CDや切手など、ついつい集めてしまうものってありますよね?好きなものや興味のあるものを集めるのは楽しいですし、コレクションを眺めるだけでも心が満たされます。しかし、興味のない人から見たら、集める意味を理解できないようなものも多々ありますし、場所も取りますから、なかなか大変な一面もあります。
そもそも、収集癖とはなぜ起こるのか、その心理や原因について詳しくご紹介します。
収集癖とは
わたしたちが生活していく中には、必要なものとそうでないものがあります。必要なものとは、家やお金、食料などの他、仕事などで必要な服や家電製品など、様々ありますね。
しかし、これらの生活必需品の他に、嗜好品と言われる、生活には必要のないものがあります。収集癖とは、こちらの部類に属するもので、持っていなくても何ら不都合はありません。しかし、なぜかそれを集めてしまったり、集めることに喜びや満足感を覚えたりします。
こうした収集癖を持つ人の心理状態について、これから詳しくご紹介しましょう。もしかしたらあなたも、隠れた収集癖を持っているかも知れませんよ?
収集癖のタイプ
収集癖と一口に言っても、そのタイプは2つに分けられます。本人にとってこだわりのあるものを集めるタイプと、特にこだわりはなく、ひたすらに集めるタイプです。
後者については、集めるものが大切なのではなく、集めるという行為そのものが好き、というタイプで、少数派と言えるでしょう。大半の人は、前者のタイプですが、いくらこだわりがあってもなくても、他人から見ればゴミ同然、ということもよくあります。
収集癖の心理とは
では、なぜ生活に必要ないにもかかわらず、ものを集めてしまうのでしょうか?
中には、歴史的価値のあるものや、個人的に価値のあるもの(好きなアーティストのCDなど)もありますが、人によってはなぜコレクションしてしまうのか、本人も理解できていない場合があります。実は、こうした収集癖には、5つの心理があると言われています。
狩猟本能
狩猟本能と言うと、犬や猫によく見られますね。たとえば、猫が捕まえたねずみや鳥を飼い主の足下に持って来る行為や、犬がおもちゃなど、落ちているものを自分の小屋までくわえて運んでいく行為などが、これにあたります。狩猟本能は犬猫にかかわらず、実は人間にも備わっていて、これが収集癖と関係しているというわけです。
縄文時代などにさかのぼりますが、人間もかつては狩猟生活をしていました。動物を狩り、その日の生活の糧にしていたわけですが、狩るという行為の中には、珍しい獲物を自慢したり、取っておくことで当面の飢えをしのいだりすることができますよね。そして、大物を狩ることができれば満足感を得られるだけでなく、女性からも頼られます。
このように、太古から獲物を収集することは、男として一人前であるという証明でもあり、自尊心にもつながっていました。現在でも、収集癖を持つ人が女性よりも惰性に多いのには、こうした理由があると考えられています。
寂しさを紛らわしたい
心が満たされていないと、どれだけお金があってもむなしいですし、寂しいですよね。寂しさから解放されたいという心理は、よく話題に上るゴミ屋敷にも当てはまります。何もない部屋は殺風景で寂しいものですよね。それよりは、ものをたくさん散らかしておいた方が寂しさが紛れて安心できる、という心理です。
また、ものを集めるということは、ネットでも実際に足を運ぶにしても、情報収集や購入など、何かしら行動を起こすことになります。コレクションのために行動すること、ものを集めることに集中することで、寂しさを紛らわせることができるというのが、このタイプの収集癖の心理です。
安心していたい
上記の心理に近いですが、ものがあることで安心できる、という心理もあります。現代社会では食べるものがなくて飢えることは少なくなりましたし、情報社会で、ものを集めなくても必要なものは情報が教えてくれます。たとえば、音楽だってCDを買わなくても、好きな楽曲をダウンロードすれば事足りますよね。
しかし、そうなってくると、心の安心感を得るのが難しくなってくるのです。何か手で触れられるものがあると、それに身をゆだねることができますよね。分かりやすく言うと、子供の頃、好きなぬいぐるみに囲まれていると、寂しい時に安心したような記憶は、誰しも持っているのではないでしょうか。
情報だけでは埋められない寂しさを埋めてくれるのは、やはり触ることのできる「もの」である、ということですね。
人より優れたものを持ちたい
一口に収集癖と言っても、自分のコレクションを他人にひけらかしたいタイプと、自分1人で楽しむタイプがあります。前者は男性に多いようですが、これは闘争心や競争心の表れで、「こんなすごいものを持っている」「あの人より貴重なものを持っている」というような、尊敬されたい、自慢したい、人より優れていたいという心理です。
こうしたタイプの人は、互いに自分のコレクションを見せ合うことで、闘争心が高まっていき、さらに収集癖がエスカレートしていく傾向にあるようです。ほどほどにしないと、部屋中、もしくは家中がもので溢れてしまうことにもなりかねません。
強い好奇心
人と競ったり、寂しさを埋めたりするのとは別に、性能のよいものをコレクションしている人もいます。こうした人の場合は、単に集めることを楽しんでいるというよりも、その性能を自分で確かめたい、試してみたいという好奇心から来ている場合が多いのです。
たとえば、高機能のイヤホン、カメラのレンズ、オーディオなどは、その性能によって音や写真が大きく変わってきます。そうした知的好奇心の強い人が、こうしたものをコレクションする傾向になるようです。
人と比べるのではなく、自分が持っているものよりも、さらによいものがほしいという欲求ですね。そのため、新しいものがでるとすぐに買って性能を試したくなるのです。
病的な収集癖
このように、収集癖にはある心理が働いていることが分かります。
しかし、すでに紹介した以外にも、病的な心理から収集癖を止められない人がいるのです。では、病的な収集癖とはどのようなものがあるのでしょうか?
強迫性障害によるもの
強迫性障害とは、何かをしないといけないという、強迫観念に駆られる障害です。たとえば、家を出た後で鍵をかけたか何度も確認しないと気が済まない、何度も手を洗わないと落ち着かないなどがこれにあたります。
強迫性障害の人は、好き好んでそうしているのではなく、それをしないと不安で、いてもたってもいられないのです。その不安を抑えるために行う行為を、強迫行為と呼び、上記に挙げたような行動を繰り返し行います。
収集癖も、この強迫行為の1つとして考えられています。普通の収集癖と違うところは、目的のものを手に入れても安心できない、というところです。強迫性障害の人は、すべて集めないと気が済みません。また、ある一定のルールの元に物事を行わないと気が済まない性質上、ものを集めるにしても、自分で定めたルールに沿って行わないと落ち着きません。
入手経路や購入手続きの方法がいつもと違う、ルールに沿っていないと、何度もルールに沿ってやり直すことになってしまいます。
詳しくは、強迫性障害をチェックしよう!原因や症状は何?克服するために必要な治療方法は?を参考にしてください!
買い物依存症によるもの
こちらは、女性に多いタイプの収集癖です。女性は男性と比べて、物欲で満足を得ようとする傾向が強いため、買い物依存症に陥りやすいと言われています。
また、化粧品やバッグ、洋服やアクセサリー、靴など、女性のファッションには必需品でありながらオシャレでカワイイものが多いですよね。そのため、ついつい限定パッケージなどに気を引かれて、必要もないのに買ってしまう、ということになりやすいのです。
特に今は、クレジットカードが手軽に使え、ネットショッピングが当たり前の時代ですから、ついつい買いすぎてしまいがち。さらに、自分がいくら買ったのが、どれだけの金額を費やしたのかを把握しにくいのも原因の1つです。
ネットオークションも、相手よりも自分が、ほしい商品を手に入れたいという気持ちや、タイミングを逃したら他人に商品を買われてしまうかも知れないというスリルが手伝って、ついつい浪費につながってしまいがちですよね。限度を超えると、収集癖どころか自己破産にもなりかねませんから、注意が必要です。
認知症による収集癖
認知症は、徘徊や暴言、記憶が曖昧になるなど、様々な症状が現れます。それにより、日常生活が送れなくなり、家族にも大きな負担となりかねません。
しかし、それ以外にも、認知症によって収集癖に目覚める場合があると言います。認知症による収集癖の特徴としては、大切な人やかけがえのないものを失った喪失感をきっかけに引き起こされる場合が多いということです。
それにより心に大きな穴が開き、満たされない寂しさを埋めようと、ものを集めるのではないかと言われています。ただし、認知症の人の場合は、店やネットショップで購入すると言うよりも、ごみ捨て場などから捨てられているごみを拾って持ち帰ってしまうなど、家族からすると非常に困る行動として表れる場合が多いようです。
ごみを拾ってくると、周りの人が寄りつかなくなり、寂しさが増長されます。それを埋めるために、またごみを拾い集めてくる、という悪循環に陥りやすいのです。
認知症による収集癖への対策
認知症の人を相手にする場合、対処方法には細心の注意が必要です。対応を間違えると、認知症が悪化する原因にもなりますから、慎重に対応しましょう。
ごみでも、本人にとっては大切なもの
周りから見ればごみでも、拾ってきた本人からすれば大切なものかも知れません。頭ごなしに否定するのではなく、まずは何を持ってきたつもりなのか、本人に確かめましょう。拾ってきた理由がはっきりと分かっている場合には、そうしたもの専用のコーナーを作って、そこに保管するようにします。場所を決めることで、家族がものの数を把握しやすくなるためです。
定期的に確認し、何が増えているのか家族で共有し、把握しておくことが大切です。整理する場合には、家族のペースではなく、必ず本人のペースに合わせて行うことも大切です。毎日付き合っていくご家族は大変でしょうが、焦らないことが何より大切ですよ。
処分してもよいか、見極める
拾ってきたものを捨てても本人が何も言わない場合、気にしていない場合には、本人が出かけている時を見計らって捨ててしまうようにしましょう。また、本人が知らない、覚えがない、と言っている場合も、捨ててしまって問題ありません。
ただし、捨てられていることに本人が気づいている場合、「もの盗られ妄想」につながる可能性があるので要注意です。
もの盗られ妄想とは
もの盗られ妄想というのは、被害妄想の1つで、認知症になると起こりやすい症状です。特徴は、自分がものを置いた場所を忘れたことを理解せず、自分がなくしたという考えを一切持たないことです。つまり、見つからない=誰かに盗られたと直結させてしまうのです。初めから盗られたと思っているため、自分で探すという行動はほとんど見られません。
また、在宅介護を受けられる、認知症初期の頃に見られることが多く、中期以降ではあまり見られなくなります。もの盗られ妄想でなくなったとされるものには貯金通帳や財布などがあり、疑いの目は長時間介護している、嫁や娘、ヘルパーや施設職員などに向けられることがほとんどだと言われます。
もの盗られ妄想は、認知症による記憶障害や思考力の低下が原因とされ、単にものがなくなったと訴えるだけでなく、自分を追い出そうとしているのではないか、というネガティブな思い込みが同時に起こり、それによって犯人はあの人だと確信するに至ってしまうのが特徴です。
その結果、自分でしまい場所を変えたにもかかわらず、そのことを忘れてしまい、目の届く範囲にない=盗られたと思い込んでしまうです。もの盗られ妄想に対しては、相手を否定してしまうとかえって逆効果なので、話題を変えることが大切です。
家族の時間を大切にする
ごみを拾ってくるという行為は、寂しいという気持ちの表れであることが多いので、家族での時間を増やすよう意識しましょう。認知症があると、ついつい家族との会話が減ったり、場合によっては邪険にされてしまうことにもなりかねません。
できるだけ、本人の話を聞いてあげる時間を設けたり、気分転換をしたりできる時間を作りましょう。また、散歩や洗濯ものをたたむなど、簡単な作業を一緒に行ったり、散歩について行くことで、どういう時にごみを拾ってくるのかを見てみることも効果的です。一緒に散歩しているのならば、ごみを拾っている時に、拾う理由についてさりげなく聞いてみるのもよいですね。
周囲の理解を得る
ごみを拾ってくるという行為は、家族はもちろん、周囲の人から見ても気持ちのよいものではありませんよね。まして、その人が認知症だと知らなければ、変な人だと思われて、不審がられてしまうかも知れません。近所の人には、認知症であることをきちんと伝え、理解を求めることが大切です。
収集癖を自力でやめるのは困難
収集癖は、1度やり始めると癖になり、なかなかやめることは難しいですよね。新しいものを手に入れたい欲求や、人よりよいものを持っていたい欲求など、収集癖を続ける理由は様々あります。しかし、価値があろうとなかろうと、他人に迷惑をかけたり、自分の生活を圧迫してしまったりするレベルになってしまっては意味がありません。
もしも、止めたくても止められない、家の中にものが溢れかえって困っている、または病的なものの集め方をしている人が身近にいたら、1度、専門家に相談してみるのも方法の1つです。
特に、強迫性障害のように、強迫観念を原因とする収集癖は、本人も決して楽しくはありません。むしろ、常に「こうしなければ」という思いにつきまとわれて、精神的にも金銭的にも苦しい生活を強いられてしまいます。
そうした場合には、まず1度、医療機関を受診されることをオススメします。強迫性障害は治療することができますから、少しでも当てはまる部分のある人、気になる人は、選択肢の1つとして考えてみてくださいね。
まとめ
収集癖と一口に言っても、ごみのようなものを集めてしまう人から、世界的に価値のあるものをコレクションする人まで、その種類は様々です。また、ごみ屋敷になってしまっては問題ですが、そうでない限り、誰が何を集めようと、それは本人の自由です。集めることにより、本人の心が満たされているのなら、何ら問題はありません。
好きなものを集める行為は、それだけで心を満たし、安らぎや幸福を与えてくれます。無理なく、自分の人生をもっと豊かにしてくれる、素敵なコレクションをしたいものですね。
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