「潔癖症」という言葉、よく耳にしませんか。バラエティ番組では、お笑い芸人さんが、「シャンプー容器のヌルヌルが許せない」といったエピソードを、潔癖症の一例のように紹介しています。「極度にキレイ好きな人」とか「こっけいな行動をとる人」といったような意味で使われ、笑いの対象となっているようです。
しかし、医療現場では、潔癖症は「深刻な病気」です。生活に支障をきたしたら、医師による治療が必要です。実際の潔癖症の発症者の行動や病的な症状とはどのようなものなのでしょうか。問題となる行動を知っていきましょう。自分が潔癖症ではないかと思っている人は、どの程度の症状にまでなると医師からの治療が必要になるのかを知っていきましょう。
さらにここでは潔癖症の原因についても深く深層心理を探っていきたいとおもいます。潔癖症につながる問題となる原因を突き止めていきましょう。
病気とみなされる症状
原因を紹介する前に、潔癖症はどういう症状なのか、見てみましょう。この記事ではこれ以降、「潔癖症」という言葉は、「病気としての潔癖症」という意味で使います。
「キレイ好き」と「潔癖症」の違い
冒頭で紹介した「シャンプーのヌルヌルが許せない」といった言動は、単なる「キレイ好き」と思われます。キレイ好きと、潔癖症の違いは、こんな例で説明できます。
キレイ好きの人は、汚れたモノから汚れが取り除かれればそのモノに触ることができます。一方、病気としての潔癖症の人は、どんなに洗ったり拭いたりしても、その物体に触ることができないのです。
ヌルヌルが除去されたシャンプー容器なら平気に触れるのが「キレイ好き」です。一度ヌルヌルになったシャンプー容器は、どんなにキレイになっても触れない。それが「潔癖症」です。
「まだ汚れているような気がする」潔癖症の人は、絶えずそう感じているのです。見えない菌やウィルスに対する嫌悪感や危険感が非常に強く、脳内で過剰に意識を行ってしまうことで蕁麻疹などの身体的な症状を引き起こす場合もあります。
さらに感覚的には、汚い事が恐怖に感じるなどの強迫神経症や汚染恐怖など、見える汚れ感じる汚れ以外のものにも反応して身体の異常反応が引き起こるのが潔癖症の大きな特徴です。
食べ物に対しての感覚
食べ物に対する態度でも「キレイ好き」と「潔癖症」は、明確に違います。
複数の人で、大皿に盛りつけられたサラダを食べるときに、「他人の唾液がついた箸が入って嫌だな」と思いつつも、人間関係を優先してとりあえず一口食べる人はキレイ好きレベルです。
一方で潔癖症の人は、絶対にそのサラダを食べることができません。それは「大皿の中に落ちた他人の唾液から、ばい菌が染み出てきて、それが培養され、サラダ全体が汚染されている」といったように感じてしまうからです。
そのほか、電車の手すりやつり革をつかめない、という症状もよく知られています。また、入浴して洗剤で体を洗ったあとに、さらにアルコールで全身を消毒する人もいます。「人の手の接触が多いから」という心理で、寿司やハンバーグなど食べ物を食べられないといった人も、潔癖症の疑いがあります。
皮がめくれるまで体を洗う
汚れたしまった部分の皮膚に異常なまでの不快感や恐怖感を感じ皮膚が剥がれてしまったり、ただれてしまうまで体を洗浄してしまう場合もあります。どこまで洗ってもキレイになったと言う感覚を得ることが出来ず、体の痛みよりもきれいになることを優先して行動を行ってしまいます。
さらにこの行動は自分ではやめることが出来ず第三者からの指導や監視が必要になります。
部屋が汚い
潔癖症の人が全員部屋がキレイかというとそうではありません。寧ろ逆に潔癖症の患者の家や部屋は汚いことが多い傾向にあります。これは実際の患者や潔癖症の症状がある人の家を統計的に観察すれば明らかなことで、汚染が確認できるところに触れることが出来ないために掃除が行えないのです。
さらに自分の手で触れた場所にさらに菌が移動してしまうと考えてしまうので、無闇に色々な所を触ることが出来ません。
潔癖症の患者の中には、いわゆるゴミ屋敷やゴミが散乱した汚部屋などの空間で暮らしている人は少なくありません。汚いから掃除が行える人は、潔癖症の症状としてはまだ綺麗好きに含まれる部類なのです。
結果周囲の人も居なくなり、面倒を見てくれる人が居なくて周囲の理解を得られず1人でゴミ屋敷に暮らす人も少なくありません。
もしかすると周囲に暮らしている人でゴミ屋敷になっている人がいれば、潔癖症などの病気によって問題につながっている可能性もあります。
何度も繰り返す
精神的な認識の歪みや、不潔脅迫などの問題によって同じ行動を何度も繰り返す行為が確認されます。
既にキレイになった場所まで何度も繰り返し磨くよう行為や、汚れていないか頻繁に何かを確認するような行動など、病的に汚れを意識してしまい同じ行動を繰り返します。
これは基本的には無意識の中で行われており、本人の気づかないうちに問題が始まりひどくなっていく傾向があります。この様な問題は汚いという意識が心のなかでストレスになりそれが溜まってしまうことで、行動につながり更なる汚れやそのストレスを解消するために行動を繰り返し起こし、さらに問題となる汚れを感じそれにさらにストレスを感じ行動を繰り返す悪循環を繰り返します。
他の方法でのストレスの発散方法が重要になてくるでしょう。
潔癖症の本性
潔癖症は、「不潔恐怖症」とも呼ばれます。そうなのです「恐怖」こそ、潔癖症の本性なのです。
通常、ある程度の不潔は大きな問題になりません。それは、人には不潔に対する抵抗力が備わっているからです。多少不潔であっても、体調に支障をきたすことがないことを経験的に知っているので、「多少の不潔」に対する恐怖は、それほど強くならないのです。
すべてが「毒」に思える
しかし不潔が度を過ぎると、それは「害」や「毒」になります。毒になった「不潔」は、人の健康を脅かし、命すら奪うことがあります。
例えば、砂場の砂を手で触ることは、「多少の不潔」で済みます。でも砂場の砂を口の中に入れることや、それを飲み込んでしまうと「毒」になります。
このように、潔癖症でない人は、「多少の不潔」と「毒になった不潔」をきちんと区別して、受け入れたり、拒絶したりしているのです。
潔癖症の人には、「多少」も「毒」も区別はなく、どちらも「毒」なのです。つまり、「お化けはお化け」なのです。お化けに「善良なお化け」も「悪いお化け」もない、と考えてしまうのです。どんな汚れでも「恐怖」の対象なのです。
いや、実際は汚れていなくても、「こういうものは普通は汚れているはず」と思うだけで、恐怖を感じてしまうのです。
心の病気
怖くないはずのモノに恐怖を感じるのは、心が病んでいるからです。重い潔癖症は、精神疾患といえます。
潔癖症は、「強迫性障害」のひとつとされています。強迫性障害は、自分の意に反して不安になったり、不快になったりする症状、と定義されています。「自分の意に反して」ですから、実は自分自身も「本当はこんなことで不安なっちゃいけないんだけど」と自覚していることがあります。
強迫障害である
「強迫」は「脅迫」ではありません。「脅迫」は、「あることを人にさせるために、おどすこと」です。「お年寄りを刃物で脅迫する」といったように使います。
「強迫」は「むりじい」といった意味です。ですので、強迫性障害とはむりじいをされたために、神経が害され健康でない症状が現れる病気なのです。
潔癖症以外の強迫性障害には、このような症状があります。
「私は間違って人を傷つけてしまうのではないか」という気持ちが浮かぶことがあります。そう思うことにより、人との積極を過度に避けてしまうのです。
また、「時計を何度も確認してしまう」とか「飛行機のチケットを30分おきにバッグから取り出して見てしまう」という症状があります。これは、「自分は物事を忘れてしまう」という強迫観念が働くためなのです。
他人を巻き込むことも
この症状が悪化すると、他人を巻き込んでしまいます。誰かに「出発時刻は●時だよね」と何度も何度も聞いてしまうのです。
潔癖症も、他人に「極度の清潔」を要求してしまうことで他人を巻き込むことがあります。そのように扱われた他人は、「あの人、おかしいな」と感じるようになり、潔癖症を含む、強迫性障害の人をさらに苦しめることになるのです。
潔癖症の原因は?
では、どのような「むりじい」や「強迫」を受けると、心は傷つき、精神の病気を引き起こしてしまうのでしょうか。
精神科医は、潔癖症の患者さんに対し、まず、子供の時代の親との関係を尋ねます。それは、潔癖症の人は、親から厳しいしつけや教育を受けていることが多いからです。
育つ環境
「外から帰ってきたら、まず手を洗いなさい」これくらいはどの親も自分の子供に言います。しかし「キレイ好き」な親だと、その言い方が強くなってしまいます。ばい菌のことを誇張したイメージで説明したり、汚れるとたちまち死んでしまうようなことを言ったりすると、子供は恐怖を植え付けられるのです。
親自身は「病気としての潔癖症」でなく、単なる「キレイ好き」だったとしても、受け手が子供だと「恐怖」や「強迫」に感じてしまうのです。この体験が、その子を潔癖症にしてしまうとされているのです。
親が潔癖症だと、子供の被害はもっと大きくなります。子供をプールに入れさせなかったり、友達の家に行かせないといった、「不潔」を理由とした禁止事項が異常に多いと、子供の恐怖心はさらに強くなります。
親からの脅迫
親からの脅迫的な躾や自分のやりたいことを行えなかったことによるストレスが長期的にさらに慢性的に心のなかに蓄積されて、そのストレスが引き金になって問題が引き起こります。
家庭環境でもそうですがのびのびと教育された子供が大人になった場合この様な問題はなかなか起こらない傾向があります。
しかし、過去に何かしらの強いストレスを抱えている場合にそれが原因に繋がる可能性が高まります。親の子供に与える影響力というものは非常に強いものがありますので。子を持つ親は注意しましょう。
潜在意識の中にある敵意
潔癖症などの問題は精神病に分類されます。さらに潔癖症は人に対する敵意の現れの行動の一つとも考えることが出来ます。
人間関係、親とのトラブル、自己嫌悪などのストレスが蓄積しいつの間にかそのストレスで精神が歪み性格障害に発展します。
特に人間関係の中で言いたくても言えない問題を抱えて、体裁を繕っているといつの間にかその外面的な行動(顕在意識)と内面的な性格(潜在意識)のズレが大きくなりいつの日か爆発します。潜在意識は自分でも気づかない意識であることも少なくなく、ストレス無く日常生活を過ごしているつもりでも、いつの間にかストレスを抱えていることがあります。
この様にうまく自分の感情を表に出せないでいると、いつの間にか他者や自分への嫌悪感が高まりそれが潔癖症の症状として表に出てくる可能性があります。
過去のトラウマ
過去に虐待、いじめ、事故、天災、病気、身近な人物の死、事件などの偶発的体験に巻き込まれ、心に深い傷を負ったことのある人が、精神に過剰な負担を抱えてしまい、それが潔癖性に繋がる脅迫性障害を発症するケースです。
さらにこれらの直接的な被害だけでなく、間接的に事故などのニュースや情報を入手することでも心を病んでしまう事もあります。感受性が強い人もそうですが、その時にたまたま重なった心労により大きく共感し、自分まで被害者と同じように傷ついてしまう事もあります。
これらはやはり強いストレスが、強迫性障害を引き起こす引き金になり、潔癖性などの何かしらの脅迫行動や精神障害を引き起こすことになります。
潔癖症の治療法について
潔癖症は治ることが多いのですが、潔癖症ゆえに、医者にかかるタイミングが遅れることがあります。それは、潔癖症の人にとっての病院は、「ばい菌の巣窟」だからです。咳をする人、鼻水をすすっている人、血が付いたかもしれない椅子など、「究極の汚れ」であふれている場所に、どうして潔癖症の人が行けるでしょうか。
しかし、重度の潔癖症には、医療の力が必要です。
認知行動療法、認知療法、精神分析療法
潔癖症の代表的な治療は、認知行動療法です。この治療は、「偏った考え方を修正する」ことを目的とします。
まず、潔癖な行動を起こしたときの状況を事細かに分析します。例えば、電車の中でつり革や手すりに一切触れなかったときのことを思い出します。そのとき、なぜ触れなかったのかを分析するのです。
小さなゴミが付いているのを見てしまったからでしょうか。人の油分が金属に付着していたのでしょうか。「こういうものを見たから、こういう症状が出た」ことを明らかにするのです。
不快を見える化する
続いて、「不快の見える化」をします。
同じく「手すりに触れなかった」場合でも、電車の中とタクシーの中では、不快の大きさが違っているものです。「声を出してしまった」や「逃げ出したかった」「冷や汗が出た」「目をつむれば我慢できた」といったように表現します。できればそれを100点満点で数値化します。
そうすると「どうすれば触れるか」ということが見えてきます。「妥協点」を探る作業ですね。
そして、「あえて汚いと感じるモノに触る」といった「荒療治」も行います。ドアノブを握ったり、共用パソコンのキーボードを打ったりといった、低めのハードル越えから始めます。
薬物療法
薬も効果的です。
ですが、症状が悪化しないと「潔癖症を薬で治すなんて、精神病みたいで嫌だな」と感じてしまうかもしれません。しかし、心療内科の医師も「できれば薬は使わずに治療してあげたい」と考えているものです。
また、もし「自分にはまだ薬は早い」と思ったら、その気持ちを医師に伝えてください。潔癖症の治療をする医師は、カウンセリングスキルが高いので、患者さんの要望はきちんと聞いていくれるはずです。
まとめ
潔癖症に特徴的な状態として、両手がぼろぼろに荒れていることがあるそうです。それは、いくら手を洗っても汚れが落ちないような気がして、何時間も洗い続けるからだそうです。それでも汚れが落ちないので、どんどん強い洗剤を使うようになるのです。
とても痛々しいです。
ここまで読んで、「これ、私だ」と持ったら、勇気を出して、精神科にかかってください。また、友人や家族にこのような症状を見つけた方は、通院をすすめてください。
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