稗粒腫(はいりゅうしゅ)という病気を、ご存知でしょうか?実は、病名を知らなくても、症状についてはご存知の方も少なくありません。その稗粒腫の症状は、目の周りに白い色をした小さなブツブツあるいはポツポツと表現できるような膨らみが現れるのです。
もしかしたら、過去に目元に現れて何だろうと不思議に思っていたり、今現在現れていて気になって仕方ないという方もいるかもしれません。
稗粒腫は放置していても、ただちに肌の健康を害するわけではありませんから、その点は安心していただいてかまいません。しかしながら、稗粒腫は顔に現れるので、やはりどうしても気になってしまうのが人情というものでしょう。
そこで今回は、稗粒腫の原因、症状、治療方法などについての概要をまとめてみましたので、参考にしていただければ幸いです。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)とは?
そもそも稗粒腫(はいりゅうしゅ)とは、どのような病気なのでしょうか?
まずは、稗粒腫に関する基本的な知識について確認しておきたいと思います。
稗粒腫とは?
稗粒腫は「はいりゅうしゅ」と読み、顔面の皮膚に現れる直径1~2㎜程度の小さな白色の粒状の膨らみ・丘疹・ブツブツのことです。
稗粒腫は、顔面の中でも特にまぶたや目の下など目の周囲に好発することが知られており、次に額や頬に現れることが多いとされています。
基本的に良性の小腫瘍であり、稗粒腫が顔面に現れたからといって何か心配するようなことはないと考えられています。
稗粒腫の種類
このような稗粒腫は、大きく分類すると原発性稗粒腫と続発性稗粒腫の2種類に分けることができます。
ただし、原発性稗粒腫と続発性稗粒腫のいずれも、小さな白色の粒状の膨らみであって見た目から区別することはできません。
原発性稗粒腫
原発性稗粒腫は、これといった原因がないのにもかかわらず突如として顔面に小さな白色の粒状の膨らみができる場合を言います。
現在のところ、原発性稗粒腫が生じるメカニズムや原因は解明されておらず、体質的に稗粒腫ができやす人が存在し、そのような体質が発生の要因となっていると考えられています。
このような原発性稗粒腫は、新生児・赤ちゃんに多く見られ、また若い女性にも好発することが知られています。
続発性稗粒腫
続発性稗粒腫は、何らかの外的要因・外的刺激によって顔面に小さな白色の粒状の膨らみができる場合を言います。
この外的要因・外的刺激とは、ニキビや原発性稗粒腫などの皮膚疾患、火傷、顔面にできたイボなどを削り取った手術のことなどを指していて、皮膚疾患の痕・火傷痕・手術痕などに続発性稗粒腫が発生します。つまり、続発性稗粒腫は、原発性稗粒腫が生じた場所に繰り返し発症しやすいと言うこともできます。
ですから、原発性稗粒腫ができやすい若い女性は、必然的に続発性稗粒腫も発生しやすいと言えます。
稗粒腫の原因
このように稗粒腫が現れたとしても、健康的には特に問題もないと考えられていますが、それではどのような原因で稗粒腫が顔に現れるのでしょうか?
そこで、稗粒腫の原因について、ご紹介したいと思います。
稗粒腫の発生メカニズム
稗粒腫は、いわゆる毛穴と呼ばれる毛包の組織や毛包に繋がって皮脂を分泌する皮脂腺などの形成が十分でないことによって、皮膚内部の極めて浅い部分に、皮膚の角質や角質を構成するケラチンなどの線維性たんぱく質などの老廃物が溜まってしまい、それが塊となって生じるとされています。
そもそも、肌の新陳代謝・ターンオーバーによって、皮膚の角質などの老廃物は垢(あか)として排出されていくのですが、毛包や皮脂腺の未発達によって上手く排出されず袋状に塊となって稗粒腫となってしまうのです。
そして、目の周囲の皮膚は薄いため、毛包や皮脂腺が十分に発達しにくい場所であることから、原発性稗粒腫が目元に現れやすいと考えられています。
また、ニキビや原発性稗粒腫などの皮膚疾患の痕、火傷痕、顔面にできたイボなどを削り取った手術痕などが毛包・毛穴を塞いでしまうので、続発性稗粒腫は繰り返し発生・再発しやすくなると考えられています。
稗粒腫の原因
稗粒腫の発生メカニズムは前述のように考えられていますが、稗粒腫を引き起こす直接的な原因は未だ明確に判明しているわけではありません。というのも、稗粒腫が良性の小腫瘍・粒腫であって悪さをする悪性の出来物ではないため、専門的な研究がなされていないからです。
稗粒腫の原因について、脂肪分・油脂分を多く摂取していることに原因を求める見解、単に洗顔回数の不足が原因とする見解などが提起されていますが、明確に実証されているわけではありません。
ただし、稗粒腫が良く現れる人と稗粒腫が全く現れない人がいることは事実で、体質的・肌質的なものが稗粒腫の発生に影響していることは否定できないと言えるでしょう。
稗粒腫の発生に影響する要素
このように稗粒腫の直接的な原因は未だ明らかにされていないものの、毛包や皮脂腺の形成不十分なところに老廃物が溜まり塊となるのが稗粒腫です。
そして、稗粒腫の発生に影響を与えていると考えられている要素に、肌の新陳代謝・ターンオーバー、肌の老化、乾燥肌、肌への刺激などがあります。
肌の新陳代謝・ターンオーバー
肌の新陳代謝・ターンオーバーは、肌・皮膚の入れ替わりのことで、概ね28日毎に古い肌細胞が新しい肌細胞に置き換わっていきます。
規則正しい生活習慣が行われずに、睡眠不足や過度のストレスに晒されるなど生活が乱れると、肌の新陳代謝・ターンオーバーが正常になされなくなってしまいます。
そのため、このような肌の新陳代謝・ターンオーバーの周期が乱れることが、稗粒腫の発生に影響している可能性が指摘されています。
肌の老化
肌の老化は、加齢による老化現象の一つで誰もが避けられない現象です。肌の老化は、前述の新陳代謝・ターンオーバーが低下することによって進みます。
それゆえに、加齢による肌の老化も稗粒腫の発生に影響している可能性があります。
乾燥肌
肌の表面付近は角質層となっていて、肌の保湿機能や細菌などの異物の侵入を防ぐバリア機能などの役割を担っています。
この角質層が老化・紫外線・スキンケア不足などによって乾燥してしまうと、保湿機能やバリア機能の役割を果たせなくなり、様々な皮膚疾患・皮膚トラブルの原因となってしまいます。というのも、肌が乾燥すると正常な新陳代謝・ターンオーバーがなされなくなってしまうからです。
ですから、乾燥肌が稗粒腫の発生に影響している可能性があるのです。
肌への刺激
洗顔料や化粧品などは、もちろん様々な良い効果をもたらしますが、肌にとっては外的刺激となっていることも事実です。洗顔料の洗い流し不足や化粧品の落とし不足などによって、肌が刺激されて新陳代謝・ターンオーバーの周期に影響を与える可能性があります。
また、目元は目の痒みなどから手で擦ってしまうことが多く、このような行為が肌への刺激となって新陳代謝・ターンオーバーに影響を与えている可能性もあります。
そのため、肌への刺激が稗粒腫の発生に影響している可能性があると言えるのです。
稗粒腫の症状と特徴
このように稗粒腫は、顔の肌に現れる直径1~2㎜程度の小さな白色の粒状の膨らみのことですが、具体的にはどのような症状が現れるのでしょうか?
そこで、稗粒腫の具体的な症状や特徴について、ご紹介したいと思います。
稗粒腫の症状
稗粒腫の症状は、顔面の皮膚に直径1~2㎜程度の小さな白色の粒状の膨らみ・丘疹・ブツブツが現れることで、手で触るとやや硬く感じられます。
稗粒腫は、顔の部位の中でも特にまぶたや目の下など目の周囲に好発することが知られています。また、額や頬にも現れることが多いとされています。
このように目元などに白い膨らみができるといっても、この他に不快に感じるような症状は現れません。つまり、膨らみがさらに大きくなったりすることもなく、膨らみが炎症を生じて赤くなることもなく、痛みや痒みといった自覚症状も現れません。
ですから、稗粒腫が顔に現れたからといって、何か心配するようなことはないと考えられています。すなわち、稗粒腫は基本的に良性の小腫瘍であって、治療をせずに放置していても悪化することはなく、肌の健康面からも特に大きな問題はありません。
稗粒腫の特徴
稗粒腫は、原発性稗粒腫として当初1~2個程度しか現れなかったとしても、気づかないうちに稗粒腫の数が増えている場合があります。前述のように不快な自覚症状があるわけではありませんから、稗粒腫が発生していても気づかずに、気付いた時には複数個の稗粒腫ができていたということもあるのです。
また、一度でも稗粒腫が現れた場合、いったん稗粒腫が消失しても続発性稗粒腫として繰り返し再発しやすいことも特徴の一つと言えるでしょう。
さらに、原発性稗粒腫は新生児・赤ちゃんに多く見られるとともに若い女性にも好発することが知られていて、続発性稗粒腫も若い女性に発生しやすいとされています。
稗粒腫と混同しやすい皮膚疾患
このように稗粒腫は顔の表面の肌に現れる直径1~2㎜程度の小さな白色の粒状の膨らみのことを言うのですが、稗粒腫に似た膨らみが現れる病気・疾患が他にも存在しますので、簡単にご紹介しておこうと思います。
h(かんかんしゅ)
汗管腫は「かんかんしゅ」と読み、直径1~5㎜程度の平らに隆起した発疹のことで、汗を出す管である汗管が異常増殖したものとされています。
汗管腫は、稗粒腫と同様に顔の肌に現れて特に目の周囲に好発する点と、症状が現れても悪性化しないので健康上の問題がないことも共通します。
しかし、稗粒腫は白みがかった色をしているのに対して、汗管腫は肌色あるいは少し黄色がかった色をしているという違いがあります。
汗管腫は症状が現れても痛みや痒みはありませんが、自然に消失することはないとされています。また、汗管腫は、思春期以降の女性で、特に20歳代から30歳代の方に多く現れる傾向があります。
詳しくは、汗管腫はどんな病気?治療するためのクリームやレーザー治療について!症状や原因も知ろう!を読んでおきましょう。
白ニキビ
一口にニキビと言っても、黒ニキビ・赤ニキビなど様々な種類があるのですが、稗粒腫と似ているのは白ニキビです。白ニキビは、直径1~3㎜程度の白い膨らみで、老廃物が毛穴に詰まってしまっている状態です。
白ニキビが稗粒腫と異なるのは、毛包や皮脂腺が十分に発達したところに発生する点で、そのため目の周囲には現れにくく、頬や額など皮脂分泌が盛んな部分に現れることが多いのです。また、白ニキビは詰まった皮脂が酸化して黒ニキビに変化したり、細菌(アクネ菌)に感染して炎症を起こし赤ニキビに変化する点も、稗粒腫と異なります。
その他
その他に、青年性扁平疣贅(せいねんせいへんぺいゆうぜい)・粉瘤(アテローム)・脂漏性角化症(老人性いぼ)などが、目の周囲などの顔面に現れることがありますが、これらは色や形から稗粒腫と明らかに異なりますので、混同することはないでしょう。
稗粒腫の治療方法・予防方法
前述したように稗粒腫の症状が現れたとしても、健康的には特に問題がないと考えられています。
しかしながら、やはり目の周囲に白色の膨らみ・ブツブツがあることは、見た目の印象や美容の観点から、どうしても気になってしまう方もいると思います。そこで、稗粒腫の治療法や予防法について、ご紹介したいと思います。
受診する診療科は?
稗粒腫の治療に際して受診すべき病院の診療科は、基本的に皮膚科あるいは美容クリニックと呼ばれる形成外科・美容皮膚科となります。
まずは、病院を受診して医師の診断を仰ぎ、その上で治療法や解消法について相談しましょう。
稗粒腫の治療法
稗粒腫の治療法は、主に面皰圧出法(稗粒圧出法)、レーザー治療法の二つです。また、お勧めできませんが、自分で処置することもできます。
面皰圧出法(稗粒圧出法)
面皰圧出法(稗粒圧出法)は、注射針のような細い針で稗粒腫の先端部分に穴を開けた上で、患部にピンセットなどで圧力をかけて稗粒腫の内容物である塊を押し出す除去方法です。
治療費は安価で済む方法ですが、治療時にチクっとした痛みが生じること、稀に除去後に傷が残ることがあることなどのデメリットもありますので、事前に十分に医師と相談した上で治療を受ける必要があります。
稗粒腫除去の施術後3~4日程度は傷痕に赤みが残りますので、細菌などに感染しないように処方された化膿止めの薬・軟膏を塗らなければなりません。
レーザー治療法
レーザー治療は、医療用レーザーを稗粒腫の患部に照射することによって稗粒腫の先端部分に穴を開けた上で、患部にピンセットなどで圧力をかけて稗粒腫の内容物の塊を押し出す除去方法です。
医療用レーザーを用いる際は、麻酔クリームを塗るなど麻酔を使うので痛みを感じないとされています。また、面皰圧出法に比べて、傷痕が残りにくいとされています。
ただし、レーザー治療も良いことばかりではなく、特に医療用レーザーの中でも炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)は出力が高いので、皮膚の損傷が生じて稗粒腫を取り除いた痕に色素沈着を起こす場合があります。また、治療費は面皰圧出法に比べて割高で、健康保険の適用がされず自由診療扱いとなる場合はより高額となることから、事前に確認する必要があるでしょう。
稗粒腫除去の施術後3~4日程度は傷痕に赤みが残る場合があるので、細菌などに感染しないように処方された化膿止めの薬・軟膏を塗る必要があるのは面皰圧出法と同じです。
自分で処置する
自分で処置する場合は、安全ピンなど細い針とピンセットを用意して、鏡で見ながら面皰圧出法を自分で実施する形になります。
ただし、針で深く差し過ぎて出血したり、傷痕が残ったりするリスクが高くなるなど、全ては自己責任であることを理解しておく必要があるでしょう。目元は皮膚が薄くデリケートですから、敏感肌の人でなくても注意しなければなりません。
本記事では、自分で処置することをお勧めせず、専門医による治療を強く推奨します。
稗粒腫の予防法
稗粒腫の予防については、肌の新陳代謝・ターンオーバーを正常に保つことに尽きると言って良いでしょう。
そのためには、睡眠不足にならないなど規則正しい生活を送るとともに、肌の保湿など日々のスキンケアを地道に行う必要があります。また、顔を擦らないようにすることも意識しましょう。
肌の新陳代謝・ターンオーバーを促す効果がある漢方薬「ヨクイニン」を摂取することも、稗粒腫の予防につながるとされています。
さらに、エステサロンなどでエステティシャンによる肌のピーリングを受けることも、肌の新陳代謝・ターンオーバーを正常に保つことにつながりますので、余裕があれば施術を受けると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか?稗粒腫の原因、症状、治療方法などについての概要をご理解いただけたでしょうか?
たしかに、稗粒腫は放置していても、ただちに肌の健康を害するわけではありません。とは言っても、稗粒腫は顔の中でも特に目の周辺に現れるので、どうしても気になってしまうものです。
どうしても気になる方は、自分で処置することもできなくはありません。しかしながら、自分で処置する場合は、大事な顔に傷痕が残る危険性もあります。ですから、皮膚科や美容クリニックで、専門医の処置・治療を受けるべきでしょう。本記事が、あなたの美肌ライフの一助になれば幸いです。
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