便は、私たちの体内の調子を表すバロメーターと言われており、便の硬さや色などから内臓の不調を知ることができます。
また、食べたり飲んだりと、口から体内に入れた物の影響を大きく受けやすいとも言われています。水分やアルコール、冷たいものを摂りすぎると、お腹が緩くなるといった経験をした人も、少なくないのではないでしょうか?
このような場合ではなくでも、便秘と下痢を繰り返すなど、お腹の調子が崩れやすい人は、便の色がどのような色をしているのかも合わせて、気をつけて見るようにしてください。
とくに、下痢の症状に加えて、真っ赤な血が混ざっていたり、通常よりも赤黒い色をしている便が出た場合は、内臓からのSOSかもしれません。そこで、ここでは、下痢と血便から考えられる病気について、詳しくご紹介いたします。
便に血が混じるとき
便に血が混じるケースには、便とともに鮮血が出たり、便そのものが赤ワインのような濃い赤みを帯び、“血が出ている、あるいは混じっている”ということがわかる「血便」と、ドロッとして黒い色をしており、一見血が混じっているとはわかりにくい「タール便」との2種類があります。
血便が出るときと、タール便が出るときとでは、影響を受けている臓器がそれぞれ異なるため、原因や考えられる病気も違ってきます。
血便とは?
真っ赤な血や、濃い赤色をした便が出る「血便」は、胃酸の影響を受けていないと考えられます。そのため、胃から下の大腸や直腸、肛門などの臓器に、何らかの異常があると考えられます。下痢や腹痛を伴う場合には、注意が必要です。
タール便とは?
「コールタール」がその名前の由来である「タール便」は、黒色便とも言われており、文字通り、黒い色をした便のことを示します。血便とは異なり、胃酸が影響して便が黒くなるため、様々な消化器官の異常が考えられます。
アルコールや肉類を摂取しすぎて、胆汁の分泌が不足したり、大量の鼻血を飲み込んでしまう、あるいは悪玉菌が増殖することによっても便が黒くなることもありますが、気をつけなければならないのは、血便の場合と同様に腹痛と下痢を伴う場合です。
なぜならば、消化器官からの出血によってタール便が出る場合、少量の出血では便の色が黒くはなりません。すなわち、消化器官からのかなりの量の出血が考えられるということになります。とくに、激しい痛みなどを伴う場合には、早急に病院で検査をしてもらう必要があります。
下痢を伴う血便とタール便で考えられる病気
それでは、下痢を伴う血便とタール便では、それぞれどのような病気が考えられるのでしょうか?具体的に考えらえる病気とその特徴について、早速見ていきましょう。
下痢と血便で考えられる病気
<痔>
便秘によって便が固くなり、肛門に傷がつくことによる「切れ痔」や、直腸にイボができる「内痔核」などの痔によって肛門から出血した場合、便に鮮血が混じったり、トイレットペーパーに血がつくことがあります。
痔というと、「硬い便」というイメージがありますが、便秘と下痢を繰り返し、便が出にくいと思ったら、水のような水瀉便が出るということもあり、水瀉便が出るときの勢いで、肛門に傷がつくと血便が出る場合もあります。
腸内環境や自律神経を整えることで、便の水分バランスを正常に戻すことが必要です。
詳しくは、痔の原因や種類について!ストレスや食べ物が関係している?を参考にして下さい。
<感染性胃腸炎>
ウイルスや細菌が原因で激しい下痢や嘔吐などの症状が見られる感染性胃腸炎の場合にも、血便が出ることがあります。
血便が症状として現れる感染性胃腸炎は、ウイルス性のものよりも細菌による胃腸炎であることが多いと言われています。代表的な例を上げると、O-157や、カンピロバクター、サルモネラ菌による腸炎や、細菌性赤痢などがあげられます。
これらに感染した場合には、細菌が体外へ排出されるのを待つのが一番ですが、脱水症状などが見られた場合には、点滴等の処置が必要になります。
<潰瘍性大腸炎>
明確な原因は不明とされていますが、欧米文化の影響を受けた食生活の変化や、ストレスなどが原因と考えられている潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症を起こす病気です。
症状としては、赤黒い血便の他に、痙攣性あるいは持続性の激しい腹痛を伴い、ひどくなると発熱や体重減少、貧血などの症状が見られます。
一度良くなったように見えても、時を経てまた再発するなど、完治が困難と言われている病気でもあります。薬物治療によって、通常の生活は可能ですが、完治せず、10年以上この病気を患っていると、大腸がんへ病変することもあります。
詳しくは、潰瘍性大腸炎は完治するの?原因や治療方法を紹介!を読んでおきましょう。
<虚血性大腸炎>
こちらも明確な原因が不明とされていますが、中年以上の人に多く見られると言われる病気です。虚血性大腸炎とは、何らかの原因によって、大腸に血液が行き届かなくなり、文字通り、大腸が「虚血状態」になることによって、突然腹痛に襲われたり、下血することがあります。
「狭窄型」と呼ばれるものになると、腸細胞が壊死したり、細菌が体内に侵入する場合もあるため、注意が必要です。
突然の左下腹部の激痛と、赤黒い便と下痢を伴う場合には、早めに病院を受診してください。
治療は、腸の安静が一番と言われているため、一過性の場合は、絶食と点滴による治療が行われることが多いのですが、狭窄型の場合には外科的切除が必要なこともあります。
<薬剤性出血性大腸炎>
これは、内臓が何らかの病気によって異常を起こしているのではなく、服用している薬が原因となって、血便や腹痛などの症状が出る腸炎です。
この場合、前触れもなく急に血便がでるため、驚くかもしれませんが、抗生物質などを服用していた場合は、薬剤性出血性大腸炎が考えられますので、落ち着いて病院へ行きましょう。
<大腸憩室炎>
大腸壁の一部が飛び出している「憩室」によって便が詰まると、細菌が繁殖して炎症を起こし、血便の他にも発熱や腹痛といった症状が見られるのが、大腸憩室炎と言われる病気です。
無症状の人もいますが、ひどい場合には、動脈が破れて大量に出血する場合もあります。血便や発熱とともに、下腹部を抑えると痛みが生じる(圧迫痛がある)場合には、病院で検査をしてもらうと安心でしょう。
また、便秘傾向にある人によく見られる病気であるとも言われているので、腸内環境を整えることも予防策として大切です。
治療は、入院治療がほとんどとされており、絶食と点滴などの薬物療法が行われます。
<クローン病>
潰瘍性大腸炎と同様に、炎症性腸疾患の一種とされているクローン病ですが、炎症が、粘膜や筋層などの全層に及ぶ点が潰瘍性大腸炎とは異なります。小腸や大腸に多く見られ、血便とともに、刺すような腹痛が生じた場合には、注意が必要です。
この他にも、症状が悪化している場合には、嘔吐や発熱などの症状も伴います。また、血便も、赤黒い場合と真っ赤な鮮血が出る場合があるようです。
残念ながら、現段階ではクローン病を治す明確な方法はないと言われていますが、炎症の再燃・再発予防をメインとする薬物療法が主に行われています。
詳しくは、クローン病の症状とは?原因や遺伝との関係も紹介!を参考にして下さい。
<大腸がん>
大腸にがんが発生した場合、大腸のどの部分に腫瘍ができたのかによっても、血便の具合が異なります。例えば、結腸に腫瘍ができた場合は、赤黒い血便になり、初期段階では下痢や便秘にはなりにくいと言われていますが、直腸に腫瘍がある場合には、下痢とともに、血の塊が便に付着したような血便であるという特徴が見られます。
いずれの場合においても、がんの治療には早期発見に勝るものはありません。血便に加え、膨満感や悪心・嘔吐、肛門の痛みなどが見られる場合には、早めに病院を受診しましょう。
詳しくは、大腸がんの原因とは?運動不足や食生活に要注意!を読んでおきましょう。
下痢とタール便で考えられる病気
<胃の疾患による出血>
胃潰瘍や、胃がん、または重度の胃炎などによって、胃からかなりの出血がある場合には、タール便が病気の症状として現れます。胃の痛みなどの自覚症状がない場合でも、血便とは異なる、どす黒いタール便になることもあるようです。
ストレスフルな現代社会では、胃を痛める人も多いため気をつけなければなりません。みぞおちの痛みや、口臭、げっぷ、吐き気、嘔吐、吐血、背中の傷みなどの症状が血便や下痢とともに見られる場合には、早急に病院を受診してください。ひどくなると、出血性ショックを引き起こす可能性もあります。
最近では、重度の胃がんなどを別として、手術ではなく薬物療法のみで治療が可能になってきましたので、医師の指示に従って、正しく薬を服用することが大切です。
<十二指腸の疾患>
胃酸や胃の消化酵素によって、十二指腸の粘膜に大きなダメージを受けると、粘膜の一部が欠け、十二指腸潰瘍と呼ばれる病気になります。
原因は様々で、ストレスによるものや、ピロリ菌が原因となる場合、あるいはステロイドなどの薬物の作用によっても、このような症状が起こる可能性があると言われています。このときに、出血を伴うと、便にも血が混じり、胃酸の影響を受けることからどす黒いタール便として現れます。
潰瘍が重症化し、十二指腸がんになってしまった場合も同様です。タール便に加え、空腹時に持続的な痛みを腹部に感じる場合には、十二指腸疾患が考えられますので、病院を受診しましょう。治療においては、内視鏡による止血や、薬物療法が主に行われます。
<食道の疾患>
食道静脈瘤や食道がんなどによってタール便が出る場合は、かなり危険性が高いと認識しておいて良いでしょう。
肝硬変が主な原因となる食道静脈瘤の場合においては、出血性ショックを起こし、死に至る場合もあるので、注意が必要です。タール便が出た場合は、静脈瘤が破裂したということを意味し、緊急治療しなければなりませんので、救急車を呼びましょう。
自覚症状がないため、気づきにくいのが難点ですが、肝硬変の人は、食道静脈瘤になりやすい傾向がありますので、病院などで検査を行ない、予防に努めるのがベターでしょう。
また、食道がんの場合においては、がんの進行が非常に早いので、少しでも異常を感じたら病院で受診することをおすすめします。
喉がしみる感じがしたり、声が枯れる、血痰が出るといった症状が合わせて起きている場合には早急に病院へ向かいましょう。がんの治療は、いずれの場合においても、早期発見が重要なポイントになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?便に血が混じって痔だと思っていたら、大腸がんだったというケースも希に見られます。血便やタール便に加え、そのほかにも何らかの不調を伴う場合は、早急に病院で診てもらいましょう。
また、先にも述べたように、便は口にした食べ物などの影響を大きく受けるため、食べた物の色が、そのまま便に反映されることもあります。
紫色の野菜や黒い食べ物を食べたり、鉄分のサプリを飲んでいる場合においても同様です。あるいは、デトックス中の人が便の色が黒くなるということも珍しくありません。このような場合を除き、少しでも「病的要因」が考えられる場合には、早めに検査をして、改善しましょう。