風邪が治ったにも関わらず、長期的に咳が続くことはありませんか?数週間の間、咳の症状が続く場合は、咳喘息という病気の可能性が考えられます。
原因は様々なものが考えられ、必ずしも咳喘息とは限らないため、呼吸器内科もしくは内科の専門医のいる病院で診察を受けてみましょう。では、咳喘息とはどういった病気なのか、原因や治療法にはどういったものがあるのかを紹介していきます。
咳喘息の原因
咳喘息は、様々な刺激によって喉の状態が過敏になり、呼吸をする際に酸素や二酸化炭素といった空気が通る道である気道に収縮が生じます。
気道が収縮するということは、気道が狭くなるということです。この反応によって、炎症や咳といった発作を引き起こします。では、どういったものが原因となるのかを紹介していきます。
気道の収縮
以下に記述するものが原因となって咳が誘発されますが、まず、原因因子によってどのように咳の発作が発生するかを簡単に説明します。
原因因子によって気道が収縮し、狭くなります。空気の通り道である気管支も狭くなり、好酸球が増加します。好酸球は白血球に含まれています。白血球は炎症反応に関与し、アレルギーも関わってきます。好酸球の酸球性炎症によって咳喘息の発作が生じます。
アレルギー物質によるアレルギー反応
花粉、埃(ほこり)、ダニ、ハウスダスト、アレルギー(食べ物など全てを含む)にといったアレルゲンよって喉に刺激が入り、気道が収縮します。
アレルゲンとは、アレルギー反応を引き起こす物質全般のことを指します。
その他の原因
煙草の煙や精神的・身体的ストレス、飲酒によるアルコール過多、湯気、香水や線香、周囲の温度の変化などが挙げられます。
また、過労といった過剰な運動や運動不足によって身体の抵抗力や免疫力が低下していると発症しやすいです。栄養バランスが崩れて、偏食や栄養不足となっても、自己免疫能力が低下し、身体の抵抗力も減り、病気を発症しやすくなります。
その他の疾患に併発して発症する
咳喘息の咳は、他の疾患に伴って生じることがあります。特に併発して起きやすい病気は、風邪です。風邪をひいて数週間以上、咳の症状が続くと、慢性化していると考えられます。これが続けば咳喘息の可能性は高くなります。
また、花粉症やダニの影響だけではなく、鼻炎や副鼻腔炎、逆流性食道炎といった病気の炎症反応が原因となって、長期的に咳が誘発されることがあります。
咳喘息の症状
ここでは、咳喘息の主な症状や、その発症率について説明をします。人によって症状は様々であり、何らかの疾患に併発して起きている可能性もあります。
ここに挙げられる症状が全てではない可能性もあり、あくまで参考とし、自身には本当はどういった症状・疾患をもっていて、どういった検査や治療が必要なのか、正しく知るには専門医に診てもらう必要があります。
発症率
罹患率は年々、増加傾向にあり、特に女性に多い傾向があります。
咳喘息は、アレルギー反応によって気道が炎症を引きこすことが多く、特に、アレルギーを保有している患者に多いとされています。
咳喘息特有の咳症状
咳喘息の特徴として、1ヶ月以上の空咳(からぜき)が続くことが挙げられます。重症化すると、咳は1年以上続くことがあります。
特に、夜間~明け方にかけて激しい咳の発作が出現します。夜間に激しくなるのは、身体を横にすることで痰が排出しにくい姿勢となり、喉に痰が溜まりやすくなります。これにより、咳が誘発されやすくなります。
咳の発作が強い場合は、胸痛や嘔吐を生じ、ひどい時には失神をも引き起こします場合があります。
喉の異常
喉にイガイガとした異常な感覚を伴うことがあります。長話をしたり、口を開けたまま呼吸をしたりしていると、喉が乾燥します。
喉が乾燥すると喉の粘膜が傷ついたり炎症を引き起こし、感染症にかかる可能性があるため、更に異常な感覚が生じやすくなります。
喘息との違い
喘息と同様の症状が見られるものの、喘息の特徴であるゼイゼイ、ヒューヒューとした喘鳴や呼吸困難といった異常な呼吸はみられません。聴診器を当てても、そういった呼吸音は認められません。痰(たん)や発熱もほとんど認めません。
ちなみに、喘息の前段階に咳喘息があり、咳喘息を放置してしまうと病気が咳喘息へ進行する可能性があります。
咳喘息の診断
最初に、医師による問診が行われます。問診からは、これまでの病歴の確認や症状の確認がされ、その後の検査や治療の参考材料とし、統合して診断をしていきます。
小さな症状も全て見落としがないように、自身の身体の情報を医師に伝えましょう。
咳喘息の診断基準
咳喘息の診断基準は、7つあります。この7つ全てを満たした場合に、咳喘息と診断されます。なお、簡易的に診断する視方として、診断基準の項目1と5の双方を満たすことで、咳喘息と診断することがあります。
以下、1~7の項目が診断基準となります。
- 喘鳴(ぜいめい)を伴わない咳嗽が8週間以上持続する。聴診器を当てても、wheeze(聴診器を当てた際に起こるゼイゼイ、ヒューヒューといった呼吸音) が鳴らない。
- 喘鳴、呼吸困難などを伴う喘息の既往がない(これまでに患っていない)。
- 8週間以内に上気道炎(風邪)に罹患していない。
- 気道過敏性の亢進。
- 気管支拡張薬が有効(気管支拡張薬の効果は、β₂刺激薬の経口と吸入による評価が望ましいとします。気管支拡張薬の効果の判定は客観的な証明によることが望ましいとしています) 。
- 咳感受性は亢進していない(咳を引き起こすアレルギー物質に反応して、咳を引き起こす)。(「咳感受性が亢進していない」という報告と、「治療によって低下する」という報告がされています。しかし、純粋な咳喘息では亢進していないとされています。 )
- 胸部 X 線検査(レントゲン検査)で異常を認めない。
血液検査
血液検査にて、咳喘息の原因となるハウスダストやカビ、ダニ、花粉といった物質や生物に対するアレルギー反応の状態を調べます。
また、咳喘息によって多く出現する症状である痰に関しても調べることができます。咳喘息を発症すると、痰の中の好中球が多くなります。好中球とは、白血球の一種であり、炎症反応に関与します。つまり、アレルギー反応にも関与する細胞であり、痰の中で分泌される物質です。
レントゲン検査(単純X線検査)
胸部のレントゲン検査を行って肺や気管支を画像に写し出し、どういった状態かを確認します。
画像が白く写る部分がある等の異常が見られない場合は、咳喘息の可能性が高いです。
肺機能検査
肺機能検査では、呼気(こき)量の制限が見られます。
呼気量とは、空気を吐き出す量のことを言います。咳が出すために、吸気する勢いはありますが、空気を吐き出しにくくなります。
咳喘息の治療法
咳が続くと思ったら、一度受診をしてみましょう。病院で診察し、治療してもらう他に、自身でも日常生活上で注意すべき点には注意をしていきましょう。
咳喘息は、自然治癒することもあれば、治療を途中で止めると再発する可能性もあり、進行して喘息になることがあります。症状が軽快しても注意をしましょう。
では、病院ではどういった治療法があるのか、何の科を受診すると良いのか、自分自身はどういったことに注意をしていくと良いのかについて説明をしていきます。
受診する科
咳喘息は呼吸器系、内科系になるので、受診する科は、呼吸器科、呼吸器内科、内科の専門医がいる科を受診しましょう。
鼻や喉が侵されたり、アレルギー物質が原因であったりするため、耳鼻咽頭科やアレルギー科も対応可能です。子供の場合は、小児科でも診てもらうことができます。
優先される治療は吸入治療
喘息に移行することを防止するために、吸入ステロイド薬を利用した吸入治療を継続していきます。この薬は、持続的な咳が続く場合や、長時間作用型の刺激薬やその他の処方薬の効果が認められない場合に適用されます。吸入薬は、吸入器を用いて吸引します。抗炎症作用の効果が期待されます。
ステロイド薬の吸入治療薬を用いると、気道に直接作用するため、声が枯れたり、口腔カンジダ症といった合併症を併発する可能性があります。
口腔カンジダ症とは、カンジダ菌というカビの一種が、口腔内に生息しており、舌や口腔内の粘膜を白くするといった症状を見せます。吸入後にうがいをすると、カンジダ症を防止することができます。
経口ステロイド薬
吸入ステロイド薬の刺激が強く反応して、更に咳が誘発される場合や、咳喘息の症状が急変して重症化すると、処方される場合があります。
副作用として、満月様顔貌(ムーンフェイス)や副腎機能不全などを合併する可能性があります。満月様顔貌とは、皮下脂肪が沈着して顔が丸く膨らむ病気です。
刺激薬(気管支拡張薬)
長時間作用型の刺激薬やデオフィリン薬、といった気管支拡張薬、抗アレルギー薬を用いることで、咳を抑制する効果が期待できます。気管支拡張剤は、気管支を拡張させるため、空気の通り道が広くなり、呼吸が行いやすくなります。
しかし、副作用として気道が更に敏感になる可能性があります。気管支拡張薬は、吸入ステロイド薬や抗アレルギー薬と併用して長期的に使用されること場合があります。
気管支拡張薬+吸入ステロイド薬
「合剤」と言って、気管支拡張薬と吸入ステロイド薬の双方を合わせた薬があります。
これには、アドエアやシムビコートといった薬があります。
その他の炎症を抑制する薬
刺激薬やデオフィリン薬といった気管支拡張薬は、これらの利用によって咳が消失する場合に継続されますが、それ以外にも併用して服用される薬があります。
それは、ヒスタミン薬といった抗炎症剤です。また、ロイコトリエン拮抗薬といった、拮抗薬も使用されます。ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬は、比較的、咳喘息が軽度の場合に使用されます。これは、なかなか効果が得られないと、吸入ステロイドが使用されます。
ヒスタミン薬もロイコトリエン拮抗薬も、双方とも、鼻炎やアレルギー性鼻炎といったアレルギー性のものに特に効果が得られます。
適用しそうで、しない薬
咳が出ると言って、風邪薬や咳止め薬、抗生物質といった、風邪症状の際に処方される薬を服用しても、咳喘息ではほとんど効果が得られません。
日常生活上で可能な予防法と対策法
病院で行う治療以外にも、セルフケアを行って、自分自身が予防や対策に心がけることが大切です。どういった事を行うと良いのか、幾つか紹介をしていきます。
・栄養バランスに気をつける
咳喘息の原因にはアレルギーの影響が挙げられています。食物アレルギーがある方はそれに気をつけ、アレルギーに反応しにくい身体作りのために、栄養バランスのとれた食事をするようにしましょう。
・飲酒は控える
お酒にはアルコールが含まれています。飲酒をすることで、体内にはアセトアルデヒドという物質が蓄積されやすくなる場合があります。
このアセトアルデヒドは、気道の収縮を促進する作用があり、咳を誘発します。日本人は、外国人と比べ、比較的アセトアルデヒドが分解されにくいです。つまり、体外に排出されにくいため、飲酒をするとこの物質が体内に蓄積されやすい体質にあります。日本人はお酒が弱い人が多いというのは、こういうことから言われます。もちろん、アセトアルデヒドが蓄積されにくい体質の方もいるため、全ての人がアセトアルデヒドの影響を受けやすいというわけではありません。
しかし、できるだけ飲酒を控えることには越したことはないです。
・煙草の煙には注意をする(特に副流煙)
煙草の煙は気管支を刺激し、咳を誘発しやすくし、咳をする頻度を増やします。喫煙者は能動喫煙、非喫煙者で副流煙を吸い込む場合は受動喫煙と言います。
この能動喫煙者は、煙草のフィルターを通してから煙を吸う為、吸う煙の成分は薄くなります。受動喫煙をする人の場合は、煙草のフィルターを通さずに、煙草の火がついている先端から出てくる煙を吸うため、煙の成分が強いものを吸っていることになります。このことより、受動喫煙者の方が煙草の強い影響を受けることがわかります。
煙草の煙は咳喘息を悪化させるため、特に喫煙者は周囲に気を配り、なるべく喫煙をしないようにしましょう。
・ストレスを発散する
ストレスは気道を過敏にし、咳喘息を誘発する可能性があります。過労や睡眠不足、栄養バランスの崩れがないようにすることが大切です。
休養はしっかりとり、十分な睡眠と栄養バランスのとれた食事をしましょう。また、運動を適度に行って免疫力や抵抗力をつけて咳喘息の予防に心がけましょう。
・気温の変化に注意をする
日本は四季があり、気温の変化が激しい国です。気温が大きく変動すると咳喘息が誘発される可能性があります。
あらゆる場面で、気温の変化に対応できるように前もって準備しておくと良いでしょう。室内では、エアコンや扇風機、ストーブ、電気カーペット等といった電化製品を利用することがありますが、外と温度が大きく変わることがあります。こういった変化にも注意しましょう。
・他の病気にならないように注意をする
風邪やインフルエンザといった病気になると、気道の粘膜に炎症が生じます。
これによって、気道の収縮が促進され、咳喘息を誘発する可能性があります。外に出る時や、室内でも乾燥している時にはマスクを装着し、帰宅時や食事前には手洗いやうがいをするようにしましょう。また、口呼吸をする人は、睡眠時に口が開いたままになりやすく、喉が炎症を引き起こしやすくなります。
すると、炎症部位が感染症を引き起こすなどして風邪や咳を誘発する可能性が出てきます。こういった事を予防するためにも、睡眠時に口を覆うネックウォーマーやマスクを装着することをオススメします。
・環境設定に注意をする
アレルギーの原因因子となるハウスダストやカビ、花粉、ペットの毛といったアレルゲンを徹底して対応することが大切です。
細目に、布団や枕、毛布、シーツといった寝具を天日干ししたり、クリーニングに出したりするといった工夫をすると良いでしょう。頻度としては、最低1週間に1回です。自分がいる空間も毎日掃除し、服やアウターも細目に洗濯するようにしましょう。
・寝る時は少し状態を起こす(頭部を起こす)
原因でも述べたように、身体を横にすると痰が喉に溜まりやすく、咳を誘発しやすくなります。
頭部を胸部よりも高い位置になるように状態を少し起こした状態で寝ると、喉が下方向に真っすぐとなるため、痰が絡みにくくなります。夜間に咳が強くなる人は、試し頭部を少し起こした状態で寝てみると良いでしょう。高い位置にもってくるには、大きめのクッションを頭部下に敷くと良いでしょう。
ここでの注意点は、首が曲がりすぎると、気道が閉塞されて呼吸が妨げられる点です。これには注意をしてセッティングを行うようにしましょう。
まとめ
咳喘息は、咳が慢性化して生じます。どんな病気もそうですが、一度、慢性化してしまうとなかなか治癒は困難です。
咳が続いた時、持っている、余っている風邪薬で試しに対応をする、といった対応ではなく、専門医に診てもらうようにしましょう。
早期発見、早期治療が大切です。咳症状が見られる呼吸器の疾患には様々なものがあり、ひょっとすると、全く違う病気であるという可能性も無きにしも有らずです。十分に注意をしましょう。
関連記事として、
これらの記事を読んでおきましょう。