肝不全の症状・原因・治療について詳しく紹介!余命はどのくらい?

肝不全という言葉を聞いて、どのような原因や病状を想像しますか?

肝不全は、とても深刻な病状で生命の危機に瀕している状態といっても過言ではありません。しかし、肝臓は、なかなか症状が出ない臓器ですから、そのような危機感を持つことが難しいのも事実でしょう。

そこで、肝不全についてまとめてみましたので、肝臓の大切さを再認識する契機にしていただければ幸いです。

肝不全とは?

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そもそも、肝不全とは何でしょうか?

肝不全とは?

肝不全は、なんらかの原因により肝細胞が破壊され、肝臓としての役割を維持できなくなった「状態・病態・病状」のことです。

肝不全は、大きく2つの類型に分類されます。

  • 急性肝不全
  • 慢性肝不全

急性肝不全

肝臓の病歴がないにも関わらず、なんらかの原因により「急激に」肝細胞が破壊され、肝臓としての役割を維持できなくなった状態を急性肝不全といいます。

主に、劇症肝炎になったときなどに急性肝不全が現われます。劇場肝炎については、劇症肝炎とは?治療方法や原因、症状を理解しよう!を読んでおきましょう。

慢性肝不全

慢性肝不全は、なんらかの原因により「ゆっくりと長期的」肝細胞の破壊が進行し、その末期に肝臓としての役割を維持できなくなった状態です。

主に、肝硬変や肝臓癌になったときなどに慢性肝不全が現われます。

肝不全と肝硬変の違い

肝硬変は、慢性的な肝機能障害によって、肝細胞が壊死し繊維組織に置き換わった結果として肝臓が硬くなってしまう「病気・病名」です。肝硬変になると、肝細胞の再生は二度と行われません。

これに対して、肝不全は肝臓としての役割を維持できなくなった「状態・病態」です。ですから肝不全は、肝硬変や肝炎などの肝細胞を傷つける病気の結果として生じる状態のことをいうのです。

したがって、肝臓のほとんどが硬くなったような重度の肝硬変であれば肝不全といえますが、肝臓の一部が硬くなったに過ぎない軽度の肝硬変であれば肝不全とまでは言えません。

肝臓が悪くなるメカニズム

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肝臓は、どのような経過をたどって悪化していくのでしょうか?

肝臓は「沈黙の臓器」

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、悪くなってもなかなか症状が現れません。

肝臓は3000億個以上の肝細胞で構成され、栄養の代謝作用や解毒作用など判明しているだけで500以上の役割を担っています。

だからこそ、肝臓が全く機能しなくなると、人間の生命維持に大きな影響を及ぼしかねません。そのため肝臓には、一部の肝細胞が傷ついても再生させる再生能力があり、再生中にはその他の肝細胞が頑張って役割を補います。この残りの部分が役割をカバーすることを代償機能といいます。

この代償機能が、肝臓の悪化を現れにくくしているのです。これが、肝臓が沈黙の臓器と呼ばれる理由です。

肝臓が悪くなる過程

たとえば肝炎(肝臓の炎症)になると、肝細胞の壊死と再生を繰り返すことになります。この肝炎が慢性化すると、次第に肝細胞の再生が困難となり肝炎が肝硬変へと進行していきます。肝硬変が肝臓の大部分に及ぶと、肝不全という状態になります。

また、たとえばウイルス性肝炎が慢性化し、肝細胞の壊死と再生を繰り返す中で、肝細胞の遺伝子に異常をきたして悪性腫瘍に変化したもものが肝臓癌です。悪性腫瘍たる肝臓癌は、周囲の組織を侵し無制限に増殖していきますので、肝臓は最終的に機能不全、つまり肝不全に陥ります。

肝不全の原因

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肝不全は、肝臓細胞を損傷させる病気によって生じます。

急性肝不全の原因

急性肝不全の原因は、劇症肝炎が多いとされていますが、原因が特定されないことも少なくありません。

劇症肝炎

劇症肝炎とは、急性肝炎の中でも特に重症のものをいいます。厳密な定義は、肝炎のうち発症後8週間以内に高度の肝機能異常と肝性昏睡Ⅱ度以上を来し、プロトロンビン時間が40%以下であるものを劇症肝炎といいます。

簡単に言いますと、肝炎の初期症状(倦怠感など)が現われてから8週間以内に肝性脳症が発症するのが劇症肝炎といえます。

劇症肝炎の原因

この劇症肝炎を招くのが肝炎ウイルス、薬物、自己免疫疾患です。今なお原因不明の場合もあります。

  • ウイルス性肝炎(A型肝炎、B型肝炎)
  • 自己免疫性肝炎
  • 薬物性肝炎

A型肝炎

A型肝炎は、A型肝炎ウイルスに感染することで発症するウイルス性肝炎の一つです。

A型肝炎ウイルスには、糞便を通じた経口感染またはA型肝炎ウイルスに汚染された水、野菜、魚介類などを十分な加熱を経ずに食べることなどによって感染します。

A型肝炎のほとんどは急性肝炎で4週間から8週間程度で回復し、慢性化には至りません。稀に劇症肝炎になる場合があるとされています。

詳しくは、A型肝炎とは?症状や原因、予防接種の必要性について知ろう!を参考にしてください!

B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染することで発症するウイルス性肝炎の一つです。

B型肝炎ウイルスには、垂直感染(母子感染)と水平感染(性行為、輸血、臓器移植、刺青など)の感染経路があります。

B型肝炎は、慢性肝炎としても急性肝炎として発症し、劇症肝炎にもなります。B型肝炎では肝硬変を経ずに肝臓癌に至る場合も見られます。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、免疫システムの異常によって肝臓に炎症が起こります。

発症の原因は解明されておらず、急性肝炎、慢性肝炎のいずれでも発症します。

薬物性肝炎

薬物性肝炎は、他の病気の治療のために投与された薬物の副作用によって肝臓に障害が起こる病気です。

薬物性肝炎は、肝臓の解毒能力を上回る服薬によって肝臓がダメージを受ける中毒性の場合と、服用した薬物に対するアレルギー反応によって肝臓がダメージを受けるアレルギー性の場合に分類されます。

急性肝炎としても、慢性肝炎としても現れます。

慢性肝不全の原因

慢性肝不全は、一般に肝硬変を原因として発生します。

その肝硬変は、主に肝炎が慢性化することで生じます。また、肝臓癌を原因として慢性肝不全に至る場合もありますが、この場合、高い確率で肝硬変も併発しています。

肝硬変の原因

肝硬変の原因の主なものは次の通りです。

  • アルコール性肝炎
  • ウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎など)
  • 自己免疫性肝炎
  • 薬物性肝炎
  • 非アルコール性脂肪性肝炎
  • その他の原因

アルコール性肝炎

そもそも飲酒によって体内に入ったアルコールは、消化管で吸収されて門脈という血管を通り肝臓で分解されます。この分解の過程で中性脂肪のもとになる脂肪酸が生成されることで、体内に脂肪が蓄積されます。

また、アルコールの分解中は、脂肪の燃焼が阻害されていますので、ますます脂肪が蓄積されます。その結果として、脂肪が肝臓に蓄積されてアルコール性脂肪肝となります。

アルコール性脂肪肝が悪化するとアルコール性肝炎となり、さらに進行するとアルコール性肝硬変となります。

C型肝炎

C型肝炎は、C型肝炎ウイルスに感染することで発症するウイルス性肝炎の一つです。

C型肝炎ウイルスの主な感染経路は、血液とされています。以前は輸血による感染が多かったのですが、現在は針刺し事故、刺青、覚醒剤注射の回し打ちが主となっています。B型肝炎とは違い、性行為での感染や母子感染もほとんどありません。

慢性肝炎としても、急性肝炎としても発症しますが、劇症肝炎となることは稀であるといわれています。

B型肝炎とは違い、C型肝炎は肝硬変を経ずに肝臓癌に至ることは稀で、肝硬変への進行後に肝臓癌を発症します。詳しくは、C型肝炎は完治するの?症状や治療方法を紹介!を参考にしてください!

非アルコール性肝炎

非アルコール性脂肪性肝炎は、発生原因にアルコールが含まれないのにも関わらず肝臓に脂肪が蓄積されて脂肪肝を経て肝炎に至るものです。

発症のメカニズムは解明されていませんが、肥満やメタボリックシンドロームの関与が疑われています。

非アルコール性脂肪肝は、アルコール性脂肪肝よりもゆっくりと進行する傾向があります。

肝不全の症状

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肝臓は、人の生命維持にとても重要な役割を担っています。その肝臓が機能不全に陥ると多くの問題が生じます。そこで、肝不全によって引き起こされる症状を具体的に見ていきます。

肝不全の症状

肝不全になると、次のような症状が現れます。

  • 黄疸(おうだん)
  • あざの発生や出血が起こりやすい
  • 腹水
  • 肝性脳症
  • 全身の健康状態の悪化(疲労感、脱力感、吐き気、食欲不振)

黄疸

黄疸は、血液中のビリルビン濃度が上昇することによって、全身の皮膚や眼球などが黄色くなってしまう状態のことです。

ビルビリンは、赤血球の中のヘモグロビンが破壊されてできる黄色い色素です。ビルビリンは肝臓で処理され、胆汁を介して十二指腸から腸を通り便に混じって排泄されるのが通常です。しかし、肝機能障害などで胆汁の流れが妨げられると、ビルビリンが血液中に増えてしまいます。

あざの発生や出血

肝臓の役割の一つに、たんぱく質の合成があります。

肝機能障害でたんぱく質の合成ができなくなると、血液凝固に関わる血液中のたんぱく質(フィブリノゲン)が減少します。その結果として、あざの発生が増えたり、出血がしやすくなります。

腹水

腹水とは、腹腔に水が溜まった状態のことです。

肝機能障害でたんぱく質の合成ができなくなると、血液の浸透圧の維持や物質の運搬に関わるたんぱく質(アルブミン)が減少します。アルブミンは、浸透圧により血管中の水分を一定に保ったり、体内の余計な水分を血管に取り込む働きをします。

ですから、アルブミンが減少すると腹腔に水が溜まってしまうのです。

肝性脳症

肝性脳症は、肝臓の機能低下によって生じる意識障害のことで、肝性昏睡とも呼ばれます。

肝臓の役割の一つに、体内で発生した有害物質の解毒作用があります。肝性脳症の原因は不明な部分もあるのですが、肝臓機能の低下により、体内で発生した有毒なアンモニアを肝臓で無毒な尿素に変換することができなくなることが影響していると考えられています。その結果、神経毒性があるとされるアンモニアが血液中に増えて、脳神経などに害を及ぼしてしまうようです。

肝性脳症の昏睡度

肝性脳症は、状態のレベルにより次の5段階に分けられます。

①睡眠障害、抑うつ、周囲に対する無関心などの状態。

②時間や場所などの状況把握ができなかったり、粗くゆっくりとした不規則な震えなどが表われる状態。物を投げたりといった異常行動も表われ始めます。

③興奮状態、妄想状態による異常行動。寝たきり状態(外的刺激には反応する)。

④完全に意識を消失しますが、痛みに対しての反応はある状態。

⑤すべての刺激に対して反応がない深昏睡状態。

食道胃静脈瘤破裂

肝硬変により肝臓が硬くなると、腸管から肝臓に流れる門脈と呼ばれる血管に血液が入りにくくなり血流が滞ります。すると、門脈の血圧が高くなり門脈に流入するはずの静脈血が別の行き場を求めるため逆流し、胃の静脈や食道の静脈を経由して大静脈に流入する本来の血管以外の側副血行路が作られます。この側副血行路にできる瘤状の隆起が胃静脈瘤・食道静脈瘤です。

肝硬変の進行によって門脈の血圧がさらに高まると静脈瘤が破裂することがあり、これを胃静脈瘤破裂・食道静脈瘤破裂といいます。

食道胃静脈瘤破裂が起きると、吐血や出血性ショックに至る場合があります。

手のひらの紅斑(手掌紅斑)

肝臓の役割のひとつに、余分なホルモンを分解・代謝することで体内のホルモンバランスを保つ役割があります。

肝臓の機能障害によってホルモンバランスが崩れると、血液中に女性ホルモンが増えます。すると、女性ホルモンの血管拡張作用により、手のひらの毛細血管が拡張され血流が増えることで手のひらが赤くなってしまいます。この症状を手掌紅斑といいます。

※関連記事

手掌紅斑の原因とは?症状や発生の仕組みを知ろう!かゆみが判断基準になる?治療方法も紹介!

全身の健康状態の悪化

肝臓の様々な役割、たとえば栄養の代謝作用や有害物質の解毒作用が機能不全になると、結果として全身の健康状態が悪化します。疲労感、脱力感、吐き気、食欲不振、体重減少、むくみ、息切れなど様々な症状が現れます。

肝不全の治療

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肝不全の治療は、原因と症状に応じて行われることになります。急性肝不全と慢性肝不全の治療に大きな違いはなく、治療の緊急度が異なるだけです。

基本的な治療方法

肝不全の基本的な治療方法は、次の通りです。

  • 原因の除去
  • 内科的治療
  • 外科的治療

原因の除去

肝不全の治療には、肝不全の原因となる病変の治療が不可欠です。

ウイルス性肝炎であれば、抗ウイルス薬の使用によって肝炎ウイルスを排除します。アルコール性肝炎や非アルコール性肝炎の場合は、禁酒や食事制限によって、さらなる進行を防ぐ必要があります。自己免疫性肝炎では、免疫抑制剤の投与を行います。薬物性肝炎の場合、薬物の投与を中止する必要があります。

内科的治療

急性肝不全の場合、肝細胞の再生を助けるために人工補助療法で時間を稼ぎ、その間に原因の除去を行います。ただし、肝臓の多数の役割を人工的に補うことは難しく、肝細胞の再生を待つ間に合併症などが発症することもあるので、高度な全身管理が要求されます。

人工補助療法は、血漿交換法と血液浄化法を組み合わせて実施されます。

血漿交換法

血漿交換法は、患者の血液を体外に出して血漿成分を取り除いたら、健康な人の血漿成分を代わりに入れることで、肝臓のたんぱく質合成などの役割を補うものです。血漿成分には、フィブリノゲンやアルブミンが含まれるので、出血傾向や腹水の改善が見られます。

血液浄化法

血液浄化法は、血液濾過透析によって肝臓の解毒作用の役割を補うものです。肝性脳症につながるとされる毒性物質を取り除きます。

外科的治療

急性肝不全でも重症な場合や肝硬変が重度に進行した慢性肝不全では、内科的治療での救命が困難になります。

そのような場合に、唯一効果的な治療法となるのが外科的治療、すなわち肝臓移植です。ただし、肝臓移植には拒絶反応のリスク、手術自体のリスク、肝臓を提供するドナーの絶対的不足など多くのクリアすべき難題があり、簡単ではありません。

ちなみに、肝臓移植には生体肝移植と脳死肝移植があります。

肝不全になった場合の余命

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肝不全となった場合、治療をしなければ最終的には死に至ることになります。治療を行ったとしても、肝硬変を背景にした慢性肝不全では肝細胞の再生はできませんので、余命が大きく伸びることはないでしょう。

また、劇症肝炎を背景にした急性肝不全では、短いものでは数日で死に至る場合もあります。

しかし、肝臓移植に成功すれば、肝臓機能が回復し長く生存できる場合もあります。ですから、肝不全になった場合の余命は、ケースバイケースといえ一律に判断することはできません。

まとめ

いかがでしたか?

肝不全という病状の深刻さと肝臓の大切さを、ご理解いただけましたか?

肝臓は、生命維持の要となる臓器です。その肝臓が機能不全を起こすと、様々な症状が現れ最終的には死に至ります。

ですから、とにもかくにも肝臓が機能不全を起こす前、肝臓が再生できる時期に対策をとる必要があります。肝不全の原因となる肝炎や肝硬変の症状は、肝不全の症状と重なる部分があります。黄疸、手掌紅斑、疲労感などの健康状態の悪化などが見られたら、早く医師に相談しましょう。

  
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