お尻から血がでたら、まず最初に頭に浮かぶのが、痔ではないでしょうか?でも痔だけではない、お尻からの血、どの様な病気が隠されているのでしょう。
痔持ちの人は、お尻から血がでれば、痔と思ってそれ以上疑いませんが、しかし他にお尻から血が出る病気がありますので、自己判断せずにまずは専門家に、診察を受けることが大切です。それではお尻から血が出る病気を見てみます。
お尻からの血・便について
便が作られるメカニズムは、まず食べ物を食べると、小腸が栄養分を吸収し、盲腸と上行結腸で水分が吸収されます。
便が作られるメカニズム
大腸は盲腸、結腸、直腸の3部に分かれていて、大腸の中に棲む細菌によって便らしくなっていきます。横行結腸、下行結腸、S状結腸に到達する頃は、便が完成されます。
完成された便はS状結腸と直腸で貯蔵され、この器官は便の貯蔵庫になっています。直腸はその為結腸に比べやや太く、多くの便が溜められるようになっていて、直腸の末端部は肛門管に続いています。一般に肛門と呼ばれる部分は、正式に肛門管といいます。
直腸と肛門管の境目には、粘膜が歯のように入り組んだ格好をしているため、歯状線と名前が付けられています。
直腸は自律神経で支配されていて、神経が通っていなくて痛みを感じません。その為直腸に異常があっても、出血などが起こるだけで、痛みを感じる事ができません。
しかし肛門管は皮膚からできているので、肛門管にできた外痔核や裂肛、キレ痔や腫瘍などは強烈な痛みを伴います。
排便のメカニズム
食事を摂ると4~6時間後に、小腸で栄養分を吸収され、食物は流動物状になり、大腸に運ばれ大腸でゆっくりと、移動する間に水分が吸収され、便の硬さになっていきます。
しかしこの段階で胃に再び食物が入ると、蠕動運動が横行結腸からS状結腸に起こり、直腸に便が送られて、直腸の内圧が高まります。
直腸にある知覚神経が刺激され、大腸に伝わると「便がしたい」と思います。便意を模様しても、肛門括約筋が収縮を続けているので、すぐに便が出ない仕組みになっていて、トイレに入り自分の意志で動かせる肛門括約筋が緩んで、便を体外に出すことができます。
排便時の出血の病気の見分け方
肛門部に異常がなく、痛みもなく出血する場合は、大腸の異常と考える方が正しいです。排便時に真っ赤な血が出たりする場合は、殆どが痔です。
しかし潰瘍性大腸炎のように、肛門の近い直腸の粘膜に、炎症がある場合も出血します。便に血が混じっている場合は、殆ど大腸の病気と考えられます。
肛門部に異常がなく痛みもなく、出血する場合は大腸の異常と考える方が正しいです。
お尻からの血で痔について
痔というのは肛門あるいは肛門付近で、起こる疾病です。
痔には「いぼ痔」「切れ痔(裂肛)」「あな痔(痔瘻)」の3種類ありますが、「イボ痔」「切れ痔」は出血を伴い、便に血が付くことがあります。
また痔は年齢に関係なく発症します。
いぼ痔
イボの痔の血は内痔静脈叢(ないじじょうみゃくそう)という、血管の集まっている部分が大きくなり、強く力むと吹き出すような、真っ赤な血が出てきます。
肛門内部の内痔核の出血は、排便の時の力みで生じる事が多く、新鮮な血液で便器を汚すことになります。
痔の出血は大体新鮮な、真っ赤な血が多いのですが、たまに出血したものが直腸に、溜まって出てくることがあります。
そのような時の血は時間が経って出てくるので、赤黒くなっていることがあります。また内痔核は痛みの神経がないため、傷がついても痛みを感じる事がありません。
治療法は血の血管に負担を掛けない様に、生活習慣の改善が必要となってきます。排便を短時間で終わらせ、排便を整え、力まない事が大切です。
また座薬や軟膏などの効果もあります。注射によって内痔核を硬化させて、出血を止める薬もありますが、手術まではほとんど必要ないです。
いぼ痔に効果のある治療方法
治療にはアルタ注射療法「硫酸アルミニウムカリウム水和物・タンニン酸による注射療法」というALTAを注入し、痔を固めて小さくし、血が出る症状を改善します。
痛みを伴うことはありませんが、これは注射だけで治す痔の手術なので、特殊な投与技術が決められた手技の、受講をした専門医でしか治療ができません。
このアルタ注射療法には副作用が伴います。
- 投与後早い時期に頭痛・吐き気・食欲不振・気分不快・血圧低下
- 数日で改善されますが肛門の鈍痛・排便困難などがあります。
- 1~2週間以内に39℃ぐらいの発熱が一過性で見られます。
- 潰瘍・狭窄・出血
血栓性外痔核
血栓性外痔核は血栓の、血豆が原因でお尻付近が腫れあがり、症状はとても痛く腫れも派手ですが、血栓が吸収されれば自然治癒します。
血栓性外痔核を何度もなっている人の対処法として、専門医の診察を受ける事が必要です。心配な人も専門のクリニックを受けると良いでしょう。
大体数週間から1ヶ月ぐらいで、血栓が吸収されれば、自然消滅しますが、注意点としては、出っ張りを中に押し込めようとしても、入らない場合は無理に押し込めない事です。外が腫れているので、中に押しても入らなく、症状を悪化させますので、そっとしておくことです。
また冷やすと逆効果になりますので、この病気の場合は患部をできるだけ温め、血液の循環を良くすることで、血豆が吸収されます。
切れ痔(裂肛)
便秘などが原因で、硬い便が肛門付近の、上皮の皮膚が切れたり、避けたりして起こり、痛みを伴った切れ痔の血は少量ですが、たまに多量の出血する人もいます。
大体紙に少し付くぐらいの血で、切れ痔は肛門の上皮の皮膚が裂けたもので、この辺りは痛みを伴う神経が存在し、痛みを伴う出血が見られます。
排便時に傷が刺激され、排便後に何時間も痛みが続くのが切れ痔の特徴で、排便を我慢する人が多く、悪循環が繰り返されて症状を悪化させることがあります。
大部分の切れ痔は便を柔らかくして、傷を治す軟膏を付ける治療をします。慢性的な切れ痔の場合、肛門が狭くなったり、肛門ポリープができていたりすると、手術が必要となります。
その手術もポリープだけの切除でなく、裂肛も完治させなければ、何時までたっても治りません。ですから専門性のある病院で、良く説明を聞いてされるのが必要です。
詳しくは、切れ痔の治し方について!自力で治すこともできるの?を読んでおきましょう。
あな痔(痔ろう)
細菌が肛門の周囲に炎症を起こして、おできのような膿が溜まった状態をいいます。肛門周囲に痛みが出たり、熱が出たりして肛門周囲膿瘍の症状がでます。痔瘻の初期症状が肛門周囲膿瘍です。
詳しくは、痔ろうの症状とは?原因や種類、検診方法を知っておこう!を参考にしてください。
直腸脱
肛門から直腸壁全層が脱出する病気で、脆弱な骨盤底と、直腸の固定の異常により起こります。排便障害や出血を伴います。
お尻からの血で痔に似た病気
大腸がん、直腸がん、直腸炎、大腸ポリープ、肛門がんなどがありますが、これらの病気はどれも痔に似て肛門から血が出て、便に血がつきます。
大腸がん
大腸の働きは水分を吸収し、便を作る働きをしています。大腸は盲腸、結腸、直腸に分けられその中で結腸は上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸に分かれています。
大腸がんは大腸に起こるがんです。大腸の粘膜の細胞が、何らかの原因で癌化して、大腸の壁に深く広がっていく病気です。進行は非常にゆっくりですが、進行するにつれ他の臓器に転移し、リンパ節や肝臓に転移します。
大腸がんのがんの発生頻度の多い腸は、直腸、S状結腸、上行結腸、横行結腸、盲腸、下行結腸となっていて、直腸は肛門の近くに位置しているので、便が一番長くとどまっている場所になります。ですから直腸は発がんする率が高くなっています。
大腸がんの原因
大腸がんの原因は、食の欧米化に伴い、大腸がんが増えています。タンパク質や、カロリーの高い食事を摂ると、便が大腸にとどまる時間が長くなります。
便が大腸にとどまる時間が長くなればなるほど、便に含まれる発がん性物質も長くなる為、癌が発症しやすくなります。
また煙草を吸う人は吸わない人に比べて、約7倍大腸がんになり易くなります。また過度の飲酒は大腸がんを起こしやすく、日本人は体質的にアルコールの影響を受けやすく、大腸がんになり易いです。
また運動不足も大腸がんを引き起こしやすいです。デスクワークの人は大腸がんになり易いといわれていますので、小まめに体を動かすことをすることが大切です。
男性BMI127以上の肥満の人は、大腸がんになり易い体系の人です。大腸にポリープのできやすい人は、遺伝的要因もあります。
大腸がんの症状
症状は・便が細くなる・便の残便感・血便・下血・下痢と便秘が繰り返される・お腹が張る・腹痛・貧血・原因不明による体重の減少などです。
大腸がんの良く見られる症状は、血便です。血便がでたら、胃腸科・消化器科・肛門科を受診することをおすすめします。
大腸がんの予防対策は早期発見が一番ですので、検診が予防法として一番良いです。
2013年の死亡率はがんの中でも3位を占め、女性は1位になっています。
大腸がんの検査
大腸がんの検査は「検診法」と「診断法」に分けられます。大腸検査によって検診法では健康な人から大腸に異常のある人を見つけ、診断法によって肛門科専門医の、より詳しい検査によって、大腸がんの発見を行います。
検診法
検診法は健康な人が健康診断を行うように、大腸がんを検査する方法です。直腸にしこりがないか調べる直腸診があります。殆どの人は健康な状態なので、病気の高い人をより効率よく検査を受けてもらうのが検診法です。
診断法
診断法は検診法で大腸ガンの、疑いがある可能性の人や、また何らかの症状がある人に対して、正確に腸管の状態を調べ、診断を確実にするため、「注腸造影検査」の大腸に造影剤を注入しX線撮影を行います。
また「大腸内視鏡検査」で肛門から内視鏡を挿入して、大腸内を詳細に観察します。殆どの人が病気がある事が前提なので、正確な情報を得る事が大切でな、診断法の内視鏡検査です。
直腸がん
直腸はもっとも肛門に近い所で、大腸の最後の部分です。直腸は体の消化管システムの一部で、消化管システムは、食道・胃・小腸・大腸からなっていて、大腸の最後の12.5cmが直腸と、肛門管で肛門管の端が肛門になっていて、消化管システムは食事から得られた、栄養素の消化吸収と老廃物を、体外に排出する働きをしています。
直腸がんの症状は下血・便が細い・便が出にくい・便が残る感じ・食欲がなくなる・便に血がまじる・原因不明の体重減少などの症状が出ます。
直腸がんの検査と治療
検査は医師が直接肛門から直腸指診や、直腸鏡検査の観察の為に管状の器具を肛門に入れて検査します。
理学的検査と既往歴
問診をします。患者さんの過去の病歴や、生活習慣などを問診し、しこりやその他の通常見られない様な症状はないか、体の一般的な健康状態を調べます。
直腸指診
医師や看護婦さんによって直接直腸に指をいれて、しこりやポリープなどがないか調べます。女性は膣なども調べられます。
直腸鏡検査
細いライトとレンズのついた、管状の器具の直腸鏡を直腸に挿入して行う検査です。癌の兆候を顕微鏡で調べる直腸ポリープや、サンプルを取る道具がついていることもある、器具で検査をします。
結腸鏡検査
結腸鏡も直腸鏡検査と同じように、ライトとレンズのついた細い管状の器具で、直腸、結腸の内部に、ポリープや、がんや、異常な個所がないか調べます。これも直腸鏡検査と同じく、眼の兆候を顕微鏡で、調べるポリープや組織サンプルを取る、道具がついていることもあります。
生検
細胞や組織を採取して、顕微鏡下で癌の細胞があるのか調べ、患者のより詳しい情報を得る事が出来ます。
直腸がんの治療
直腸がんの治療はステージにより異なります。
肛門がん
肛門がんは肛門の組織の中に、癌細胞ができる病気で、扁平上皮がんが大部分で、残りは総排泄腔腫瘍で、原因はヒトパピローマウイルス感染との、関わりが強く考えられています。
肛門か直腸からの出血があり、肛門周囲にしこりがあり、便が細くなったり出にくいなどの症状が出てきます。
手術法では腹会陰式直腸切断術(ふくえいんしきちょくちょうせつだんじゅつ)が行われていますが、症状の悪い人には化学放射線療法など、肛門括約筋の温存などの療法がおこなわれることがあります。
直腸炎
直腸の粘膜に炎症を起こします。直腸炎は炎症性腸疾患の一つです。潰瘍性大腸炎の1つの病型になっていて、直腸に限局したもので、発生頻度が高く潰瘍性大腸炎の中でも軽症の病気です。
直腸炎の原因
細菌やウイルスなどの感染症や、クローン病のような他の消化器疾患が原因となる、潰瘍性大腸炎などがあります。免疫機能が低下しているときに、感染しやすく発症しやすい病気です。
性感染症によるものでは、淋菌感染、梅毒、クラミジア、トラコマチス感染症、単純ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症などがあり、性感染症以外では、サルモネラ属の細菌や、薬剤や直腸粘膜刺激からも起こり、前立腺がんや直腸ガン、子宮がんなどの直腸に放射線をあてる療法でも起こります。
直腸炎の症状
直腸炎の症状は下痢が続いても1日2~5回程度で、全身が悪化して命に関わるようなことはありません。症状は下痢・出血・下部腹痛・粘液の流出や粘液便などの症状が出ます。普通は痛みを感じませんが、淋菌感染症や、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス感染症によって、肛門と直腸に激しい痛みを伴うこともあります。
直腸炎の治療
直腸炎は免疫機能が低下するために発症するために、免疫機能を高める治療を行います。また質の良い睡眠をとり、身体を冷やさない様にして、禁酒や禁煙をして、ストレスを溜めない休養を十分とる、生活習慣の見直しが大切です。
直腸炎の発症を少なくするためには、性感染の保身が大事で、危険な性行為は避けなければ感染は少なくなりません。
大腸ポリープ
日本では胃がんに比べ大腸ガンの患者が増えています。その原因の一つに食の欧米化が大きな要素を占めています。
日本人の食事は和食から、脂肪分の多い繊維質の少ない、肉類中心の欧米の食事に変化し、これまで日本人は少ないといわれていた、大腸癌の発症が多くなりました。
肉中心の食事を続けると、腸の中は発がん性の高い状態になり、水分を集めて便通を良くする繊維質が少ないと、便が腸内にとどまる時間が長くなります。また運動不足や喫煙も、腸の運動を弱めて、大腸ポリープを発症させます。メタボリック症候群や、肥満体の人は腺腫ができやすいです。
大腸ポリープは腸の中でいぼ状に飛び出たもので、結腸壁、直腸壁が増殖したものです。癌に移行する可能性は無いとはいえません。特に症状はありませんが、直腸から出血の症状が見られます。
直腸や結腸にできたポリープはがん化するために、5mm以上の物が見つかった場合は、大腸内視鏡を用いて、ポリープを切除します。大腸内視鏡で切除できない時は、開腹手術や、腹腔鏡手術などを行う場合もあります。
詳しくは、大腸ポリープの原因について!種類と症状、予防法も紹介!を読んでおきましょう。
放射線性腸炎
この病気は放射線治療において、副作用として起こる病気で直腸に多く発症します。放射線照射後一週間以内に、食欲不振、下痢、下腹部の痛み、下血などの症状が見られます。
一過性に終わる早期障害と、晩期障害があります。
まとめ
如何でしたでしょうか?
お尻から血が出る病気について見てきましたが、自分で自己判断せずに専門性のある病院で、専門の先生に診察してもらい、治療してもらうのが大切です。
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