかわれたり、精神的な苦痛を与える場合もあります。
太田母斑(おおたぼはん)
顔に現れる青あざは太田母斑と呼ばれ、こちらも自然と消えることはありません。目の周りに中心的に現れ、点状の褐色斑があり、色にむらがあるのが特徴です。生まれた時に既にある場合と幼児期や思春期になるにつれて、徐々に大きくなっていく場合があります。生まれた時に既にあるものを、太田母斑先天性と呼びます。
メラニン色素を作り出すメラニン細胞が異常増殖することで生じると考えられていますが、詳しい原因は解明されていません。遺伝性ではなく先天性のものだと考えられています。太田母斑は美容上の問題で、治療を検討される方が多くいます。現在ではレーザー治療が用いられており、特定のメラニン色素にだけ反応するレーザーをあてることで、熱で色素を焼きます。
太田母斑は身体に関わる重大な病ではありませんが、眼球や口内粘膜にも拡大する可能性があるので、一度皮膚科の先生に相談されることをオススメします。また、大人になってから現れる場合もあり、遅発性太田母斑様色素斑、太田母斑様色素沈着、後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)などと呼ばれます。見た目からシミやそばかす、肝斑、ニキビ跡だと思われている方が多かったり、色素沈着がみられない方は、くすみが目立ちます。
お母さん世代や若い方でこのような美容上の問題を訴えて、実際は蒙古斑だったと気づかれる場合が多いです。詳しくは、太田母斑の症状とは?原因・治療法を知ろう!レーザー治療が有効な理由はなぜ?を読んでおきましょう。
伊藤母斑(いとうぼはん)
肩から肩甲骨にかけて現れる青あざは伊藤母斑と呼ばれ、こちらも自然と消えることはありません。点状の褐色斑があり、色にむらがあるのが特徴です。通常、メラノサイトは皮膚の表皮に存在しますが、メラノサイトが、皮膚層という皮膚の深い部分にあると、皮膚が青あざのように見える伊藤母斑が生じます。
メラノサイトが、皮膚層に存在する原因は解明されておらず、遺伝性ではないと考えられています。生まれつき、このあざを持って生まれるケースもありますが、思春期の女性に発症しやすいと言われています。表面は滑らかで、1.5cm以下のサイズは色素性母斑(ほくろ)と呼ばれ、1.5cm以上のものを青あざと呼びます。
青色母斑(せいしょくぼはん)
青色母斑細胞という細胞がメラニンを増やすことで現れる青あざを青色母斑と呼びます。こちらも自然と消えることはありません。
直径1cm未満で、見た目はほくろに似ていますが、ほくろよりも青みが強く、触るとやや硬いしこりのようなものが確認できます。真皮にあるメラノサイトが増殖することで起こると考えられています。30代以降の方の顔や、背中、手足に現れやすいと言われています。
青色母斑のほとんどが乳幼児期に現れます。青色母斑で注意が必要なのが、大きいものは悪性化する可能性があります。直径1cmをこえるものの中で、細胞増殖型青色母斑と呼ばれるものがあります。これは幼児期に発症し、頭やおしり、手足に見られ、大きくなっている場合は悪性化する可能性があることや、リンパ節転移を起す場合があり、その場合は早急に治療が必要になります。
扁平母斑(へんぺいぼはん)
茶色のあざが皮膚に現れた場合は、扁平母斑の可能性があります。ほくろのように、盛り上がることはなく、コーヒーのような茶色をしていることが特徴です。中には、茶色のアザの中に直径1mmほどの黒い点が混ざっている場合もあります。
先天性のものがほとんどですが、思春期になって現れる場合もあり、この場合は遅発性扁平母斑と呼ばれています。思春期になって現れたものは、あざの中に同時に毛が生える場合も多くあります。
詳しくは、扁平母斑とは?症状・原因・診断方法を知ろう!治療にはレーザー治療が必要?を読んでおきましょう。
蒙古斑の治療法について
治療方法には、皮膚を削ったり、アザを切除したり、皮膚を移植するなどの方法もありますが、傷跡も残りやすく体に負担がかかります。その為、現在ではレーザー治療が一般的な治療方法になります。
ここでは、レーザー治療の方法や値段、リスク、注意点、治療の時期についてご紹介します。
レーザー照射の方法
蒙古斑は、メラノサイトが作り出したメラニン色素が集まって出来た青あざです。Qスイッチルビーレーザーやヤグレーザー、アレキサンドライトレーザーと呼ばれる、様々なシミやあざの治療に使われているレーザー治療機器で治療を行います。これらのレーザーの対応が可能なものは、老人性のシミ、そばかす、太田母斑、扁平母斑、色素性母斑(ほくろ)、刺青、遅発性太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着などです。
このレーザー光は周りの肌を傷つけることなく、メラニン色素のみに反応し、色素を熱で焼き壊すことが可能です。焼かれたメラニン色素は体の中で不要だと認識され、かさぶたとなって体外に排出されます。焼かれた部分は新しい皮膚が再生する為、徐々に消え薄くなります。レーザー治療では、痛みがある為、通常局所麻酔をして行います。しかし、状況や年齢によっては、全身麻酔で行う場合もあります。
レーザー治療は、メスを使わないで済むので、直接肌を傷つけないことや、傷跡が残らないことがメリットとして挙げられます。しかし、レーザーをあてることで、皮膚のトラブルが生じる場合もあるので、一度に大量のレーザーをあてることは出来ません。一回で消えない場合は、長期間にわたり治療を行うことで、キレイな肌にすることが可能です。しかし、色の濃さよっては、治療をしても残ってしまう場合や、色がまばらになる可能性もあります。
レーザー治療の値段
レーザー治療と聞くと、高額な値段の印象がありますが、保険適用可能な為、思っているよりも費用を抑えることが可能です。病院によって値段は異なりますが、1回のレーザーにつき6千円~1万2千円程度だと言われています。また、全身麻酔か局所麻酔かによって、値段の幅も異なります。
異所性蒙古斑や太田母斑、伊藤母斑などは完全に消えないといわれている為、治療を検討されている方も多いと思います。早くに治療されることで、レーザーをあてる範囲も狭い為、回数が少なく済み費用も抑えることが出来ます。子供用の医療保険に加入している方は対象かどうか確認されることをオススメします。
レーザー治療のリスク
レーザ治療は効果が高く、現在では主流の方法として取り入れられていますが、少なからずリスクもあります。例えば、一度に多くのレーザーをあててしまった場合は、皮膚が火傷してしまい、傷跡が残る可能性もあります。治療をどのように進めていくか医師と十分に相談の上、実施されることをオススメします。
また、小さいお子さんなど年齢によっては全身麻酔を行って実施する場合があるので、全身麻酔による吐き気や頭痛、嘔吐などの副作用が起こる可能性もあります。他にも塗り薬などの局所麻酔の場合は、完全に痛みがとれない場合もあり、多少痛みを伴う場合もあります。
また、蒙古斑と似ているもので、肝斑(かんぱん)というシミの1種があります。肝斑はレーザーで治療してしまった場合、逆に濃くなってしまう場合があるので、正しく区別することが重要です。肝斑は、30歳~40歳に主に頬の骨あたりに出来やすく、左右対称にできる可能性が高いです。女性ホルモンのバランスが原因と考えられ、内服薬で治療することが一般的です。
レーザー治療の注意点
レーザー治療の注意点は日焼けです。治療後は特にしっかりと日焼け対策を行わないと、前回よりもひどく色素沈着を起す場合もあります。
また、治療前に日焼けをすると、レーザーをあてても効果がない場合があり、日焼けの度合いによっては治療が受けれない場合もあります。
治療を行う時期について
異所性蒙古斑や太田母斑、伊藤母斑は完全に消えないと言われていますが、成長過程で色が薄くなり目立たなくなる場合もあります。判断するのは、10歳前後が目安と言われています。本人が判断できるまで治療を待つことも可能ですが、治療は早ければ早いほどいいという声もあります。
幼少期にレーザー治療を行うことで、記憶に残りずらかったり、治療範囲も狭く、跡がキレイに消えやすいといわれている為、判断する時期は医師と相談の上で検討しましょう。
また、小児科の判断と、形成外科の判断は異なり、小児科では大人になるにつれて、消えるという先生が多いですが、形成外科の場合は、出来るだけ早くに治療する方がいいと言われることが多いです。両方の先生の意見を聞いて判断されることをオススメします。
おわりに
蒙古斑は自然と消えるというイメージを持っている方が多いと思います。しかし、実際は消えない場合もあり、お尻の部分以外にも発生する可能性があります。また、大きくなる場合は、悪性の可能性もあるので、その場合は病院で検査を受けることをオススメします。
このように誤った認識を持っている可能性も多いので、赤ちゃんが出来たばかりの方は、ママ友達に共有することで、早くに対処できる可能性があります。
また自分の息子や娘に、異所性蒙古斑などの一生消えないアザが服に隠せないほど大きく出来た場合は、医師に相談されることをオススメします。
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