自己憐憫は気づかないうちになる?原因や特徴を知ってセルフチェックしよう!

自己憐憫という症状をご存じですか?難しすぎてなんと読むのかもわかりませんね。実は「じこれんびん」と読みます。憐・憫共に「あわれむ」とか「気の毒に思う」という意味であり、それが2つ連なっていることからも相当深刻なことが伺えますね。

一般的にほとんど知られていない自己憐憫ですが、非定型うつ病の「抑うつ発作」で起こる典型的な症状に分類されます。

自己憐憫とは一体どういった感情なのでしょうか?そしてなぜ起こるのでしょうか?その特性や傾向について正しく理解し、あなたにも起こりうるかもしれない症状を予防する対処法を学びましょう。

自己憐憫ってなに?

抑うつ発作

あなたの周りで不幸自慢する人を見かけたら要注意です。自己憐憫とは自分を「可哀想だ」と憐れむ精神状態であり、非定型うつ病の「抑うつ発作」症状の一種です。自分をかわいそうだと思い込んだり、なんて不幸なのなどと憐れんでしまう等、被害者意識が非常に強くなる考え方です。

激しい自己憐憫では『誰にも理解してもらえない!』、『なぜ自分だけこんな目にあうの?』等といった激しい悲観の気持ちが現れます。いわゆる退行欲求であり、気分が落ち込みいかなる活動も好まない、むしろ嫌ってしまう状況であり、思考・行動・感情停止状態に陥ることがあります。

また幸福感がまったく見いだせずどこに向かえばいいのか、ある種の中毒性を有するため出口の見えない不安感・焦燥感を呈する場合もあります。

非定型うつ病

自己憐憫を理解するためには非定型うつ病について知っておかなくてはなりません。なぜならこの二つは相互に関係しているからです。

非定型うつ病は近年20~30代の特に女性に増えている比較的新しく定義された心の病です。従来の「うつ病」と同様、心の落ち込みや不安などはあるものの、よく眠れ、しっかり食べられ、また楽しむことに対し普通に反応できるため一見すると病気とは捉えらず、軽視されがちですが、ほっておくと最終的には自傷行為等に及び取り返しのつかない破綻をきたす可能性があり正しく理解しておくことが必要です。

この非定型うつ病の典型的な発作を「抑うつ」と呼び、抑うつの典型的症状が自己憐憫なのです。

抑うつ発作

気分が抑えられて心が沈んでしまったり暗くなっている状態です。非定型うつ病で起こる症状であり、自己憐憫はこの抑うつ発作で誘発される症状です。

他に「落涙」という症状もあり、まったく理由が見当たらないのに悲しい気持ちになり涙する場合です。どちらかと言えば抑うつ発作で見られる「身体」症状に分類されます。

自己憐憫はなぜ起こるのか?その原因

自己憐憫若年層に多い

自己憐憫は非定型うつ病の抑うつ発作症状のひとつとして分類されるため、その原因は大元である非定型うつ病の原因と相似しています。しかしながらどういった原因で発症するのか、そのメカニズムがまだよく解明されていませんし、有力な仮説もない状態です。

ある専門家によればストレスの蓄積によって感情が破綻寸前に陥るために発症するといった考え方もありますが、まだまだ意見の一致をみることはありません。

定型うつ病の要因ともリンクした様々な原因が存在しているため、その特定が複雑で難しく有効な結論に至らない可能性があります。

非定型うつ病になりやすい人

人間関係等、社会的ストレスの蓄積が原因ともされる非定型うつ病ですが、この病に罹患しやすい性格傾向ともとれる要因はあるようです。

ストレス耐性の減少

拒絶過敏症を呈する人が罹患しやすいとする特徴があります。他人の言動をいちいち気にし過ぎてしまい激しく落ち込んだり、逆に相手に性格攻撃を仕掛けてしまったりするのです。仕事のミスに対する指摘なのに自分の人格を責められたと勘違いし過敏に反応するのはほんの一例です。

こういった人達は日常的に起こるいかなる出来事に対しても過敏に反応してしまうため、ストレス耐性が整わずどんどん落ち込んだり悲しんだりして感情の起伏が激しくなり、ストレスの閾値が徐々に低下します。

性格傾向

非定型うつの場合、以下6つの性格的特性を有していると考えられています。

  • 自己主張が苦手
  • おとなしく手がかからない
  • 自信がない
  • 人の目が気になる
  • プライドが高い
  • 他責傾向(物事の結果を他人や他の出来事が原因だと解釈する)

子供の頃にこういった性格傾向を示す場合、非定型うつ症状を示す可能性があります。比較的成績が優秀で教師や親の言うことを聞きますが、内心は何事にも自信が持てず失敗に対しては非常に敏感です。

実際にうまくいかなかったり自分のミスで失敗したりすると立ち直れない程精神的に落ち込むといった性格傾向です。

若年層の女性に好発

非定型うつ病は好発年齢(病気が頻繁に発症する時期)が10代後半から20代前半に発症する頻度が高いとされています。これは対人・社会的なストレスに敏感で外からの情報に感化されやすい時期と関係があるためかもしれません。

また女性の発症率が高くその値は男性にくらべ2~3倍程高くなります。因みに定型うつ病でも女性が男性に比べ2倍以上の発症率があると報告されています。

その言動でわかる自己憐憫の特徴

自己憐憫の特徴

自己憐憫の特徴を紹介します。

世界で最も不幸な人間

自分に憐みの感情を抱いたり地球上で最も不幸な人間だと思ってしまう傾向が強く、だから「私は可哀想な人間だ」と相手に同情を求める気持ちが非常に強くあったりと、様々な依存(症)の形態を示します。

また比較対象がある場合、「私のほうがもっと大変なの」とか「私の人生はもっと不幸よ」等と自分が如何に憐れみを生む存在であるかを強調しようとします。

仕事等でうまくいかなければ他人に責任を押し付けたり誹謗中傷や非難、さらに悪態をつくなどしつつ一方で同情を求める行動をとったりもします。

常にマイナス思考

物事の受け止め方がすべてマイナス思考になってしまう場合も自己憐憫の抑うつ発作を呈する場合があります。

例えば仕事が時間通りに終わらない場合、スケジュールがタイトで全てをこなすのが難しいと考えても不思議ではありません。必要のないものは削り今できるものを最優先しようというのが一般的な考え方ですが、自己憐憫の場合、計画変更の思考には至らず、責任を全うできなかった自分を責めたり、その仕事に関わった他人のせいにしてしまうのです。

自己愛を有する

ナルシシズム(自己愛)を有する人程、自己憐憫の感情を抱く傾向があります。一般的には自己中心的と捉えがちですが、その傾向よりむしろ意識が常に自分に向いてしまっている状態を言います。

心理学的にはナルシシストが正確で、ありのままの自分を肯定し愛することができず、自分は他人よりも優れていて特別で偉大な存在と思い込んでしまう自己愛パーソナリティー障害という病気を有しています。

自己憐憫的思考であれば「私はこんなに不幸な存在」という感情をある意味肯定しその気持ちに陶酔してしまう状態です。

不幸のサイクルに陥る

人は通常頭に描いたイメージが強ければ強い程、その実現性は高まります。これは脳ではっきりとした描写をすることで、実際に行動するからです。

プロのサッカー選手になりたい!と思えばその想い(イメージ)が強い程、サッカースクールに入ってだれよりも練習するなどの行動に移すのです。

この考えは物事を肯定しプラス思考を伴う考え方でも、否定・マイナス思考を有する考え方でも一緒です。つまり自己憐憫の症状を有する場合、頭の中のイメージが常に激しく強いマイナス思考になっているため、行動や言動も常にマイナスに作用し、悲しみ・不幸や不安・焦燥感が永遠に続くと感じるサイクルに陥ってしまうのです。

自己憐憫特有の症状

自己憐憫症状

非定型うつ病でおこる「抑うつ発作」の一種である自己憐憫ですが、当然ポジティブ思考はなくその感情はむしろマイナスに作用します。「みじめ・哀れ・悲しみ・不幸・無視・無理解・悲観・恐怖感・他人との意味のない比較」などといった感情に苛まれます。

抑うつ発作には前述した特有の症状(拒絶過敏症・落涙・自己憐憫)以外にも日常生活における要因(被害妄想等)があり、知識として把握しておくことは予防の観点からも大切です。

ここでは日常生活における特有反応をみてみましょう。

気分性反応

非定型うつ病では自分の興味を引くものや好きなものに対し「抑うつ」状態が一時的に改善し、通常の精神状態と同じように喜びや楽しみを感じることができます。

つまり好きなこと、何か良いことがあれば調子が良くなってくるし、嫌いなことや悪いことがあれば精神的に激しく落ち込んでしまったりするのです。

このように好きな物事・出来事によって気分が回復することを気分性反応と呼ばれます。

時間帯により変化

その一方で特定の時間に突発的に出現する特徴があり、特に夕方から夜にかけて最も多く現れます。この時は突然別人格の人間になってしまったかのように精神状態がまったく変わってしまいます。

本人もまったく気づかず人格そのものが変わったかのような変化に周りにいる人達は当然困惑する事態となります。

過眠・過食

不安や焦燥感が激しい場合、その感情を紛らわすために、あるいはその感情から逃避する意味で色々な行動をとります。

過眠や過食といった行動もその一種です。お腹がそれ程空いてないにも関わらず、特に甘い物を好んで食べてしまう等、月に5%を超える体重増加は非定型うつ病の症状と考えられます。

また10時間以上も寝る日が少なくとも3日以上続いてしまう等の過眠状態も罹患リスクが高まっている証拠です。これは目が覚めて現実の状況を見たくないことや身体全体が怠いためです。

自己憐憫尺度

自己憐憫の性格傾向の有無を調べるストレス性尺度心理テストです。あなたの今の自己憐憫尺度がどの程度なのかを推し量る目安として試してみてください。

  • 自分ながら自分が偉いと思うことがある
  • 自分がかわいそうだから、よくないことでも「いいよ」と許してしまうことがある。
  • 「どんなことをしても自分だけは守ってあげるからね」と思うことがある。
  • 自分で自分を「よくやっているよ」となぐさめてあげたいと思うことがある。
  • 自分が少々のことをしても「大目にみてあげたい」という気持ちがある。
  • 生き残るためには「そんなことぐらい気にするな」という思いがある。
  • つらいことが多いから「別にそんなことぐらいしてもいいよ」という思いがある。
  • 自分が生きるためには「いろいろな思いを切って進むしかない」と思うことがある。
  • 甘いこといっていたら生きていけないから「やるしかない」と思うことがある。
  • 「自分をよくやっている」となぐさめている。

*以上の10の設問にたいし「1いつもそうである・2まあそうである・3それはない」という項目の中からひとつを選んでいきます。

・得点合計

  • 0~5 自分らしさがあり自己憐憫度は(低)
  • 6~8 自分らしさがあまりなく自己憐憫度(中)
  • 9~10 自分らしさがなく自己憐憫度(高)

自分を見失わず自分らしさを維持できているか、他人と自分は違うという認識を持てるかというのが自己憐憫尺度のテストです。

一応の目安として捉えておけば予防法として有効な手段となり得ます。

自己憐憫の対処・克服法

自己憐憫対処法

自己憐憫は非定型うつ病で起こる抑うつ発作に分類される一症状です。比較的軽度とはいえ抑うつ発作を紛らわせるために「対処行動」をとってしまう場合もあります。

対処行動とは不安や焦燥感など強いストレスを感じたときにそのストレスを発散しようとして、物に当たったり破壊する行為です。また異性に接近する等のストーキングやリストカットを含めた自傷行為が挙げられます。こうした対処行動がでないうちに専門機関への受診が最も有効な手段のひとつとなり得ます。

専門医への受診

まず精神科や診療内科等の専門外来を受診することをお薦めします。治療は主にカウンセリングが中心となります。専門医と話をしていく中で自分だけでは見えなかった様々な「気付き」を発見できるでしょう。患者にとってはその気付きを発見できただけでも大きな成果です。

治療の中では生活習慣を見直すことや対人関係に対するアプローチ、さらに日常生活において適度な負荷(仕事の継続や運動等)をかけていくための準備として様々な方法での会話が求められるでしょう。

薬物治療、特に抗うつ剤の服用は非定型うつ病にはそれほど効果がないこと、さらに症状が比較的軽度の場合が多い為、処方される機会は少ないようですが、基本的には医師の判断となります。

日光浴

本来であれば朝日を浴びるのがベストでしょう。何も外にでてしっかりと浴びる必要はありませんがせめて毎朝カーテンを開けて背伸びをするだけでも気分的に違います。

太陽光成分のひとつである紫外線にはビタミンDが含まれていますが、これは脳の活性化を促進して特に「情緒」を司る領域に高い反応を示し、抑うつ発作にも効果があるとされています。

晴れているときは是非、外での散歩等を含め適度に身体を動かすと良いかもしれません。

生活習慣の見直し

医師とのカウンセリングでも聞かれますが、規則正しい生活を送ることはすべての病気治療の原点ともなるべき要素です。

毎朝決まった時間に起き、決まった時間に食事をして決まった時間に寝るという時間管理の行為によって思考の切り替えも可能となります。抑うつ発作に陥ると自分を憐れんだり、悲しみや不安が止め処なく続いてしまいますが、時間を管理をし気持ちや気分の切り替えがスムースになれば自分を憐れんだり不安・焦燥感の抱く時間も減少し予防効果も高まります。

ストレッチ等の軽運動

非定型うつ病には適度に身体を動かすことが推奨されています。抑うつ発作のひとつである自己憐憫ももちろん運動効果が認められており、可能であれば20分から30分程度の軽度運動を定期的に実践することをお薦めします。

外を歩く、軽く走る、ストレッチする等また、できれば草木花等がある公園、田畑や森林等で身体を動かせると一層効果は高まるでしょう。1回2回と単発ではなく定期的に継続して行うことが大切です。既述した生活習慣の見直しと深く関連するので是非、軽運動を1日のルーティンとして取り入れると病気予防にも役立つはずです。

感情のコントロール

抑うつ発作には瞑想も効果があることがわかっています。

日本には元々禅の文化があり、心の中を「無」の状態、つまり何も考えない(=思考しない)状態を保つことで精神面の重りであるストレスを軽減し心を快活な状態に改善するのです。

座禅を組みながら、あるいはヨガのポーズをとりながら如何に「無心」の状態を一定時間維持できるか、そういった心のコントロールにより、自身の中に潜む不安・焦り・憐みの感情を少しずつ取り除いていく作業です。心中が無になることで新たな発見もあり物事や見えるものに対し感謝の気持ちを抱くようになります。

実際、日本では瞑想(座禅)によって非定型うつ病が改善した事例もあり、海外でも第3世代の認知行動療法としてマインドフルネス瞑想が盛んに行われています。

まとめ

まとめ!これで解決

自己憐憫(じこれんびん)とは非定型うつ病の抑うつ発作で現れる症状であり、自分自身のことを世界で一番不幸だと憐れんだり、悲しむ感情です。

自己憐憫は近年新たに発見され、比較的軽度な症状として知られる非定型うつ病により誘発されますが、はっきりとした原因は未だ解明されていません。

若年層から30歳までの悩みを抱える女性に多く発症し、ストレス耐性に非常に脆弱で感情のコントロールが効かなくなってしまいます。高まったストレスを紛らわすため自分の惨めさや不幸感、憐れみを表面に出すため、ややもすると対人攻撃を仕掛けてしまい誤解されやすくなります。

自己憐憫は感情の起伏をコントロールし日々心を安定させることで回復します。そのための治療法として専門医とのカウンセリングや規則的な生活環境の確立、また運動や瞑想等でのアプローチが効果的とされています。

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