気管支拡張症とは?症状・原因・治療法を知ろう!予防する方法は?

咳が止まらない。痰が多い。時には血痰が出る・・・「肺癌?」と思う人が多いのですが、「気管支拡張症」かもしれません。

「なんだ。肺癌じゃないのか」と安心するのは、早すぎます。「気管支拡張症」は、気管支が広がって、元に戻らない呼吸器系疾患です。治療しても、広がった気管支は元に戻りません。先天性と後天性があります。

気管支拡張症が悪化すると、呼吸不全を起こします。また、他の呼吸器系疾患と合併症を起こすことがあります。

気管支拡張症の原因と症状、関係の深い呼吸器系疾患、治療法や予防法についてお伝えしますね。

気管支拡張症とは?

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気管支拡張症とは、何らかの原因で気管支壁が損傷され、気管支が拡張してしまう呼吸器の疾患です。先天性と後天性があります。

男性より女性の方が発症しやすく、日本では25,000人の患者がいるようです。ただ、原因がはっきりしている場合は、「気管支拡張症」ではなく「肺炎」「肺気腫」など、原因となる病名で呼ばれます。

[拡張した気管支は、治療をしても元に戻らない]

治療すれば元に戻る病気と、治療しても元に戻らない(非可逆性)病気があります。「気管支拡張症」は、気管支壁が破壊されて、非可逆的に拡張します。

気管支の役目

気管は何度も枝分かれして「気管支」となり、枝分かれするにつれて細くなります。口や鼻から入ってきた空気は、気道(気管・気管支など)を通って左右の肺に送られ、肺胞にたどりつきます。

肺胞で、血液のガス交換を行います。吸い込んだ空気中の酸素を血液中に送り込み、血液中の二酸化炭素を呼気として吐き出すのです。

(血液循環と酸素)

心臓から酸素を多く含んだ血液が動脈を通って全身に送り出されます。各所で必要な酸素と栄養分を渡し、老廃物や二酸化炭素を血液中に取り込みます。二酸化炭素の多い血液は静脈を通って心臓に運ばれます。この二酸化炭素が多い血液は心臓から肺動脈を通って肺に運ばれ、肺胞で二酸化炭素と酸素の交換を行います。酸素をたっぷり取り込んだ血液は肺静脈を通って、心臓に行きます。

肺胞で二酸化炭素と酸素のガス交換がきちんと行われないと、血液が酸素を運ぶことができなくなり、全身で酸素不足が起こり、様々な障害が生じます。

気管支の拡張と悪循環

気管支は枝分かれするごとに細くなるものですが、何らかの理由で気管支壁が損傷されると、気管支が、円筒状・紡錘状・嚢(のう=袋)状に拡張します。

気管支は、中枢部から抹消の内腔まで拡張します。全体に起きることも、局所的に起きることもあります。どちらにしても、1度拡張した気管支は、治療しても元に戻りません。

気管支が拡張すると浄化作用が低下します。痰の分泌が増え、痰が溜まりやすくなります。細菌が繁殖して肺炎や気管支炎など感染症が起きやすくなります。炎症が起きると、さらに気管支壁が破壊され、気管支拡張が生じるという悪循環に陥ります。

気管支が拡張されると、血管が増えます。そのため、出血しやすくなり、血痰や喀痰が生じます。

気管支が拡張すると、肺機能が低下しますから、呼吸による血液のガス交換がスムーズに行われず、呼吸不全になります。呼吸不全とは、動脈血中の酸素が不足して、生体が正常に機能できなくなった状態です。

[気管支拡張症の先天的原因]

気管支拡張症は、先天的な原因で発症することがあります。

先天性気管支拡張症では、生まれつき気管支が拡張しています。

原発性線毛機能不全

気道粘膜の線毛系に先天的な異常があり、粘液線毛輸送系の機能が十分に働かず、気管支が広がってしまいます。先天性疾患です。

気道粘膜の粘液線毛には、菌から気道を護る働きがありますが、先天的異常により機能しないと、しばしば肺感染症が発症します。

カルタゲナー症候群

極めて珍しい遺伝性疾患です。気管支拡張の他、副鼻腔炎、内臓逆転症が起きます。

[気管支拡張症の後天的原因]

後天性の気管支拡張症の原因は、細菌またはウイルス感染により気道から肺にかけて繰り返し炎症が起きたり、気道閉塞や免疫異常(アレルギー性肺疾患)などが起きたりすることです。特に、細菌やウイルスによる感染性呼吸器疾患が重視されます。

乳幼児・幼児期の細菌やウイルスの感染による肺疾患(呼吸器疾患)が、その後、気管支拡張症を引き起こすことが少なくありません。

乳幼児・幼児期の感染症

乳幼児とは0歳~満1歳、幼児とは満1歳~就学時までを意味します。

乳幼児・幼児期に麻疹・百日咳・肺炎・インフルエンザなど重度の感染症にかかった場合、その後の肺の発達が阻害されることがあります。気管支や肺胞の発達が阻害されて、気管支が拡張します。重度の感染症の後遺症として、気管支拡張症が起きる可能性があるのです。

乳幼児・幼児・小児のウイルス性または細菌性感染症には十分な注意が必要です。重篤な病状にならないうちに、早めに医師の診療を受けることが大事です。

また、母体が細菌やウイルスに感染していると、胎児や乳幼児に感染して、重篤な呼吸器疾患が起きて、気管支拡張症になることがあります。

(ヒトパピローマウイルス HPV)

ヒトパピローマウイルスは、乳頭腫つまり疣(イボ)を発症するウイルスです。粘膜に感染するタイプと皮膚に感染するタイプがあります。

皮膚に感染すると「ウイルス性疣贅(ゆうぜい)」というウイルス性皮膚炎が起き、手足や顔、首などに良性のイボができます。粘膜に感染するヒトパピローマウイルスは、子宮頸癌を引き起こすことがあります。

性交渉や皮膚接触により、女性の80%が1度はヒトパピローマウイルスに感染した経験があるようです。たいてい、2~3年でウイルスは消えてしまいますし、乳頭腫(イボ)のような異常形成も治ります。しかし、中には、ゆっくりと子宮頸癌に進行するものがあります。

ヒトパピローマウイルスに感染して外陰部にイボ(乳頭腫)ができることがあります。ウイルス性のイボは妊娠すると大きくなり、時には産道を塞いでしまいます。

生まれる赤ちゃんの喉に感染することがあります。乳幼児・幼児の気管など気道に乳頭腫が繰り返しできるようになり、ウイルス感染による炎症が起きるようになります。気管支拡張症が起き、呼吸困難になります。

感染症による気管支拡張

成長してからも、細菌やウイルスに感染して、気道など呼吸器に繰り返し炎症が起きると、気管支壁が破損されて、気管支拡張症が発症することがあります。風邪やウイルス性または細菌性肺炎などを繰り返しているうちに気管支拡張が起きてしまうのです。

原因病原体は、インフルエンザウイルス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌などです。

(誤嚥による細菌感染)

飲食物や胃液が誤って気管や気管支に入ることを「誤嚥」といいます。

加齢とともに嚥下機能が低下して、飲み物や食べ物をうまく呑み込めず、誤って気道から肺に入ってしまうことがあります。唾液とともに細菌が気道から肺(気管・気管支・肺胞)に入って繁殖し、感染症を起こします。

胃液が食べ物といっしょに逆流して肺に入り込むことがあります。「逆流性食道炎」は、通常では起きない胃液の逆流が起きて、食道に炎症を起こす消化器系の病気です。逆流した胃液が細菌とともに気道から肺に入りこみ、肺で細菌が繁殖します。

誤嚥により肺に細菌感染が生じて炎症が起きることを「誤嚥性肺炎」と呼びます。

(免疫不全)

免疫不全には先天性と後天性があります。後天性免疫不全症候群をHIVまたはAIDSといいます。

免疫不全は、免疫機能が欠損して正常に働かないため、細菌・ウイルス・真菌に感染しやすくなります。免疫不全により、気管支が感染性の炎症を繰り返し、気管支拡張症が起きることがあります。

気道閉塞

気道に炎症が起き、気管支の先端の肺胞が潰れてしまい、呼吸困難になります。気道閉塞性疾患といいます。

「気道閉塞」とは、気道が塞がれて、あるいは気道狭窄が起こって、空気の通りが悪くなることです。そのため、空気の通りを良くしようとして、気管支拡張が起きることがあります。

(慢性閉塞性肺疾患 COPD)

タバコなど有害物質を長年気道から肺に送り込み続けたために、気管支に炎症が起き、肺胞が潰れて肺気腫になります。酸素と二酸化炭素を交換する肺の機能が低下し、呼吸不全が起きます。

肺気腫になると、気管支が異常に拡張し、呼吸を阻害します。喫煙習慣のある中高年に発症しやすい、生活習慣病の1つです。

(びまん性汎細気管支炎)

肺胞の少し手前の呼吸細気管支に慢性的な炎症が起き、咳や痰が多く出て、息が苦しくなります。細菌感染が加わることも多く、咳や痰、息苦しさが長く続き、進行すると呼吸不全になります。

原因は遺伝性要因と環境的要因が大きく関わっているようです。

副鼻腔炎とも深い関係があります。びまん性汎細気管支炎患者の80%以上が慢性副鼻腔炎、つまり蓄膿症を併発しています。青少年期に、慢性副鼻腔炎の症状を発することが、びまん性汎細気管支炎の始まりのようです。鼻詰まり(鼻閉)・膿状鼻汁・嗅覚低下などの症状が見られます。

日本では、びまん性汎細気管支炎による気管支拡張症が多かったのですが、最近では減少傾向にあります。替わって、非結核性抗酸菌性によるものが増えています。

アレルギー疾患

免疫異常には、花粉症や喘息のようなアレルギー疾患と、リウマチなどの自己免疫疾患があります。免疫機能が過剰に働いたり、自分の身体を攻撃したりするのです。

呼吸器系のアレルギー疾患というと、気管支喘息です。ハウスダストやダニなどにアレルギー反応を起こし、慢性的な気管支炎が生じます。細菌やウイルスに感染して、慢性的気管支炎を発症することもあります。

気管支喘息の特徴は、ヒューヒューという呼吸音です。「喘鳴」といいます。可逆的な(元に戻る)気道狭窄が生じて、空気の通りが悪くなり、呼吸困難を起こします。

閉塞性換気障害

上記の肺気腫・びまん性汎細気管支炎・慢性気管支炎・気管支喘息を総称して、「閉塞性換気障害」といいます。

いずれも、気管・気管支に炎症が起きたり、肺胞の破壊が起きたりして、空気の通りが悪くなります。肺の換気機能が低下して、酸素と二酸化炭素の交換がうまく行われず、呼吸不全になります。酸素を十分に血液中に取り込めず、全身が酸素不足になり、様々な障害が生じます。

気管支拡張症の症状と治療

beauty-655958_960_720咳

気管支拡張症の特徴的な症状は、湿った咳と多量の痰です。合併症が起きる可能性もあります。

広がった気管支は元に戻らないので、治療は対症療法が中心です。

[気管支拡張症の症状]

痰と咳

慢性の膿性痰が多量に出ます。ドロリとしてネバネバした、粘性の濃い痰です。緑色もしくは黄色の痰です。1日に100mlも痰が出ることがあるといいます。

痰は咳といっしょに出ます。咳は湿ったゴホンゴホンという咳です。結核性の乾いた咳とは違います。

血痰という血の混じった痰が出ることがあります。咳が酷くなると、咳とともに喀血(血を吐く)することがあります。鮮血を吐きます。

気管支拡張により気管支分泌液(痰)が多くなって、拡張した部分に溜まるので、就寝時、身体を横にすると、痰が流れ出たりして、咳こむことが多いようです。

胸部の痛みと呼吸困難

咳が激しいと、胸部が痛くなります。息苦しくなり、呼吸困難が起きます。

感染症の症状

ウイルスや細菌に感染して炎症が起こり、気管支拡張症を発症した場合は、咳や痰の他に感染症の症状が出ることがあります。

38℃以上の発熱・下痢・嘔吐が起きます。下痢や嘔吐など消化器系症状が現れた場合は、脱水症状が起こる可能性があります。

感染症による場合は、急性憎悪する可能性があるので要注意です。咳・痰・血痰・喀血に加え、発熱・嘔吐・下痢などが憎悪する場合は、すぐに病院に行くことをオススメします。

全身倦怠感・体重減少

発熱や呼吸困難のために、全身がだるく感じます。脱力感が生じます。体重が減ります。

バチ状指

気管支拡張症が重篤化すると、手指の爪の付け根が肥大して、爪の先が掌(てのひら)の方に曲がります。これを「バチ状指」といいます。

長期間の低酸素血症により起こります。

多血症

気管支拡張症の末期症状が「多血症」です。

呼吸機能が低下するので、血液中の酸素が不足します。全身が酸素不足になりますから、酸素を運ぶ赤血球を増やして補おうとします。血液中の赤血球が多くなるのが「多血症」です。

多血症になると、血液濃度が高くなるので、動脈硬化症や血栓症が起きやすくなります。糖尿病や脂質異常、高血圧、肥満など代謝異常によって起こる代謝性疾患を持っている人が多血症になると、動脈硬化が促進され、脳血管障害や心疾患のリスクが極めて高くなります。

詳しくは、多血症の症状って?原因や治療方法、種類について知ろう!を読んでおきましょう。

[気管支拡張症の合併症]

気管支拡張症になると、肺炎・気管支炎・膿胸・膿肺瘍などの肺感染症を併発することが多くなります。また、気管支拡張症の患者全体の30~40%が副鼻腔炎を発症します。

肺炎・気管支炎

気管支・細気管支・肺胞が、ウイルスや細菌など病原体に感染して炎症を起こす、肺疾患を「肺炎」「気管支炎」といいます。

咳・発熱・胸部の痛みが主な症状です。肺炎は日本人の死因の第三位です。高齢者が死亡することが多く、肺炎による死亡者の90%以上が65歳以上です。

膿胸

肺は胸膜という薄い2枚の膜に包まれています。2枚の胸膜の間を胸腔といい、胸水が溜まっています。細菌やウイルスに感染して胸膜が炎症を起こすと、胸水が増えます。増えた胸水の中で細菌が繁殖して、胸水が膿状に濁ります。これが「膿胸」です。

発熱・咳・膿性痰・胸部の痛みなどが主な症状です。詳しくは、膿胸とはどんな病気?種類や症状、原因を紹介!治療に手術が行われるのはどんな時?を参考にしてください。

肺膿瘍

肺が細菌感染により炎症を起こし、肺組織(気管支・細気管支・肺胞など)が破壊されて空洞化すると、空洞に膿が溜まるようになります。これが肺膿瘍です。肺炎が重症化・慢性化した場合に発症します。

気管支拡張症と合併して起こりますが、大量飲酒・糖尿病・誤嚥を繰り返す・免疫機能低下の人は、発症する可能性が高くなります。

発熱・咳・膿性痰・血痰・胸部の痛み・呼吸困難・意識混濁が生じます。

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

風邪などで鼻腔炎が副鼻腔に広がり、慢性化したり、アレルギー性鼻炎から慢性の副鼻腔炎を起こしたりします。

鼻詰まり・膿性鼻汁・嗅覚低下などの症状の他に、気管支喘息と合併する場合は、鼻茸というポリープがよくできます。

[気管支拡張症の検査と診断]

気管支拡張症の検査は、Ⅹ線などの画像検査と痰の病原体培養、呼吸機能検査などです。

肺癌などと紛らわしい症状もあるので、慎重に検査する必要がありますが、識別はそれほど難しくありません。

画像検査

気管支拡張症の診断は、胸部Ⅹ線検査や胸部CT検査における画像を基にします。

気管支壁が厚くなっていたり、気管支の拡張部分に水が溜まっていたりすると、気管支拡張症の可能性が高くなります。

痰の培養による細菌検査

喀痰を培養して細菌検査を行います。

喀痰から繰り返し細菌が培養されると、気管支拡張症の可能性が高くなります。

呼吸機能検査・肺機能検査

気道閉塞が原因で気管支拡張症が起きる場合は、呼吸機能検査(肺機能検査)で機能異常が発見できます。

気管支鏡検査

気管支鏡検査を行うと、気管支の出血している場所を特定できます。また、組織を採取して、細菌検査を行い、細菌の種類を特定することができます。

聴診

聴診器を使い、呼吸音を聴診し、肺の状態をリアルタイムで把握します。聴診音によって、肺の換気状態や気道の状態、痰の溜まり具合、気道閉塞などを確認できます。

[気管支拡張症の治療]

まず原因となる疾患を治療を優先します。

気管支拡張症を悪循環させないように、去痰薬を投与したり、痰の排出を行ったりします。気管支拡張療法を行うこともあります。内科的治療(保存療法)が主になります。

治療薬としては、抗菌薬・止血薬・漢方薬などを投与します。

原因となる疾患・合併症の治療

気管支拡張症の原因となる感染症や閉塞性換気障害がある場合は、その治療を優先します。

感染症などの急性憎悪期には抗菌薬を経口投与したり注射したりします。気道感染の憎悪期には抗菌薬を適宜投与して、気道感染の進行を止めるようにします。

ただし、感染症による気管支拡張症が繰り返し起きると、抗生物質に耐性を持つ菌が生じる可能性があり、薬が効かなくなることもあります。

膿胸・肺膿瘍・慢性副鼻腔炎など合併症が起きている場合、それぞれに応じた薬を投与するなどして、治療を行います。併発する感染症には、マクロライド系抗生物質の内服が効果があるようです。

痰の排出・去痰

気管支の中に痰を溜めないようにして、さらなる感染による病気の進行を防ぎます。

去痰薬・喀痰調整役を投与します。吸入療法を併用します。患者本人はできるだけ水分を取るようにして、痰の排出を促します。

体位ドレナージを行い、痰を排出します。身体を傾けて、いろいろな体位を取り、肺や気管支に溜まっている痰を排出します。

(漢方薬)

鎮咳・去痰には漢方薬を勧める人もいます。鎮咳・去痰・慢性副鼻腔炎など、漢方薬が驚くほど効く人もいます。しかし、漢方薬は合う人と合わない人がいるので、呼吸器内科の医師と漢方医に相談する必要があります。

血痰・喀血

血痰や喀血が生じたら、止血薬を内服して安静にします。少量の血痰や喀血は収まります。

血痰や喀血による出血が多い時は、入院が必要になります。止血薬を点滴したり、気管支鏡で出血している箇所を見つけ、止血薬を直接注入します。

外科的療法が必要となることがあります。大腿部からカテーテルを動脈に入れ、出血している血管を探して血管(動脈)を塞いでしまいます。「気管支動脈塞栓術」といいます。

外科手術をする場合もあります。

[呼吸器内科]

湿った咳・多量の痰や血痰・喀血などの症状が続いたら、内科医の診療を受けます。できれば、呼吸器内科で診てもらうことをオススメします。

特に、血痰や喀血が多い時は、呼吸器内科専門医に診療してもらうようにします。

気管支拡張症の症状は、肺癌の症状とよく似ていますが、治療方法は全く違います。そのため、呼吸器内科専門医による的確な診断が必要なのです。

気管支拡張症の予防

girl-1929504_960_720風邪

気管支拡張症の予防は、乳幼児期から小児期(就学時~満15歳)にかけてと、成人(満15歳以降)してからでは、少し違います。どちらでも、大事なことは、繰り返し風邪をひいたり、インフルエンザにかかったり、呼吸器系感染症(肺炎など)にかかったりしないことです。

予後は悪くないのですが、1度拡張した気管支は元に戻らず、感染症を引き起こしやすくなりますから、繰り返し発症しないように心がけます。

[乳幼児期から幼児期・小児期の感染症に注意する]

乳幼児期・幼児期には、肺機能が未発達ですから、できるだけ感染症にかからないように注意します。麻疹や百日咳、インフルエンザなど、予防注射を受けられる病気は、小児科医とよく相談して受けるようにします。小児のインフルエンザ予防注射は、受ける方が良いようです。

できるだけ風邪をひかないように、室内の乾燥や温度差の調整を行います。

小児喘息などアレルギー疾患は早めに治療を受けるとともに、アレルゲンとなるハウスダストやダニを除去します。

母親が感染症にかかっていると、胎児や新生児、乳幼児に感染することが多いので、妊娠に気づいたら、産婦人科医に相談し、出産までに治すようにします。呼吸器内科・内科の診療を必要とする場合もあります。

[成人は免疫力をつけ、生活習慣病に要注意]

気管支拡張症の最も大きな原因は、ウイルスや細菌による感染で気管支に炎症が起きることです。風邪やインフルエンザに繰り返しかかると、発症しやすくなります。

免疫力を強化して、細菌やウイルスが侵入しても感染症を発症しないようにします。

気管支拡張症にかかると、感染性肺疾患が繰り返して起きやすくなり、病気が進行します。やはり、免疫力をつけて、感染症を繰り返さないようにします。

糖尿病・脂質異常・肥満などの代謝性疾患や高血圧症など、いわゆる生活習慣病は気管支拡張症と相互に悪影響を与え合います。生活習慣病のある人は、治療を怠らないようにします。

大量飲酒や喫煙の習慣も、できるだけ止めるようにした方が無難です。

高齢者は誤嚥に注意します。誤嚥性肺炎でも、ちょっとした風邪がこじれてなる肺炎でも、高齢者には命取りになる危険性があります。

咳や痰が続いたら、早めに呼吸器内科を受診します。

[気管支拡張症の看護]

気管支拡張症の患者さんを看護する時は、病歴や全身状態、呼吸状態など気を配ることが多いものです。痰の排出にも注意しなければなりませんが、特に気をつけることは、血痰・喀血です。喀血は「血を吐く」ことですから、患者さん本人が動転してしまいます。

「血を吐く」と言っても、吐血と喀血は違います。吐血は消化管からの出血です。喀血は、呼吸器系の血管が傷ついて出血し、その血液が口から溢れ出すことです。

喀血の場合は、咳といっしょに鮮紅色の血液が口から出ます。吐血は、鮮血のこともありますし、胃液と混じってコーヒー残滓のような黒っぽい血のこともあります。食べ物が混じることもあります。

看護師は、看護師国家試験を受けて資格を得ています。試験をクリアしていますから、吐血と喀血の違いもよく知っています。しかし、患者さんは、「血を吐いた」だけで、ショックを受け、肺癌・肺結核など重篤な病気と思い込んでしまいます。

看護師は、「血を吐いた」時の状況や前後の症状を聞きながら、患者を落ち着かせるようにします。患者が病気と冷静に向かい合えるようにすることが、大事です。

まとめ 気管支拡張症は、できるだけ予防に努める

気管支拡張症は、何らかの原因で気管支壁が損傷され、気管支が拡張して元に戻らなくなる呼吸器疾患です。気管支が拡張すると、浄化機能が低下して、痰が溜まり、細菌が繁殖しやすくなります。肺炎や気管支炎が起きやすくなり、さらに気管支壁が破壊され、気管支が拡張するという悪循環に陥ります。

気管支拡張症の原因は、先天性と後天性があります。後天性の原因は、感染症・免疫不全・免疫異常(アレルギー疾患)・気道閉塞などです。最も重要なのは、感染症です。特に、乳幼児期から幼児期にかけての感染症(麻疹や百日咳など)が重篤化すると、後遺症のように気管支拡張症が起こります。成人では、風邪を繰り返しひいたり、肺炎を何度も起こしたりして、気管支拡張症を発症することが多くなります。

湿った咳が続き、咳とともに多量の痰が出ます。血痰が出たり、喀血することもあります。38℃以上の熱が出たり、嘔吐したりします。全身の倦怠感・脱力感、体重減少などが起きます。呼吸困難・呼吸不全が生じます。肺炎や慢性副飛空炎、膿胸や肺膿瘍など合併症が起きることが多いようです。

1度拡張した気管支は元に戻りません。予後は悪くないのですが、肺炎や気管支炎が起きやすくなっているので、病気が進行してしまうことがあります。

気管支拡張症は予防と再発防止が何より大事です。乳幼児・幼児は予防注射などをして、できるだけ重篤な感染症にかからないようにします。

成人の場合は、免疫力を高めて、繰り返し風邪や肺炎、インフルエンザなどにかからないようにします。すでに気管支拡張症の人は、病気の進行を防ぐために、感染症を繰り返し発症しないように注意します。生活習慣病があると、互いに悪影響を与え合い、症状を悪化させます。生活習慣病の予防や治療に努めます。

気管支拡張症の症状は、肺癌の症状とよく似ています。咳や痰が続く時は、できるだけ早く、呼吸器内科を受診することをオススメします。

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