大人になってから喘息にかかった経験がある方は、お医者さんに「今後、軽い風邪の症状だったとしても市販の風邪薬や頭痛薬を使用すると、喘息の発作を引き起こす場合があります」など注意を受けた方もいるのではないでしょうか。
実は、私もその内の1人であり、市販の頭痛薬や風邪薬を使い、何度か喘息を起こしました。喘息を持っている方でも、この病状を知らない方も多いと思いますが、多くの市販薬に含まれているアスピリンをはじめとする、解熱鎮痛薬は喘息を引き起こす可能性があります。
この症状をアスピリン喘息と呼び、喘息に1度でもかかったことのある方は注意すべき内容です。ここでは、アスピリン喘息がなぜ起こるかとその症状や解決方法に関してご紹介します。
アスピリン喘息について
ここでは、アスピリン喘息の概要と原因、またどんな人がかかりやすい病気なのかをご紹介します。
アスピリン喘息とは?
アスピリン喘息とは、アスピリンの成分だけでなく、解熱鎮痛薬を使うことで引き起こされる喘息のことを言います。世界的にも、この病状はアスピリン喘息と呼ばれていますが、病名を聞くと、アスピリンだけに原因があると勘違いする方もいらっしゃると思います。
実際には解熱鎮痛剤全般の薬品が喘息の発作を引き起こすことをアスピリン喘息と呼びます。
他にも、アスピリン喘息は、別名「NSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症・過敏症」という言葉も用いられています。
これらのアスピリンを含む解熱鎮痛剤は、炎症を抑えたり、解熱作用や鎮痛作用を持っている為、生理痛、関節の炎症、痛風、腎結石、尿路結石、頭痛、手術後、外傷、歯痛、腰痛、筋肉痛、神経痛など痛みや炎症を伴う幅広い症状に使用されています。
この成分は市販のほとんどの頭痛薬や総合風邪薬などにも含まれていますが、内服薬だけでなく、湿布、ぬり薬、注射や座薬などにも含まれています。中でも、解熱鎮痛効果の強い薬剤を使用するとより喘息の発作を誘引しやすいと言われています。
また、医療施設でもよく処方される為、喘息を1度でも患ったことのある方で、かかり付けの医師以外を受診する場合は、喘息を持っている旨を伝えておくことが重要です。
アスピリン喘息の原因は?
アスピリン喘息の原因は大きく分けて2つあります。1つは解熱鎮痛剤が含まれている薬品を使用すること、2つ目は解熱鎮痛剤以外以外の誘発物質を体に取り込んだ際に発症します。
■解熱鎮痛剤の使用
アスピリンなどの解熱鎮痛剤の使用により、喘息が誘発されると言われています。詳しい原因は分かっていませんが、アスピリンをはじめとする解熱鎮痛剤を使用することで、刺激を受けて、気管支を縮小する作用のあるロイコトリエンが多く生産されてしまうことで気管支が狭まり、発作を起こすと考えられています。
■解熱鎮痛剤以外の誘発物質
解熱鎮痛剤以外にも、下記のような食べ物や香りの強いものが原因となって、アスピリン喘息を引き起こす場合があります。
- 防腐剤、保存剤・酸化防止剤、着色料など加工食品や医療薬品等に含まれる添加物
- 香水、化粧品、強い香料の石鹸、歯磨き粉
- イチゴ、トマト、メロンなどのサリチル酸化合物が含まれている食べ物
アスピリン喘息になりやすい人は?
アスピリン喘息にかかりやすい方の特徴は下記の7点挙げられます。今は解熱鎮痛剤を服用しても何ともないけど、ある時期をきっかけにいきなり発症する場合もあるので、下記の内容に当てはまる方は注意が必要です。
アスピリン喘息になりやすい特徴
- 大人になって喘息にかかった
- 過去に一度でも喘息になったことがある
- 喘息の症状が重く発作や入退院を繰り返している
- 鼻茸、鼻ポリープ、副鼻腔炎、蓄膿症を患ったことがある
- 嗅覚の機能が低下し、匂いをあまり感じられていない
- 香水などの香りをかいで息苦しさを感じたことがある喘息持ちの方
- 歯磨きをしている際に息苦しさを感じたことがある喘息持ちの方
10歳以下の喘息持ちのお子さんや遺伝的に発症するという例は、ほとんど報告がありません。また、喘息体質のない患者さんにはこの症状は、起こらないと言われています。
アスピリン喘息の主な症状
アスピリン喘息を起こす方に見られる主な症状は喘息発作が挙げられますが、中には蕁麻疹や血管浮腫をいった皮膚の症状を起こす場合があります。
喘息発作を起こす
解熱鎮痛剤を使ってから15分~30分以内遅くても2時間以内に、息苦しさを感じるといった軽い発作を引き起こす方から、意識不明の重症を伴う発作まで様々あります。
軽い発作の場合は、息が吸いずらく「ゼェゼェ」といった音が出たり、鼻水が出たり、鼻からの呼吸がしずらいなどの症状が出ます。
重症の場合は、上記の軽い発作と同様の症状の他に、顔が赤くなったり、結膜の充血や、下痢や腹痛などの消化器官の異常も引き起こし、薬の強さによってはショックを起こし意識不明などの重態になり死を伴う危険性が出てくる場合もあります。このような発作の状態は数時間から半日程度続きます。
蕁麻疹や血管浮腫などの皮膚の症状を起こす
解熱鎮痛剤による過敏症状が見られる方は発作以外にも、かゆみを伴う蕁麻疹や唇やまぶた、顔全体が膨らむ血管浮腫という症状が見られる場合があります。
特に喘息持ちの慢性蕁麻疹患者さんの20~35%の方が解熱鎮痛剤を使うことで皮膚の症状も同時に悪化することが分かっています。
アスピリン喘息の治療方法
アスピリン喘息を治療する方法について紹介します。
原因となる誘発物質を避ける
まず、アスピリン喘息で1番の問題として挙げられるのは、アスピリン喘息とは知らずに医療の対応をされてしまうと、医療事故を招きやすく、死の危険を伴う大発作へと悪化することです。
その為、喘息を1度でも患ったことのある方は必ず医師に告げ、アスピリン喘息の可能性があることを把握してもらいましよう。アスピリン喘息と判断された場合は、ステロイドの急速静注や塩酸ブロムヘキシン吸入は避けなければ、重篤になる危険性があります。
発作時の治療方法
発作時には基本的に点滴と酸素補給を行い、症状によっては薬剤を投与します。しかし、一般の喘息の緊急対応とは異なる薬剤などの使用が必要になります。血液中の酸素状態を確認して、酸素の数値によって対応方法が異なりますが、主な対応内容は下記の通りです。
■アスピリン喘息発作時の主な対応内容
- 気管支けいれんを和らげる、エピネフリン0.1~0.3mgの筋肉注射や皮下注射します。
- 意識が正常な場は、プレドニン®という炎症を抑える内服薬を投与します。
- 点滴が必要な場合にはアレルギー反応が起こりずらいデカドロン、リンデロンを用いる。
- 意識不明の重態の場合は、人工呼吸器を用いる。
気管支喘息のコントロール
アスピリン患者さんの多くは以前に喘息を患ったことのある方です。
その為、喘息を日常からコントロールすることが、アスピリン喘息の根本の治療へと繋がります。大人になってからなる気管支喘息の原因の多くは、加齢、アレルギー、タバコ、細菌、ウイルスなどの複数の原因が重なり、気管支が弱って発症します。
中でも特に原因として多いのがタバコです。その為、タバコを吸っている方は、気管支喘息を治療する為には、まずは禁煙から始めることが大事です。次に低下している免疫力を回復させるためにも、規則正しい生活リズムや適度な運動、バランスの取れた食事を日頃から心がけることで、気管支炎を発症させないようにすることが大事です。
鼻疾患のコントロール
アスピリン喘息にかかる患者さんの特徴の1つとして鼻茸、鼻ポリープ、副鼻腔炎、蓄膿症を患ったことのある方に多いことが挙げられます。
これらの鼻に関する症状を持っている方で、アスピリン喘息が発症した方は、鼻の疾患をコントロールすることが、アスピリン喘息の治療にも繋がります。その為、耳鼻咽頭科を受診し、鼻の治療を優先的に行いましょう。
アスピリン喘息の予防について
アスピリン喘息は、発作がおきないように予防対策することが、とても重要です。急な発作を引き起こしたり、もしものことがあった場合も含めて、下記のような予防対策をしましょう。
原因となる誘発物質を避ける
上記に挙げた原因となっている、解熱鎮痛剤が使用された薬品や誘発物質となる食べ物や香りの強いものを避けることはとても重要な予防策です。特に、解熱鎮痛剤は内服薬だけでなく、注射、湿布、座薬や点滴などにも含まれている為注意が必要です。
既に発作を引き起こし自分に合わない薬剤があるのが分かっている場合は、それをしっかりと覚え医師や薬剤師に伝えておくことが重要です。また、薬局で薬を受け取る際に、自分でも薬品の成分を確認することが大切です。
喘息の薬を常備する
喘息患者さんの中で今まで大丈夫だったものが、ある時をきっかけに急にで発作が起きることはよくあります。その為、喘息の呼吸を楽にする吸引機や気管支を拡張する内服薬などを常に持ち歩き、発作が起きた時にでもすぐに対応できるようにしておきましょう。
患者カードの携帯
アスピリン発作は命に関る危険性を持つ為、患者カードがあります。この患者カードには薬品の投与に関する禁止事項や注意事項が記載されています。
このような患者カードを普段から持ち歩くことで、発作が起き意識不明の重症の場合でも、誰でも病状をすぐに把握することが出来ます。このカードが医師の助けとなり、アスピリン喘息を引き起こすような薬剤の投与は控えられ、医療事故を防ぐことが出来ます。
気管支炎に効果的な栄養素をとる
気管支炎にならないように長期的にコントロールすることが大事です。その為、気管支炎に効果的な栄養素や食事を日常で取り入れることは予防策に繋がります。
気管支炎に効果的だといわれている代表的なものは、はちみつ、パイナップル、緑茶、ビタミンA、大根、みかん、銀杏、生姜などです。これらの食べ物には、気管支の緊張を緩めたり、炎症作用や殺菌作用があるなどして喉に良く気管支炎に効果的な食材と言われています。
これらを日常から取り入れて、気管支炎を引き起こしにくい体つくりをしましょう。
まとめ
私自身も大人になってから気管支炎を患い、アスピリン喘息を年に数回の頻度で経験してきました。原因として考えられていたタバコを辞めて、健康管理に気をつけた途端に気管支炎にかからなくなり、アスピリン喘息もなくなり、既に6年ほど発作が起きていません。
もちろん、喘息にかかったことがあるので、免疫力が落ちたり、何かの拍子で再発する可能性はありますが、このアスピリン喘息を完全に治療する近道は、根本となっている気管支炎自体や鼻の炎症を長期的に発症させないように、コントロールすることが一番大事だと思います。