胆嚢ポリープはそのほとんどが良性とされていますが、中には癌に発展するケースもある怖い病気です。悪性の場合、手術が必要になることもあります。
そんな胆嚢ポリープができてしまう原因とは一体何なのでしょうか?病気になってしまった場合の治療方法は?普段から予防できる方法はあるのでしょうか?
胆嚢ポリープの原因と症状、治療方法や予防方法についてまとめながら詳しくご紹介します。
胆のうの機能って?
まず胆のうに発生するポリープですが、胆のう事態の働きがわかれば、どんな事が影響して病気に発展するのか、どんな病気なのかがなんとなくわかると思います。
胆のうの機能について簡単に説明していきたいと思います。
胆のうの働きについて
胆のうは肝臓の下付近に位置していて肝臓で分泌された胆汁という消化液を一時的に保管しておいて、小出しに十二指腸に送り出して腸内の消化を助ける働きをしています。
胆のうとつながっている胆管とよばれる管は肝臓の左右、十二指腸、膵臓と繋がっています。
胆汁は食後に腸に食事が流れ込むタイミングで自動的に排出され消化を促しています。胆汁にはビルビリン、胆汁酸塩、胆汁色素、コレステロールなどが含まれており、濃縮されているものが胆のうに蓄えられています。
胆のうに発生する病気について
発生する病気としてはポリープ以外には以下の物があります。
などがあります。胆汁は胆汁色素の影響で黄色〜緑色の色をしており、濃縮されるほど緑色の色になっていきます。稀に嘔吐の症状などが酷いと、胆のうが十二指腸から逆流してきて黄色や緑色の嘔吐物を吐瀉する事があります。
胃が空っぽの状態から更に吐くと言った症状が発生している場合にこの吐瀉物が確認される可能性があります。
豆知識
鯛を捌く場合に緑色の液体が出てくることを経験したことはありませんか?あれが胆汁です。特に冬にはエサがあまり食べられずに胆汁が濃縮されるので緑色が強くなります。
身についたものを食しても特に問題ありませんが、洗っても色が落ちないので身の色が不味そうに見えます。
胆嚢ポリープとは?その種類と症状について
胆のうの機能いついてはお分かりいただけたかと思います。
では胆嚢ポリープとはどういった病気なのでしょうか。良性と悪性、それぞれの種類と症状についてご紹介します。
胆嚢ポリープってどんな病気?
胆嚢の内腔にできる粘膜の盛り上がりのことを胆嚢ポリープと呼びます。日本人の食生活の変化により消化器にポリープが発生する人の割合は増え続けていますが、胆嚢ポリープもその中の一つです。
良性のものには自覚症状はほとんどないため、健康診断や人間ドックを受けた際に偶然見つかる場合が多いとされています。近年増加傾向にあり、40~50代の方に多く見られる病気です。成人の約5~10%に発見されており、男女差はほとんどありません。
胆嚢ポリープのほとんどが良性のため、6ヶ月~1年ごとに検査を受けながら経過観察を行っていくのが一般的ですが、悪性の場合は摘出手術が必要です。
また、ポリープにはさまざまな形があり、キノコのような茎の形を持つ有茎性ポリープ、茎の形がはっきりと見られない亜有茎性ポリープ、扁平に盛り上がっている広基性ポリープなどの種類があります。
しかしポリープの形態だけでは癌であるかどうかの断定はできないため、精密検査を受ける必要があります。
どんな症状があるの?
良性の胆嚢ポリープに自覚症状はほとんどありません。
ただし胆嚢の出口付近にポリープができた場合には、腹部に痛みを感じることもあるとされています。胆石症や胆嚢炎などを併発している場合にも不快感やみぞおちの痛みなどが症状として現れます。
また胆嚢ポリープの中には胆嚢癌といった悪性のものが存在します。ポリープが10mm以上の大きさになると癌に発展する可能性が高くなり、癌化した場合は鈍痛や体重減少、さらには黄疸や下痢などの症状が出ることがあります。
検査技術の向上と普及により胆のうでのポリープの発見が増加してきていて、これらの問題が見つかる機会が増えています。主にエコー検査(超音波検査・超音波内視鏡検査)などでの精密検査を行う場合に発見されます。
胆嚢ポリープと診断を受けたら早期の精密検査を受けましょう。
胆嚢ポリープの種類
胆嚢ポリープにはいくつか種類があります。以下にまとめてご説明します。
【良性のポリープ】
基本的に発生している90%のポリープが以下の良性の腫瘍に該当します。特に治療を必要とせず、経過観察で様子をみるものがほとんどです。
①コレステロールポリープ
良性のポリープであり、胆嚢ポリープの中ではこの種類が最も多いとされています。胆汁に含まれるコレステロールが胆嚢壁に沈着し盛り上がったもので、多くは5mm以下のものとされています。
ほぼ円形の有茎性ポリープであり、表面は桑の実のような形をしています。胆嚢の体部や頸部にできることが多く、複数発生していることが多くあります。
②過形成ポリープ
胆嚢の粘膜表面の細胞が過剰に増殖したものを指します。ひだを寄せたような隆起の仕方が特徴です。
③炎症性ポリープ
慢性胆嚢炎・急性胆嚢炎の繰り返しなどの炎症によって胆嚢の上皮と粘膜組織がポリープ状になったものです。炎症性ポリープが悪性化する心配はほとんどありません。
④腺腫性ポリープ
こちらも良性ですが、稀に癌細胞との境界である異型細胞を伴うことがあり、胆嚢癌につながる恐れがあります。10mm以上になった場合は特に注意が必要です。
症状としては膨満感や食欲不振、上腹部の違和感や痛みなどが発生することがあります。また、良性のポリープの症状は基本的に無自覚ですが、稀に腫瘍からの出血が発生していることもあり、出血量が多いと貧血などを発生する場合もあります。
出血が発生している場合は手術によりポリープを除去し、治療を完了させる必要がります。
【悪性のポリープ】
非常に少ない確率ですが稀に悪性の腫瘍が発見されることがあります。未だにはっきりとした原因は明らかになっていませんが、生活習慣の乱れなどが原因で発生すると言われています。
⑤胆嚢癌
胆嚢の粘膜に発生する腫瘍のことを指します。悪性であるため、摘出手術が必要です。良性から変化してがんなどの悪性のポリープに変化してしまった可能性が考えられます。
初期の状態で発見されたポリープ状のがんであれば、手術での摘出で完治を目指すことが出来ます。転移の可能性が高まると、根治的な治療は難しくなります。
症状としては上腹部の鈍痛、体重の増減、お腹の調子が悪くなるなどの症状が自覚症状として発生しますが、初期の状態ではそこまで大きなものではないので自覚症状が発生してから検査をして発見される場合はかなり症状が進行している事が多いでしょう。
胆嚢ポリープの原因は?
では、胆嚢ポリープが発症する際に考えられる原因にはどんなものがあるでしょうか?
まず胆嚢ポリープには腫瘍性と非腫瘍性の2種類があり、超音波検査により血流の有無などを調べることで判断することができます。腫瘍とは、胆嚢の内腔にある粘膜細胞が増殖してできる胆嚢ポリープのことを指します。これには良性の腺腫と悪性の癌の2種類があります。
腫瘍性胆嚢ポリープが発生するはっきりとした原因は未だに解明されていません。
対して非腫瘍性の胆嚢ポリープは胆汁に含まれるコレステロール成分が胆嚢粘膜に張り付いてできることが多いとされています。そのため、発症する際に考えられる原因もいくつか確認されています。以下にその原因と説明をまとめました。
食事のとり方に問題がある
肥満症であったり、普段から脂肪分が多く含まれている食事をしている方は胆嚢ポリープを発症する危険性が高いと言われています。
以下にあげた食品を普段から多く摂っている方は注意が必要です。
- 動物性脂肪が多い肉類
- ベーコン・ハムなどの加工食品
- 卵
- バター
- チーズ
- たらこ・筋子・鰻・するめいかなど
- スナックなど油で揚げたお菓子
- チョコレートやクッキー
- アルコール類
また、胆嚢ポリープができやすい人の傾向として、柿・タケノコ・山菜・濃いお茶・濃いコーヒーなどを多く摂っている場合が多いというデータもあります。
こうした食生活を見直し、改善することで発症率を下げることができます。脂肪分の多い食品などの摂取はできるだけ控えるようにしましょう。
基礎代謝が落ちている
40~50代になると基礎代謝が減少してしまいます。その結果、食事の量や摂取する食品が若い頃と変わらなくても脂肪がつきやすく太りやすくなります。
そのためコレステロール値も高くなりがちです。そうしたことが原因で胆嚢ポリープの発症率も高まってしまいます。
食物繊維が不足している
胆嚢の病気の背景には食物繊維の不足も関係しています。胆汁が回腸から肝臓へ再吸収される際、腸内に十分な食物繊維があると胆汁の吸着をしてくれる作用があり、胆汁は体の外へ排出されます。
また新たな胆汁を作る際には原料としてコレステロールが使われるため、食物繊維の摂取によってコレステロールの効率的な代謝が期待できるのです。食物繊維が不足してしまうと、こうした体内の正常な働きが失われてしまいます。
胆嚢ポリープが見つかったら
では、胆嚢ポリープであると診断された場合どのように検査・治療が進んでいくのでしょうか。主な方法についてご説明します。
胆のうポリープの検査方法は?
検査は専門施設での精密検査で行います。大きな病院の消化器内科、胃腸科、内科などを受診すれば検査を受けることが出来ます。
検査方法には以下の手段があります。
- エコー検査(腹部超音波検査)・・・体外から腹部に超音波を当てて中の状態を確認します。患者の負担も少なく、最も多く使用される検査方法でしょう。
- 超音波内視鏡検査・・・胃カメラの先端に超音波センサーを搭載したものを使用してより詳しく、状況を確認します。内視鏡の専門医が行う検査方法です。
- 血液検査・・・肝臓や胆のうに異常がある場合には血液の成分変化により異常を発見することが出来ます。しかし、これは確定的に症状を診ることが出来る検査ではないので補助検査となります。
- CT検査・・・手術の必要がある場合に内臓の状態をより詳しく把握するために用いられる検査です。他の臓器への転移可能性や、周囲の血管の状態を把握するために用いられます。
ポリープが発生しているだけでは、自覚症状がほとんど皆無なので、健康診断などの際に偶発的に発見される事が多いでしょう。
また、他の病気を疑って上記の検査方法を行った場合に発見されることもあります。
良性ポリープが見つかった場合
先にご説明した通り、良性のポリープには治療や手術は必要ありません。経過観察を行っていくのが一般的とされています。目安として、5mm以下のポリープの場合は1年ごと、6~10mmのポリープの場合は6ヶ月ごとに行います。
経過観察中はポリープの大きさ・形状に変化がないかを定期的に検査していきます。検査の途中に悪性である兆候が見られた際には、その時点で治療を行う必要があります。
悪性ポリープが見つかった場合
悪性のポリープには摘出手術が必要です。手術の対象となるのは以下の症状がある場合とされています。
- ポリープが10mm以上の大きさである
- 経過観察中に大きくなっていることが確認された時
- ポリープの大きさに関わらず茎の形状があるもの
- 超音波検査で癌が疑われる時
これら以外にも血液検査やPDG-PET検査があり、細胞診で悪性の可能性がある場合は手術を勧められる場合もあります。
手術の行い方
最近では胆腔鏡下胆嚢摘出術という方法が一般的です。腹部に5~20mm程の穴を4ヶ所開け、内視鏡・超音波メス・鉗子などを挿入して行う方法です。
手術自体は30分~1時間程で終わり、術後は1週間程度で退院することが可能です。切る範囲が小さいため、術後の痛みも比較的少ないとされています。
胆嚢ポリープの予防方法とは!?
時には手術の必要もある胆嚢ポリープ、日頃から発症しないように予防を心がけたいですね!
そのためには、まず食生活の見直しをしていくことが求められます。
体内に余分な脂肪を溜め込まないようにすることがなにより大事です。日常生活で気を付けたいポイントをまとめました。
魚介類をメインに食べる
動物性脂肪の多く含まれている肉類の代わりに魚介類を多く摂りましょう。魚に含まれているDHAやEPAによって、コレステロール値を下げる効果が期待できます。
脂肪酸が体内で引き起こす炎症を鎮める作用も確認されているため、積極的に摂取しましょう。
油料理を避ける
できるだけ煮る・蒸す・焼く料理を心がけましょう。食用油の摂取を控えることで脂肪もつきにくくなります。
それでも油料理を作る際は、えごま油やシソ油、亜麻任油がおすすめです。これらに含まれるaリノレン酸にもコレステロールを下げてくれる効果が。少し値段は高いですが油を使う際には重宝します。
糖分の過剰摂取に気を付ける
糖分の過剰摂取は中性脂肪の増加につながり、体内の善玉コレステロールも減少してしまいます。糖分が多く含まれる菓子類を多く摂りすぎないように気を付けましょう。
また、健康に良いイメージがある果物でも最近は糖度を改良しているものが多く存在します。果物の果糖は体内に吸収されやすいとされているため、フルーツ缶やジャムなどの加工食品には特に注意が必要です。
食物繊維を摂取する
食物繊維には水溶性と不溶性とがあり、水溶性の食物繊維は腸内の善玉菌を増やしてくれる働きがあります。大腸へ運ばれる胆汁に悪玉菌が関わると発癌を促進する二次胆汁酸が出てくるのですが、水溶性の食物繊維がこれを防いでくれます。
不溶性の食物繊維には、広く知られているように便秘予防の働きがあります。便秘になると腸の内圧が高まり、それにより胆汁の流れが悪くなり胆石発作なども起こりやすくなってしまいます。食物繊維を摂取することでこうした症状を予防できるのです。
健康的な生活を心がける
医学的に最も病気にかかりにくいとされている「健康体重」という指標があります。
・身長(m)×身長(m)×22=適正体重
これを目安にし、肥満の傾向があればダイエットが必要です。
また、どのくらい体重がオーバーしているかを知るにはBMIでその度合いを計算するのが良いでしょう。
・体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))=BMI値
このBMI値が25を超えると危険信号とされています。
。また、食事は腹八分目までにするよう心がけましょう。朝食を抜いたり深夜に夕食をとるなど間隔の空いた食生活も避け、一日三食規則正しい食事をとるようにしましょう。
まとめ
脂質は三大栄養素の一つですが、日本人の食生活の変化によりその摂取量は増加傾向にあります。摂りすぎてしまうと胆嚢ポリープにかかりやすくなってしまう危険性が。特に40~50代の方や肥満の傾向のある方は発症しやすいとされているため、注意が必要です。
毎日の食事では脂肪分の多いものや油を使った料理を避け、野菜や魚を中心に摂るように心がけましょう。適度な運動も大事です。病気予防のため、健康のため、ぜひこの機会に生活習慣を見直してみて下さいね。
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