昼間はなんともないのに、夜ベッドに入ると咳がひどくなる・・・深夜にむせるような咳が出て苦しい・・・そんな症状は喘息特有です。喘息は子どもの病気と思われがちですが、40歳を過ぎてから喘息になる人が半数を占めます。
次にいつ発作が来るんだろうかという不安から、うつ病を併発することも少なくありません。子どもの頃から喘息の人では、もう慣れてしまっているからと病院に行かず放置していることもあります。これからの人生と大切な人のためにも、大人の喘息について今一度、考えてみませんか?
喘息の基礎知識について
喘息という言葉はよく使われますが、どういう疾患かという基礎的なことは意外と知らないこともあるのではないでしょうか?
まずは対峙すべき相手=喘息のことを正しく把握しておきましょう。
喘息は正式名称ではない
私たちが喘息というときは、気管支喘息を指していることが一般的です。喘息という言葉は、2つの異なる病気の正式疾患を略しています。1つが気管支喘息、もう1つは心臓喘息です。
心臓喘息というのは、急性心不全により気道収縮した状態で、夜寝ているときに突然呼吸困難になります。気管支喘息とは別の病気で、早期に適切な処置が必要な危険な疾患です。この記事においては、喘息=気管支喘息として説明していきます。
喘息(気管支喘息)はどんな病気?
喘息(気管支喘息)は、大人と子供で定義が少し異なります。大人の場合の喘息は、肺に通じる空気の通り道である気道の炎症と気流制限により、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難を伴う病気と定義されています。喘名とは、ぜいぜい、ひゅうひゅうという呼吸音で、喘息の人が咳をしているときに起こりやすい音です。
子どもの場合の喘息は、アレルギーや生活環境の中での刺激物質により気道が過敏に反応して、胸が苦しくなり、さらに突然咳が出て喘名も伴って息苦しくなる病気で、繰り返し起こることが特徴です。
喘息で死に至ることも少なくない
喘息で重症の発作を起こすと、死に至ることは決して少なくありません。年間約6000人が喘息の発作により亡くなっています。
喘息には重度から軽度までありますが、15~29歳では、普段は軽度や中度と診断されている患者さんでも、亡くなる人が増えているという怖いデータもあります。「いつものことだから」「もう大人だし大丈夫」という過信が、悲劇を招いてしまうこともあるのです。
喘息持ちだけど最近病院に行ってないし何もしていない、パートナーや家族が喘息で苦しそうな咳をしても薬などで対処していないと感じたら、リスクのある病気だということを思い出して行動を促すようにしてください。
赤ちゃんの喘息が急増
今までは乳幼児の喘息はまれなことでしたが、最近急増していることが問題視されています。しかも原因は不明とされています。
赤ちゃん期を卒業した子供の喘息も増えているので、お子さんの咳が長引くときは、「熱もないし咳だけだから」と甘く考えて見過ごすことのないように注意が必要です。
喘息が起こる原因と症状
咳が出て苦しくて、時に死につながるリスクもある喘息の原因は、大きく分けて2種類あります。
アレルギーによる喘息
喘息の多くは、アレルギー性のものと考えられています。
アトピーを持っているなど、生まれつきアレルギー反応を起こしやすい体質の人は、そのアレルギーを引き起こすアレルゲンが体内に入ることで喘息も招きやすいのです。アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎を併発している喘息患者さんも多いです。原因となるアレルゲンは人それぞれですが、ダニ、チリ、カビ、花粉、動物の毛や特定の食品、薬であることもあります。
アレルギー性の喘息の場合、突然息苦しくなったり、咳や喘息特有のぜいぜい、ひゅうひゅういう呼吸音になることが繰り返し起こります。咳は深夜や早朝に出やすいです。軽度の場合は、特に何も処置をしなくても治まることもあります。繰り返す程度や頻度は人によって大きく異なり、春先の花粉症シーズンだけ喘息が起こるという人もいれば、年中発作が起こる人もいます。
アレルゲンのない内因性喘息
特定のアレルゲンが認められない喘息の原因は多岐にわたります。
呼吸器感染やストレスに対する心理的作用によって生じる例が多いですが、最近では、大気汚染による喘息も増えています。運動誘発性の喘息もよく見られ、運動した直後に発症する人と運動後6時間以上経ってから発症する人がいます。
大人になってから喘息にかかる人はこういった知識に乏しいことが多く、運動と喘息が結びつかず医師に伝えないために原因が判明しないこともあります。運動によって起こる喘息があるのだという認識も持っておくとよいでしょう。
喘息は治療で治るの?
喘息は、治りにくく長く続く病気である慢性疾患の1つと考えられます。どんな治療をすればよくなるのでしょうか?治ることはあるのでしょうか?そんな疑問にお答えします。
喘息の治療方法
一般的な喘息の治療方法は、次の2つです。
①アレルゲンや喘息原因の除去
②薬物療法
もっとも有効な方法は喘息の原因を特定して、除去することです。喘息を発症してしまったときには、イソプロテレノールの吸引、即効性のあるアミノフィリン、気管支を拡張する作用のある塩酸エフェドリンなどが効果的です。
気管支の炎症をおさえる作用が最も強いステロイド薬である、副腎皮質ホルモン剤も有効です。喘息の薬物療法は吸入療法が一般的ですが、症状に応じて飲み薬や胸に貼る薬なども処方されます。
吸入療法と有効性
喘息の治療には、吸入療法が即効性があり効果的で、副作用も少ないとされています。吸入療法とは、喘息治療の薬を専用の器具を使って、霧状などにして吸い込ませる治療方法です。
病変を起こしているところに直接薬が投与されるので、すばやい効果が期待できます。簡単な操作方法で自宅で使いやすいのがネブライザーです。液状の薬を霧状にして、3~15分間吸い込みながら呼吸をします。
使用後はうがいをするだけで大丈夫です。ネブライザーの欠点は重さがあり、携帯に不便なことです。使いやすいネブライザーを自宅用にして、小型で軽量のP-MDIやDPIを外出時に持ち運ぶ人もいます。
子どもの喘息は治りやすい
子どもの喘息は適切な治療を受けることで、70%程度の人が完治するといわれています。これは、子どもは成長するにつれて免疫力が高まることや、体が大きくなるにつれて体内環境が変化することが理由として考えられます。
運動誘発性の喘息を患っている子どもの場合は、原因となる運動を控えてしまうこと心身の健全な発育の妨げになることもあります。医師の適切な指導の下に運動の内容を選択して取り入れたり、薬を用いて発作を抑えながら運動をするといった治療が必要です。
大人の喘息も薬でコントロールが可能
子どもとちがい、大人の喘息は治療を受けても完治する人は10%程度といわれています。しかし、喘息の薬は進化しているのでそこまで心配することはありません。適切な治療を受けることによって、普通の人と同じように生活することができます。
即効性のある吸入ステロイドですが、長期のステロイド使用は良くないという固定観念がある人も多くいます。飲み薬ではなく吸入は患部のみ使用するので副作用は少なく、うがいをすることによって更に効果的です。どうしてもステロイドが気になるという人は、漢方による治療もできます。
また、アレルギー性喘息の場合は、花粉症治療でよく用いられる特異的免疫療法もあります。これは原因のアレルゲンを少量ずつ体内に入れることで、徐々に慣らして過剰反応が起こらないようにする治療方法です。
喘息を予防するためにできること
喘息の発作は苦しいだけでなく、深夜や早朝といった多くの人が寝ている時間に起こるため精神的負担が大きいのです。
発作の不安感からうつ病を発生してしまうこともあるので、日常生活で取り入れることのできる予防法から実践してみてはどうでしょうか?
掃除をして清潔な環境に
喘息に限らず、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の患者さんのご自宅は、動物を飼っていたり敷き詰めカーペットであまり頻繁に掃除機がかけられていないということが多くあります。
特に子どもの場合は、普段生活する室内に塵やダニが多いと喘息やその他のアレルギー性疾患を発病しやすいことがわかっています。
掃除が苦手!きらい!という人でも簡単に、いつもキレイを保てる方法をご紹介します。
①掃除機は性能が良くお手入れが楽なものを
吸引力だけでなく、排気がきれいであるかもチェックしてくださいね。お手入れを毎回しなくてはいけないものより、紙パックが楽です。少し奮発して高価なものを購入すると、やる気になります。
②床に物は置かない!
掃除機はできれば毎日かけてほしいので、楽に掃除できるように床に置いてあるものは少なくします。片付けは後で少しずつゆっくりすればいいので、とにかく棚やケースに置くなり入れるなりしてしまいましょう。不要なものは、思い切って捨てましょう。
③換気は必ず!
掃除機をかける前に窓を少しずつ開けます。5センチ程度あければ十分です。2箇所以上あけて風が通るようにします。
④ワイパーの後に掃除機
掃除機の前にクイックルワイパーをかけます。掃除機をいきなりかけると、ホコリや塵が舞ってしまうので、それを吸い込むと身体によくありません。ワイパーで表面のゴミを吸着してから、掃除機でフローリングの溝や絨毯のダニを根こそぎ吸い込んでいきましょう。
⑤拭き掃除もラクラク
棚や机の拭き掃除は、ぞうきんをまとめて洗濯機で洗ってしまうと便利です。面倒な場合は、毎日タオルを洗う前にそのタオルでどこか一ヶ所拭いてから洗濯機にポイッといれましょう。
受動喫煙をしない、させない
煙草の煙は、気道の粘膜を刺激して喘息を起こしやすくします。発作を誘発するだけでなく、気道を狭めるのでより苦しい発作になります。
飲食店では禁煙の店を選ぶとよいでしょう。分煙ではスペースを分けているだけで空気を遮断していないところが多く、意味がほとんどありません。
最近の喫煙できるお店では、禁煙店が増えていることもあり煙草を吸う人の率が非常に多くなっています。お子さんや妊娠中の人がいるときは、喘息だけでなく他の病気の発生を防止して健康を守るためにも、配慮した方がよいでしょう。
ストレスをためず、適度な運動を
大人の喘息は、ストレスを原因とするものも多いのです。発作がまた来るのではないか、という不安も大きなストレスになります。不安感が高まるとうつ病にもなりやすいといわれます。
この不安感を募らせる要因の1つが、セロトニンという脳内ホルモンの不足や停滞です。うつの治療薬の抗うつ剤にも、このセロトニンの分泌を促進する成分が含まれています。セロトニンの分泌には、規則正しい生活と適度な運動が不可欠です。
毎日外に出て活動し、太陽の光を浴びることで、喘息に強い体も作れます。セロトニンが分泌されることで、夜もぐっすり眠りにつくことができます。
まとめ
喘息は子どもだけでなく、大人になってからの発症も多く、うつ病や死につながることもある軽視できない疾患であることがわかりました。
原因は様々ですが、適切な治療を受けることで発作を予防でき、子どもの場合は完治することも多いのです。最近では赤ちゃんの喘息が急増するなど、喘息の事情は変わってきています。
従来は喘息というとアレルギー性の喘息がほとんどでしたが、近頃は大気汚染や添加物の多い食べ物、受動喫煙と言った外的要因や過度のストレスなど精神的な要因を発端とする喘息も増えています。発生源となりうるものを極力予防できるように、生活スタイルや自宅、職場環境などを一度見直してみるとよいでしょう。