「アルブミン」とは何かご存知ですか?聞いたことがあるようなないような、という印象の方も多いかもしれませんね。アルブミンは、身体の中で実は大変重要な役割をもつ血清蛋白です。健康診断でその数値を調べると、病気や栄養状態がよくわかるのです。
アルブミンとはどういうものか、アルブミンの基準値はいくつくらいなのか調べてみました。また検査値の異常ではどのようなことが考えられるのか、アルブミン値を正常値にして健康的な生活を送るにはどうしたらよいのかについても調べました。一緒にみていきましょう。
アルブミンとは
アルブミンとはどういうものか、まずみてみましょう。
アルブミンとは、血清蛋白のひとつで略して「ALB」と表記されます。語源は「卵白」の「Albumen」が由来となっています。検査結果の項目にはAlbと表記されていることもあります。
血清とは、血液中から凝固因子や赤血球を取り除いたもので、そのなかに含まれる血清蛋白の一種です。
アルブミンは血清総蛋白に多く含まれ、実に約67%を占めています。多くの量が含まれているので、血中濃度の変動がわかりやすいという特徴があります。
アルブミンは老化によって減少してしまいますが、アルブミンの値が高い人ほど寿命が長いと言われています。余命の余地因子とも言われているほど重要な蛋白質なのです。
アルブミンは身体にどのくらいある?
アルブミンは血液中には4g/dl含まれています。人体の血液量は体重のだいたい1/12くらいです。例として体重が60kgの成人でしたら、血液は約5kgが体内を流れていることになります。ですからアルブミンの量は200gということになります。
ちなみに残りの約30%は、グロブリンという血清蛋白です。検査によってはアルブミンとグロブリンの比を調べることもあります。グロブリンはリンパ節や脾臓などのリンパ球で作られています。
アルブミンはどこで作られている?
アルブミンは体内のどこで作られているのでしょうか。アルブミンが作られる場所は肝臓です。その作られる過程を見てみましょう。
食事で摂取された蛋白質は、まず胃の中でアミノ酸に分解されます。アミノ酸は、小腸や肝門脈を通り肝臓に運ばれます。肝臓に運ばれたアミノ酸をつないで合成することで、アルブミンは作られるのです。
肝臓で作られるアミノ酸の量は1日あたり大体6~15gです。アルブミンが作られる場所は肝臓だけなので、アルブミンの量を検査することで肝臓の働きがわかるのです。
肝臓で作られたアルブミンは、血液中に入り様々な栄養素やホルモンなどを全身の細胞に運びます。そのほかに、浸透圧といって血液中の水分バランスをとる働きもしています。アルブミンはだいたい14日から18日ほど働くと分解されてしまいます。
ではアルブミンの具体的な働きはどのようなものか、次のところで見てみましょう。
アルブミンの働きとは?
アルブミンは体内でどのような働きをしているのでしょうか。
栄養物質を運搬する働き
まずひとつめにあげられるのが、栄養物質などの運搬です。このはたらきから「輸送蛋白」と呼ばれることもあります。
血液のなかにある様々な物質と結合し、それぞれに適した目的のところに運搬しています。アルブミンの特徴として、他の物質を結合する力が強いということがあります。さらに結合することでアルブミンが安定するという特徴もあります。
運ぶものは、脂肪酸や、酵素、カルシウム、カリウムで亜鉛などの微量元素も運びます。またホルモンとも結合して運ぶ働きがあります。さらには服用した薬物を運ぶという役割も担っているのです。
アルブミンは栄養素を体中に運ぶことから、細胞の活性化につながりそれが免疫力アップにつながるということもいわれています。
血液の浸透圧を維持する働き
もうひとつ大切な働きが「血液の浸透圧維持」です。血管内の水を保つという、非常に重大な働きをしているのです。2つの異なる濃度の水溶液が、血管壁である半透膜を挟んだ時におこるのが浸透圧です。
半透膜には小さな穴が開いています。この穴を分子の小さな水などは通過できますが、分子の大きいアルブミンは通ることができません。アルブミンには水分を引っ張る力があるので、水はアルブミンの濃度が低い方から高いほうへ移動します。
つまり血管の外側と内側で、アルブミンが水分を引っ張りあいバランスをとっているのです。アルブミンの割合は血管内で40%、血管外が60%です。この濃度差でバランスを取り合っているのです。これが浸透圧です。
むくみの原因になる
例えばここでアルブミンがなんらかの原因で減ってしまうと、バランスが崩れてしまいます。浸透圧は低下し、その結果血管の内側に水を引っ張る力は弱まり、血管外の水分が増えてしまいます。
血管の外に水分が増えるとどうなるかといいますと、身体に「むくみ」が生じてしまうのです。
むくみにはいろいろな要因がありますが、蛋白質不足によるアルブミン量の低下によるむくみというのがあるのですね。
例えば、外国の飢餓に苦しむ、小さな子の写真を見たことがあるかと思います。その子たちの腹部はたいてい膨れています。これは栄養不足の結果、蛋白質が不足してアルブミン量も大変少ないためなのです。腹部に水分が溜まっているということなのです。
他にも浸透圧が低下しむくむ原因となる疾患があります。再検査や要精密検査になった場合はしっかり調べる必要があります。
アルブミンの基準値は?
ではアルブミンの基準値はどのくらいなのでしょうか。アルブミンに関する検査項目は2つあります。ひとつずつ見てみましょう。
アルブミン(Alb)
アルブミンの濃度検査は、主に栄養状態を調べる血液検査です。また尿中にアルブミンが漏れ出ている用を調べるために、尿検査を行って尿蛋白を調べる場合もあります。
検査機関や病院などで多少基準がことなりますが大体は「3.7~5.5g/dl」です。「3.8~5.3g/dl」としているところもあります。
ちなみに血清の総蛋白値はTPと表わされ、「6.0~6.4g/dl」です。
健康診断ではアルブミンも総蛋白も、一般の血液検査の項目に入っています。
アルブミンの検査結果が、3.6g./dl以下となると再検査や精密検査、治療を必要とします。3.6~3.9g/dl、または4.0g/dl以上では経過観察となります。
A/G検査(アルブミン/グロブリン比)
もうひとつアルブミンが関係する検査があります。このA/G検査といってこれは主に肝機能を調べる血液検査です。
アルブミン(A)とグロブリン(G)の比を調べるもので、この検査によって肝障害やネフローゼ症候群、または悪性腫瘍などの病気にかかっている可能性がないかがわかります。
A/G比の基準値は1.0~2.0です。アルブミン67/グロブリン33が基本とされています。なんらかの病気で、このA/G比は低下します。アルブミンが減少したり、またはグロブリンが増加したりで様々な病気が疑われます。
アルブミンの異常値の原因
アルブミンが異常値を示した場合は、原因はなにでしょうか。どのような病気の可能性があるのでしょうか。
アルブミン値の異常では
アルブミン値は基準よりも低くなると要精密検査となります。これにはさまざまな原因や病気が考えられ、症状もあります。
栄養失調
まず考えられるのは栄養失調です。栄養不足で蛋白質が不足しているため、アルブミンの数値も低くなってしまいます。無理なダイエットなどでも蛋白質が不足する恐れがあります。これはアルブミンを含む食品を積極的にとることで改善されます。
蛋白質不足はヘモグロビン不足も招きます。そうなると貧血症状を起こす場合があります。
肝臓の病気
アルブミンは肝臓の肝細胞で生成されます。肝臓に異常がみられると、アルブミンが生成できなくなり、アルブミンの値が低くなります。
たとえば急性肝硬変や肝硬変、アルコール性肝炎などの肝臓病である場合はアルブミンの生成ができません。
また、重症の肝臓病では、むくみや腹水などが見られるようになります。特に栄養不足でもないのにアルブミンの値が低い場合は、まず肝臓の異常が疑われます。
ネフローゼ症候群
ネフローゼ症候群は、尿にアルブミンが大量にでてしまうために起こります。原因は腎臓病である場合と、糖尿病性腎症や膠原病、がんなど悪性腫瘍が原因の場合があります、また薬の服用や場合によっては健康食品で起こる場合もあります。
体外に大量にアルブミンがでてしまうため浸透圧のバランスが崩れ、むくみが症状としてでます。むくみがひどくなると、目も開けられない状態になったり、お腹や胸にまで水が溜まることもあります。また血圧が高くなるなどの症状がでることもあります。
また、他の症状としてはコレステロール値が高くなります。これは不足してしまうアルブミンを肝臓で作る際、一緒にリボ蛋白という悪玉コレステロールも作られてしまうからです。そのためコレステロール血症となってしまうことがあります。
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症という病気は、糖尿病による腎臓の病気です。糖尿病の3大合併症のひとつです。この糖尿病性腎症はネフローゼ症候群の原因ともなります。
自覚症状がないまま進行していく病気なのですが、微量アルブミン尿検査といって、尿中の微量なアルブミンを調べる検査で見つけ出すことができます。また尿潜血が見られることもあります。
微量アルブミン尿が出る時期は、糖尿病性腎症の病気では2期にあたり「早期腎症期」といいます。
3期にあたる「顕性腎症期」になると、なかなか良い状態に戻すのは難しいので2期までに糖尿病性腎症を見つけることが重要になります。
検査は蓄尿して一日の排泄行を調べるのが最もよいといわれています。尿糖を調べるのと同じような、簡便な尿定性試験紙を用いる方法もあります。
糖尿病にかかっている方は血糖値をコントロールすることと、血圧が上がらないようにしていくことが大切です。
高尿酸血症の人も注意!
高尿酸血症である場合も、微量アルブミン尿のリスクが高まるというデータもあります。尿酸値が高い人も注意が必要です。
慢性腎臓病
慢性腎臓病(CKD)という病気でも尿にアルブミンがでます。ほかにクレアチニンの検査値とも合わせて判断します。もともと高血圧や糖尿病だと、可能性が高くなりますが自覚症状がありません。このCKDは、心血管病の危険因子といわれています。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症によって、体内の代謝亢進が生じます。このため蛋白質の分解も亢進してしまいます。これを蛋白質の異化亢進といい、アルブミンの数値低下が見られます。アルブミンを生成しても、蛋白質が壊されてしまうのです。蛋白質の異化亢進は体内に炎症がある場合も見られます。
昔甲状腺機能亢進症に罹ったことがある人が、気づかないとうパターンもあるので気を付けたほうがいいですね。
やけどや発熱でも減少する
広範囲の、そして重症のやけどが原因で、アルブミンが低下することがあります。皮膚からの浸出液に、蛋白質が含まれるためです。
また発熱や、感染症、日焼けなどでもアルブミンは低くなることがあります。
虚血性心疾患の危険因子
低アルブミン症は、動脈硬化性疾患の危険因子となりうるとも言われています。低アルブミンで、コレステロールが高いと虚血性心疾患のリスクも増える可能性があると言われています。
アルブミンが高い時は
アルブミンはめったに高くなることはありません。もし高い値がでたときは、脱水症状を起こしている可能性が高くなり、血管内の水分が減少していることが考えられます。その時は尿素窒素という値も、Na、Clも高い値を示しています。
A/G比の異常では
A/G比の異常値ではどのようなことがわかるのでしょうか。
高くなっている場合
A/G比が高くなった場合は体調や遺伝による影響と考えられます。また副腎皮質ステロイド剤を服用していると高くなることがあります。
低くなっている場合
A/G比が低い値で、アルブミンが低下している場合は重症の肝臓障害やネフローゼ症候群、甲状腺機能亢進症が考えられます。また栄養不良でもA/G比は低くなります。
A/G比が低く、グロブリンが上昇したときもいくつかの病気が考えられます。
例えば血液細胞のひとつである、「形質細胞」のがん多発性骨髄腫やマクログロブリン血症、また膠原病や慢性の感染症でもA/G比の値は低下します。
肝硬変や肝炎などの肝臓病の可能性もあります。
アルブミンの数値が異常だったら病院へ
健康診断でアルブミンの数値が低い、と言われ精密検査や再検査を受けるように言われたらなるべく早く検査を受けるようにします。そしてなにか疾患が見つかった場合は、医師の指示にしたがってしっかり治療を受けましょう。
年に一回は健康診断を受けてアルブミンの値を確認すると、安心ですね。
アルブミンをあげるには?
もし栄養不足といわれた場合は、食生活を見直してアルブミンをあげる食事をしていきましょう。また、シニアになっていくとだんだんアルブミンが不足になる人が多くなります。長寿にも関わるというアルブミンは食事でしっかりあげていきましょう。
もちろん普段持病などがありお医者さんに罹っている、食事の指導を受けているという方はまずお医者さんに相談してからにしましょう。例えば尿酸値が高くて病院に行っている方は、お肉を食べるなど動物性蛋白質の摂取は気になりますよね。また腎臓病の方も蛋白質を、自己判断で勝手に摂るのは控えましょう。
お肉をしっかり食べる
アルブミンの値を上昇させるには、まず3食をバランスよくしっかり食べることです。食事を抜くのはよくありません。どの年代の方もまずはきちんと食事をとる、隔たらないようにする、ということが大切です。
シニアの方は
シニアになると控えてしまいがちなお肉や油脂類もよく食べる事が大切です。そのほか動物蛋白であるお魚や卵、乳製品も摂ることを心がけます。牛乳も積極的に飲むようにするといいですよ。
お子さんが大きくなって独立して、夫婦二人になったという方は特にあっさりした食事になりがちなようです。
太りそう、とかお腹に持たれるなど様々な理由で動物性蛋白質を控えていた方は、調理法などを工夫して食べてみてください。香辛料をちょっと加えるだけでも、食べやすくなったりするものです。お肉も牛、豚、鶏とまんべんなくいろいろな肉を食べることが大切です。
お肉や魚をしっかり食べて蛋白質をとることは、身体の筋肉にもいいことです。筋肉をしっかり維持することで寝た切りを防ぐこともできます。当然、野菜もたくさん一緒にとることを忘れないようにしましょう。
また、お酒の飲みすぎで肝機能が低下することがあります。飲酒はほどほどにしましょう。
若い方は
一方、若い人は、ついファストフードやインスタント食品が多くなりがちです。特に一人暮らしで忙しくしていると、良質の動物性蛋白質を摂る機会が少なくなりがちなのではないでしょうか。
自炊が難しい方はコンビニでも、なるべくお肉やお魚を買うなどして蛋白質が少なくならないようにすることが大切です。
まだ若いから大丈夫!と安心していないで、若いうちから体のことを考えた食事をとるようにしましょう。
まとめ
アルブミンは身体に大変重要な役割を持つ蛋白質です。健康診断の検査項目にも入っているので、まだ調べたことのない人は一度調べてもらうのもいいですね。
アルブミンが低くなると、栄養不足が原因だったり思いもかけない病気が原因だったりします。とくに「この現代社会で栄養不足なんて」と思うかもしれませんが、不規則な食事や隔たった食事で意外と起こりがちなのです。
アルブミンの値がほどほど高い人は、長生きするといわれています。健康的に、元気に長生きするためにもアルブミンのことを考えた食事を心がけてくださいね。
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