錐体外路症状とは?原因・症状・治療法を知っておこう!

錐体外路症状についてご存知でしょうか?錐体外路症状とは、パーキンソン病の様な症状を起こす病気ですが、これが薬の副作用から起こっています。

錐体外路症状とは一体どのような病気で、どの様な薬を飲むとそのような症状が出るのかについて見てみましたので、ご一緒に見てみましょう。

錐体外路症状とは

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錐体外路症状(EPS:ExtraPyramidal Symptom)とは、大脳皮質運動野から、抹消運動に指令をだす神経路のうち、錐体路以外の通り道の錐体外路の場所に、異常が起きたことによって生じる症状の総合の種類の名前です。

錐体外路症状には薬剤性パーキンソニズム・ジスキネジア・ジストニア・アカシジア・パーキンソン様症状などがあります。

パーキンソン病の症状や抗精神病薬の、副作用として現れることが有ります。動作が鈍くなる筋肉の緊張の過剰によるものと、動作が多くなる筋肉の緊張の、低下によって起こるものとあります。

微調整を錐体外路中枢や大脳基底核、視床腹部、脳幹などとしながら、骨格筋に伝える経路となっていて、反射やバランスなどの不随運動をスムーズに行えるのは、この錐体外路系がうまくコントロールしているからなのです。

錐体外路系に障害が生じると、動作が緩慢になって振戦(ふるえ)筋硬直などの症状が起こり、これらはパーキンソン病の症状と同じです。

錐体外路症状の原因

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それでは錐体外路症状を引き起こす原因は、一体どこにあるのでしょうか?錐体外路症状を引き起こすお薬に、向精神薬があります。

向精神薬は精神に作用するお薬です。向精神薬の中でも、錐体外路症状は特に抗精神病薬に多く起こりますが、この抗精神病薬は主に統合失調症に使用される治療薬です。

お薬の副作用からパーキンソンニズムの症状が出てきますが、命に関わる重篤な症状ではありませんが、日常生活の質を落とす症状であり、薬の副作用が出る前に、このことに注意が必要となります。

錐体外路は反射やバランスといった不随運動に関係して、大脳の基底核の部位で調整されている経路です。神経経路は大脳皮質から指令を受け、大脳基底核で情報処理され視床と介してまた大脳皮質に戻す、大脳基底核ループとともに、脳幹にも行われています。

私たちが日ごろスムーズに動作や運動ができるのは、この錐体外路が調整してくれているので、体のバランスや細かな動作までできるのです。

パーキンソン病と錐体外路症状

パーキンソン病はこの錐体外路が、異常を起こす疾患です。パーキンソン病を発症すると反射や筋緊張のバランスが取れなくて、震えや、転びやすく動作が緩慢になります。

この錐体外路に関わるドーパミンという神経伝達物質は、パーキンソン病の場合、ドーパミンを分泌する中脳黒色の細胞が、著しく少なくなっています。

パーキンソン病については、パーキンソン病の初期症状とは?治療方法も紹介!を読んでおきましょう。

パーキンソン病以外でも、ドーパミンが錐体外路に障害を受け少なくなる症状を、錐体外路症状と言います。

錐体外路症状と抗精神病薬

精神科でみられるお薬で、一番多いのがこの抗精神病薬です。統合失調症の治療や、双極性障害の治療に、このお薬が使用される可能性が多いのです。

その理由は統合失調症や双極性障害は、ドーパミンの過剰が原因の一因である、と言われているため、この薬剤が圧倒的に使用されています。

抗うつ剤でも錐体外路症状を生じる事が稀にありますが、抗精神病薬に比べるとはるかに少ないです。抗うつ剤で錐体外路症状を生じるのは、これもドーパミンをブロックする抗うつ剤で発症します。

その他の錐体外路症状を起こすお薬

また制吐剤(メトクロプラミド・プリンペラン)でもドーパミンに作用する薬があり、制吐剤でも起こることが有ります。また抗アレルギー薬のオキサトミド(セルテクト)なども錐体外路症状を引き起こすことがあります。

主に抗精神病薬が多いですが、その他に三環系の抗うつ薬、不安薬、安定剤、ベンザミド系吐き止め、オキサトミドの抗アレルギー薬、バルプロ酸の抗てんかん薬、メチルドパの一部の降圧薬などが錐体外路症状を引き起こします。また胃腸薬でもあります。

★不随運動とは自然に動く動作です。自分が意識して動く動作を随意運動と言います。

抗精神病薬の副作用

抗精神病薬の主な薬の働きかけは、ドーパミン系ニュートロンの病的活動を抑制して、ドーパミン・レセプターをブロックして、神経伝達の流れを止めます。

この抗精神病薬の薬の副作用としまして、病気以外の箇所の神経系に、治療薬の作用が働くために、副作用が現われます。

主な副作用は日中の睡魔、口の渇き、起立性低血圧、めまい、便秘・排尿障害、体重増加、不整脈、高血糖、性機能低下などがあります。

薬が新しいほど副作用は少なく、錐体外路症状は第一世代抗精神病薬でみられた症状は、第二世代抗精神病薬では、ほとんど見られなくなりました。

副作用は個人的に違いがある

しかし副作用は個人的要因が大きいので、投与開始や投与量・投与期間・治療薬の感受性等々複雑に絡み合っていますので、頻度は少ないですが、悪性症候群などの重篤な症状が出る人もいますので、注意をして使用しなければなりません。

ブチロフェノン系

ブチロフェノン系が特に、錐体外路症状を引き起こしやすいです。これはブチロフェノン系がドーパミンを、集中的にブロックする薬なので、パーキンソン病と同じような、症状がでるのです。

ドクマチール

またドクマチール(スルピリド)という第一世代に属さない薬がありますが、これもドーパミンをブロックするお薬です。ドグマチールは統合失調症・双極性障害・うつ病などに用いられるお薬ですが、これもドーパミンをブロックするお薬なので、錐体外路症状を引き起こしたりします。

第二世代の開発

1990年代頃に第一世代の副作用が問題となり、副作用を軽減させたお薬の第二世代が、開発されることになり、近年は第二世代のお薬が可なり利用されています。

第2世代の治療薬はドーパミンのブロックが弱くなり、錐体外路症状を起こす頻度は可なり少なくなりました。またドーパミンをブロックするとともに、セロトニンをブロックする働きがあり、ドーパミンのブロックを緩和することができて、錐体外路症状を極端に少なくすることができました。

第二世代の中でSDAセロトニン・ドーパミン拮抗薬は、比較的ドーパミンに集中的に作用する働きのある薬なので、錐体外路症状を起こすことがあります。

錐体外路症状の症状

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錐体外路症状は「錐体路外路」の神経経路の障害によって起こります。この錐体外路は脳の大脳基底核から大脳皮質の神経ルート、大脳基底核ループにおいて起こる運動障害です。

この錐体外路に障害が起こると、運動系の運動減少や運動過多の症状が現われます。これはドーパミン2D受容体が抑制に働くので、過度に遮断されるために起こってきます。

その場合の症状として、運動減退の症状の場合、筋緊張亢進ー運動減退症候群が起こり、筋肉の固縮や無動の症状が起こります。

錐体外路症状が起こる主な症状

また運動過多の症状の場合は、筋緊張低下ー運動亢進症候群が起こり、振戦(ふるえ)、舞踏運動、片側バリズム、アテトーゼ、ジストニアなどの症状が引き起こされます。

この錐体外路症状が起こるのは、神経系のお薬による副作用で発症します。手の震え、身体のこわばり、歩行困難、じっとしていられない等身体のバランスがとりずらく、手足が動かしずらい症状が出てきます。

大脳基底核の障害の錐体外路症状でも、運動失調を起こすこともありますが、錐体外路症状は不随運動の方が多いので、運動失調は目立ちにくくなります。脊髄性運動失調は深部感覚や平均感覚が失われます。

体性運動系の障害を錐体外路症状は示しますが、本来の錐体外路症状を厳密にいうと、その他運動系や非運動系でも見られます。

パーキンソニズム

パーキンソン病はドーパミンが不足する病気です。抗精神病薬はこのドーパミンが働けない状態にしますので、パーキンソン病と似た症状が出てきます。これは薬がその患者さんにとって、多すぎる事を意味します。

ドーパミンは身体の潤滑油の、様な役割をする神経伝達物質なので、これが異常をきたすと、筋肉が硬くなったり膠着したり、無表情になったりします。

薬剤性パーキンソン病の方の方が進行が速いです。突進現象は少なく、左右差は少なく対称性の事が多く、姿勢時・動作時に振戦が出やすいです。ジスキネジアやアカシジアを伴うことが多くて、抗パーキンソン病薬の効き目はありません。

パーキンソン病の動作緩慢は、眼球運動系にも認められました。この原因は大脳皮質ー大脳基底核ループによるものと判明し、体の筋肉が持続的にこわばる緊張亢進があり、不随運動による運動亢進を伴うことも多いです。

★パーキンソン病と同じような症状を示すものを、パーキンソンニズムと言います。

アカシジア

アカシジアとはじっとして、いられなくなる症状で、静座ができません。貧乏ゆすりが酷くなったり、用事がないのに同じところを、せかせかと歩き回ったりします。

寝ているときは足がむずむずしたり、テレビを見ていても、同じところに座る事が出来なくて場所を何度も変えます。

薬と不安な心理が原因

幻想や妄想を和らげる薬を使用すると、このような副作用が出てきますが、薬だけが原因ではなく、気持ちが不安だったり、焦っているときに良くこのような症状が出てきますので、患者さんの不安定な心理を、ほぐすような治療が必要です。

足がむずむずしたり、じっとしていられなくて、同じところをうろうろ歩き回ったり、する症状が出てくると、アカシジアですが、本人は気が付くことが少なく、家族や周りの人が指摘して、初めて気が付く人も多いです。

特に高齢者になってくると、このような症状が多く見受けられます。これは沢山の薬を服用する高齢者が飲んでいる薬の中に、ドーパミンを遮断する薬などがある為です。

ジスキネジア

ジスキネジアの症状は、口が勝手に動いたり、手足が勝手に動く症状です。抗精神病薬を長い期間飲んでいると、顔の表情や、口、手、足、顎、舌などが勝手に、自分の意志とは無関係に動く症状が出てきます。

これは数か月、数年たってから現われてくる症状で、遅発生ジスキネジアと言われて、薬をやめても後遺症として残る事がありますので、早期に気が付くことが大切です。

また舞踏病と呼ばれるのに似た症状で、異常な筋緊張や異常姿勢などが、見られることが有ります。

ジストニア

特に首筋の筋肉の片側が収縮し、左右、後ろに傾いて、元に戻しずらくなります。目の動きを調節する筋肉が収縮することもあり、その為下が見えずらくなってしまったり、首がひきつられた感じになります。

また舌がこわばって話しずらくなり、症状は個人個人違いがありますが、非常に奇妙な筋肉の動きがあるので、てんかんと間違える人もいます。

患者さんや家族はショックをうけて薬を嫌がりますが、これは一時的で、後遺症に残らないので、薬をきちんと処方されたら飲んだ方が良いです。症状は医師に報告する事が大切です。

抗精神病薬の副作用で、ジストニア(筋緊張異常症)があります。これは第1世代の抗精神病薬の中でもブチロフェノン系が問題になっていましたが、第2世代でも高容量・長期使用をすると同じ症状が出ますので、注意しないといけません。

ジストニアは錐体外路症状(EPS)の神経症状の1つで、緊張異常症ともいわれ錐体外路症状の一つの症状で、筋肉が固まったり、痙攣が起きたりする症状がでてきます。

脊髄性運動失調

脊髄性運動失調は床を見ながら、パタパタ歩くのが特徴で、閉眼すると益々症状が悪くなり、振戦(震え)はとても大きいです。

深部感覚や平均感覚が失われ、位置覚・運動覚・筋覚の障害により起こってきます。この病気で有名なのが、梅毒が原因で30~50歳で発症する脊髄癆があります。

錐体外路症状と運動失調検査

脳視床下部

錐体外路症状の検査は、運動失調の検査の一つでもあります、患者を検査者の前に立たせ、人差し指で患者は検査者の鼻を触ってもらいます。

その後自分の鼻を触って貰うのですが、小脳疾患に異常があると、検査者の指から鼻まで、指を移動させる間に、向きを変える事が出来ません。

錐体外路に異常があると、振戦が上げられますが、振戦は運動失調ではありませんが、運動失調検査の時に、振戦が良く見られ、小脳・錐体外路が障害を受けたときに、見られる特徴的な症状です。

錐体外路症状の治療

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治療はパーキンソン薬の併用で対処します。抗パーキンソン薬(ビペリデン・プロメタジン)によって改善することが出来ます。

  • 前よりも動作が遅くなった
  • 前よりも声が小さくなった
  • 表情が少なくなって、無表情の時が多い
  • 歩き方がふらふらする
  • 小刻み歩行となり、歩幅が狭くなった
  • 最初の一歩目が出せない
  • 手が震える
  • 止まれなくて走り出すことがある
  • 手足が固い

などの症状が出たら、早急に医師に報告して、対処することが大切です。これらの症状は薬の副作用によるものですので、早急に飲んでいる薬の減薬が必要となります。

錐体外路症状が出た時の対処

精神病の薬で錐体外路症状が出た場合、原因薬の特定を行います。そしてそのお薬を減薬や変更を行います。

沢山の薬を併用してない場合は、大体どのお薬で錐体外路症状が出ているのか、原因薬が分かりますので、まず症状が出た場合は、担当医に報告し対処を考えてもらいます。

原因薬が分かっても、そのお薬を使わないと、今までの病気が悪化してしまう場合、軽症なら様子見をみます。錐体外路症状の中には、原因薬が分かり投与を中止しても、そのまま放置すると、後遺症が残ってしまう場合があるので、必ず医師の指示のもとに行ってください。

どうしても症状が改善しない場合

錐体外路症状が出現したら、抗パーキンソン病薬を投与するのが一般的です。抗コリン性パーキンソン病治療薬の投与がありますが、抗コリン薬は中枢神経以外にも作用して、思わぬ二次副作用を起こしてしまいます。

ですから抗パーキンソン病薬は、使わないで越したことはありません。どうしても使う場合は減薬、変更、あらゆることを試した最後の結果として、使うことが必要です。なぜなら抗コリンは体の、あらゆる処に影響をもたらすからです。

アセチルコリンを抑えた影響は、全身に及ぶことを頭において、抗パーキンソン病薬は副作用の、最後の最後の使用にする事が大事です。

また抗パーキンソン病薬を使っていて、その止方も一挙に止めると、コリン性作動リバウンド症候群という病気にかかりますので、止める時も注意して徐々に少なくして、いく方法を取る事が大切です。

まとめ

如何でしたでしょうか?錐体外路症状について見てきましたが、薬剤によって可なり酷い副作用が伴っています。後遺症が残らないと言っても、長い間その症状が消えない時もあります。

薬剤は本当に怖いと思っていましたが、ここまで副作用が及んでいるとは、知らなかったです。皆様もお薬の副作用には十分気を付けてくださいね。

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