人には喜怒哀楽というような単純な4つの感情・基本性質だけではなく、あらゆる感情が存在します。そして、目に見える感情の裏側には対極となる感情が隠れていることがあります。
支配欲は誰しももっている感情の1つです。大なり小なり、誰かを支配したいと思っていることもありますが、それが大きくなると人間関係をややこしくしてしまう可能性もあります。
では、この支配欲。具体的にはどのような特徴があるのでしょうか。また、周囲に支配欲が強い人がいた時、どういった対処をすればいいのでしょうか。これらのことについてみていきましょう。
支配欲とは
支配欲はその名の通り、自分以外の誰かを支配したい欲求のことです。言い換えれば、自分の思い通りに動かしたり、操作したいともいえるかもしれません。
支配欲は恋愛でよく現れます。付き合っている彼氏、もしくは彼女に対して自分の意に沿うような行動をさせたり、もしくは制限・束縛させることもあるでしょう。
例えば支配欲の強い男は、相手が自分の思い通りにいくことで欲求・満足感を満たしていきます。そして、自分を肯定し、自分の存在価値を高めていくということをします。
支配欲に類似する欲求
支配欲は相手を思い通りに動かしたいという欲求。支配欲は別の言葉で、所有欲や征服欲ともいわれます。強い意味を含む言葉ですが、伴って強い感情も含まれています。
相手への支配欲が強いと、相手を感情のない物のように扱うことがあります。自分の欲求を満たすことが最大の目的で、その欲求を阻害する態度を認めなくなります。
例えばホストに通っている女性客は、この支配欲の餌食になることがあるようです。お店に行くと優しくしてくれるけども、それ以外ではそっけない。もしくは無理な要求をされる。この手のことは支配欲の一例といえるでしょう。
ただ、同時に相手がいないと精神的に辛いというような演出をすることで、依存度を高めることをしています。心理学的に稀少性ともいいますが、自分の価値が高いことを相手に刷り込んでいるのです。
もし欲求を阻害するようなことがおきれば、感情が爆発し、相手に対して力でもってひどい仕打ちをすることがあるでしょう。それほど心のバランスが取れていないこともあるのです。
支配欲の裏側にあるものとは
欲求が満たされないことで起こる感情の爆発は、心が未熟であること、もしくは自分に自信がないことの現れともいえるでしょう。支配欲の裏側にはこういった人間的弱さを含んでいることがあります。
ただ、支配欲の強い人はその弱い部分を隠すことが癖になっていたり、バレそうになっても必死に隠そうとします。それが結果として、感情の爆発を招くことになるのです。
支配欲は様々な形で現れることがありますが、それが良い方向へ向かうこともあれば、悪い方向へ向かうこともあり、人間関係をダメにしてしまう可能性があるのです。
自己愛性人格障害
自己愛が強いゆえ、社会で生きて行く上で大切な人間関係が不和になってしまうことがあります。病的にこの自己愛が強い状態を自己愛性人格障害といいます。
ナルシストという言葉がありますが、それに伴う行動自体はそれほど周囲に迷惑をかけることはありません。しかし、自己愛性人格障害では、人間関係に強い障害を及ぼすことがあります。
強い支配欲を持ち、相手をコントロールしようとする。特別扱いや賞賛を相手に強要する。嫉妬が強い。攻撃性がある。これら行動がみられるようであれば、人格障害の可能性があるかもしれません。
詳しくは、自己愛性人格障害の特徴とは?向き合うために必要なことを知ろう!を読んでおきましょう。
友達関係で起こる支配欲
異性の友達に特別な感情を持つことがあります。それは何かのきっかけなのかわかりませんが、ふとしたことで相手への気持ちに気づくことがあります。
例えば男友達だと思っていたけど、他の女の子と歩いているところをみると、どこか心にひっかかりを感じる。そうしたとき、支配欲とも呼べる小さな感情が起こります。
もちろん、相手にも相手の人間関係があります。その状況を見た時、表面的なことだけでは相手の気持ちは想像することは難しいでしょう。きちんと理解する必要があります。
支配欲はなんの表れ?
支配欲の裏側には自信のなさ、人間的弱さがある、というお話をしました。このことについて深くみていきましょう。支配欲には具体的に以下のような感情が隠されていることがあります。
ハラスメントしている人の裏側にはこのような心の弱さが隠れているかもしれませんよ。ハラスメントしている人の裏側にはこのような心の弱さが隠れているかもしれませんよ。
自分への自信の無さ
人はどうしても弱い部分を隠したがる生物です。自信のなさというのは経験から裏付けていくしかありませんが、その経験が乏しい人はうわべだけの自分を誇示しようとします。支配欲もその1つの表れでしょう。
相手からどう見られるのか、どう思われているのかばかり気にしていると、自信がつくことはありません。そればかり考えていると、誰も信用してくれなくなります。
その結果、自分を認めさせるために誰かを支配したいという気持ちになってしまう。これが支配欲が表面化する理由なのです。自己愛・自己肯定の一種とも言えますが、その表現はいびつなものです。
強い不安がある
自信の無さと同様、自分を肯定することが難しくなっていますから、何をするにしても不安を感じることがあります。そのため、自分を認めてくれる存在を支配することで自分を肯定するしかありません。相手の携帯電話を見てしまうなんてこともあるかもしれませんね。
不安が強ければ強いほど、支配欲は強くなります。例えば恋愛では相手への要求が強くなることがあるでしょう。それを満たしてくれなければ、感情が爆発してしまうのです。
誰しも不安を持っているものですが、自信をつけていくことで不安を無くしていきます。そのプロセスを経験しない人は、もしかしたら支配欲が非常に強いのかもしれません。
傷つきたくない
仕事の職場でもなんでも、失敗をしたり誰かから非難をされると心が傷つくものです。そんな心の傷を負いたくないために、相手を支配し、自己肯定の材料にすることがあります。
確かに傷つくことはなるべくであれば経験したくありませんが、それも人間的な成長していくためには必要なことです。傷つきたくないということを頑なに否定してしまうと、子供のように心は幼く、支配欲の強いという心理的特徴を持った人間になってしまうのかもしれません。
傷ついた時の心の持ち方、対処の方法。人はこれらをきちんと学ぶ必要があるのです。
愛情としての支配欲
相手を支配し、思うがままに操作することが愛情表現の1つだと思っている人がいます。相手が自分の思い通りに動かなければ、激昂することもあるでしょう。
例えば男性の支配欲が強いケースでは、セックスで自己中心的な振る舞いをすることもあります。相手のペースは御構い無しで、作業・処理、性の対象としか女性達を見ていないこともあります。女性心理としてはとても辛いですよね。
愛情の裏返しとは言いますが、それは単なる自信のなさの表れであり、人間的弱さを自分自身で証明しているに他なりません。相手がいなくなると自分を肯定できなくなる。だから、歪んだ愛情・孤独な心理状況を表現してしまうのです。
支配欲が強い人との付き合い方
今度は支配欲が強い人が身近にいる人の視点から考えてみましょう。付き合っている彼氏の支配欲が強い。束縛が強くて、自由がない。そう悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
先に述べたように、支配欲は人間的な弱さの表れです。そのことに対してどう思うかは人それぞれですが、では具体的にどのように付き合っていけばいいのかについて考えていきましょう。
自分の自由について考えてみる
例えば誰かと恋愛関係を結ぶ時、期待する感情は愛、自由、安らぎなどがあると思います。相手から愛と自由をもらい、一緒にいて安らぎがある。そういったことに幸せを感じるものです。
しかし、支配欲の強い人はその反対のことを自分に押し付けてくることがあるでしょう。自由ではなく束縛。安らぎではなく恐怖。心が安らぐことはなく、精神的に強い脅迫を感じることがあるかもしれません。
恋愛では自由を感じなければ、そこに愛はありません。自分が不安に思っている時点でそれは愛ではなく、相手の不安から発生した支配欲でしょう。このようなタイプの付き合い方をしているのであれば、客観的に自分を見つめ、考え直す必要があるでしょう。
依存症を発症していると、そこから抜け出すのは難しくなります。自分がどうなりたいのか。どんな関係性を結びたいのか。これを考え直す必要があるでしょう。
自分を肯定する
相手の支配欲が自分の存在を証明してくれるという人もいます。自分に時間を使ってくれて、叱ってくれる。こんな自分でも見放さずに、付き合ってくれている。たとえ、それが人と違う付き合い方だとしても…
支配欲を元にした恋愛関係は、周囲から見ればいびつに見えます。どちらも精神的に不安定で、幸せや安らぎというものを感じることはありません。しかし、当の本人たちはそれに気づきません。
もし、相手の支配欲に悩まされているのであれば、まずは自分を肯定することから始めてみてください。自分に自信がないから、自分を肯定してくれる人と付き合う。これはある意味では自分も支配欲の強い人間と同じ心理なのかもしれません。
自分の考えを持つ
支配欲の強い相手の価値観を軸にしてしまうと、自分を失うことにつながります。相手が行ったこと、言ったことは正しいと感じると、その考え方に支配されていまします。
しかし、相手の考え方に賛同できなかったり、葛藤が生じると、精神的に強いストレスが生まれます。心に強い負荷がかかりますから、四六時中思い悩むことになるでしょう。
大切なのは、自分の考え方を持つこと。そしてそれに自信を持つことでしょう。たとえその考え方を否定されても、自分の意見として持ち続けることは、自己肯定感を強める第一歩となるはずです。
テクニックとして悪用されてしまう
支配欲はしばし、相手に飴と鞭を使う行為でもあります。 相手にある種の役割を与えることで、相手に安心を与えることもできます。
例えば支配欲の強い男性が、女性に対して役割を与えると、その役割を完遂しようと女性は奮闘します。その女性の心理の裏側には相手に認められたいという気持ちがあります。
誰かから認められたい、承認されたいという欲求は自然なことです。しかし、この場合、男性が意図して支配欲を使い、女性をコントロールしていることがあります。
時には女性のキャパシティを超えたことを要求された時、女性は無理をして行動してしまうことがあるかもしれません。心身ともに傷ついてしまうこともあるでしょう。
ただ、そこでも女性は自分自身を責めてしまうことがあります。それがより状況を複雑にしていくことがあります。抜け出すためには周囲の力を借りる他ないでしょう。
人間関係を円滑にする方法
生活の中の様々なシーンにおいて、支配欲のある人と付き合うことがあるかもしれません。では、そういった人とはどうやって付き合っていけばいいのでしょうか。恋愛や仕事についてみていくことにしましょう。
恋愛での付き合い方
男女の恋愛において支配欲の強い人と付き合っているのであれば、様々な選択肢があります。その人と付き合い続けるのか、それとも別れるのか。どちらにせよ決断が必要です。
付き合い続けることに対して、自分の心に不安があるのであれば、付き合っている意味はないのかもしれません。ダメ男とわかっているけど、ズルズルと付き合い続けている。そういった人は、幸せを感じることができず、日常生活を暗くしてしまうこともあるでしょう。
一方で別れることを考えた時、そこに少しでも安らぎがあるのであれば、選択してみる価値はあると思います。支配欲が強い人は別れるのにも苦労しますが、心の自由を感じるはずです。
恋愛が終わったとしても、人との出会いというのは行動していれば次から次へと現れます。辛い状況であるのなら、決断も必要かもしれませんね。
仕事上ので付き合い方
一方で恋愛関係と違って、人間関係をスッパリと切れないのが仕事です。どこの職場にも支配欲が強い人はいるものですが、そういった人とはどういう風に付き合えばいいのでしょうか。
基本的なスタンスとしては、相手をおだてることに尽きると思います。相手の期待している言葉や行動は、自分への肯定的な言動ですから、それを1つ1つ実践していくしかありません。
そのような行動をしている時、自分の心に違和感を感じるかもしれませんが、そこは心を落ち着けて対処するようにしましょう。表は相手をおだてて、心の中では別のことを思うようにするのです。
人付き合いというのはどの世界でもある程度は許容しなければいけないのかもしれません。もちろん、モラルハラスメントによって、自分にあまりに負担がかかり、精神を壊してしまうようであれば、それは考えものです。アナタ自身の心の健康も考えるようにしてください。
支配欲の強い人には人望は集まらない
自分の思い通りに人を動かしたい。突き詰めると、人をモノのように扱ってしまう人に人望は集まらないでしょう。例え能力があっても。それは仕事でも恋愛でも共通して言えることだと思います。
恋愛であれば継続的な関係を結ぶことは難しいでしょう。たとえモテたとしても、その後の関係は崩壊に向かうはずです。どちらも心が満たされない状態ですから、生きづらさを感じます。
仕事であれば、例えば支配欲の強い上司がなにか失敗した時、自分がカバーをしたいと思うことはないでしょう。普段からきついことを言われたり、されたりしていれば、人として嫌だと思うのは当たり前のことでしょう。
人望というのはそういった失敗の時、困った時に顕著に現れます。支配欲を直すというのは本人が自覚して、直そうと決意しない限り直らないでしょう。周囲が注意すると反抗するので、それもまた厄介なものです。
まとめ
男性、女性に限らず、支配欲を持っている人がいます。それはこれまで積み上げてきた経験、特に恋愛経験が関係しているのかもしれませんね。
好きな人であったり、大切な人を誰よりも独占したいという気持ちはある意味では自然なことですが、それをこじらせてしまうと支配欲となります。相手も自分も辛い状況を招いてしまいます。
そして、その欲が暴走してしまったり、他人に対して悪いことをしてしまうことがあると、それはただの迷惑な人です。勘違い男程度であれば良いですが、ひどくなると仕事はうまくいかず、恋愛も失敗することが多いでしょう。
周囲にそういう人がいるときの対処、もしくは自分にその傾向があるときは、十分に注意する必要があるでしょう。
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