現在は健康診断で、腹部超音波検査が行われているところもあります。超音波は非常に高い、周波数を持っている音波です。その音波を腹部に当てて、跳ね返ってくるエコーで、デジタル画像化して、リアルタイムに腹部の臓器の様子を、観察して診療できます。
殆どの身体の臓器が腹部超音波や、内部エコー、頸動脈エコーを使って、身体の外から病気の診察が行えるようになりました。腹部超音波検査について見てみたいと思います。
超音波とは
超音波とは高い周波数の音波で、人間の耳には聞こえない音です。この音波は一行方向に強く放射され直進性があるため、それを利用して身体の内部を調べるというものです。
超音波検査には、腹部超音波検査、血管超音波検査、皮膚潅流圧検査、心臓超音波検査、頚部超音波検査、乳房超音波検査、経膣超音波検査、運動器超音波検査、その他の超音波検査など超音波には沢山の超音波が現代では使われています。
血管超音波検査
頸動脈超音波検査
検査時間は15分ぐらいで、動脈硬化の程度を調べます。頸動脈の肥厚・血栓プラーグ・内腔の狭窄等の有無を調べて、生活習慣病となる動脈硬化の早期発見を行います。
下肢静脈超音波検査
こちらの下肢静脈超音波検査は、20分から30分ぐらいかかります。静脈瘤の程度や、深部静脈血栓症の有無などを調べる検査です。
腎動脈超音波検査
こちらの腎動脈超音波検査は、大体15分ぐらいで検査できます。頸動脈狭窄や心血管疾患に合併すると言われる、腎動脈狭窄の有無や腎動脈の血流速度などを調べます。
皮膚潅流圧の検査
皮膚潅流圧検査は、カテーテル治療やバイパス手術、下肢虚血の重症度評価や難治性潰瘍の治癒予測などにも使われて、皮膚レベルと微小循環を調べる検査です。
心臓超音波検査
心臓の動きを実際に見る事の出来る検査です。
原理は魚群探知器と同じような仕組みで、心臓の筋肉や弁にあたって、跳ねかえってきた超音波をキャッチすることで、心臓の位置や像を形作る事ができる検査です。
頸部超音波検査
頸動脈エコーが最近は多く、使用されるようになりました。
頸動脈プラーグを観察することで、動脈硬化の予防に役立ち、脳梗塞、心筋梗塞の早期発見にもつながります。
乳房超音波検査
乳腺エコー
乳がんの検査ではマンモグラフィが有名ですが、若い女性などの様に乳腺が多い場合は、乳腺エコーにします。乳腺エコーの乳腺超音波検査は、しこりが良性か悪性かを調べる検査です。
また妊婦さんなどの乳がんを調べる場合でも、X線を使わない乳腺エコーで検査をします。マンモグラフィは放射線を使用しているので、年寄りには良いですが、30歳未満の高濃度の乳房の方や、特に妊婦さんは乳腺エコーで、検査をされたほうが良いでしょう。
超音波検査では「輝度が高い・低いと」か、「エコーレベルが高い・低い」と表現します。これは受診して跳ね返ってくる、反射波の強弱を表しています。
経膣超音波検査
経膣超音波検査は女性器の、子宮や卵巣を検査する方法です。腹部超音波検査も子宮や卵巣を検査できますが、こちらの経膣超音波検査は、映像で卵巣や子宮の症状を確認することができ、内診の手で触る情報よりも、多くの情報を手に入れる事ができます。
子宮疾患で分かることは、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮がん
卵巣疾患で分かることは、卵巣がん、卵巣嚢腫、チョコレート嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群
運動器超音波検査
運動器超音波検査は整形外科などで、広く利用されています。
腹部超音波とは
腹部超音波について見てみたいと思います。その前に超音波について基礎知識を知る事が必要となります。
超音波検査の種類について見てみます。
腹部超音波とは
腹部超音波とはそのような超音波の性質を利用して、腹部に超音波を当てて、腹部からかえってくる反射波によるエコーを、受診してそれをパソコンに取り入れて、コンピュータ処理をして画像診査を行うのが、腹部超音波検査の腹部エコーなのです。
腹部超音波検査
医師はエコーから異常を見つける診断を下します。腹部超音波検査で身体の組織の組成が、正常な細胞と異常な細胞を見つけます。
エコーに映し出される腹部の画像には、周囲の正常な組織と組成が異なる為、超音波画像に映し出されたときに、境界にコントラストを生じるため、医師が細胞の異常を見つける事ができるのです。
検査では腫瘍の大きさだけでなく、どのくらいの深さまで達しているかまで、検査することができます。
検査で病気が見つかり診断されれば、患者は精密検査を受けて、治療することが出来ます。
腹部超音波検査の基本走査
腹部超音波の検査の走査を、初心者の人が効率よく覚えるには、走査法のバリエーションを広げていく為に、代表的な断層像を覚える事です。
検査治療・診断
映像に映し出される画像は、リアルタイムに映し出されるので、検査のための治療にも使われることがあります。
例えば細胞の組織を検査のために採取したり、位置を確認しながら臓器の治療なども行われるのです。超音波検査では腫瘍の有無だけでなく、大きさや深さまで調べる事ができます。
また超音波検査は放射線を使わないために、産婦人科などは妊娠の胎児の診察にも使われ、検査を受ける人の苦痛もなく、被ばくもなく安全なため、色々なところで使用されています。
腹部超音波検査で分かるもの
腹部超音波検査で分かるものを、見てみたいと思います。可なりの内臓は腹部超音波で、検査ができる事が分かると思います。超音波にも色々ありますので、それを組み合わせると、X線を使わないで、被爆しなくて癌などの症状を、観察することが出来るようになりました。
腹部超音波検査で分かるものとは
超音波検査で分かるものとは
- 腹腔内臓器・・・肝臓・腎臓・胆嚢・膵臓・脾臓・胆管・副腎・後腹膜リンパ節・大動脈・下大静脈・胃・大腸・食堂
- 骨盤内臓器・・・前立腺・膀胱・子宮・卵巣・卵管
など人間の臓器の殆どが調べられる様になりました。
胆嚢
胆嚢がん
腹部超音波検査では、胆嚢がんか胆嚢腫瘍の悪性か良性かは見分けがつきません。その為に早期発見して精密検査が必要となってきます。
胆のうポリープ
胆のうポリープは人間ドックの10%に見られ、胆嚢の内側に見られる隆起が、10mm未満でなおかつ良性である所見が見られれば、心配はいりません。
詳しくは、胆嚢ポリープの原因は?ストレスや食生活について!を読んでおきましょう。
胆石
胆石は無症状の人も多くおられます。保有者の10%は無症状で生涯送る事になるでしょう。胆石があっても、黄疸や腹痛などの症状がなければ、何もしなくてもよいのです。
胆のうがんや胆石を合併する人は10%以下なので、この超音波の検診で指摘されることが多いです。
詳しくは、胆石の原因とは?症状や治療方法も詳しく知っておこう!を参考にしてください。
肝臓
肝臓は肝臓を流れる血液の内5分の4は、門脈から運ばれてくる栄養を受け取ります。
門脈は多くの消化管から流入しているので、門脈から流出する臓器等で、悪性腫瘍のがんなどが発生していると、肝臓に転移しやすくなる可能性があります。
血液の流れ
門脈や肝動脈から流入した血液は、毛細血管の小葉内に入ります。小葉内に入った後に中心静脈に飛び散って肝静脈、下肝静脈を通りながら、肝臓の外に排出していきます。
門脈枝
肝全体を右葉と左葉に分けて、肝臓は下大静脈と胆嚢窩を結ぶ仮想の線によって、機能的に右葉と左葉に大きく分ける事ができます。この境界線は実は中肝静脈が走っています。
その右葉を細かく分けて前区域と後区域、それをまた上下で2分して計4区域に分けます。そしてその境界線の指標の代わりに、それぞれの区域の中心に、同じ名前の門脈枝が存在することになります。
肋骨に囲まれて守られている肝臓は、肋骨と肋骨の骨の間から超音波ビームを入れます。そうする事で肝右葉を観察することができますが、肝左葉は観察できません。
こうして腹部超音波検査で、肝臓の様子を画像を見ながら、症状を観察することが出来るのです。
肝硬変
C型ウイルスが原因となる慢性肝炎の場合は、肝硬変や肝臓がんに移行しやすいので、この腹部超音波検査がとても分かりやすく、頻繁に進行の度合いなどを検査できるので、早期発見早期治療に役立っています。
またすい臓がんなど昔はとても難しかったものでも、医学の進歩でこの超音波検査で、調べられることが出来るのは、本当に医学の進歩の目覚ましさを痛感せざるにはおられません。
腹部超音波検査を受ける人が増えれば、早期発見早期治療ができ、また生命も伸びるものと思われます。
詳しくは、肝硬変の自覚症状を見逃さないように!注意すべき症状は?を読んでおきましょう。
脂肪肝
脂肪が肝臓に過剰に蓄積した状態が脂肪肝です。脂肪肝は生活習慣病と密接な関係があり、糖尿病や脂質異常症など、内臓脂肪型肥満や飲酒が原因で起こることが多く、脂肪肝から肝硬変や肝細胞がんに移行することが多いです。
詳しくは、脂肪肝の治療方法とは?原因や症状についても知ろう!を読んでおきましょう。
腎臓
腎結石
腎臓結石は結石が腎臓にできたものです。10mm以下の腎臓結石は、自然に排泄する場合がありますので、水分を多めにとって様子を見るようにすると良いでしょう。
また10mm以上の石は、定期的に経過観察をを行いながら、様子を見ていくと良いですが、腰痛や腹痛などの自覚症状が出ている場合は、速やかに泌尿器科を受診することが必要となります。
また結石が尿路に詰まったり、腎盂全体にできるサンゴ結石などは治療が必要となります。詳しくは、腎結石とは?原因や症状、治療法を紹介!予防方法や検査方法を知ろう!を読んでおきましょう。
腎のう胞
腎嚢胞は加齢により発生頻度が多くなる、液体が貯留した袋状の病変で、良性病変なので放置しても良い場合もありますが、のう胞が大きくなって破裂や、周辺の臓器への圧迫症状や、水腎症などは外科的手術を行うこともあります。
子宮
子宮がん
子宮がんは一般的には超音波検査は、検診には入っていません。子宮筋腫、子宮内幕症、卵巣嚢腫など、現代女性の病気に欠かせない検査のためには、腹部超音波検査は欠かせないものになってきています。
卵巣がん
初期の卵巣がんの場合は、経膣超音波検査の方が小さな腫瘍も良く分かるので優先されますが、広い視野で検査が受けられる点では、腹部超音波検査の方が良いです。
また卵巣がんの検査を受けるのに、腹部超音波検査の場合は下着を脱いで内診台に横たわる事がないので、経膣超音波検査が苦手な方でも、抵抗感がなく受ける事ができます。
腹部超音波検査のやり方
腹部超音波のやり方としては、上の写真にもありますように、広くお腹を出して患者さんも一緒に画像を見ながら、腹部の様子を観察できます。
腹部超音波の検査方法
お腹を出す
腹部超音波のやり方としては、お腹を広く出すことが大切なため、スカートやズボンを腰の骨位まで下げて、検査台に天井の方を向いて寝て、手を頭の下に置きます。
超音波を出すプローブと、皮膚との間に空気が入らないように、腹部ゼリーを塗って、プローブを腹部に押し当てます。
画像モニターテレビを見る
腹部内臓器の断面層の画像をモニターテレビで観察するのは、肝臓、胆のう、腎臓、膵臓などですが、検査の部位によっては、横向きになったり座った姿勢の時もあります。
被ばく
X線を使ったCTなどと違い、このエコーの場合は被ばくの心配は全くいりませんので、安心して検査を受ける事ができます。時間にして10~20分ぐらいで受けられます。
腹部超音波検査の注意点
腹部内に空気が存在すると、良く見えない事がありますので、検査を受けるときは絶食が必要となります。
また膀胱の場合は、尿が膀胱に溜まっている部分のほうが、観察がしやすいので、排尿を我慢しなければいけません。
検査結果の診断
結石は腹部超音波を強く反射するので、良くわかります。胆嚢内を見ると胆嚢内には、液体があるので黒く映ります。
その中に胆石の石があると、高エコー像の白い色に写り、また石は音波を反射するため、音響陰影がエコーが伝わらない像として、石の後ろに見えます。
ポリープも白く画像には移りますが、音響陰影が見られないので石との区別をしています。肝臓がんの場合は肝臓内に低エコー像の、腫瘍状の薄い白い像が見られます。
検査で異常が見つかる病気
この腹部超音波検査で異常が、見つかった時の病気には、どのような物があるか見てみました。
- 肝臓がん・肝硬変・肝血管腫・肝嚢胞・脂肪肝など
- 胆石・胆嚢がん・胆嚢ポリープ・胆管がん・胆管拡張など
- 膵臓がん・すい臓炎など
- 腎結石・腎がん・水腎症・副腎腺腫・腎嚢胞など
- 腹部動脈瘤・大動脈瘤・腹水など
- 子宮筋腫・子宮内膜症・子宮がん・卵巣嚢腫・卵巣がん・子宮外妊娠・胞状奇胎など
- 尿管結石・膀胱結石・膀胱がん・前立腺がん・前立腺肥大症など
超音波のやり方
超音波検査の難点というと、視野が狭い所です。しかしプローブを動かすことで、上から下まで観察することが出来ます。
肝の観察
★肝の観察をする場合、最初に右側が観察できるように走査を行うと、その後にプローブを患者の左側(少し右側)に移動すれば良いのです。
★左葉の端が観察できるまで、これを繰り返します。通常は4~5回程度繰り返すと全体の観察がほぼできます。
★見逃しを減らすためには、プローブを横にスライドするときに、観察する部位を少し重なる様にすると、見逃しをなくすことが出来ます。
★肝の観察を始めにする場合、肝の右側に入るようにします。そして上から下にプローブを走査すると、右肝静脈が観察できます。
★その状態でプローブを垂直に近づけることで、門脈枝も観察することが出来ます。そして少しだけ撮影範囲が最初と重なるように、プローブを右側に移動します。
★移動したらまた肝の上から下まで走査します。そうすると右肝静脈、中肝静脈、左肝静脈が観察することが出来ます。
★上から下まで走査したものを、プローブを立てるようにすることで、門脈横行部が観察することが出来ます。
★そして更にプローブを患者の左側(右側)に移動することで、左肝静脈、肝左葉が観察することができて、またプローブを立てに起こすことで、門脈左外上区域枝と、門脈左外区域枝が観察することができるのです。
心窩部縦走査
★心窩部縦走査で何が観察できるかというと、肝臓の縦断像を観察することができます。心窩部縦走査では、肝上極がとても観察しやすいです。
★肝上極は他の走査ではとても観察しずらいですが、この心窩部縦走査のこの操作方法を使うと容易に観察することが出来ます。
★肝右葉の右端に行けば行くほど、上極が肋骨が邪魔して観測しずらくなっています。ですからプローブを右側に少し倒すようにして、勢いを強めて観察します。
まとめ
如何でしたでしょうか?腹部超音波検査について、色々やり方とか、腹部超音波検査の利点などについて見てきました。
腹部超音波検査はX線の様な、放射線を使わないので、被ばくすることはありません。妊婦さんでも安心して利用できますし、何回利用しても身体に害がなく、また経過を知るうえでとても大切です。
ですから現代では多くの医療関係で利用されています。受けるほうの患者さんも何の苦痛もなく、ゼリーを塗られて少し冷たく、ねばねばして少し気持ち悪いですが、それも終われば綺麗にふき取って、その感触もありません。
この様な検査で殆どの内臓の臓器が観察できることは、予防医療としてこれからももっともっと進化を遂げる事と思います。
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